『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第2章  トラキアへ  265

2010-07-29 07:13:37 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 ギアスとの出会いが、もうそろそろであろうと考えながら、けもの道を歩んでいたイリオネスが耳にしたのは、異常の事態を想像させる獣のただならぬ叫びであった。彼は、叫びを耳にした方向への歩運びを急いだ。現場に到着したのは、トリタス隊より少々遅れての到着であった。イリオネスが目にした風景は、トリタスが応急手当を施そうとしている風景であった。
 『イリオネス様、大変な事態ですが、ギアス様は重傷ではありません。安心してください。統領、そして、他の者たちもお連れください。私たちは、ここで貴方がたの到着を待ちます。その間に、ギアス様の応急手当を終えます。今日の野営のことは、それから決めましょう。いいですか、この旨、統領にお伝えください。私たちは、ここで待っています』
 イリオネスは、この場をトリタスたちに任せて、とって返した。
 トリタスは、荷役の者に焚き火を燃やすように言いつけ、荷の中から酒を取り出して、傷を洗った。その間に焚き火は火勢を強めていた。トリタスは、引っかき傷に合う太さの小枝を4~5本準備して燃やした。
 『ギアス様、傷を焼きます。うませないためと止血のためです。熱いがこらえてください。いいですね』