『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY          第4章  船出  22

2011-12-06 14:03:06 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 案内された応接の間には、酒と酒肴、そして、茶を喫する準備がされていた。ゼレカスが一同に声をかけた。
 『皆さん、どうぞ、お掛けになってください』
 アエネアスらは、領主の着席につづいて腰を下ろした。アエネアスは、慇懃と思われるくらいに礼を尽くしていた。彼は、改めて訪問の挨拶をした。
 『エノゼリアス領主殿。今日は、突然、お訪ねしました。領主のご多忙に配慮もせず、お訪ね申し上げた失礼を重々お詫びいたします。私どもが戦火のトロイをあとにしてエノスの浜にまいりました。その時以来、今日まで私どもをエノスの地に住まわせていただいたことに厚くお礼申し上げます。有難うございました。領主殿のお計らいによるものとトロイ民族を代表して深くお礼申し上げる次第です』
 アエネアスは、ここで席より立ち上がり、深く頭を下げた。イリオネスもギアスも、この対応に気づき、急ぎ立ち上がり、アエネアスに続いて、深く低頭した。
 エノゼリアスは、アエネアスの口上と彼らの所作に誠意と他にただならぬ何かを感じた。それはアエネアスの続く口上を聞くまで、それを解することは出来なかった。
 『アエネアス、お前、えらく改まって、いったい何なんだ。まあ~、杯を持て、互いが、今日、達者でこのように会えた。杯を干そうではないか。連れの者たちにもすすめてくれ。お~お、トリタス、お前も杯を持て』
 『領主殿、有難うございます』
 トリタスも礼を述べて、杯を手にして立ち上がった。