二人は、こみ上げる離れがたい感情のるつぼで、もがいている有様であった。
アエネアスは、エノスの砦を辞した。一行もエノゼリアス領主らも砦の門前に立ち、互いの姿が見えなくなるまで、別れを惜しむ余韻をもってたたずんでいた。
アエネアスら一行は、帰路を急いだ。太陽が中天にあるといえども、つるべ落としに沈む秋の陽のことである。
このとき、トリタスは吹きすぎていく風が頬に冷たく感じ、東の空に目をやった。
『統領、少し急ぎましょう。空模様が変わります。雨が来ます。風は海辺に近づくまでは気にせずともいいと思います』
これを聞いた一同は、馬にムチを入れた。あと少しで砦という地点にさしかかったとき、一行は篠つくような雨に見舞われた。
イリオネスは『くそっ!』とひとこと吐いて一行を急きたてた。このところより砦までには雨宿りするところがないのである。
『統領、ずぶぬれになる覚悟をしてください。お~い、皆、急ぐぞ!』
彼は一行を叱咤した。
一行は、この地、一帯に広がる沼沢の地は通り過ぎておりぬかるんだ道に馬の足がとらわれることなく、暮れいく中にくすんだ砦に帰りついた。
アエネアスは、エノスの砦を辞した。一行もエノゼリアス領主らも砦の門前に立ち、互いの姿が見えなくなるまで、別れを惜しむ余韻をもってたたずんでいた。
アエネアスら一行は、帰路を急いだ。太陽が中天にあるといえども、つるべ落としに沈む秋の陽のことである。
このとき、トリタスは吹きすぎていく風が頬に冷たく感じ、東の空に目をやった。
『統領、少し急ぎましょう。空模様が変わります。雨が来ます。風は海辺に近づくまでは気にせずともいいと思います』
これを聞いた一同は、馬にムチを入れた。あと少しで砦という地点にさしかかったとき、一行は篠つくような雨に見舞われた。
イリオネスは『くそっ!』とひとこと吐いて一行を急きたてた。このところより砦までには雨宿りするところがないのである。
『統領、ずぶぬれになる覚悟をしてください。お~い、皆、急ぐぞ!』
彼は一行を叱咤した。
一行は、この地、一帯に広がる沼沢の地は通り過ぎておりぬかるんだ道に馬の足がとらわれることなく、暮れいく中にくすんだ砦に帰りついた。
