『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY          第4章  船出  24

2011-12-08 09:38:04 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 決意を述べようとするアエネアスの表情は、鬼気迫る雰囲気をかもし出していた。
 『私の率いている民は、700余りですが、この土地に居残ることを望む者を残して、ここ1週間以内に『建国』の途につこうと考えています』
 エノゼリアスは聞き返した。
 『何っ!建国の途と言ったな。アエネアス、お前、気は確かか。どこへ行って国を興そうというのだ。国を興すということは、植民地を造ることとは違うのだぞ。判っているのか』
 『私としては判っている心算です。植民地として我々の生活圏を構築することと、一国を興すということは、そのプロセスが全く違っていることは充分に承知しています。事が成るか、否かは、全く不明です。しかし、如何なる困難と辛苦があろうとも民族として、為さねばならない事業なのです。一国の民に課された使命なのです。今の私どもには何もありません。あるのはこの『建国』の使命だけなのです。領主、何卒、ご理解いただきたいところです』
 『アエネアス、ところでどこへ向かうのだ』
 『エーゲ海を南へ、クレタに向かいます。向かう先は、今のところそのように決めています。私どもが『建国』の杭を打ち込む箇所が、この世界のいずれかのところに必ずあると堅く信じています』
 言い切ったアエネアスのゆるぎない堅固な信念を一同は感じ取っていた。