『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  77

2013-08-09 08:22:21 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 草木なしの狭い島である。島域全体に及んで戦闘が展開されている。追う者、追われる者、追われているのは海賊の奴らであった。追いすがってこれを倒す。各所に展開されている打ち込み、斬撃の応酬が燃え盛る炎に照らし出されていた。そこに修羅の光景があった。
 泥縄式であったが、負けることのない闘争のカタチを指導した効果が現出していた。手首に巻いた白い布により敵味方の判別が容易にできる、味方同士が斬り合うというような事態は避けられた。
 斬撃の呼吸も『ビィ~ッ!』『バ~ッ!』が効果的であった。この掛け声にも敵が一瞬の戸惑いを見せる、貴重なスキを誘発した。パリヌルスの戦略が効を奏した。
 阿鼻叫喚の激闘が狭い島の各所に展開している。断末魔の叫びが尾を引いて空に消えていく。
 数は多いとは言えないが女たちもいた。武器を手にして抗う女もいる、彼女たちは逃げ惑った。身を隠す物影がない島である。海賊の奴らが使っている掘立小屋が数棟散在しているだけである。闘っている者たちの感情の制御がままならない。二、三の者が闘っている者たちの目を盗み、感情のおもむくままに女を下にして俊辱に及ぶ。
 どさくさにまぎれ浜にある艀(はしけ)で逃げようとする者もいる、それに追いついた者の手にかかって命が絶たれる。
 パリヌルスは、戦闘の様子を見ている。提唱した正義、あろうことか、この残虐の戦闘行為、『戦わずして勝つ』 そのようなウツクシイ思考は、露ほども考えなかった。この海賊せん滅思考はトロイ民族が、このクレタで生きていく、それに対して『後顧の憂いを完全に絶っておく』 これが彼が考えた海賊せん滅の大義であった。彼は、この大義が俺の正義であるとしていたのである。