『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  86

2013-08-22 08:00:02 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 夕陽の沈みが、つるべ落としの季節である。薄明がおとづれると陽の出までの時間が短い。パリヌルスは船上に立ちあがり東の空を見ながら時を計った。
 彼は女に短く感謝の言葉をかけた。返ってきた言葉は、
 『私はよかった。貴方となら、また、身体を合わせたい』
 『そうか、いずれだ。浜へ行く、陽の出はもうすぐだ。お前らのことは、よきように考える』
 彼は、言い終えて、女のほうに向き、抱き寄せ、唇を思いっきり吸った。女は、ちょっぴりあえいだ。女の手がパリヌルスの股間をまさぐってきた。二人は、またまた、船底に横たわり、互いの身体をむさぼり合った。
 女から身を離したパリヌルスは、東の空に目を運んだ。岬の上の空が、やや明るくなりつつあるように思われる。
 『女、浜へは、海中を歩いていく。このあたりは深くはない。安心しろ。俺が飛び込む、続いて、お前も飛び込め』
 女は無言でうなずく。パリヌルスが飛び込む、女が続いた。火照った身体に海の冷たさが心地よかった。水深は彼の胸当たりである。彼は女を背負ってやった。浜までは40メートルそこそこである。残すところ10数メートルくらいのところで女を背から降ろし、声をかけた。
 『女、俺たちは、朝行事と言っている、朝めし前に海に身を浸して、身体を洗う、そして、今日一日を祈る。お前も身体を洗ってさっぱりしろ。朝めしはそのあとだ』
 二人はそれぞれ、思い思いに海に身を浸して身体を洗い、浜にあがった。あとはそれぞれの方向に歩んでいった。