『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  482

2015-03-10 07:30:33 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『おおっ!そうか。あいつ、それは喜ぶ。蜂蜜入りのパンか、セレストス、ありがとう』 
 アヱネアスが礼を言う、代わって、イリオネスが声をかける。
 『ここへ来たのは、セレストス、特別の頼みだ』
 『何用でしょう?』
 『ある用向きで、統領と俺が明後日から出入り5日の予定で旅に出る。総員17人5日分のパンを焼いてほしい。出航は、こちらで朝めしを済ませたあとだ。それに間に合わせてくれればいい。ということだ』
 『判りました。このことオロンテス隊長は、知っているでしょうか?』
 『それは知っていないと思う、まだ、彼には話していない。これを知っているのは、二、三の者とお前だけだ』
 『オロンテス隊長に伝えてよろしいですね』
 『あ~あ、いいとも。気を使わないでもいい。明日には、皆に伝えることだ』
 『判りました』
 用件を伝え終えたイリオネスは、アヱネアスに声をかけた。
 『統領、行きましょう。用件は終えました』
 二人は撃剣訓練の場へと足を向けた。木剣の打ち合う音が聞こえてくる。
 『おう、者どもやっておるな』
 気合の掛け声も聞こえてくる。
 『誰がコーチしているのだ?』
 『はい、リナウスです』
 二人は、林を抜けて場を見渡せるところに立った。イリオネスとリナウスの目があった。リナウスが駆け寄ってくる。
 『あっ!統領もご一緒ですか。軍団長、見てやってください。木剣、木槍にしてから、怪我が少なくなって、訓練に励むようになりました。そして防具を使うようになって、一段と訓練に身を入れてやるようになりました。パリヌルス、オキテス両隊長の配慮があったればこそです』
 『そうか、それはよかった。イリオネス、やるか』
 『え~え、やりましょう。リナウス、木剣と防具を頼む』
 『判りました。いま、お持ちします』
 リナウスが二人分の木剣と防具を持ってきた。
 二人が防具を身に着ける。
 『おう、これはなかなか具合がよさそうだな』
 『統領は、初めてですね。私は何度か身に着けてやっていますが』
 『こいつ、俺に内緒で腕を磨いておるな。俺に打ち込むとき手加減せずともいいからな。イリオネス、覚悟してかかって来い!』
 二人は、場に立つ、木剣の切っ先を合わせると、とび下がって間合いをとった。息を整え、ジリッと間合いをつめた。