『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  483

2015-03-11 08:25:25 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アヱネアスとイリオネスの二人は、小半刻、木剣を打ち合った。打ち合いの場を囲むように人垣ができていた。二人の打ち合いが終わる、適度の間合い、軽く頭を下げる、ごく自然な成り行きで拍手が沸いた。
 二人が顔を合わせる、額から汗が流れ落ちる、手で拭い、拍手の起きた人垣を見渡した。
 『なあ~、イリオネス、この木剣と防具だが、なかなかだ!手加減せずに対手に打ち込めるところがいい』
 『道理で、あの打ち込みは手加減なしの打ち込みでしたか、こたえましたな』
 『ちょっと、わるかったな、許せ』
 『一瞬、息が止まりました』
 『そうだったか、いい汗を流した。どうだ、汗を流しに浜へ行こう』
 『そうしましょう』
 二人は撃剣の装いを解いて、浜へと足を向けた。訓練の場の者たちが歓声で二人を見送る、二人は、手ををあげて応えながら坂道を下った。
 イリオネスは、道すがら山行の人員構成について、アヱネアスに伝えた。
 『統領、山行の船旅のメンバーですが、私たちのほうが14人です、スダヌス方が2人と考えています。クリテスを同道させます。ギアスたちが11名、統領と私とクリテス、スダヌスと他一人です。停泊地についてからの山行のメンバーですが、これは7名で構成します。統領の身辺警護には、私とギアス他1名が当たります』
 『判った。それでいい』
 『それから旅程ですが、これについては、あとから詳しく説明いたします』
 『判った。宜しく頼む』
 浜について渚に立ち、海を見渡した。
 『水ぬるむ春か。水が肌になじみやすい』
 『そうですね』
 二人は、のたりとした春の海に身を浸して風情を感じながら汗を流した。
 『統領どうですか、小島に行ってみませんか?』
 『おうおう、行こう』
 二つ返事である。イリオネスは、用船ニケの担当の者たちに言いつけて小島へと向かった。
 この時間の小島は多忙の時間帯である。島に着いた二人は、今日の漁で捕獲した魚を船からおろし、選別作業の場へと足を向けた。
 アレテスが陣頭に立って指揮、差配している。アレテスが場の者たちに声をかける。
 『おう、今日も期待どうりの漁ができたな』と顔をほこらばせる、場の者たちも笑みをこぼす。
 アレテスが場を見ている二人に気づいた。
 『おう、アレテス、忙しそうだな』
 『あ~っ!統領も一緒に』
 『そうだ。今日の漁は、どうであった?』
 『ここのところ、漁は上々の日が続いています』
 『おう、アレテス!』統領が声をかけた。
 『統領!ようこそ』
 二人の声がけが同時であった。