『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  496

2015-03-30 06:41:08 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アヱネアスはイリオネスの目を見つめた。
 『なあ~、軍団長。この旅の間だがどうだろう。お前と俺、互いに名前で呼び合おう。そのようにしたい』
 『判りました。統領がそのようにしたいと言われるのならばそのようにしましょう。しかしですな、チョッピリ呼びづらい』
 アヱネアスが話を続けた。
 『それから先ほどの艇の名前の事だ。意味合いからいって<ヘルメス>はいい呼び名だ。語呂は慣れてくればそのようになる。決定だ』
 『判りました。一同に伝えます』
 彼はギアスに声をかけた。
 『お~い、ギアス!艇の名前を決めたぞ!<ヘルメス>これでいく!いいな』
 『判りました。一同に伝えます』
 『おう、そうしてくれ』
 ギアスが一同に声をかける。
 『おう、諸君!よく聞けっ!新艇に名前が付いた。<ヘルメス>だ!統領の名づけだ』
 『おう、<ヘルメス>か。これはいい名だ!』
 漕ぎかたの連中は手を休めることなく話し合った。
 <ヘルメス>が南へと方向を転じて1時間半、スオダの浜への入り江口辺りまでに来た。
 『おう、カジテス、これを見ろ!じきにこの地点にさしかかる、ヘルメスが目指すスオダ浜はここだ。ここから入り江へ入って左手の奥だ。距離は約40スタジオン(8キロ)、判ったな』
 『了解しました』
 『入り江のど真ん中を進め!岩礁はない。気を配って操舵しろ!』
 『はいっ!判りました』
 <ヘルメス>は、転進地点に到達して、入り江へと入った。入り江の海には風がない。穏やかである、ヘルメスは海面を泡立てて進む。30分余り、西方向へと進んだ。浜に立って手を振る人影を見とめた。
 『統領、あ~、アヱネアス、スオダの浜です。手を振る者の姿が見えます』
 アヱネアスが立ちあがる、二人は手を振って応える。顔の輪郭が見えてくる。スダヌスである。時を要せず<ヘルメス>は、スダヌスのいる浜に乗り上げた。
 スダヌスが駆け寄ってくる、艇から降り立つアヱネアスとイリオネス、三人は顔を合わせた。
 『ようこそ!統領!スオダの浜へ。お元気そうで何よりです、お待ちいたしておりました。軍団長もようこそおいで下さった。大歓迎です。さあ~さ、こちらへ』と声をかけて、彼らが乗ってきた新艇を眺めた。
 『おう、ギアス、ご苦労。新しい船ではないか。船を浜へあげたら、一同をつれて浜小屋の方へ来い!いいな』
 スダヌスは、一拍をおいて話を継いだ。
 『それにしても真っ新のカッコイイ船ではないか。あとから船の話を聞かせてくれ。歓迎の昼飯を皆で食べる。いいな!』
 『ありがとうございます』
 『待っているぞ!』