アヱネアスは、父アンキセスとの対話の時を持った。アンキセスの日々の苦言を耳にしているアカテスを同席させた。
『父上、ちょっと話したい。いいかな?』
『おう、何だ?』
『明日から5~6日の予定でイデー山に出かける。イデー山の登頂とゼウスの神殿に詣でる。父上、貴方の心の内を聞いておきたい。いいかな』
アヱネアスが父に話しかけた。
『それはいいことだ。クレタに着いた時から、お前がそれを言いだすのを待っていた。俺としては大歓迎だ。何も気にせずに、おおらかな気持ちで行ってくることだ』
そのように言ったかと思うと続けて口を開いた。
彼は、このクレタにおいて、日々を過ごす中での募る思いを口にした、トロイをあのようにした者どもへ復讐せよと言う。また、、我々が寄る辺の地とするところが西にあると言う。父がトロイ時代には、一軍を統べる将であった。その思考領域から脱し切れていない考えを口にした。そうかと思うとこうも言う、俺の終の住むところへ行きたいと。アヱネアスは父の言うところを咀嚼して腹に収めた。
アカテスがアヱネアスに声をかけた。
『統領、貴方の好きなようにされることが一番です。二番はありません』
父はこの対話で思いの丈のありったけを語った。
『息子よ。ゼウスの想いを質してくるのだ。ゼウスを我が家の人と思って対峙せよ。以上だ』
対話を終えるひと言であった。
アヱネアスは、宿舎を出てイリオネスの宿舎に足を向けた。
『おう、イリオネス、何をしている?』
『あっ、統領、どうされました?いま、山行に同道するクリテスから話を聞いているところです。彼はこれまでに二度ゼウスの神殿に足を運んだといっています。イデー山の山頂には一度だけ登ったとも言っています。これを聞いて、イデーの山は、我々にとって不明の地ではなくなりました。安心の山行です。やはり上陸地点は、パノルモスだといっています。安心してください』
『ほう、それはよかった、安心の山行になる。今日は、朝から父と話し合った。父の思いを俺なりに聞きとめた。まあ~、気を負わずに行って来よう。デロスの神殿に行った時のような緊張もなければ、気負いもない、己の先祖に会いに行くような気持ちだ』
『それはいいですね。楽しい山行の旅としていただければ幸いです』
『イリオネス、気軽に行って来よう』
イリオネスは、アヱネアスが座をとった前にカップをおいてぶどう酒を注いだ。
『どうぞ、渇きをいやしてください』
『おう、クリテス、話はどこまでだった?統領もおられる話を続けてくれ』
アヱネアスとイリオネスは、クリテスの話に耳を傾けた。半刻くらい話が続いた。イデー山頂上に到る道中の風景についてもクリテスは話した。
『たどたどしい話しぶりでした。解られたでしょうか』
『おう、解った。ありがとう。明日、山行の旅に出発する。お前の父の案内で行く。クリテス、お前もつれていく。以上だ』
イリオネスは、クリテスに同道を指示した。
『父上、ちょっと話したい。いいかな?』
『おう、何だ?』
『明日から5~6日の予定でイデー山に出かける。イデー山の登頂とゼウスの神殿に詣でる。父上、貴方の心の内を聞いておきたい。いいかな』
アヱネアスが父に話しかけた。
『それはいいことだ。クレタに着いた時から、お前がそれを言いだすのを待っていた。俺としては大歓迎だ。何も気にせずに、おおらかな気持ちで行ってくることだ』
そのように言ったかと思うと続けて口を開いた。
彼は、このクレタにおいて、日々を過ごす中での募る思いを口にした、トロイをあのようにした者どもへ復讐せよと言う。また、、我々が寄る辺の地とするところが西にあると言う。父がトロイ時代には、一軍を統べる将であった。その思考領域から脱し切れていない考えを口にした。そうかと思うとこうも言う、俺の終の住むところへ行きたいと。アヱネアスは父の言うところを咀嚼して腹に収めた。
アカテスがアヱネアスに声をかけた。
『統領、貴方の好きなようにされることが一番です。二番はありません』
父はこの対話で思いの丈のありったけを語った。
『息子よ。ゼウスの想いを質してくるのだ。ゼウスを我が家の人と思って対峙せよ。以上だ』
対話を終えるひと言であった。
アヱネアスは、宿舎を出てイリオネスの宿舎に足を向けた。
『おう、イリオネス、何をしている?』
『あっ、統領、どうされました?いま、山行に同道するクリテスから話を聞いているところです。彼はこれまでに二度ゼウスの神殿に足を運んだといっています。イデー山の山頂には一度だけ登ったとも言っています。これを聞いて、イデーの山は、我々にとって不明の地ではなくなりました。安心の山行です。やはり上陸地点は、パノルモスだといっています。安心してください』
『ほう、それはよかった、安心の山行になる。今日は、朝から父と話し合った。父の思いを俺なりに聞きとめた。まあ~、気を負わずに行って来よう。デロスの神殿に行った時のような緊張もなければ、気負いもない、己の先祖に会いに行くような気持ちだ』
『それはいいですね。楽しい山行の旅としていただければ幸いです』
『イリオネス、気軽に行って来よう』
イリオネスは、アヱネアスが座をとった前にカップをおいてぶどう酒を注いだ。
『どうぞ、渇きをいやしてください』
『おう、クリテス、話はどこまでだった?統領もおられる話を続けてくれ』
アヱネアスとイリオネスは、クリテスの話に耳を傾けた。半刻くらい話が続いた。イデー山頂上に到る道中の風景についてもクリテスは話した。
『たどたどしい話しぶりでした。解られたでしょうか』
『おう、解った。ありがとう。明日、山行の旅に出発する。お前の父の案内で行く。クリテス、お前もつれていく。以上だ』
イリオネスは、クリテスに同道を指示した。