『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  490

2015-03-20 08:17:42 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アヱネアスは、父アンキセスとの対話の時を持った。アンキセスの日々の苦言を耳にしているアカテスを同席させた。
 『父上、ちょっと話したい。いいかな?』
 『おう、何だ?』
 『明日から5~6日の予定でイデー山に出かける。イデー山の登頂とゼウスの神殿に詣でる。父上、貴方の心の内を聞いておきたい。いいかな』
 アヱネアスが父に話しかけた。
 『それはいいことだ。クレタに着いた時から、お前がそれを言いだすのを待っていた。俺としては大歓迎だ。何も気にせずに、おおらかな気持ちで行ってくることだ』
 そのように言ったかと思うと続けて口を開いた。
 彼は、このクレタにおいて、日々を過ごす中での募る思いを口にした、トロイをあのようにした者どもへ復讐せよと言う。また、、我々が寄る辺の地とするところが西にあると言う。父がトロイ時代には、一軍を統べる将であった。その思考領域から脱し切れていない考えを口にした。そうかと思うとこうも言う、俺の終の住むところへ行きたいと。アヱネアスは父の言うところを咀嚼して腹に収めた。
 アカテスがアヱネアスに声をかけた。
 『統領、貴方の好きなようにされることが一番です。二番はありません』
 父はこの対話で思いの丈のありったけを語った。
 『息子よ。ゼウスの想いを質してくるのだ。ゼウスを我が家の人と思って対峙せよ。以上だ』
 対話を終えるひと言であった。
 アヱネアスは、宿舎を出てイリオネスの宿舎に足を向けた。
 『おう、イリオネス、何をしている?』
 『あっ、統領、どうされました?いま、山行に同道するクリテスから話を聞いているところです。彼はこれまでに二度ゼウスの神殿に足を運んだといっています。イデー山の山頂には一度だけ登ったとも言っています。これを聞いて、イデーの山は、我々にとって不明の地ではなくなりました。安心の山行です。やはり上陸地点は、パノルモスだといっています。安心してください』
 『ほう、それはよかった、安心の山行になる。今日は、朝から父と話し合った。父の思いを俺なりに聞きとめた。まあ~、気を負わずに行って来よう。デロスの神殿に行った時のような緊張もなければ、気負いもない、己の先祖に会いに行くような気持ちだ』
 『それはいいですね。楽しい山行の旅としていただければ幸いです』
 『イリオネス、気軽に行って来よう』
 イリオネスは、アヱネアスが座をとった前にカップをおいてぶどう酒を注いだ。
 『どうぞ、渇きをいやしてください』
 『おう、クリテス、話はどこまでだった?統領もおられる話を続けてくれ』
 アヱネアスとイリオネスは、クリテスの話に耳を傾けた。半刻くらい話が続いた。イデー山頂上に到る道中の風景についてもクリテスは話した。
 『たどたどしい話しぶりでした。解られたでしょうか』
 『おう、解った。ありがとう。明日、山行の旅に出発する。お前の父の案内で行く。クリテス、お前もつれていく。以上だ』
 イリオネスは、クリテスに同道を指示した。