『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  671

2015-12-07 05:12:02 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『解りました。そのように伝えます』
 『価格を決める、このクレタの市場と言いますか、商品のやり取り、取引きの環境、条件等を列挙、解析して事に当たっています』
 『解りました。いい新艇を届ける、買い主がいい買い物をしたと感謝するような値決めをやりたいものです』
 『そうですね。言われる通りです。オロンテス殿、価格決めのスタンスが決まりましたね。宜しくお願いします』
 二人の打ち合わせが終わった。
 『では、オロンテス殿、そういうことでーーー』
 『解りました』
 二人はそれぞれの持ち場へと戻っていく。
 『おう、ギアス。ど~っと、疲れが来た。売り場に帰って、しばし、休憩だ』
 二人は売り場に戻って来た。二人は落ち着いて言葉を交わした。
 『オロンテス隊長、ご苦労様でした。試乗会の事ですが、あれでよかったのでしょうか?』
 『おう、あれで十分だ。お前はよくやった。我々が真剣に考えてカタチにした新しい技術だ。誇りを持って相手に正しく伝える。それでいい。その技術を伝えるのに虚飾は必要としない。事実を正しく伝える、それでいいのだ。過剰な期待を抱かせるのはよくない。俺はそのように努めている』
 『解りました。勉強になりました。今日より明日、進歩に努力します』
 『お前、いいこと言うじゃないか、それでいい』
 二人は微笑を交わした。
 『おい、ギアス。こんな話を二人で交わすと疲れを忘れる』
 ギアスは、オロンテスに声をかけて船だまりへとパン売り場をあとにした。
 パン売り場には、客が絶え間なく訪れている、パンを渡す、常連の客が売り場のスタッフに親しみを込めた言葉をかけて去っていく、ほほえましい風景がそこにあった。
 オロンテスは、明日の堅パンを引き渡す手順を思い描いた。
 手ぬかりはない、段取りは出来ている、その風景がまぶたの裏に浮かぶ、150箱に及ぶ堅パンの箱の山、艇への荷積み、道中の無事、テカリオンの船に荷渡す風景、双方の満足、受け取る代価、用事次第を終えて手を握り合う、耳朶に響く交わす言葉までもが鮮明にイメージできた。オロンテスの表情が明るく輝く、しばしの瞑目に描いた明日の光景であった。
 彼は、売り場を見廻した。今日の終わりが来ていた。スタッフの報告を受ける、立ちあがる、一同の前に立つ、仕事の終了を告げた。
 『今日は何かと多忙であった。一同、よくやってくれた。礼を言うぞ!ありがとう。明日も忙しい、テカリオン方に堅パン150箱の納品を行う。よろしく頼む。以上だ』
 『うお~っ!』
 一声叫んで一同は、帰途に就いた。