『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  683

2015-12-24 05:04:26 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 昼食会は和やかに進んでいる。雑談が肴になっている。
 雑な談義がネクストへのステップになることもある。彼らは雑談をおろそかにすることはなかった。雑談が彼らに気づかせる万象を大切にした。
 オロンテスが座をはずす、パン工房へ堅パンを詰めた箱を取りに向かった。
 一同は堅パンの詰まった箱を改めて目にした。
 アヱネアスが口を開く。
 『おう、オロンテス、それが堅パンを詰めた箱か。ほどいい大きさではないか、蓋をとって見せてくれ。なかなか気の利いた造りではないか。簡単構造でありながら使用用途に適した造りではないか。この箱に堅パンをどれだけ入れるのかな?』
 『はい、堅パン60枚です』
 『そうか60枚か、いい枚数ではないか。40~50ではちと少ない感じがする、そうと言って80~100では多すぎる感じがする。60とはいい数だな』
 『60という数字に関して統領もそのように思われますか。テカリオンもそのように言っていました。それで、セレストスにどうして60枚入りにしたのかと質したわけです』
 『ほ~う、どのような返事が返ってきた?』
 『箱を作るときに準備した用材のサイズも関係したのですが、仮り箱を作って堅パンを入れてみて、60枚入れた箱の大きさが、タテ、ヨコ、タカサの均整の取れた、扱いやすい大きさ、用材の量、限られた時間内に作れる箱数も関係したのです。そして、出来たのが堅パン60枚入りの箱だったというわけです。ところが60という数字が、いかに便利な数字であるかがセレストスの説明で解りました』
 『何っ!?60が便利な数字だと?』
 オロンテスは、『60』という数字について説明し始めた。
 『『60』という数字は、物の分配に関してとてつもなく便利な数字なのですな。1から100までの数字の中で、約数、物の分配に関して割る数が1番多い部類に入る数なのです。約数の多い数は、60と90の二つだけなのです。それで60が最適ということで60にしたということです。私は『ほっほう!』と感心しましたね。そういうわけです』
 『ほう、『60』という数はそのような数か、目からウロコだな』
 一同は、オロンテスの話に感心した。
 イリオネスは何かを思い出していた。彼は、この『60』という数字を過去に使ったことを思い出していた。
 『そうだ。トロイ時代に、この『60』という数字を使ったことがある』
 彼は、トロイにおいて役務の関係でこの『60』という数字を使った。アンキセス(アヱネアスの父)に従って、金鉱、銀鉱の採掘業務に携わっていたとき、採鉱作業、選鉱施設の設計に使った数字である。その時、アンキセスが話してくれた。
 『イリオネス、この『60』という数字はだな、ものを分けるとき、物事をするとき、何かを造ったりするときに使う便利な数字なのだ。『60』という数字はだな、約数が多いのだ。2から3、4、5、6、10、12、15、20、30まで10個もある。いろんな事に使える。これを使って、作業、設計、分配と仕事をやるのだ』ということであった。