『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  685

2015-12-27 08:23:06 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 イリオネスは、遠くに去ったトロイ時代の事を思い出していた。
 『ほう、『60』とは、その様に便利な数字であったのか』
 アヱネアスがうなづく。雑談が肴の昼食会が終わった。各自が担当の役務に戻っていった。
 オキテスが声をかける。
 『オロンテス、明朝は一緒だな。よろしくな』
 オキテスは声をかけて、新艇建造の場へと足を向けた。

 ニューキドニアの朝が明ける。
 西風が強く吹いている、久しぶりの荒れ気味の天候である。
 海は荒れている。海底の砂をまきあげて濁っていた。ギアスとオロンテスが肩を並べて海を見つめている。
 『おう、ギアス、この風はどうだ?強さが増すか、小康するか、どちらだと考えている?』
 ギアスが空を見つめながらオロンテスに答える。
 『オロンテス隊長、雨の心配はありません。キドニア行きは大丈夫です。出航時間を少々遅らせましょう』
 一拍の間をおいてギアスがオロンテスに話しかける。
 『ヘルメスに積む荷物には、飛沫に対する覆いをお願いします』
 『おう、心得た!』
 オキテスが来る。心配りの表情をしてギアスに話しかける。
 『おう、ギアス、海が結構荒れているな。出航の方は大丈夫か?』
 『はい!隊長、これくらいでしたら大丈夫です。少しばかり出航時間を遅らせています。オロンテス隊長とは打ち合わせ済みです』
 『判った』
 彼らは波立つ海に身を浸して、朝行事を済ませた。アヱネアスも来る、イリオネスも荒ぶる海で朝行事を終え、心配顔で出航作業のヘルメスを見つめる。
 イリオネスは、言葉をかけようか、かけないでおこうかと迷った風情で目を向けている。彼らから返る答えが解るだけに迷った。
 『気を付けていって来い!』としか声がけができない、彼は躊躇せずにその言葉を彼らにかけた。
 『ギアス、くれぐれも言っておく、危ないと感じたら戻るか、至近の浜へつけて難から逃れろ!いいな!』
 『はい!解りました。では、行ってきます』
 ヘルメスは強い西風に押されて波を割って進む、帆張りは3分の2くらいにとどめている、沿岸から遠く離れず、安全航行でキドニアを目指す、飛沫に気を配って操船した。船だまりが見えてくる、ヘルメスは難なくキドニアに着いた。
 オキテスとオロンテスが艇上の者たちをねぎらった。
 『おう、オロンテス、今日の会議は、昼からであったな。俺はスダヌスのところへ行ってくる』
 『判った。昼めしは一緒だ。打ち合わせをしておこう』
 『おう、スダヌスとの話は、統領の件だ。初めから統領がキドニアに来るということで話を進める』
 『おう、それでいい!了解した』
 オキテスは、スダヌスの売り場へ、オロンテスは、パン売り場へと足を向けた。
 パン売り場では、客が待ちかねていた。