『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  676

2015-12-14 05:34:56 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『5日後だ』
 『判りました。日時に余裕がありますね』
 『そういうことだ』
 『心得ました』
 用件を伝えたオロンテスは、歩を返して去っていく、ギアスはその背中を見送った。
 オロンテスの頭の中は、新艇の価格の事であふれている。価格設定に何を条件とすべきかを脳漿を搾って考えている。思考が彷徨する、条件が浮かんでは消えていく。
 『条件の取捨選択か』成果の達成遂行が絶対とする価格設定でなければ意味がない。価格を決める。価格の決定がすんなりと決まるか、もめるにもめて決まるか、条件の設定が要である。
 オキテスにはオキテスが決める条件があるであろう。アヱネアスにも、イリオネスにも、パリヌルスにも彼らの条件があるであろう。条件設定の統一ありきと価格設定作業の手順を決めた。
 今は先が見えてはいない、作業を進めていく過程で順次明らかになるであろう。何としても譲れない条件設定と意思統一でこの作業と取り組むべきと心した。オロンテスは、心中にもやっとしている霧を吹き払った。
 売り場に戻り着くころには、思考の険しい雰囲気から己を解き放ち、日常の平静さを取り戻していた。彼は、忘れてはいかんとばかりに、木板と木炭を手にして思い浮かべた諸事を書き付け、安堵して、打ち合わせ会議の段取りを考えた。
 頭の中にすさぶ嵐、木板に書き付ける条件設定のリスト、何を利としての条件かを明確にするように心がけて、木炭を木板の上に走らせた。
 売り場は、昼直前の時間帯を迎えて、多忙状態である、オロンテスも売り場に立って客の応対ををする、無心で客に接するこの時間が好きであった。客と話す話題はいろいろである。オロンテスの話し上手に頷いている客、話の中に堅パンの話が出てくる、身構えるオロンテス、考えを語る、思いつくままを客に伝える、『いいでしょう。日頃の感謝に、試食会と特価提供をやりましょう。その節には、是非来てください』『おう、いいね!いつやる?』『3日後でどうです』『判った、必ず来る』と答えて客は去っていく、『お待ちしています』と背中に声をかけた。
 彼は、漠然とではあるが、堅パンの今後の方針を決めていた。堅パンのカタチと大きさ、そして、調味と食感について考え、決定の一歩手前に到達していたのである。
 多忙の時間帯が終わった。売り場に落ち着きが戻ってきていた。オロンテスの売り場チエックタイムである。彼は売りさばけたパンの個数をチエックした。スタッフ連に声をかける。
 『今日はちょっと残数が多いな。午後の客対応はススメ上手で客に接すること、いいな!』
 『判りました』
 『我々も昼としよう』
 一同は昼食タイムとした。
 『おう、お前たちも考えてくれ。堅パンの事だ。テカリオンに納品した残りがある。お客様に感謝デイと行こう。その催しについて考えてくれ』