『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  675 

2015-12-12 05:59:15 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 ニューキドニアに帰って来たセレストスは、イリオネス軍団長に事の次第を報告し、オロンテスから預かって来た木札を渡して、プロジエクト始終を終えた。
 『おう、セレストス、ご苦労であった。お前ら奮闘したな、大変だったろう。一言半句のねぎらいだが、統領と俺の感謝の気持ちの大きさを察してくれ。本当にご苦労であった。この木札を見れば、やった仕事の大きさが察しられる』
 セレストスは軍団長の感謝の意を受け取った。
 
 パン売り場に戻ったオロンテスは、堅パンプロジエクトの終了感に浸っていた。想い描いていたゴールを難なく突き切って決着した。安堵感を抱いた。
 彼は担いでいた肩の荷を下ろした。疲労感はない、自分の立ち位置が自覚できた。自分を突き動かす意識であり、その認識であった。
 『ネクスト!それは?』であった。『次は新艇5艇の完売か。これはちと手に余るな』首をかしげる、知恵か、度胸か、売る技倆か、我々が持っていない何かがある、彼は、それがなんであるかを思案した。
 『その何かをスダヌスが持っている。ハニタスが持っている。そして、この集散所が持っている』彼はその解析の必要を痛切に感じた。それは、今の我々ではどうにもならないことであることは自覚できた。
 これを避けて、事の成就は出来ないのではと、スタートラインに立った彼の考えの及ぶところであった。
 売り場にハニタスが姿を見せた。
 『お~お、オロンテス殿』
 『あ~っ!ハニタス殿』
 『いかがされていますかな?』
 『何か?私に用事でも』
 『オロンテス殿、価格決め会議の日を決めました』
 『ほう、いつでしょう?』
 『明後日、昼からと決めました』
 『判りました。オキテスにもそのことを私から伝えます』
 『お願いします。スダヌス浜頭にも連絡してきます』
 『お世話様です』
 『あっ!そうそう、試乗会の申し込みがありました。伝えておきます。5日後ですケラマキの漁業関係者たちです。いいですかな』
 『いいですとも、喜んで、準備して待ちます』
 『宜しく願います』と言い残して、ハニタスは、スダヌスの売り場へと足を運んでいった。
 一事を終えて、次の仕事へのスタートラインに立ったオロンテスにキックオフの時が訪れた。彼は立ちあがる、売り場を見廻す、スタッフ連の客対応、動きを見る、組織の中の己のポジションを意識する、蹴る!蹴るものは、それは考えられる諸々の事案である。 彼は蹴るものとその方向を決めた。心の中のトリガーに指をかけた、引いた。
 彼は、売り場のスタッフの一人に声をかけた。
 『おう、船だまりまで出かけてくる』オロンテスは歩き始めた。
 船だまりの埠頭に立った。テカリオンの船の姿はない、思わず沖に目をやる、船影を探す、身当たるはずのないものを探し求めた。
 係留している船に目を移した。ヘルメスに目を止める、彼に呼びかける声を耳にした。声のする方向に目をやる。
 『おう、ギアス、試乗会の予約が入った』
 『ほう、それは、いつです?』