『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  768

2016-04-27 04:53:23 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 パリヌルスの発案によって作成された仕様書きと彼が描く新艇の姿形図で『新艇とはいかなる船なのか』が理解できる、それは意義のある資料であった。クレタにおいてそれは、この種の事業では初めての資料であったのである。
 パリヌルスは、出来上がった仕様書きを見て、内心で想った。
 『これで目指す、新艇5艇、早期完売の目標達成はなる』と確信した。
 新艇5艇の同時完成、仕様書きの作成でもって、過ぎ去ったクレタの造船事業の繁栄期においてなされなかった、画期的造船手法による新艇の建造、画期的販売方法で販売するべく、この種の市場に参入していこうとしている。彼らの気概が感じられた。
 彼が作成した仕様書きは下記のごとくであった。
 
      *新艇の仕様諸元
 
   新艇 全長  40キュビット     帆柱数  2本
      全幅  41/2キュビット    帆柱高さ 20キュビット
      艇深さ 31/3キュビット  帆枚数  4枚
      漕ぎ座数 左10座       乗員数  35人
           右10座       積載量  乗員数に準ずる
      櫂長さ  8キュビット     艇首部  甲板構造
      舵櫂   1本         艇全体  下甲板構造

 『おう、オキテス、朝めしの場で言っていた新艇チエックの要件とは何だ?』
 『ドックス、お前から、パリヌルス隊長に説明してくれ』
 『判りました』
 『パリヌルス、お前に相談しようということだ。難しいことだ。簡単なことなら、俺とドックスの知恵で事足りる』
 『おいおい、オキテス、持ち上げるのはよせ』
 『ドックス、仕様書きが書けたのか』
 『え~え、書き終わりました。相談事について説明いたします』
 『おう、話してくれ』
 『新艇が航走していくうえで外から受ける力に充分に耐えれるように造られています。しかし船としての直進性、いわゆる、横ブレに対する対応性が充分であるか、使用していくうえで、取り扱いに対する耐久性が充分であるかが懸念されることです。これについてどうするか、今のままで充分なのか、それが相談する要点です』
 『解った、艇が走行していくときに発生する横ブレに対して、新艇の現状では、その性能面で、少々心もとなく感じられるということか、また、新艇を日常、使用していくうえで現状の船底構造では、長い年月の使用に耐えられるかどうかという懸念か、ドックス、この2点だな』
 『はい、そうです』
 『新艇は、入念な部材設計と構造設計で造られているというものの、永年使用という考えに対応した充分設計がなされているのかということだな。ドックス』
 『はい、そうです』