『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

プロローグ   2-1

2007-03-05 09:40:30 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 <木馬の計>で、よく知られているトロイ戦争が開戦にいたった原因は、何であったか。歴史家たちの意見はまちまちである。
 神話によれば、その頃のギリシア人たちが、神としてあがめていた<大神ゼウス>の出来心とゼウスを取り巻く女神たちの美人コンテストの結果によるとされている。その結果のとどのつまりが、トロイ城市を治めていたプリアモス王の第2王子パリスの所業である。ギリシア、スパルタの領主メネラオスの妻ヘレンを略奪したことが原因とされている。
 そのトロイ戦争は、いつの時代の出来事であったか、これが現在に至るもはっきりしていないのである。ギリシアのヘロドトスなる人物の言い分では、紀元前1250年ごろと言っている。また、エラストネスの言によれば、紀元前1184年と、言いきったところに、その自信の程がうかがえるのである。

プロローグ  1-2

2007-03-02 07:44:01 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 初代ホメロスが、見た、感じた、そして、慟哭した。そのときの風景が、情景が、戦士たちの姿が、輝く太陽、蒼空の下、萌える緑の戦野、群青の海を背にして戦う戦士たちの様が、彼を圧倒した。
 そのときから、400年という長い歳月を、時間を途ぎらすことなく、今日まで語りついできた、この物語を活字として残すべく、この地を訪れたのである。
 かっては、人情味豊かな市民が日々を暮らし、そして、他市にくらべて、公正で平和であった廃墟と化しているトロイ城市を、遠くに望見する原野の小高い台地の上に、数えて12代目のホメロスは立っていた。

プロローグ  1-1

2007-03-01 07:32:17 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 西暦紀元前853年2月1日
 春は、まだ極めて浅い。大地の芽吹きには、まだ少し間がある。遠くに望む、イーダ山から吹きおろしてくる風は、彼が身にまとっているチュニカをひるがえして、冷たく肌をさす、だが降り注ぐ陽光は、春を感じさせる暖かさがあった。
 彼は、瞼をとじる、思いを想念に集中した。感情がふつふつとたぎってくる。戦士たちの息使いが、彼の身を包んでくる、心臓の鼓動が、その息使いに同調してくるようだ。
 今をさかのぼる400年前、この地を戦野として、くり広げた凄惨極まりない戦いの風景が、その情景が生き生きと、閉じた瞼に生起してくるではないか、兵士たちの大地を踏みしだく足音、武具の擦れ合う音、干戈を交える斬撃の響き、交錯する怒号と雄叫び、生を失ううめき、噴霧となって飛び散る血、大地をはう暗紅の血流、おびただしい大量の血を吸った大地の息吹きの生臭さを風の中に感じた。