『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第2章  トラキアへ  182

2010-04-03 07:59:14 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 船内、そして、甲板が闘いの緊張に包まれた。
 オキテスは、甲板に上がるや、島に目を向けた。照りつける太陽の下に木々の緑の少ない島の様子がうかがえた。一瞥が終わると、今度は、念入りに注意深く島を見つめた。
 『ルドン、島の見張りの箇所と思われる二つのところから煙が立ち上っている、狼煙だと思うが、湾の浜には人影がない。船の姿もない。どういうことだ。』
 『隊長、敵の読みもしっかりしていますね。今日当たりは、海賊日和ですよ。岬の陰に潜んでいると思われます。』
 『俺の思ったとおりだ。岬を過ぎたら、皆に合図を送れ。襲ってくるぞ。それから、このあたりは岩礁のない海のはずだな。ルドン。』
 『はい、そうです。』
 船は島の沖を沿岸に沿って進んでいる。
 岬の突端を過ぎた。そのとき、海賊船と思われる船2隻が波を蹴って近づいてくるのを発見した。奴らの船足は速い、見る見るうちに近づい来た。乗っている人数は、2隻でほぼ30人くらい、奴らは懸命に漕いでいる。
 奴らが猛っているのが、よく見て取れた。

第2章  トラキアへ  181

2010-04-02 08:34:59 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オキテスの目つきは、鋭く、彼の決意の程をうかがわせた。
 『お~お、皆、集まってくれたか。早速打ち合わせる。皆、いいか。兵の配置について。少々変更する。船倉の方には、兵は20人、隊長はアミクス、そして、5人のうちの一人がつく。甲板には、ルドン、タルトス、そして、4人と兵が25人、この配置で敵と闘う。闘いの状況によっては、船倉の兵を応援に加えて敵と闘う。敵と刃を交えるについての注意事項を伝える。船倉の方だが、天井の高さと梁の問題がある。船倉の兵たちには投槍用の短い槍を使って、突く方法で闘うように、また、剣は横に薙ぐ、突くだ。上段から叩き斬るはしないように注意を与えておいてくれ。アミクス、判ったな。甲板の者たちには、存分に力を発揮して敵を倒せと伝えてくれ。俺もルドンも甲板で闘う。皆頼むぞ。タルトス、皆に、ためらうことなくやれと叱咤するのだ。判ったか。敵は、命がけで一斉に攻めてくるぞ。皆、判ったな。直ぐ配置についてくれ。サモトラケの湾には入らない。岬の先を西へ突っ切る。以上だ。質問はないな。』
 打ち合わせを終えた。
 『隊長、あと一時間くらいで、岬の先を通過します。』
 『判った。ルドン、配置につけ。甲板に上がるぞ!』

第2章  トラキアへ  180

2010-04-01 07:45:46 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 パリヌルスが使用を薦めた軍船を改造した交易船は、とてもよく出来ていた。
 船体の大きさは、全長が約26メートル、船幅が5メートル弱と軍船よりやや広めである。帆柱の高さが船底から18メートル弱で立ち上がり横長の帆を張っていた。船首には強靭な衝角がついているところが軍船構造であった。この時代の交易船には衝角構造がなかった。荷を積む関係上、天井はやや低めの2メートル強の高さで船倉構造の甲板構造であった。船倉の両側には20の櫂座があった。船倉構造は重心が高めとなるのだが、船のメタセンタ(浮力の作用線と平衡の位置の浮力の作用線の交点)の上に重心が位置する構造ではなかった。また、船尾には、引き綱一本で開帆、折りたたむことの出来る、補助三角帆が取り付けられていた。故に安定した航走能力を持った船といえた。
 太陽は、まだ朝のうちといえる高みにあった。船は、島の形がほぼ掴むことのできる地点を進んでいる。島に近づく、オキテスの頭中の作戦がまとまってきていた。彼はためらうことなくルドンを呼び寄せた。
 『ルドン、兵たちを配置したか。俺の考えが少々変わった。船倉の兵数を20人とする。。残った兵は、全て甲板に配置だ。いいな。アミクス、タルトス、そして、5人を急ぎ集めてくれ。闘いの注意事項を打ち合わせる。』