『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第2章  トラキアへ  257

2010-07-19 07:17:34 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 次に案内役のキノンが声をかけた。
 『皆さんに気をつけていただきたいことを申し上げておきます。この草原のところどころにある樹木の群生の中に入るときは、充分に気をつけてください。蛇がいます。毒蛇ではありませんが、皆さんの手首くらいの太さの蛇です。噛みつかれると、その箇所を中心にぼんぼんに腫れあがります。薬を使っても10日間は、その腫れが引きません。奴らは、上から前から後ろから、そして、下からも襲ってきます。私たちは山刀で防ぎますが、イリオネス様ギアス様は剣を使って、身を守ってください。統領、オロンテス様トリタス様は樹木の群生の中には入らないようにしてください。以上ですが』
 『奴らそんなに獰猛なのか。キノン、お前の注意を守る。ありがとう』 とイリオネスが答えた。
 『判った。群生の中には入らない。忠告ありがとう』
 『皆に言っておきます。この蛇、焼いて食べると滅法うまいのですよ。今日の昼に、こいつを2匹くらい調理して食べましょう。私にお任せを』
 『キノン、大丈夫か?』
 トリタスが心配そうに声をかけた。

第2章  トラキアへ  256

2010-07-16 06:55:16 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 一行のいる地点は、砦よりやや高みのところであるらしい。砦が遠くに小さく望まれた。
 『ここから砦が見えるとは、、、』
 砦の向こうには広いエーゲ海が視界の中にあった。一同は、感動のまなこで風景を見ていた。彼らは持参した水でのどを潤した。
 『う~ん!うまいっ!』『うまいっ!』
 一同は、のどを通る水を味わった。トリタスは、アエネアスに話しかけた。
 『統領、この草原は東に向かっては限りがないくらいに広がっています。しかし、北のほうに向かっては限りがあります。私の指差す方向に目を向けてください。あの辺りから、小高い丘、丘陵が東に向かって広がっています。この丘陵が今日、私たちが案内しようとしている樹林帯です。あらゆる樹木が繁茂しているはずです。この樹林帯には、先住の者たちも足を踏み入れていないはずです。統領が目指される樹木があるかどうかは、春の開花期にもこの丘に近づいたことがありませんから判りません』
 『そうか、判った。とにかく、そこを目指そう。皆、いいな』

第2章  トラキアへ  255

2010-07-15 11:13:08 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 一行は、砦資材調達の森を通り抜けることにした。アエネアスにとっては、心に痛みを感じながらの通過であった。
 森を過ぎた辺りから未踏原野のけもの道を歩む、ゆるやかなのぼり斜面がだらだらと続いた。彼らはもくもくと歩を進めている。身体にからみつく、草木のつるを切り払いながら進んだ。
 森を過ぎて小一時間、砦を出発してから三時間くらいの時間が過ぎていた。潅木の茂みをやっとの思いで通り抜けた。その地点からは見渡す限り、視野いっぱいに草原が広がっていた。まばらではあるが草原のところどころに樹木の群生しているところが見受けられる。
 トリタスが一行に声をかけた。
 『一同、足の疲れはどうだ。ここらで一服しよう。キノンお前の考えは、、、』
 一行は、歩を止めた。
 『統領、ひと休みしましょう』
 『おうっ、いいだろう』
 イリオネスとギアスは剣を抜いて草を薙ぎ倒して、一行が休む広さの場を作った。

第2章  トラキアへ  254

2010-07-14 07:25:43 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 あれこれしている間に頭上の星の光は消えていた。
 『そろそろ、陽が昇ります。皆さん、まいりましょう』
 この言葉に一行は、東の方角に顔を向けた。
 『よしっ!出発しよう』
 力のこもったアエネアスの声がした。彼らは砦を後にした。
 歩を進めながら、トリタスが皆に配ったものは、海水をかけて、丹念に干した牛肉であった。古代のビーフジャーキーである。
 『これを噛みしめながら、歩を運びましょう。足の疲れを忘れます』
 一行は、キノンを先頭に明るくなりつつある原野を北に向かった。歩を進めているところは踏みならされていた。潅木の茂みを抜けて、砦建設の木材を伐りだした森が見えてきた。 20000本にちかい木材を切り出した森である。その伐り株の広がっている面積は広い、想像を超える広さであった。面積は70000平方メートルを超える広さである、(21200坪余、甲子園球場グランド5個分に相当する)アエネアスは改めて木材を伐りだした森を眺めた。
 砦建設のみを考え、その資材の調達しか眼中になかった自分たちが自然に与えた、その傷あとが生々しく目に映った。しかし、その所業は、必要な所業であったのだ。

第2章  トラキアへ  253

2010-07-13 07:04:59 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 山野に出向く朝となった。アエネアスら四人は、北門の前でトリタスたちの到着を待っていた。彼らがたたずみながら見上げる薄明の空には、雲ひとつなく、星は消え残っている、陽の出にはまだ少々の間があった。
 彼らは、早い朝の静寂の空気の動きを感じた。トリタスを先頭にして四人の男たちが姿を現した。
 『おはようございます』
 トリタスは、アエネアスら四人の姿を見とめて、朝の挨拶をしながら持参してきた脚絆をイリオネスに手渡した。
 『おうっ!ありがとう』
 彼は、脚絆をアエネアスに渡し、ギアス、オロンテスにも渡した。彼らは、トリタスたちの足ごしらえを見て、すばやく足ごしらえを終えた。
 『統領に、イリオネス様、足ごしらえは出来ましたか。出発の前に紹介します。こちらが案内役のキノン、そして、荷物を背負ってくれている、タキタスとトランです。よろしく』
 これに答えるイリオネスたちは自分で名乗った。
 『私がイリオネス、こちらが皆も知っているアエネアス統領だ』 続いて、
 『私はギアス』
 『私がオロンテス、今日から三日間、貴方たちに一緒します。宜しく』 と挨拶した。

第2章  トラキアへ  252

2010-07-12 08:42:48 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オリーブとアーモンドについて少々触れます。
 オリーブの開花期は、6月頃である。実(み)は、完熟したものを収穫する。収穫は11~12月であり、実を絞ってオリーブ油をとる。
 アーモンドは、7月から1ヶ月半が収穫期なのである。アーモンドの花は桜によく似た花が咲き、開花期は3月から4月である。花柄が短く、桃と見間違えるくらいで淡い桃色の花なのである。実が熟するのは、7~8月頃で、木を揺さぶって、振り落として収穫する。果肉と種子のカラを取り、中の仁(じん)をとりだして食用とする。とても栄養のある食物である。オリーブもアーモンドもアジアの西に位置する地方の山野に自生していた。

 アエネアスらは、このオリーブとアーモンドの自生状況の調査に山野に出向くのである。このアーモンドは、彼らが住んでいたトロイ近辺の山野のいたるところに自生していたのである。
 彼らは、安定した食の確保と物々交換経済の時代にあって、その原資を求めるのに懸命であったのである。

第2章  トラキアへ  251

2010-07-09 07:36:23 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『そこなのだ、トリタス。山行きは、オリーブとアーモンドの自生状態を知りたい。この砦の北から北東にかけての山野がいいのではないかと考えている。トリタスのところの浜衆や集落の者たちが入っていないところがいいと考えている。彼らの入っていないところでは収穫が多くはないと思うが、そこは、我慢のしどころと思っている。そこに気配りをして案内してほしい。湿地帯は避ける。まあ~、そのように考えている。あとは、お前に全てを任せる。このことで、争いごとはごめんだ。付近一帯の住民とは、仲良くやっていきたい。以上だが』
 『そうでしたか。お任せください。このキノンともよく相談して、山野に入りましょう。うちの者たちも遠くへは出かけて行きません。そこは何とかなります。いいでしょう。さきのポリメストルの砦あたりはやめましょう。この砦の北東方面に目標をしぼりましょう』
 『山野の小動物や獣はどうだ。護身用の剣はイリオネスとギアスが携えていく、弓は一本だけ持っていく、それでいいな』
 『それでいいでしょう』
 山行きの細かなところまで話し合った。

第2章  トラキアへ  250

2010-07-08 07:02:42 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『トリタス、どうだな。俺たちの魚料理、口に合うか。このころ、オキテスが指揮して魚とりに出かけるのだ。それも一挙に50人も引き連れて漁に出て行くのだが、大漁は聞いたことがない、なかなか、うまくいかないものだな。浜衆たちや村の者たちから、魚や野菜、牛羊を分けてもらって、賄いができている、感謝、感謝、ありがとう』
 『それは、魚とりは浜衆ですよ。魚も肉もうまく焼けているではありませんか。これならいけますよ。お前どうだ』
 『うまいですね。今日は格別うまいです。調理の手数が細やかです。どれを食べてもうまい!』
 『お~っ!オロンテス』
 『私が調理した魚、食べてくれていますか』
 『お~、食べているいる。なかなかうまく焼いてある、これなら上々だ。うまい!』
 『トリタスさん、お世辞はいけません。少々鼻が高くなった気持ちですよ』
 話は弾んだ。そこにアエネアスが姿を見せた。
 『お~っ!トリタス来ていたのか。山行きの日どりが決まったのか。よしよし』 
 満面に笑みをたたえて話の中に入ってきた。
 『統領、山行きの件、日にちと段取りはイリオネス様に話しました。統領の思いでは、どちらの方面に行かれたいか。それを聞いておければと思っていますが』

第2章  トラキアへ  249

2010-07-07 07:39:30 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『イリオネス様元気でしたか。いい雨でしたね。山行きの日を決めました。私について来ているのが、案内役のキノンです』
 『この雨のあと、また、晴天が続くと思う。山行きの日はいつにした?』
 『三日後の朝立ちで如何がですかな』
 『判った。こちらからは、統領と私、ギアスとオロンテスだが、いいかな』
 『判りました。私どもの方は、私とキノン、それに荷物を担いで一緒に来る者を二人、予定しています。三日間、都合8人の食材と道具です。楽しい山行きにしたいですね』
 『我々も何か手伝いたい。手伝うことがあれば遠慮なく言ってほしい。トリタス、ひとつ聞いておきたい、いいか』
 『何です?』
 『ちょっと、気恥ずかしいのだ。俺は、蛇に滅法弱いのだ。足ごしらえは、どうすればいい』
 『ここら一帯には、猛毒の蛇はいませんが注意するに、こしたことはありません。山に入るときは、脚絆を足に巻きます。4人分は準備してきましょう』
 『それは、うれしい。宜しく頼む』
 『判りました。統領に宜しくお伝えください』
 『判った、統領の喜ばれる顔が見える。トリタス、ありがとう。ささやかだが、昼飯を整えた、一緒に食べよう』
 『いいですね。ご馳走になります』
 部屋に食事の仕度ができた。

第2章  トラキアへ  248

2010-07-06 07:04:10 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアスは、一息入れて話を続けた。
 『ところで、イリオネス、人口調査の件は進んでいるか』
 『はい、我が方については終わりました。近隣については進行中です。』
 『そうか、ならばよい。我々の方だが、あまりにも男の数が多い。問題は、彼らの生理的欲求の問題だ。事件となるようなことが起きねばいいがと懸念している。イリオネス、オロンテス、この件についての気配りをくれぐれも宜しく頼む』
 『判りました』
 『農作物のことに付いて、オロンテスから詳しく話を聞いた。いい具合に育っているそうではないか。喜ばしいことだ。だが、晴天続きで水やりが大変だそうだ。雨がほしい、こればかりは、注文どおりには行かないな』
 『そうですね、近いうちに嵐が来ますよ』
 『嵐とは、穏やかじゃないね』 話し合いは終わった。
 雨と山行きは連絡待ちであった。3日後に雨が来た。雨模様の日が2日続いた。まさに慈雨であった。
 雨上がりの日にトリタスが砦に来た。村の者を一人連れている。イリオネスが彼らを迎えた。
 『お~お、トリタス、よく来た。これへ』 と部屋へ案内した。

 お詫び  昨日の投稿で変換せずをやりました。
      深くお詫びいたします。
      とりで を 砦 に変換しませんでした。