『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  760

2016-04-15 04:34:45 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 審議の場に緊迫感がみなぎっている、イリオネスが改まる、一同と目を合わせる、うなずくアヱネアスと目を合わせた。アヱネアスが決断を示している。
 『一同!』と声をかけて見まわす、
 『決定だ!新艇の販売政策価格を『1520ドラクマ』と決定する。オキテス、今度の販売価格決め話し合いには、この数字でもって決着してくれ。言い添えておくことがある。1520ドラクマ以下に落とすこと、これは認めない。あとはお前に一任だ』
 『解りました』
 『一同、ご苦労であった。では、君らが考えている案件を話してくれ。誰からだ?』
 問いかけるイリオネス、三人が目を合わせる、パリヌルスが手をあげる。
 『パリヌルス、話してくれ』
 パリヌルスは木板に素描していた新艇の姿形図を披露した。
 『これが完成した新艇の姿形です』
 『ほう、これが新艇の姿形か!』と言って、アヱネアスは手に取ってしげしげと素描の絵を見つめた。
 『おう、なかなかいい姿形だな』
 『このように絵にすると、新艇が海上を駆ける姿をイメージできる』とオキテス。
 『これが新艇の完成予想図か。自賛するわけではないが、これはいい!』とイリオネス。
 『この姿は、カッコイイ!毎日、ヘルメスに乗っていて、わかってはいるが、性能は下まわることはないだろうな?』とオロンテス。
 『おう、オロンテス、言ってくれるな、それはない!以上であっても以下はない!』
 『そうか、それは大安心というところだ』
 『オキテスと毎日顔を突き合わせて相談して、いい船に仕上げようと努力している。ところで賛同してもらいたい件は、新艇の仕様を書いたものを作ってはどうかと考えている。新艇の全長に始まり、船幅、漕ぎ座の数、帆柱の高さといった仕様を明示すると、誰もが新艇を理解しやすいと考えている』
 これを聞いたアヱネアスが言葉を発した。
 『おう、パリヌルス、お前の意向にうなずける。イリオネス、どうだ?俺はいいことだと考える。これをやれば、商機が拡大する』
 『そうですね。同感です』と答えて一同に声をかけた。
 『オキテス、オロンテス、お前ら、どう考える?』
 『これは、もろ手をあげて大賛成です』二人が答える。
 『いいだろう!パリヌルス、即、取り掛かってくれ』
 オキテスがパリヌルスに声をかけてくる。
 『おう、パリヌルス、明後日の話し合いに、その資料を持参したい。間に合わされるか?』
 『おう、解った!明日中に出来あがる』
 案件は、即決で決定した。イリオネスが言い足す。
 『パリヌルス、即、実現に骨を折ってくれ』
 『解りました』

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  759

2016-04-14 05:33:14 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 彼らは、木板に書かれた数字を注視した。
 彼らは考える、心を沈めて考える、数字の内容について考える、客がこの数字を聞いて何を考えるかを考える、そして、この新艇を造りし者たちの誇りについても想いを馳せた。
 この数字を見聞きして数字以上の価値ある船であるかを考えた。
 イリオネスが話しかける。
 『俺は、君らの直感を信じている。あれこれ迷わずに自分の直感を信じて3つのうちどれにするかを決めるのだ。お前らの決める数字にとやかく言わない。数字を決めたら、どのようにしたら早期に完売できるかだけを考えるのだ』
 イリオネスは、気合で声をかける、『うっう~ん!』と息を詰めて一同と目を合わせた。
 『おう!腹が減ったな、めしを食べるか、オロンテス、すまんがめしを配ってくれ!数字選定の答えをめしをおえて、午後一番に聴く!』
 一同は昼めしに供されたスペッシャルパンと副菜をぶどう酒で胃に収めた。
 『オロンテスの焼くパン、いつたべてもうまい!』
 アヱネアスが言う、言葉を受けてオロンテスが答える。
 『それは、統領が元気で健康だからです』
 『ほう、そうか。人間は、元気で健康が一番だ!身体が健康でなければ、健全な思考、健全な決断、その結果を得る行動ができないのだ』
 『と言うことは、この3つの数字は健全な数字であると』
 『そうだな』
 『我ら五人が、3つのうちの一つを選ぶ、最も健全な数字であるといえることか』
 彼らは雑談を交わして昼めしを終えた。
 イリオネスが改まる、一同を見まわし声をかける。
 『では、答えを聞く。挙手で答えてもらう!自信と気迫で答えるのだ』
 言葉を継ぐ。
 『1600ドラクマが、いいと思う者、手を挙げてくれ!』
 挙手がない。
 『1430ドラクマは?』
 これにも挙手がない。
 『残るは1520ドラクマだが、これに賛成の者は?』
 聞き手であるイリオネスを除いて四人が手を挙げた。
 『君らが手を挙げた、1520ドラクマだが、その直感理由を聞きたい!』
 『お客に提示しやすい。1430ドラクマでは数字に弾力性が感じられない』
 『ほう、そうか。つぎ、オキテス、お前の理由は?』
 『1600ドラクマではとっつきにくい。なんとなく値切られるような感じがする』
 『オロンテスはどうだ?』
 『集散所の提示価格より価格に出精感があります』
 『そうか。客が新艇を見る、価格を聞く、考える、決断する、この船にしてこの価格、納得する、売れる決断の数字だ』

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  758

2016-04-13 04:33:36 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 イリオネスは、数字に関する説明から、数字に対する感想を述べた。
 『この数字を解析して考えてみた。集散所が我々の建造にかけている原価を過分に含ませているのではないかと考えられる節がある。それは我々に対する配慮ではなかろうかと俺は受け止めている』
 一拍の間を取って話が続く。
 『数字を見て考えてくれ。この数字には、統領が言われる戦略的意向は含まれていないと統領と俺は見ている。数字が目的意向を有していない、また、結果を得るための目標を有した数字なのか。数字がいい結果に導いてくれる数字であるのかを見極めてくれ』と言って三人と目を合わせた。
 『今、我々がここに会同して、我々が望む結果を得る数字をつくる、いいな。結果を得る、何を犠牲にして、その数字をつくりだすかを真剣に考えて、この場において数字を決める!いいな、心して事に当たってくれ』
 一同は、イリオネスの言葉を理解して、木板に書かれた数字に見いった。木板には次のように数字が書かれている。

   *原価計算数字           *集散所提示 新艇販売価格
    建造用材費  500ドラクマ     新艇1艇販売価格
    建造費   4200ドラクマ     1700~1900ドラクマ
    原価合計  4700ドラクマ     集散所取扱手数料
    1艇当たり原価            300ドラクマを含む
           940ドラクマ
 
 一同が真剣に数字を見つめる、言葉を発せず、心を沈めて考えている。
 イリオネスは、また、数字を書き付けた木板を一同の眼前に置いた。
 『君らは、数字を見つめてよく考えたな。よく考えたからと言って、いい結果を招く数字が考え浮かぶわけはない。勘働きだ!正しい直感がいい結果を招く数字を選ぶ。俺が試算して導き出した数字をここに書いてある。数字には適正な利益を含み、いい結果を招く数値を想定した数字である。この中から、これがいいという数字を選んでそれに決める!少々荒っぽいが、それがこの際、有効である』
 イリオネスは、一同とじい~っと目を合わせる。
 『この数字には、統領の戦略的意向が含まれている。選んでくれ!』
 木板には、3つの数字が書き記されている。3つの数字は横に並んでいた。

  *1430ドラクマ  *1520ドラクマ  *1600ドラクマ

 彼らは、3つの数字に注目した。
 『この数字には、集散所の取扱手数料300ドラクマが含まれている』 
 イリオネスは、数字について補足説明をした。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  757

2016-04-12 05:48:37 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 イリオネスは、熱を帯びた語調で話し始めた。
 『昨日だが、オキテスが集散所において話し合った結果を持ち帰った。その前日には、我が方が考える基礎となる原価をオキテスが算出している。それらの数字を勘案して、我らが考える新艇の価格を案として決定する。それをもって、明後日、集散所における話し合いにて新艇価格を決定する。これから決める価格には、統領の考えである価格戦略思考が含まれる。その戦略思考は、この新艇建造にかかわっている者が持ち得ていない思考であり、また、集散所の担当者であろうとも持ち得ていないと考えている。このことについて統領から話していただく。それは他言してはならない意味を持っている。そのことを心して聞くように』と述べて一同を見る。
 彼は言葉を継ぐ。
 『統領、お願いします』
 アヱネアスが一同と目を合わせる。
 『おう、諸君!いま、軍団長が言った、他言してはならない意味を持っている価格決定に関する戦略思考をもって決定する価格は、新艇建造部材の規格統一の上に成りたつ建造合理性にある。これをもって建造作業の簡略化、建造期間の短縮を図り、この新艇がクレタにおいて、この種の船の市場制覇をもくろむ船価を決定する。この種の船の市場の独占を図っていこうと考えている。一同、解るな、理解してくれたな。この戦略思考でもって新艇の価格を決定してくれることを望む』
 イリオネスが答える。
 『統領、解りました。諸君、統領の意向を理解してくれたな。では、価格の審議にはいる』
 イリオネスは、そのように言って数字を書き記した木板を一同の前に置いた。
 『一同、木板に書かれている数字を見てくれ。左側に書かれている数字が、オキテスが一日がかりで算出した新艇の総原価である。その下に書かれているのが俺が算出して書き入れた新艇1艇当たりの原価である。右側に書いてある数字が、昨日、集散所から持ち帰った新艇1艇の売り価格である。当方の数値は、詳しい原価費目に基づいて、算出した数値である。集散所の提示価格には、集散所の取扱手数料が含まれている。その額は、300ドラクマであり、集散所の取扱手数料は、新艇販売価格の約2割くらいと考えられる』

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  756

2016-04-11 05:43:33 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『金勘定に関する我が方の対処方法について、この際、一同に伝えておく。金勘定に対する我が方の姿勢は、その取扱いを正しく認識して対処、実行していく。このたび集散所から受け取るドラクマ銀貨は、一旦、その全額を我が方の手に収納する、そののちに統領の認証を得て支払いとする。オロンテス、解るな。そのように手続して、支払い決済を行う。ガリダ方への決済の件だが、その件を銀貨受け取り時に集散所方に説明して承知してもらうこと。これは我が方の手続き上のこと故に銀貨受け取り時においての差引勘定は行わない。ガリダ方へ支払う、500ドラクマの銀貨は改めて、三日後に持参して集散所方へ支払いする。そのことを集散所方の担当者に話して了解してもらうことだ。オロンテス、そういうことだ』
 『解りました』
 『相手都合も考えられるが、我が方の都合で話をまとめること。このこと、しかと言い渡しておく』
 『了解いたしました』
 イリオネスの考えでは、集散所が我々をどのように見ているかをこのことを通じて考えたい。集散所方が、今の我々をどのように見ているのか、信用してくれているのか、いないのか。イリオネスの本意としては、この件をやり取りと雰囲気をもって知りたい、それが彼の本意であるのだが、彼自身、その場にいないことが念に残ることであった。この件をもっての信用度の状態把握である。
 オロンテスは、イリオネスの意向をくみ取っていた。
 昼が近くなっている、工房の者が彼ら五人の昼めしを整えて届ける、受け取るオロンテス、気づくイリオネス、
 『お~っ!もう、そんな頃合いか。一同どうだ、昼めしにするか?』
 イリオネスは、案件に取り組んでいる場の気合を変えたくはない。場の者たちにもその気がなさそうである。場の空気は、会議をリードしているイリオネスに伝えている。彼は一同と目を合わせて意を通じ合わせる。
 『いま、気合が乗っている。この議案を終えてから昼とする。話し合った案件は、オロンテスへの命令である。本会議の重要案件である新艇販売価格の決定に関する話し合いをする!いいな』
 彼は鋭い眼光を発して、一同と目を合わせた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  755

2016-04-08 09:08:06 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 一同の眼差しが合致する、堅く固まる総員の意志、意志の塊が熱を帯びてくる、灼熱してくる意志の塊。
 イリオネスが言葉を吐く。
 『では!』と一拍の間を取って、一同と目線を交わす。
 『話し合いを始める。今日の会議の案件は、3件、それを終えて君らからの提案について話し合う。いいな』
 イリオネスは、そのように言って、手にしてきた木板を一同の目の前に提示した。
 『はい!解りました』
 三人が答える。
 木板には、話し合う案件が三件書かれている。一番上には新艇価格、二番目に銀貨の受け取り、三番目には新艇建造用材の決済である。
 イリオネスは、案件の説明をする。
 『話し合いは、ここに列挙した案件の順にこだわらない、まず、二番目に書いてある木札の銀貨に交換について一同に話す。我々が事業を通じて、長い日にちをかけて蓄えてきた木札を新艇建造を機にドラクマ銀貨に交換することにした。これについては君らが知っているように、オロンテスが交換交渉に当たり、整理勘定および集散所への搬入には、パリヌルスが責任担当して、その業務は昨日完了した。なお、交換される銀貨の受け取りは、明後日である、オロンテスがこの任に当たる』
 そのようにイリオネスは告げた。話が続く。
 『交換されて受け取る銀貨の総額について説明する。オロンテス担当のパン事業の関連の木札枚数が<63500枚>、アレテス担当の魚事業関連の木札枚数が<87000枚>、木札総数が<150500枚>である。木札とドラクマ銀貨との交換比率は木札100枚に対してドラクマ銀貨1個である。受け取る銀貨の個数が<1505個>である。銀貨1個が2ドラクマであるから、金額にすれば<3010ドラクマ>ということになる』
 ここまで話したイリオネスは、一同の目を見て理解しているかどうかを探った。
 『諸君!解ったかな。こういった金勘定は、君たちは慣れているかとは言えないが、どうだな、理解したか?』
 『はい!解りました。軍団長の丁寧な説明で、よ~く、理解することができました』
 三人が口をそろえて返答する。イリオネスは話を次へと進める。
 『そのようなわけだ。解ったな。そこでだが新艇の建造用材のガリダ方への支払いの決済をしようと考えている』
 そのように言って、イリオネスはアヱネアスの方に顔を向けた。
 『統領、新艇建造用材の決済の件ですが、段取りしてよろしいですか?』
 『おう、いいだろう』
 『この件は、オロンテス、お前に担当してやってもらう。明後日、銀貨受け取りの時に集散所の担当と打ち合わせてくれ』
 彼は、命令としてオロンテスに言い渡した。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  754

2016-04-07 05:42:25 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 日が改まる。
 パリヌルスら三人は、三様の話し合いに関する案件構想のまとめ作業をしている。
 パリヌルスは、まず、木板に新艇の姿を描く、それを終えて、新しい木板に新艇の主要諸元の仕様項目を書き付けた。
 オキテスは、先日、算出した原価を書き付けた木板を眺めて黙考している、彼は、この件に関するアヱネアスとイリオネスの意向を推量した。
 オロンテスは、明後日に受け取る銀貨に想いを馳せる、そのうえで、これからの展開を構想した。
 軍団長の宿舎に集合する時が迫ってくる、彼ら三人にシンクロナスな時が働きかける、三人は、各自がいる場所で立ちあがる、一歩を踏み出す、歩き始める、軍団長の宿舎へと向かった。
 三人がイリオネスの宿舎の前で顔を合わせる、『おう!』『おう!』『おう!』呼応を交わした。
 イリオネスが戸口に姿を見せる、三人に声をかける。
 『おう、三人!そろっているな。今日の会議は、統領の宿舎の前庭だ。いつもの場でやる。行くぞ!』
 四人が歩き出す、薄雲が強い陽射しを和らげている、四人とも数枚の木板を小脇に抱えていた。
 アヱネアスはというと、宿舎の前庭の定位置に腰をおろして、メンバーのそろうのを待っていた。
 『統領、おはようございます。待たれましたか?』
 三人がイリオネスの声掛けに唱和する。
 『おう、おはよう、そうでもない。一同、腰をおろせ』
 アヱネアスは、大きく腕を広げて、一同に座をすすめる、それを見届けて話をつづけた。
 『ここ三~四日の君らの行動について軍団長から報告を受けている。ご苦労!新艇価格決定の件、大詰めにさしかかったと聞いている。また、保管していた大量の木札も整理されて、ドラクマ銀貨に交換されることも聞いている。君らの日頃の心を尽くしての働きに礼を言う。ご苦労とありがとうを重ねて言う!軍団長、話し合いを始めよう。時は人を待たない。議事の順は出来ているな』
 『はい、出来ています』
 イリオネスが答える、アヱネアスと目を合わせてうなずく、続けて、三人と目を合わせて口を開いた。
 『諸君、統領の言葉にあるように、この三~四日、君らは多忙であったな。俺からも礼を言う。ご苦労であった!物事を整え終える、体制を改めて整えてスタートする。そのスタートラインに我々が立っている。目標を定めてスタートしよう。脚下照顧、確かな一歩を前へだ』
 アヱネアスとともに、一同がイリオネスと目を合わせた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  753

2016-04-06 05:36:21 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『おう、オロンテス、俺はだな、新艇の客渡しをだな、集散j所を通してやればいいと考えている。このことについてお前も一考してくれ。集散所に任せていいと思うようになってきている』
 『その件については、俺も考える。お前が集散所をそのように評価しているとはな』
 『ハニタスの仕事の進め具合から見て、そのように評価している。俺らが考える以上の力を持っているように感じている。オロンテス、明日は会議だ。その段取りで頼む』
 『おう、心得た。ではな、俺は工房の方へ行く』
 二人は、ここで別れた。
 浜へ戻ったオキテスは、パリヌルスと話し合う。
 『なあ~、パリヌルス、新艇の価格の件だが、大詰めに来た。三日後には決定する。販売策を考えねばならん。5艇、早期完売のだ』
 『そうだな、それについては、俺なりに構想を練っている。発表するまでには至っていないが、この際だ案をまとめる。試行錯誤は、覚悟の上だ。この仕事は俺たちにとって、初めて体験することだからな。今日、建造の場を見て考えたのだが、新艇が出来あがってきている。進水のことを考えねばならん。建造の進捗もそこまで来ている。それでだな、新艇の仕様諸元をまとめたいと考えている。艇の長さ、艇の幅、深さ、そして、艤装のことなどだ。それが新艇を客に勧めるもとになると考えている。明日の会議でそのことを発表する』
 『おう、それはいい!俺も考える』
 二人は、いろいろと話し合った。
 『パリヌルス、話し込んだな。そろそろ時間だ。俺は建造の場を見まわらないとな』
 オキテスは、座を立って、建造の場へと向かう。パリヌルスは、浜の巡回にと立ちあがった。。彼らの日常のルーチンワークである。
 オキテスはドックスを伴って、丹念に建造の場を見まわる、ドックスに話しかける。
 『ドックス、新艇が出来あがってきているな。パリヌルス隊長と話し合った。彼が言うのでは、この艇の仕様諸元をまとめなければならないといっている。パリヌルス隊長が、その用件で来たら手を貸してやってくれ』
 『承知しました。仕様諸元は、その船をよく理解する目安です。大事なことです。了解しました』
 『ところで訊ねるが、進水のことどのように考えている?』
 『それについては、4~5日くらい後にはやることができると考えています』
 『そうか、新艇の建造もそこまで来たか、感無量だな。ドックス、お前に苦労を掛けているな。俺は、向こう三日間、極めて多忙だ。進水は四日以後に予定してくれ。式次第も考えなくてはならん』
 『解りました。そのようにいたします』

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  752

2016-04-05 05:21:32 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 ハニタスがオロンテスに声をかけてくる。
 『いやあ~、オロンテス殿、木札のことですが、すごく大量でしたな。びっくりしました、驚きました。今日いただいた分と先日分を合算して、明後日、銀貨をお渡しいたします。それでよろしいですね』
 『結構です。よろしく願います。銀貨の受け取りが、明後日ですね、解りました』
 『トミタス、今日の木札の受領証、オロンテス殿に渡してあるな?』
 『はい、お渡ししてあります』
 木札引き渡しの件は終わっている。その件についてのハニタスのクロージングであった。
 
 オキテスとオロンテスは、価格決めの話し合いの結果を持ってニューキドニアの浜に帰った。
 『おう、オロンテス、パリヌルスが浜にいるではないか。丁度いい具合だ。打ち合わせを終えてから軍団長の宿舎の方へ行こう』
 『判った。そうしよう』
 『おう、パリヌルス、今帰ったぞ。今日は、はなはだ、ご苦労であった。用件を済ませたあと、一行に集散所を見学させたのか。彼ら、喜んだろう』
 『あ~あ、彼らにとって、初めての集散所だもんな、その答えは然りだ』
 『ところでだな、向こう三日間のスケジュールだが、びっしりだ!三日後には、新艇価格決めの最終打ち合わせ、明後日は、木札交換の銀貨の受け取り、これはオロンテスの役務だが。そのようなわけだ。そこで明日は、当方の新艇価格決めを統領以下五人でやらねばならん。お前の意向はどうだ?』
 『いいだろう、その段取りでいい。オロンテスの都合は?』
 『オロンテスは、そのつもりでいる』と言って、二人はオロンテスの方に顔を向けた。目を合わせる、オロンテスはうなずいている。
 『これらのこと、軍団長と話してくる。オロンテス行こう』
 オロンテスがパリヌルスに話しかける。
 『おう、パリヌルス、今日は、ご苦労を掛けた。集散所とはすべてうまくいった。安堵してくれ』
 言い終えたオロンテスは、オキテスとともに踵を返して軍団長の宿舎へと向かった。
 『軍団長!ただいま帰りました』
 『おう、ご苦労!中へ入ってくれ』
 『オロンテス、お前の用件を先に済ませてくれ』
 木札の件、交換銀貨の受け取りが明後日であることを報告して、木札の受領証である木板を渡し、今日の結果報告を終えた。続いてオキテスが価格決めの話し合い結果を報告し、イリオネスと彼ら二人は、明日、当方の価格決めの話し合いを開催を要請した。
 『このこと、パリヌルスも知っていることだな、いいだろう。俺の都合もある。昼めしのちょっと前頃から話し合いをやろう。統領には俺から伝える。明日、会議開催、承知!』
 明日の会議開催を決めた二人は、軍団長の宿舎をあとにした。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  751

2016-04-04 05:39:21 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 ハニタスの目を見返すオキテス、彼はここで反問すべきか、どうすべきかを瞬間に考えた。
 ハニタスが口を開く、
 『皆さん、質問をどうぞ。我々の意向をあらゆる角度から評価していただければ幸いです』
 『ハニタス殿、訊ねます。ここにある上限価格ですが、どのように考えられて算出されたのかを説明いただきたい』
 オキテスが訊ねる。
 『はい、その価格は、クレタにおける諸情勢を考えて、原価費目を解析評価しての算出です。販売諸費用、集散所の手数料等も加算して算出した数字です』
 『そうですか、解りました。これを持ち帰って検討したうえで、我々が考えている販売価格を決定の上、次回会議に持参します。それでもって、新艇価格話し合いに臨みます。よろしく願います』
 『解りました。スダヌス浜頭殿はいかがですかな?不可解な点があるようでしたら聞いていただきたい』
 ハニタスは、畳みかけるようなニューアンスでスダヌスに話しかけた。
 『ただいまのオキテス殿への返答、また、話し合い開始のハニタス殿の口上とでよ~くわかりました。私といたしましては、集散所とアヱネアス統領の一統と協力、連携して、いい結果となるようにこの事業が遂行されていくことを心から望んでいます。いい方向に展開していくようにと思っています』
 『解りました。私ども集散所もスダヌス殿が言われたような心情で事に当たっていきます』
 『よくわかりました。ありがとうございます』スダヌスが答える。
 『皆さんいいですかな、木板に書き記した価格は、クレタにおいて、新艇より一回り小さい船でこれくらいの価格で取引されています。新艇5艇の販売に関して妥当な価格設定であると考えています。では、三日後に最終の価格決定話し合いを行います。その話し合いをもって、新艇販売価格を決定します。オキテス殿、販売計画等があるようでしたら、その折に発表していただければ幸いと考えています』
 『解りました。我らなりに諸条件を考慮して販売価格を決めてきます。なお、販売促進策についてはいろいろと考えています。よろしくお願いする次第です』
 オキテスは、この場で 意向を述べた。
 場にいる者たちは、事態が起承から転に移行していることを身に感じていた。