『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1203

2018-01-17 08:28:44 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 イリオネスが一同に話しかける。
 『おう、一同、今日は、朝からご苦労であった。君らの奮闘があって、試乗会の催行を無事に終えることができた、ありがとう。成果については、今のところ明らかではない。が、諸君らの健闘がいい結果に結びつくものと信じている。今夜は、このマリアでの最後の夜を過ごし、明朝、帰途に就く。航海の楽観は禁物である。帰途航海は、長い距離を休まずに漕いでいくことになる。大層な漕ぎの労苦を強いるがよろしく頼む』
 イリオネスは、言葉をきって一同と目を合わせる、話を継ぐ。
 『エドモン、テムノス両浜頭を二人の母港の地に送り、スダヌス浜頭のスオダの港で夜を過ごし、明けて昼までに我らが浜に帰る。以上の行程で明日、明後日を航海する。諸君らの奮闘を願う。よろしく頼む。この行程で帰途航海を無事航走して、明後日の昼食は我らが浜で食べる。以上だ!』
 イリオネスは、再度一同と目を合わせて、彼らの意思確認をする。
 一同からの喊声である。
 『おうっ!』『おうっ!』『おうっ!』と返事が返る。
 イリオネスの意思伝達が終わる。
 頃合いを見計らったように手配をしておいた夕食の食材が届く。
 オキテスがギアスとゴッカスに指示をする、夕食の場が整う、多くではないが酒も準備されている。
 イリオネスらも漕ぎかたらも夕食の場に就く、彼らの夕食が始まる。
 一同が肩の荷を下ろして夕食を楽しむ光景が展開する。
 歓談を交わす、話に花を咲かせる、明日からの航海行程を描いて話題を弾ませる、彼らの食事を楽しむ風景がそこにある。
 一同は、居住地から離れた遠いマリアの地で開催した試乗会を振り返っている。
 陽は沈み、宵がとばりを下ろす、夜は更ける、見あげる星空、漂う早秋の気配、星が冴えた光を振りおろす。
 彼らは来襲する蚊を友として寝につく。
 
 彼らの朝は早かった。天空の星が光を消す前に起きだす、朝行事を行う、ギアス、ゴッカスの指示に従い、艇の出航準備を整える。
 彼ら一同が波打ち際に並んで立つ、イリオネスらの姿もその中にある。
 彼らは、日輪の朝の第一射の届きを心静かに待つ。
 第一射が来た。彼らそれぞれの気持ちで第一射を迎える。その中にあって、イリオネスは帰途航海の無事を強く祈りあげている。
 今日の太陽の第一射を迎え終えた一同は、再び海に身を浸して、帰途に就くはやる心を落ち着けた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1202

2018-01-16 08:26:31 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 彼は頭の中で期待効果を評価した。
 代わってオキテスがギアスとゴッカスに話しかける。
 『おう、ギアスにゴッカス、今日はご苦労であった。ところで明日のことだ。明日は早朝にマリアを出航する、帰途に就く。艇を点検して万全の整備をしてくれ!それを終えたら、先ほど君らに言った集合地点に集合してくれ。軍団長から話がある。そのあと一同で夕食とする。いいな!以上だ』
 『了解しました』
 二人から返事が返る。
 用件を伝え終えたオキテスにイリオネスが声をかける。
 『オキテス、夕食のあとに明日のスケジュールを打ち合わせる。それから、テムノス浜頭の新艇の件をギアスに伝えておいてくれ。スダヌス浜頭、打ち合わせに同席頼みます』
 『了解!』
 イリオネスがスダヌス浜頭とオキテス、二人を前にして話しを続ける。
 『今日を終えた、試乗会を終えた。両人ご苦労でした』
 『軍団長こそ、ご苦労でした』
 『おう、俺をねぎらってくれるのか、ありがとう、礼を言うぞ!試乗会を終えた、反省はない。ことは成ると信じている。俺らは人事を尽くした、謙虚に天啓を待つ。それが今の俺の心境というところだ』
 スdヌスが声をかける。
 『軍団長、天はいい答えを届けると考えられます』
 『そうであってほしい。ところで、明日は漕ぎかたの連中に朝から晩まで漕ぎを強いるわけだが、我々も櫂をとろうと考えている、浜頭には申し訳がないが、力を貸してほしい。そのうえ、明日の夜は、一夜の宿を頼みたいが、引き受けてくれるかな?』
 『はいっ!よろしいですとも、声がかかるのを待っていました。大歓迎です』
 『そのように言ってくれるとは、俺はうれしいかぎりだ。たのんだぞ!』
 言い終えたイリオネスは、安堵の表情で二人と顔を合わせる、喜々とした安堵の表情を湛えて、三人は手を握り合った。
 イリオネスは、片時も離すことなく頭中で今日の諸事を考えている。二人と明日を語り終えて我に返る。
 彼は両目を軽く閉じる、想念が去来する。
 彼は、事がなる不思議の予兆を身に感じた。
 
 二艇の点検と整備が終えた者らが集合地点に集合する。
 イリオネスらが待っている、ギアスとゴッカスが艇の点検整備を終えたことをオキテスに報告する。
 『おう、よし!ご苦労!一同、腰を下ろして休め』
 オキテスがイリオネスに二艇の点検整備と集合したことを伝える。
 イリオネスが明日の帰途航海の予定を伝えるべく一同の前に立った。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1201

2018-01-15 08:29:20 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 一行五人は集散所の詰め所の戸口に立つ、彼らはダントス所長とリドラス担当長と目を合わせる。
 イリオネスがダントス所長に声をかける。
 『ダントス所長、本日は大変世話になりました。私らは明朝、帰途に就きます。戦闘艇の価格の件ですが、キドニアの集散所と話し合い、検討いたします。予定といたしましては、8月15日までには決定の上、キドニアの集散所を通じて当マリアの集散所に連絡いたします。価格の決定は早まることがあっても遅れることはありません。何卒よろしく願います。ありがとうございました』
 イリオネスは、リドラス担当長にも挨拶を終える。
 挨拶をエドモン浜頭にかわる。
 『ダントス所長にリドラス担当長、本日はいろいろとやりました。事は必ずいい成果となります。クランドス浜頭らの風情で解ります。私、そして、テムノス浜頭もそのように感じています。テムノス浜頭と私ですがイリオネス殿の船で明朝帰ります。船に関する用件がありましたら、いつものように駅伝で連絡ください。船に関しての用件を引き受けます。今日はありがとうございました』
 『エドモン浜頭、今日は大変に世話をかけました。ありがとうございました。エドモン浜頭、テムノス浜頭、両浜頭の引き立てで船に関する業務を進展させることができます。今後ともよろしく頼みます。ありがとうございました』
 『解りました。力を貸します』
 『テムノス浜頭、ありがとうございました。今後ともよろしく願います』
 『解りました』
 スダヌス浜頭も丁寧に挨拶をする。
 挨拶を終えた五人は集散所の詰め所を辞して出口で別れる。エドモン浜頭にテムノス浜頭が連れだって行く、イリオネスとオキテスは係留岸壁へと向かう。スダヌスはどちらにしようかと迷ったあげくイリオネスらに同行する。
 係留岸壁における試乗サービスは、最終回の試乗に出ようとしている、イリオネスとスダヌスは戦闘艇に乗る、オキテスはヘルメス艇に乗る。
 二艇はそれぞれの航路で沖へ出ていく、タイミングを見計らって、帆走に移る。
 艇上に歓声があがる、艇の壮快な走りに感動している。彼らは、頭からかぶるしぶきに濡れるがままに艇の走りに身をゆだねている。
 艇が帆走を終えて岸壁へと転進する。ギアスとゴッカスは、試乗の終了を艇上の客に伝えて試乗会を終えた。二人は試乗会の終了をイリオネスに報告する。
 『おう、ご苦労であった。何か変わったことでもあったか?』
 『はい、ありました。第一回目に試乗された方の中に船の引き合いをされる方がいました。それについては、集散所の船の取り扱い担当に話をしてほしい旨を伝えました。ヘルメス艇では一人、戦闘艇では二人です』
 『ほう、そうか。それは重畳!いい話だ。何よりうれしい話だ。ご苦労であった』

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1200

2018-01-12 08:22:32 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 イリオネスのうなずきに目をとめて、テムノス浜頭が話を継いでいく。
 『イリオネス殿、この合理化した建造方法、販売政策で事業を進めていくとしたら、あれこれと傍目をふって建造をせずに中型の船舶に範囲を絞って建造をやっていかれたらどうかとエドモン浜頭と話し合った次第です。私ら二人は、そのように結論を出している。帰られたらこの件を検討してください。事業の方向づけをクレタにおける中型船の市場を掌握する。ここに事業の将来があるように考えられる。また、あなた方が行っている船の建造方法、販売政策は、あなた方以外に誰も為し得ないことだと考えられる。私ら二人は、いい方法でいい政策であると考えている。以上です』
 エドモン浜頭が頭をかしげて納得しようとしているイリオネスの顔をのぞき込む。
 イリオネスが口を開く。
 『テムノス浜頭殿、言われることを充分に理解しました。まだ訪れていない未来を考えるということは難儀なことですね。今、言われたこと重く受けとめています。事業の方針を誤らないように充分に思考を尽くします。ありがとうございます』
 イリオネスが懸念し課題としていた案件の話が終わる。
 このあと五人は、帰途航海の計画と段取りを綿密に打ち合わせる。
 イリオネスはオキテスに話しかける。
 『オキテス、テムノス浜頭方に納入した新艇の件について話をしたか?』
 『いえ、まだです』
 『そうか、返事は、レテムノンに着くまでにもらえばいいということで話してくれ』
 『解りました』
 オキテスはテムノス浜頭に顔を向ける。
 『あの~、テムノス浜頭殿、チョット話したいことがあるのですが、いいでしょうか?』
 『おう、いい!話ってなんだ?聞こうか』
 『浜頭方に納入致しました新艇の件です。新舵の構造効果を試すということで、当方のヘルメス艇に急遽、新舵構造を取り付けました。その結果、具合がとてもいいのです。納入いたしました新艇に新舵構造をと考えています。帰途途中に納入した新艇を預かって帰り、新舵構造を取り付けて届けようと考えています。その間、当方のヘルメス艇を使用してください。レテムノンの港に着くまでにどうするか返事をいただければ幸いです』
 『おう、オキテス殿、そのようにサービスしてくれるのか、解った。考える』
 『テムノス浜頭殿、私を呼ぶのに殿はつけないでください。オキテスと呼んでくだされば結構です』
 『そうか、解った。オキテス』
 イリオネスがエドモン浜頭に声をかける。
 『エドモン浜頭殿、こちら話が終わりました』
 『おう、そうか。イリオネス殿、集散所に挨拶に行こうか。ところで、今、頃合いは何どきですな?』
 『はい、今、午後の中間どきを過ぎたところだと思われます』とスダヌスが答える。
 『丁度、いい頃合いだな。イリオネス殿、行きましょうか』
 『はい、わかりました』
 一行五人は、腰をあげる、連れ立って集散所へと足を向けた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1199

2018-01-11 08:49:26 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オキテスが一同の酒杯に酒を注ぐ、杯を口に運んで喉を潤す、矢継ぎ早やに二杯目を口に運ぶ。
 『おう、うまい!暑さを忘れる!』と声をあげる。
 テムノス浜頭がイリオネスに声をかけてくる。
 『イリオネス殿、心配りがいき届いておりますな、それだけ心の配りをされましたら、事業運営に失敗はありません』
 『テムノス浜頭殿、事業とは不思議な力で作用します。事業を統括する者の心を用心深くさせる、あれこれ気づかいをさせて小さくもします。自分の下した決断を疑い、大胆に決断実行しなければいけないのに、その決断実行を忘れさせもします。反面、無謀な決断実行もさせます。私らが信条としている脚下照顧の戒めを忘れさせます』
 エドモン浜頭が口を開く。
 『ほっほう、イリオネス殿、いいことを言われる。その言葉、薬になりますな』と言って四人と目を合わせる、次の話題にとりかかろうと声をかける。
 『おうおう、ご一同、次の話にとりかかるぞ、いいかな』
 『いいです、次の話に進めてください』
 『これから話すことは、ネクストであり、明日のことだ。明日と言っても明日の明日ではない。極々近い未来の明日のことだ。テムノス浜頭から話しかけられて話し合ったことだ。テムノス浜頭話してくれ』
 『解った。俺から話すと話が窮屈になるかもしれないがよろしいかな』
 『結構です』とイリオネスがすかさず答える。
 テムノス浜頭が四人の目を見る。
 『イリオネス殿、クレタにおける船舶の造船状況、そして、船なるものの売り方を見ての話だ、いいかな』
 テムノス浜頭がイリオネスと顔を合わせる。
 『クレタ島における造船状況についてエドモン浜頭とあれやこれやと話し合った。その結論として、イリオネス殿に、このようにされたらと望むところを話しする』
 『この上ない大事な話だと思います。よろしく願います』
 『新艇または戦闘艇は中型の船ですな。小さな小船は、船大工の手によって造られている。また、大型の船は注文主の発注により、それなりの設備を整えた造船所で建造されている。中型の船を専門に建造する者も受注建造によって造っているわけである。解っていただけるな』
 『はい、解ります』
 『イリオネス殿、あなた方のように船舶の建造を規格を設定して建造のうえ、新しい販売方法で船を売る。現在、あなた方がやっている建造販売の方式で船を造り売っているのは、あなた方だけです』
 『そうですか』
 イリオネスは、テムノス浜頭の話を聞いて力強く顎を引いてうなずいた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1198

2018-01-10 08:26:02 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『テムノス浜頭殿、ありがとうございます。ところでイラクリオンからこのマリアに向かう時に乗っていただいた戦闘艇ですが、妥当と考えられる売り渡し価格は以下ほどが適当と考えられるでしょうか?クレタ島の船舶の価格相場に全く通じていない私らです。考えのほどを聴かせていただければ幸いです。売り渡し価格の設定に反映したいと考えています』
 エドモン浜頭がテムノス浜頭と目を合わせて口を開く。
 『そうですな、難しい質問ですな。船舶の価格相場から考えて、買いやすい価格であることが望ましい。原価計算をしてはいないが、2000ドラクマを超えない価格が望まれる。テムノス浜頭、考えを聞きたいのだが』
 『そうですな―ーー』
 テムノス浜頭が頭をかしげる、口を開く。
 『私の考えを言うと、ズバリ言って、1950ドラクマ以下であることが望ましい。1950ドラクマ以上であれば、それは2000ドラクマだな。買いたい客が妥当と考える価格より、少々でいいから安い価格が購入意思決定に結びつきやすい』
 エドモン浜頭がうなずいて口を開く。
 『そうだな。イリオネス殿、クレタ人は心持ちの優しい民族だ。物を買い求めるについて値切ったりはしない。そのような民族性だ。そのあたりをよ~く考えて値決めすることが肝心といえる。掛け値なし、値決めの良心が肝要と考えられる』
 『よく解りました。ありがとうございます。私らがクレタで営業活動を遂行していくうえでのことですが、クレタ島には五つの集散所があります。営業活動の重きをおいて活動すべき集散所は、どちらの集散所であるかと考えています。これについて、両浜頭の見解を聞かせていただければ幸いです』
 『それについての俺らの考えは、あなた方の居住地に最も近いところのキドニア集散所、そしてもう一つは、今回、船の引き合いをしたマリアの集散所だ。イラクリオンの集散所は忙しすぎて船舶の取り扱いが無理と考えられる。そこは私が話をつけて、マリアの集散所扱いとするようにする。また、ザクロス、フエストスの集散所には、船舶を取り扱う知恵者がいない。キドニアとマリアの集散所での取り扱いが最適である。いかがかな』
 『解りました。それから、船舶の修理改造の事業を考えていますが、どのようにすればいいか迷っている次第です』
 『その件は、船舶を建造に付随したものと考えて、事業とする必要がないと考えられる。それには、来る客を拒まず親切対応で充分と考えられる』
 『ありがとうございます。よく解りました。ちょっと休憩しましょうか』
 イリオネスが一同に声をかけた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1197

2018-01-09 08:21:26 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『そうか、そうですか。それは安心です。解りました』
 エドモン浜頭の目に穏やかさが戻る、話を続ける。
 『二つ目の懸念は、売り渡しの価格のことです。新艇のほうの価格は解っているとリドラス担当が言っていましたが、戦闘艇の価格がまだ決まっていないそうですな』
 『はい、そうです』
 『売り渡し価格、それは購入意思決定の要となります。買う買わないは価格の妥当性にあります。いつ頃に決まりますかな?』
 『はい、只今の価格の件ですが、私らが帰り次第、原価計算を行い、関係処方と話し合い決定の上、連絡いたします』
 『価格の決定の具体的な日程が予定されているようなら、聞かせていただければよろしいですな』
 『はい、今日が集散所暦で8月7日です。いかなる事情があろうとも8月15日までには、決定の上集散所を通じて連絡いたします』
 『了解いたしました。クランドス浜頭、リンドス浜頭も、これを早く知りたいと言っています。テムノス浜頭も私も、この船の販売に関して、骨身を惜しむことなく力を貸します。約束します。イリオネス殿!』
 『ありがとうございます。ただいまのところ、なんとお礼を申し上げていいか思い浮かびません。何卒よろしく願い申し上げます。なお、先ほど伺いました、艇の頑丈さについては、再度確認の上、明確にいたします』
 『丁寧な返事をいただきかたじけない。ところでイリオネス殿、相談したいといわれていた案件について伺いましょうか』
 『ありがとうございます。皆さんが知っていられるように私らはこのクレタについて深く知ることなく、船舶の建造という事業を起こした以上、事業に失敗することなくこの事業を継続していかねばなりません。この点について、両浜頭から知恵をいただければと考えています。それが懸念であり課題です。いただく話を業務運営の垂訓として業務を遂行していきたいと考えています。よろしく願います』
 イリオネスは、ここまで一気に述べて両浜頭と目を合わせる。
 『解りました、いいでしょう。聞きたいことを順を追って話してください。その一つ一つについて答えていきます。明確に言えること、また、不確かな答えしかできないものもあると考えられるがよろしいかな』
 『はい、それで結構です。よろしく願います』
 イリオネスが姿勢を改める、案件を話し始める。
 『1番目は、テムノス浜頭にたずねますが、浜頭には、新艇を買っていただきました。ありがとうございます。その新艇の価格についてですが、テムノス浜頭方に納入した新艇の価格は妥当であったかどうか、いかがでしたでしょうか?ですが』
 『ほう、そのことか。価格は妥当であったと考えている。添付品のことを考えると、いい買い物をしたと思っている』
 『ありがとうございます』
 イリオネスが礼を述べた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1196

2018-01-08 12:59:32 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 エドモン浜頭がイリオネスとオキテスをじい~っと見つめる。穏やかながら要請を込めたその目は力のあるまなざしである。彼はおもむろに口を開く。
 『ご両人、今日は大変にご苦労でした。開催した船の試乗会は、集散所として初めての催しであるな。テムノス浜頭は、船を試乗してみて手に入れる、それは経験済みだと言っているが、私はこのような催しは初めてである。船を買い求めようとしている人にとって、この催しは検討にいい機会であることは間違いない。その機会をあなた方が提供したということですな。あなた方は親切であり丁寧な対応でした。客に対する所作、話し言葉が買おうと考えている人の心を鷲づかみにして、船を使うならこの船が最適であるということが相手方に伝わったと考えられますな。それは確かです』
 『そうでしょうか?あれでよかったかと自分に問いただしています。ただ、誠意あるのみと考えて客人の方々に接した、それだけです。キドニアの集散所を通して引き合いをいただいた、その引き合いを受注にする。そのことに懸命に努めたということです。いい結果としたい、その一念です。船は大型の商品であるだけに、それにふさわしい営業のカタチがあるのではないかと考え、それをカタチにしたのが試乗会の開催です。よろしく願います』
 『イリオネス殿、今の話を伺って、あなた方が、この事業にかけていられる心情を理解しました。今日の試乗会が、いい結果に結びつくように事後のフオローワークが大事であると考えられます。彼らが船を使うについての不安を取り除き、その船を使う希望をかなえてやることが大切であると考えます。解ってもらえるかな?』
 『今、浜頭が言われた事解ります。これらのことを船造りの念頭に置き建造の業務を行っていると自信を持っております。何卒、安心いただければ幸いと存じます』
 『解りました。ところで今日の客人である、クランドス浜頭、リンドス浜頭が抱いている懸念、買い求める意思決定の決定的な懸念について伝えて置きます。その懸念の一つ目は、船は、船に乗っている者らの命を守るのに十分な頑丈さを必要とします。海上におけるいかなる事象ににも耐えることのできる頑丈さを有し、なお、長期の使用に耐えることのできる頑丈さを有していなければなりません』
 『言われる通りです。私らはそのことに対しては、充分に考慮して、船の建造をしていると自信を持って言えます』

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY  新年のご挨拶

2018-01-01 09:13:33 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
               2018年が明けました。
             あけましておめでとうございます。
                 祈りという誓い
               それは命のデザインです。
              あなたにとって2018年を
             輝ける年にデザインしてください!

                 2018年元旦
 
                  山田 秀雄
                  山田 萌愛