いわき市議会9月定例会はきょう午後1時から本会議を行い、負担くされた議案についてそれぞれの常任委員会委員長が報告を行った後、採決が行われ、全議案を可決し閉会しました。
私は、個人番号制度いわゆるマイナンバー法にかかわる議案など5議案に反対し討論に立ちました。この中で、参議院で大詰めを迎えている安保(戦争)法案に関して本市の市民に対する説明のあり方にかかわる一つの事例として取り上げて討論しました。
討論は議長席前の演壇で行われます
反対したのは、個人番号をいわき市独自の事務でも使えるようにする議案、個人番号カードなどの再発行手数料を定める議案、個人番号導入ともなって廃止される住民基本カードの発行手数料を廃止する議案、任期付職員を新たに位置づけるための議案、そして南部アリーナの使用料を値上げするための議案の5件でした。
この意見書7件が全会一致で採択されましたが、安保法案に関する意見書は事前の調整機関である意見書検討会の段階で、反対した会派があるため廃案になっています。
討論は以下の通りです(とても長いですが全文掲載。お付き合いください)。
討論
10番、日本共産党いわき市議団の伊藤浩之です。
私は、議案第1号、議案第2号、議案第4号、議案第9号及び議案第64号、以上5議案に反対する立場から討論いたします。
まず、議案第1号、いわき市個人番号の利用及び特定個人情報の提供に関する条例の制定について、
議案第2号、いわき市行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律関係手数料条例の制定について、
及び、議案第64号、いわき市住民基本台帳法関係手数料条例の改正について、
以上3議案は、いずれも個人番号制度に関して、その導入の環境整備をはかる点で共通する議案ですので、一括して討論いたします。
議案第1号は、「行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」いわゆる「番号法」に定められていない、本市が行っている重度心身障害者福祉金支給条例による事務など21件の事務に、個人番号を利用するために改正を図ろうとする内容などを含み、
議案第2号は、個人番号の「通知カード」及び「個人番号カード」の再交付の際の手数料を、それぞれ1枚500円、1枚800円に定めるものであり、
また、議案第64号は、個人番号の導入にともなって住民基本台帳カードが個人番号カードに移行するために、住民基本台帳カードの交付にかかる手数料等を廃止することなどを内容とする提案です。
これまで本議場では、個人番号制度について、たびたび議論がされてきましたが、去る9月3日、参議院に続き衆院本会議で改定法案が可決・成立され、個人番号制度も新たな段階に入ったということができると思います。
今回の改定内容は、個人番号を預金口座に任意に付すことができるようにするとともに、特定健診いわゆるメタボ検診の結果や予防接種の履歴の管理にも活用し、自治体が独自に番号を使いやすくすることも盛り込むなど、個人番号導入の本来の狙いを入れ込んできた内容となり、今回任意とした預金口座への適用についても21年度以降の義務化をめざしていると言われています。
今回の改定によって、個人番号制度の悪用の危険性はいっそう大きくなったと言わなければならないと思います。
個人番号制度の最大の問題は情報流出にあります。これを防止することが非常に難しいと考えられるのです。
最近発行された、ある週刊誌がショッキングな記事を掲載しました。
「いよいよあと1カ月。詐欺グループのマニュアルを入手!『マイナンバー』が狙われている」と題したその記事は、詐欺グループが、すでにマイナンバーに関する電話を高齢者にかけて、実際に相手をだまし、収益が上がりやすい手口・スキームを練り上げている、と関係者X氏が証言しているというものです。
その手口の1つが、還付金詐欺の応用で、「マイナンバー導入に伴ってお得な節税法があります」とアプローチするもの。2つ目に「あなたのマイナンバーが流出しており、犯罪に使われる可能性があります」と脅す手口だといい、「今後、マイナンバーに銀行口座やクレジットカード、年金や保険といったさまざまな情報が紐づけられることになると、詐欺の手口はぐっと広がる。今まで考えられなかったような大胆な儲け方ができる」と証言しているというのです。
これはマイナンバーが犯罪に使われる具体的な手口を紹介しているものですが、このマイナンバーの流出を防ぐのは困難だと指摘もされています。
詐欺グループは、経営不振の会社、情報管理がずさんになる可能性がある大量のアルバイトを雇う飲食店チェーンなどを情報源として狙っているといいます。
さらに大手の企業であっても安心はできない。セキュリティー対策に平均的な大手金融機関で10億円以上のコストがかかると試算しているといい、それだけのコストをかけても、結局は情報のやり取りに人が介在をするので、情報流出の危険性は高いとする指摘もあるというのです。
こうした個人番号の流出がどれだけの被害を産みだすのでしょうか。
個人番号制度に詳しい白鴎大学の石村耕治教授は、「番号を利用した『なりすまし犯罪者大国』への道をたどりかねない」と危惧を表明したと報じられました。
現実の犯罪例はアメリカに見ることができるようです。
アメリカではなりすましによる犯罪が頻発して大きな社会問題になっていますが、その代表的な例は税の還付金に絡んだもので、自分が確定申告をして初めて気が付く状況だといいます。
昨日朝のワイドショー番組でも、個人番号制にかかわってアメリカの成りすましの事例を紹介していました。アメリカでは今年5月下旬に、最大で1万3,000人分、日本円にして約49億円が成りすまし詐欺の被害にあったそうです。
この原因は、アメリカで国民に割り振られる社会保障番号、これが日本の個人番号・マイナンバーに相当するものですが、この社会保障番号などが数千万件単位で流出していることにあると考えられているようです。
その他、アメリカでは勝手に自分名義のクレジットカードが作られて莫大な金額が請求されたり、身に覚えのない医療サービスの請求が届いたりする例もあり、2014年度には1200万人以上がなりすまし詐欺の被害にあい、その被害額は約7,000憶円に上るといいます。
また、アメリカ在住のジャーナリストである飯塚真紀子さんはこういいます。
「アメリカのなりすまし詐欺の被害者の30%以上が、家族や親密な友人、同僚などに騙されているのです。ちょっとしたおカネ欲しさに子どもが親の番号を盗んでクレジットカードを作り、借金を膨らませてしまうなんてことも良くあります」。
こうした不幸な事態が日本で起こらないと、言い切ることはできません。
行政側にすれば、預金口座にマイナンバーが付けば、お金が複数の口座に分散されていても預金総額を把握しやすくなるなどのメリットを期待しています。国民には住民票等の交付手続きが簡便になったり、カードを持てば身分証明書となるメリットがあるといいます。
しかし、国民は、こうしたメリットと引き換えに個人情報漏洩とそれが違法に使われ犯罪被害者になりかねないという大きなリスクを背負うことになるのがこの個人番号制度です。
市民にこうしたリスクを負わせるわけにはいきません。法で決まった制度とはいえ、個人番号の活用は自治体の判断であり、本市は利用しないという判断をすべきと考えます。
以上、個人番号制度の導入には、そもそもの問題があり、この制度を運用するための環境整備をすすめる議案第1号、議案第2号、及び議案第64号には問題があり、反対すべきと考えます。
次に議案第4号、いわき市の一般職の任期付職員の採用等に関する条例の改正について、申し上げます。
本案は、東日本大震災にともなう復興関連業務など、一定期間内の業務量増加等に対応する観点から、「地方公共団体の一般職の任期付職員の採用に関する法律」第4条に規定する任期付職員を採用するために、本条例に任期を定めた職員の採用と任期を原則3年とし5年を超えない範囲で延長できることを定めるものです。
全国的に行財政改革の一環として市職員の削減がすすめられる中で、本市は東日本大震災と原発事故という未曽有の災害に襲われました。その危機的な状況から復旧・復興を果たすために、本市は全国の自治体から大きな人的な支援をいただき、震災から4年と半年で復旧事業を基本的に終え、並行して取り組んできた復興事業も早急にすすめるために意欲的に取り組んできました。
全国の自治体及び派遣されて業務を担ってくださってきた、あるいは現在担ってくださっているみなさんには、心からの感謝を申し上げたいと思います。
震災から間もなく5年を迎えようという中で、全国的な支援体制に変更が加えられる状況がある中で、本市が観光や農林水産物風評払拭に関する業務、家屋調査や土地区画整理事業等の復興業務を担う職員を確保していくことを念頭に、新たに導入しようというのが任期付職員です。
当面、復興事業をはじめとした期間が限られた業務について、任期付職員に活躍していただきたいというその考えは分からなくはありません。仮に不足する職員に非常勤職員等をあてるとすると、雇用条件が一般の職員より劣ることもありますし、任期を定める以外は一般職と同様の待遇で雇用される任期付職員の場合に、職責に見合った待遇の中で力を発揮していただくことが期待できますので、現在ある雇用問題の改善につながるものでもあると思います。
しかし同時に考えなければならないのは、今回の改定案は、期限付きのものでも、職種の限定をしたものでないということです。将来的に今回想定する職種だけで任期付職員が活用されると保障されるものではなく、さらに広い職種に導入されて、結果的に正規の職員と置き換えていくことにつながるのではないか、と疑問が残ります。
将来的には、法でも定めるように、育児や介護休暇取得の代替職員としての任期付職員の採用などに活用するなど、今回の改定の趣旨が有効に働く場面も想定されますが、一方で、全国の例を見ると例えば生活保護のケースワーカーに任期付職員や任期付の短時間勤務職員を雇用するなどの事例があるようです。
このケースワーカーを例にとると、職務をすすめるためには社会福祉主事という資格が必要であり、長年の経験を積んでベテランになっていくという性格がある職種だと思います。そうしたところに任期付職員を採用した場合に、職員内に経験豊富なケースワーカーが育つことがなくなり、市民との関係でも不利益を与えることになりかねないと考えます。
さらに専門的な職種が対象となりますので、非常勤職員が多い保育士など、様々な職種に対象が拡大することになりかねません。
同時に、任期付職員は最長でも5年間の雇用ということになりますので、雇用不安のある不安定雇用の労働者を増やすことになりますし、職場の中に、正職員、任期付職員、嘱託職員、非常勤職員など、同じような仕事をしながらも、多様な雇用条件で働く労働者が混在するようになった時に、仕事をすすめる上で職場のチームワークは大丈夫なのかという懸念もでてきます。
派遣労働者と正規雇用の労働者がいっしょに働く職場では、雇用条件の違いが仕事に対する姿勢の違いとなり、どちらの立場からも働きにくいという声を聴いたことがありますが、同じようなことが市役所でおこれば、それは翻って市民サービスを低下させることにもつながりかねません。
公務労働には継続性と安定性が求められます。こうしたことを阻害する恐れのある本案には問題があるものと考えます。従って議案第4号は否決すべきものと考えます。
最後に議案第9号、いわき市体育施設条例の改正について、申し上げます。
本案は、子ども達の運動不足の解消や交流人口の拡大等を目的とした、新設された新舞子多目的運動場や新舞子フットボール場と、これに近接する新舞子ハイツ体育施設を一体的に体育施設に位置づけるとともに、南部スタジアムの人工芝化にともなう使用料の改定を行うために、所要の改定を行うものです。
このうち南部スタジアムは、来年開催のU-15野球ワールドカップに向けて、グランドの全面人工芝化を行うのにともない、平日の1時間当たりの利用料を、一般で1240円から2,230円に、高校生以下で620円から1,110円に、また、日曜日等を同じくそれぞれ1,600円から2,780円に、810円から1,390円に引き上げるものです。日曜日等を例にとれば、一般で1180円、73%の引き上げ、高校生以下で71%の引き上げをはかるという、大幅な引き上げとなっています。
本市におけるワールドカップの開催は歓迎されるものであり、それに伴い施設が人工芝化されることで、伺ったところでは、これまで冬季に生じる霜柱等の影響で使用できなくなっていた時間帯がなくなり、また天候に左右されずに1年を通して途切れることなく利用することができるようになるなど、市民サービスの向上にもつながるとされています。
また、人工芝化によりけがの防止や競技力向上も期待できる上、これまでは野球やサッカーの利用だったものが、イベントなど利用目的の幅も広がり、市民にとってはより身近な施設として活用できるようになることが期待されているようです。
しかし、引き上げの幅は非常に大きい物であり、市民の負担を大幅に増やすもので、その負担の増加は、減免規定があるとはいえ、市民や子ども達のスポーツ振興、競技力の向上に逆行することにならないか懸念を覚えるところです。
それだけにこの利用料については、利用者等の意見交換が大切になると思います。
今回の場合、質疑の答弁では「主な利用団体である野球及びサッカー関係者に対し、昨年度末から、人工芝へ改修することについては説明をしており、使用料の改定については、市議会における議決事項でありますことから、議決後に、各種大会等における減免措置等も含め、周知を図っていきたい」とされていました。事前に施設の改修について説明していたものの、使用料に関する説明はしておらず、利用者等の意見を聞くことなく値上げが提案されたとされているわけです。
その理由は、議会における議決がされていないこととされており、市議会の議決権への配慮は痛み入るものですが、そのことをもってしても市の考えとして料金のあり方について利用者等に説明し意見を聞くことは十分可能なものと考えます。
どこまで詳しく説明するかは別の問題として、市が値上げが必要と考えるならば、その旨説明もして意見を聞く。市の提案が市民の意見通りとならないこともあるかもしれませんが、その意見聴取も踏まえた提案として議会には提案をする。
議会としては提案を受けて、その是非を市民のみなさんの意見を踏まえて粛々と判断する。その判断によって、値上げとなるのか、あるいは現行通りとなるのか、あるいは一部が修正されるのか、それにふさわしい結論がでるようになるものと思います。議会と執行部、そして市民の関係というのはそういうものではないか、と思っています。
説明が十分でない場合、どんな事態になるかは、今の国会の動きから学ぶことができます。
参議院で審議中の安保法案は、邦人を輸送中の米艦船の防護やペルシャ湾での機雷掃海といった立法事実は崩壊してしまい、憲法違反の問題など法案の説明が不十分なばかりか、政府の答弁が二転三転するなど国民が理解できるような十分な説明がなされていない状況で、参院の特別委員会で審議が始まった7月28日から今月14日までに審議中断が111回を数えるなど、政府の見解が揺れ動いている状態にあります。
こうした国民に理解されていない法案の採決を強行することは許されるはずはありませんが、それでも採決を急ごうとするからこそ、昨日報道されたJNNの世論調査で8割が今国会での成立に反対するなど、説明不足に対する憤りの国民世論が沸騰する状況となっており、その憤りがエネルギーとなり、国会周辺を始め全国で法案採決に反対する行動を広げております。また、これまで政治に口出しをすることがなかった人々も含め行動に駆り立てられる事態になっているのだと思います。
こうした説明不足から始まった国会の状況に学んで本市を見た時に、実は、安保法案と違って、事前に市民等に説明し意見交換をしてから、値上げを含む条例案を提案した事例があることが見えてきました。座席数をめぐって市民を二分する論争が巻き起こった、いわき芸術文化交流施設アリオスを作った時のことです。
平市民会館を取り壊し建設されたアリオスは、2007年、平成19年3月定例会に、翌年4月の一次オープンに向けて管理・運営や料金等を定める「いわき市いわき芸術文化交流館条例の制定について」が提案され、本議会で議
論をされました。
当時私は、この議案が付託された総務常任委員会に所属し、審議に加わっていましたが、その中でこう質問しました。
「市民団体にこの施設に関するいろんな意見を伺った機会があったということでしたが、料金設定についても意見を伺うような機会はあったんですか」。
これに対し当時の文化交流施設準備室長が、「昨年からこれまでにかけて、5回ほど文化団体等との意見交換をする機会がありまして、最終的に料金については、これは議会事項でありますし、市が決めることでございますけれども、おおむねのお話はしまして、最終的に金額的には平市民会館の大体2倍以内ですよというような話をしながら、その会合の中では了承されたと言いますか、異論がなかったところでございます」、このように答弁した経過がありました。
つまり、議会の議決事項ではあったけれども、市民団体にも事前に説明をして意見を伺う機会を設け、条例案の提案に至った経過があったということです。
こうした先例を考える時に、今回、十分な説明がないままに提案に至ったということは非常に残念なことでありました。市民に70%増しという大きな負担を課すだけに、そこはしっかり意見も聞きながら、熟慮し提案に至るという経過が必要だったのではないでしょうか。
この引き上げ額については、維持管理費や減価償却費などを踏まえた上で決定されていますが、U-15野球ワールドカップ開催の喜びの一方、市民の負担を増やすという点で残念な内容ともなっています。
かつて学校体育館の使用料をめぐり、有料化に関して、子ども達のスポーツ振興の観点から、問題点を指摘する議論が本議場で繰り広げられていましたが、今回の値上げに関して、その利用の中心が子ども達の団体ということを考えれば、せめて従前どおりの利用料とすべきだったのではないか、と思います。従って議案第9号には問題がありますので、否決とすべきと考えます。
以上、議案第1号、議案第2号、議案第4号、議案第9号及び議案第64号について討論してまいりましたが、議員各位の賛同をお願いして討論を終わります。
私は、個人番号制度いわゆるマイナンバー法にかかわる議案など5議案に反対し討論に立ちました。この中で、参議院で大詰めを迎えている安保(戦争)法案に関して本市の市民に対する説明のあり方にかかわる一つの事例として取り上げて討論しました。
討論は議長席前の演壇で行われます
反対したのは、個人番号をいわき市独自の事務でも使えるようにする議案、個人番号カードなどの再発行手数料を定める議案、個人番号導入ともなって廃止される住民基本カードの発行手数料を廃止する議案、任期付職員を新たに位置づけるための議案、そして南部アリーナの使用料を値上げするための議案の5件でした。
この意見書7件が全会一致で採択されましたが、安保法案に関する意見書は事前の調整機関である意見書検討会の段階で、反対した会派があるため廃案になっています。
討論は以下の通りです(とても長いですが全文掲載。お付き合いください)。
討論
10番、日本共産党いわき市議団の伊藤浩之です。
私は、議案第1号、議案第2号、議案第4号、議案第9号及び議案第64号、以上5議案に反対する立場から討論いたします。
まず、議案第1号、いわき市個人番号の利用及び特定個人情報の提供に関する条例の制定について、
議案第2号、いわき市行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律関係手数料条例の制定について、
及び、議案第64号、いわき市住民基本台帳法関係手数料条例の改正について、
以上3議案は、いずれも個人番号制度に関して、その導入の環境整備をはかる点で共通する議案ですので、一括して討論いたします。
議案第1号は、「行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」いわゆる「番号法」に定められていない、本市が行っている重度心身障害者福祉金支給条例による事務など21件の事務に、個人番号を利用するために改正を図ろうとする内容などを含み、
議案第2号は、個人番号の「通知カード」及び「個人番号カード」の再交付の際の手数料を、それぞれ1枚500円、1枚800円に定めるものであり、
また、議案第64号は、個人番号の導入にともなって住民基本台帳カードが個人番号カードに移行するために、住民基本台帳カードの交付にかかる手数料等を廃止することなどを内容とする提案です。
これまで本議場では、個人番号制度について、たびたび議論がされてきましたが、去る9月3日、参議院に続き衆院本会議で改定法案が可決・成立され、個人番号制度も新たな段階に入ったということができると思います。
今回の改定内容は、個人番号を預金口座に任意に付すことができるようにするとともに、特定健診いわゆるメタボ検診の結果や予防接種の履歴の管理にも活用し、自治体が独自に番号を使いやすくすることも盛り込むなど、個人番号導入の本来の狙いを入れ込んできた内容となり、今回任意とした預金口座への適用についても21年度以降の義務化をめざしていると言われています。
今回の改定によって、個人番号制度の悪用の危険性はいっそう大きくなったと言わなければならないと思います。
個人番号制度の最大の問題は情報流出にあります。これを防止することが非常に難しいと考えられるのです。
最近発行された、ある週刊誌がショッキングな記事を掲載しました。
「いよいよあと1カ月。詐欺グループのマニュアルを入手!『マイナンバー』が狙われている」と題したその記事は、詐欺グループが、すでにマイナンバーに関する電話を高齢者にかけて、実際に相手をだまし、収益が上がりやすい手口・スキームを練り上げている、と関係者X氏が証言しているというものです。
その手口の1つが、還付金詐欺の応用で、「マイナンバー導入に伴ってお得な節税法があります」とアプローチするもの。2つ目に「あなたのマイナンバーが流出しており、犯罪に使われる可能性があります」と脅す手口だといい、「今後、マイナンバーに銀行口座やクレジットカード、年金や保険といったさまざまな情報が紐づけられることになると、詐欺の手口はぐっと広がる。今まで考えられなかったような大胆な儲け方ができる」と証言しているというのです。
これはマイナンバーが犯罪に使われる具体的な手口を紹介しているものですが、このマイナンバーの流出を防ぐのは困難だと指摘もされています。
詐欺グループは、経営不振の会社、情報管理がずさんになる可能性がある大量のアルバイトを雇う飲食店チェーンなどを情報源として狙っているといいます。
さらに大手の企業であっても安心はできない。セキュリティー対策に平均的な大手金融機関で10億円以上のコストがかかると試算しているといい、それだけのコストをかけても、結局は情報のやり取りに人が介在をするので、情報流出の危険性は高いとする指摘もあるというのです。
こうした個人番号の流出がどれだけの被害を産みだすのでしょうか。
個人番号制度に詳しい白鴎大学の石村耕治教授は、「番号を利用した『なりすまし犯罪者大国』への道をたどりかねない」と危惧を表明したと報じられました。
現実の犯罪例はアメリカに見ることができるようです。
アメリカではなりすましによる犯罪が頻発して大きな社会問題になっていますが、その代表的な例は税の還付金に絡んだもので、自分が確定申告をして初めて気が付く状況だといいます。
昨日朝のワイドショー番組でも、個人番号制にかかわってアメリカの成りすましの事例を紹介していました。アメリカでは今年5月下旬に、最大で1万3,000人分、日本円にして約49億円が成りすまし詐欺の被害にあったそうです。
この原因は、アメリカで国民に割り振られる社会保障番号、これが日本の個人番号・マイナンバーに相当するものですが、この社会保障番号などが数千万件単位で流出していることにあると考えられているようです。
その他、アメリカでは勝手に自分名義のクレジットカードが作られて莫大な金額が請求されたり、身に覚えのない医療サービスの請求が届いたりする例もあり、2014年度には1200万人以上がなりすまし詐欺の被害にあい、その被害額は約7,000憶円に上るといいます。
また、アメリカ在住のジャーナリストである飯塚真紀子さんはこういいます。
「アメリカのなりすまし詐欺の被害者の30%以上が、家族や親密な友人、同僚などに騙されているのです。ちょっとしたおカネ欲しさに子どもが親の番号を盗んでクレジットカードを作り、借金を膨らませてしまうなんてことも良くあります」。
こうした不幸な事態が日本で起こらないと、言い切ることはできません。
行政側にすれば、預金口座にマイナンバーが付けば、お金が複数の口座に分散されていても預金総額を把握しやすくなるなどのメリットを期待しています。国民には住民票等の交付手続きが簡便になったり、カードを持てば身分証明書となるメリットがあるといいます。
しかし、国民は、こうしたメリットと引き換えに個人情報漏洩とそれが違法に使われ犯罪被害者になりかねないという大きなリスクを背負うことになるのがこの個人番号制度です。
市民にこうしたリスクを負わせるわけにはいきません。法で決まった制度とはいえ、個人番号の活用は自治体の判断であり、本市は利用しないという判断をすべきと考えます。
以上、個人番号制度の導入には、そもそもの問題があり、この制度を運用するための環境整備をすすめる議案第1号、議案第2号、及び議案第64号には問題があり、反対すべきと考えます。
次に議案第4号、いわき市の一般職の任期付職員の採用等に関する条例の改正について、申し上げます。
本案は、東日本大震災にともなう復興関連業務など、一定期間内の業務量増加等に対応する観点から、「地方公共団体の一般職の任期付職員の採用に関する法律」第4条に規定する任期付職員を採用するために、本条例に任期を定めた職員の採用と任期を原則3年とし5年を超えない範囲で延長できることを定めるものです。
全国的に行財政改革の一環として市職員の削減がすすめられる中で、本市は東日本大震災と原発事故という未曽有の災害に襲われました。その危機的な状況から復旧・復興を果たすために、本市は全国の自治体から大きな人的な支援をいただき、震災から4年と半年で復旧事業を基本的に終え、並行して取り組んできた復興事業も早急にすすめるために意欲的に取り組んできました。
全国の自治体及び派遣されて業務を担ってくださってきた、あるいは現在担ってくださっているみなさんには、心からの感謝を申し上げたいと思います。
震災から間もなく5年を迎えようという中で、全国的な支援体制に変更が加えられる状況がある中で、本市が観光や農林水産物風評払拭に関する業務、家屋調査や土地区画整理事業等の復興業務を担う職員を確保していくことを念頭に、新たに導入しようというのが任期付職員です。
当面、復興事業をはじめとした期間が限られた業務について、任期付職員に活躍していただきたいというその考えは分からなくはありません。仮に不足する職員に非常勤職員等をあてるとすると、雇用条件が一般の職員より劣ることもありますし、任期を定める以外は一般職と同様の待遇で雇用される任期付職員の場合に、職責に見合った待遇の中で力を発揮していただくことが期待できますので、現在ある雇用問題の改善につながるものでもあると思います。
しかし同時に考えなければならないのは、今回の改定案は、期限付きのものでも、職種の限定をしたものでないということです。将来的に今回想定する職種だけで任期付職員が活用されると保障されるものではなく、さらに広い職種に導入されて、結果的に正規の職員と置き換えていくことにつながるのではないか、と疑問が残ります。
将来的には、法でも定めるように、育児や介護休暇取得の代替職員としての任期付職員の採用などに活用するなど、今回の改定の趣旨が有効に働く場面も想定されますが、一方で、全国の例を見ると例えば生活保護のケースワーカーに任期付職員や任期付の短時間勤務職員を雇用するなどの事例があるようです。
このケースワーカーを例にとると、職務をすすめるためには社会福祉主事という資格が必要であり、長年の経験を積んでベテランになっていくという性格がある職種だと思います。そうしたところに任期付職員を採用した場合に、職員内に経験豊富なケースワーカーが育つことがなくなり、市民との関係でも不利益を与えることになりかねないと考えます。
さらに専門的な職種が対象となりますので、非常勤職員が多い保育士など、様々な職種に対象が拡大することになりかねません。
同時に、任期付職員は最長でも5年間の雇用ということになりますので、雇用不安のある不安定雇用の労働者を増やすことになりますし、職場の中に、正職員、任期付職員、嘱託職員、非常勤職員など、同じような仕事をしながらも、多様な雇用条件で働く労働者が混在するようになった時に、仕事をすすめる上で職場のチームワークは大丈夫なのかという懸念もでてきます。
派遣労働者と正規雇用の労働者がいっしょに働く職場では、雇用条件の違いが仕事に対する姿勢の違いとなり、どちらの立場からも働きにくいという声を聴いたことがありますが、同じようなことが市役所でおこれば、それは翻って市民サービスを低下させることにもつながりかねません。
公務労働には継続性と安定性が求められます。こうしたことを阻害する恐れのある本案には問題があるものと考えます。従って議案第4号は否決すべきものと考えます。
最後に議案第9号、いわき市体育施設条例の改正について、申し上げます。
本案は、子ども達の運動不足の解消や交流人口の拡大等を目的とした、新設された新舞子多目的運動場や新舞子フットボール場と、これに近接する新舞子ハイツ体育施設を一体的に体育施設に位置づけるとともに、南部スタジアムの人工芝化にともなう使用料の改定を行うために、所要の改定を行うものです。
このうち南部スタジアムは、来年開催のU-15野球ワールドカップに向けて、グランドの全面人工芝化を行うのにともない、平日の1時間当たりの利用料を、一般で1240円から2,230円に、高校生以下で620円から1,110円に、また、日曜日等を同じくそれぞれ1,600円から2,780円に、810円から1,390円に引き上げるものです。日曜日等を例にとれば、一般で1180円、73%の引き上げ、高校生以下で71%の引き上げをはかるという、大幅な引き上げとなっています。
本市におけるワールドカップの開催は歓迎されるものであり、それに伴い施設が人工芝化されることで、伺ったところでは、これまで冬季に生じる霜柱等の影響で使用できなくなっていた時間帯がなくなり、また天候に左右されずに1年を通して途切れることなく利用することができるようになるなど、市民サービスの向上にもつながるとされています。
また、人工芝化によりけがの防止や競技力向上も期待できる上、これまでは野球やサッカーの利用だったものが、イベントなど利用目的の幅も広がり、市民にとってはより身近な施設として活用できるようになることが期待されているようです。
しかし、引き上げの幅は非常に大きい物であり、市民の負担を大幅に増やすもので、その負担の増加は、減免規定があるとはいえ、市民や子ども達のスポーツ振興、競技力の向上に逆行することにならないか懸念を覚えるところです。
それだけにこの利用料については、利用者等の意見交換が大切になると思います。
今回の場合、質疑の答弁では「主な利用団体である野球及びサッカー関係者に対し、昨年度末から、人工芝へ改修することについては説明をしており、使用料の改定については、市議会における議決事項でありますことから、議決後に、各種大会等における減免措置等も含め、周知を図っていきたい」とされていました。事前に施設の改修について説明していたものの、使用料に関する説明はしておらず、利用者等の意見を聞くことなく値上げが提案されたとされているわけです。
その理由は、議会における議決がされていないこととされており、市議会の議決権への配慮は痛み入るものですが、そのことをもってしても市の考えとして料金のあり方について利用者等に説明し意見を聞くことは十分可能なものと考えます。
どこまで詳しく説明するかは別の問題として、市が値上げが必要と考えるならば、その旨説明もして意見を聞く。市の提案が市民の意見通りとならないこともあるかもしれませんが、その意見聴取も踏まえた提案として議会には提案をする。
議会としては提案を受けて、その是非を市民のみなさんの意見を踏まえて粛々と判断する。その判断によって、値上げとなるのか、あるいは現行通りとなるのか、あるいは一部が修正されるのか、それにふさわしい結論がでるようになるものと思います。議会と執行部、そして市民の関係というのはそういうものではないか、と思っています。
説明が十分でない場合、どんな事態になるかは、今の国会の動きから学ぶことができます。
参議院で審議中の安保法案は、邦人を輸送中の米艦船の防護やペルシャ湾での機雷掃海といった立法事実は崩壊してしまい、憲法違反の問題など法案の説明が不十分なばかりか、政府の答弁が二転三転するなど国民が理解できるような十分な説明がなされていない状況で、参院の特別委員会で審議が始まった7月28日から今月14日までに審議中断が111回を数えるなど、政府の見解が揺れ動いている状態にあります。
こうした国民に理解されていない法案の採決を強行することは許されるはずはありませんが、それでも採決を急ごうとするからこそ、昨日報道されたJNNの世論調査で8割が今国会での成立に反対するなど、説明不足に対する憤りの国民世論が沸騰する状況となっており、その憤りがエネルギーとなり、国会周辺を始め全国で法案採決に反対する行動を広げております。また、これまで政治に口出しをすることがなかった人々も含め行動に駆り立てられる事態になっているのだと思います。
こうした説明不足から始まった国会の状況に学んで本市を見た時に、実は、安保法案と違って、事前に市民等に説明し意見交換をしてから、値上げを含む条例案を提案した事例があることが見えてきました。座席数をめぐって市民を二分する論争が巻き起こった、いわき芸術文化交流施設アリオスを作った時のことです。
平市民会館を取り壊し建設されたアリオスは、2007年、平成19年3月定例会に、翌年4月の一次オープンに向けて管理・運営や料金等を定める「いわき市いわき芸術文化交流館条例の制定について」が提案され、本議会で議
論をされました。
当時私は、この議案が付託された総務常任委員会に所属し、審議に加わっていましたが、その中でこう質問しました。
「市民団体にこの施設に関するいろんな意見を伺った機会があったということでしたが、料金設定についても意見を伺うような機会はあったんですか」。
これに対し当時の文化交流施設準備室長が、「昨年からこれまでにかけて、5回ほど文化団体等との意見交換をする機会がありまして、最終的に料金については、これは議会事項でありますし、市が決めることでございますけれども、おおむねのお話はしまして、最終的に金額的には平市民会館の大体2倍以内ですよというような話をしながら、その会合の中では了承されたと言いますか、異論がなかったところでございます」、このように答弁した経過がありました。
つまり、議会の議決事項ではあったけれども、市民団体にも事前に説明をして意見を伺う機会を設け、条例案の提案に至った経過があったということです。
こうした先例を考える時に、今回、十分な説明がないままに提案に至ったということは非常に残念なことでありました。市民に70%増しという大きな負担を課すだけに、そこはしっかり意見も聞きながら、熟慮し提案に至るという経過が必要だったのではないでしょうか。
この引き上げ額については、維持管理費や減価償却費などを踏まえた上で決定されていますが、U-15野球ワールドカップ開催の喜びの一方、市民の負担を増やすという点で残念な内容ともなっています。
かつて学校体育館の使用料をめぐり、有料化に関して、子ども達のスポーツ振興の観点から、問題点を指摘する議論が本議場で繰り広げられていましたが、今回の値上げに関して、その利用の中心が子ども達の団体ということを考えれば、せめて従前どおりの利用料とすべきだったのではないか、と思います。従って議案第9号には問題がありますので、否決とすべきと考えます。
以上、議案第1号、議案第2号、議案第4号、議案第9号及び議案第64号について討論してまいりましたが、議員各位の賛同をお願いして討論を終わります。
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