伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む市議会議員。市政や市議会、日常の活動などを紹介していきます。

いわき市議会臨時会。会派は前年度決算を不認定の立場で討論。

2019年11月23日 | 市議会
 22番、日本共産党・市民共同の溝口民子です。

 私は、継続審査となっております、
議案第28号、
第29号、
第31号、
第42号、
第43号、
以上5件について、不認定の立場から討論いたします。


 まず、議案第28号、平成30年度いわき市一般会計歳入歳出決算の認定について申し上げます。

 この決算には、第1に、2款、総務費、1項、総務管理費、1目、一般管理費に2018年の2月定例会に提案可決された、「いわき市職員の退職手当に関する条例等の改正について」を前提に、退職手当の調整額を100分の87から100分の83.7に引き下げる内容が含まれていました。

 これには、議案第42号、平成30年度いわき市水道事業会計利益の処分及び決算の認定について、及び議案第43号、平成30年度いわき市病院事業会計決算の認定について、以上2議案も関わりますのであわせて討論いたします。

 これらの決算の前提となる退職手当の引き下げは、2013年、平成25年2月の条例改定に続くもので、2013年2月の条例改定では、3年にわたって段階的に退職手当の引き下げが実施され、最終的な引き下げ額は約385万円になりました。今回これに加え、約75万円の引き下げとなり、退職金は5年前に比べ、約460万円もの引き下げがされることになっており、職員の生涯にわたる生活に大きな負の影響を及ぼしかねない問題がありました。

 また、国家公務員と地方公務員の退職金引き下げが民間労働者の退職金引き下げに連動し、労働者全体の生涯賃金引き下げにつながりかねず、消費者に消費を手控えさせる結果、国の経済にも地域の経済にも否定的な影響を与えかねないものとなりかねないという問題もあります。

 本市の条例改定の前提となった国家公務員退職手当法の衆議院内閣委員会の審議では、国家公務員の退職手当は後払いの賃金であり、労働条件の一部ではないかという質問に、人事院の給与局長は、退職後の生活設計を支える勤務条件的な性格を有していると、退職手当の労働条件的な性格を認める答弁をしておりました。

 一方、内閣人事局の人事政策統括官は、退職手当は労働条件ではなく、長期勤続・功労に対する報奨だとしています。であるならば、労働条件である民間の退職手当と、労働条件ではない単に努力に報いる御褒美に過ぎない、功労に対する報奨を比較して、その官民格差を論じることそのものに問題がありました。

 また、2018年の国家公務員の退職手当の引き下げは、人事院の勧告によるものではなく、人事院が国の依頼により実施した調査に基づくものでした。先の統括官は、退職金の官民比較は法律に基づく勧告ではないとして、引き下げの根拠となった官民比較には法的根拠がないことを明らかにしていました。

 人事院の官民比較調査は、民間にはあり、公務員にはない雇用保険の有無さえ調査対象にしないなど、限定的で不透明なものになっています。官民の均衡の確保と言いながら、根拠も曖昧かつ退職後も守秘義務が課せられ、雇用保険の適用もされない公務員の特殊性を無視した国の法改定を前提とした市の退職金引き下げには問題があり、これが具体化した本予算の執行には問題があったと言わざるをえません。


 第2に、2款、総務費、1項、総務管理費、7目、企画費に個人番号にかかわる情報セキュリティーのための負担金が含まれ、同じく3項、戸籍住民基本台帳費、1目、戸籍住民基本台帳費に、個人番号カード交付や同カードによるコンビニでの証明書交付事業費など、個人番号制度、いわゆるマイナンバー制度にかかわる予算が含まれている点です。

 この制度に関しては、導入当初より、個人情報漏洩やそれに伴い住民を犯罪被害者にしかねない問題があることを指摘してきましたが、制度そのものの狙いは、政府が国民の個人情報を1つの番号で統合・管理するところにありました。

 政府にとって都合の良い制度も、国民にとってはさほど歓迎されるものではなく、この制度によって交付される個人番号カード、いわゆるマイナンバーカードは、全国的に13%程度の国民が取得するにとどまっており、本市でも8月末段階で10.6%にとどまる状況となっていました。

 こうした状況を打破するため、政府が考え出したのが、個人番号カードのICチップの空き領域を活用した事業で、従来から保険証や買い物時のポイントカードなどとして活用して、マイナンバーカードの利用の拡大を図ることが検討されてきました。

 一昨日には、9月定例会の一般質問でもふれられていた、このマイナンバーカードを活用した政府のポイント付与の制度の全容が固まったという報道がありました。

 報道では、2020年9月から21年3月までの7か月間に、マイナンバーカードを取得して、マイキーIDを設定した人に対し、最大2万円までのキャッシュレス決済の利用またはポイントカードの入金に対し、5000円、25%もの「マイナポイント」を付与するとされていました。

 来夏の東京五輪・パラリンピック後の景気の落ち込みを防ぐとともに、低迷するマイナンバーカードの普及を後押しし、行政サービスのデジタル化の流れを加速させることが理由とされます。

 しかし、そもそも国民が必要と感じていないカードを、5,000円分ものお土産をつけて持たせることがまともな政策なのか、また、仕組みが複雑とされることを考えると、実際に利用するようになるのは、キャッシュレス決済に慣れた比較的所得のある層と考えられるので、国民の消費する力の格差を拡大するものともなりかねないと考えられます。ここに使うために準備される2,500億円もの財源は、国民の所得格差の解消にむけた施策にこそ、そして水害被災地の本市の視点から見れば、床上浸水などの被災者支援の拡大にこそ、使われていかなければならないと思います。

 カードを普及するためにお金を国民に支払う。こうした本末転倒の事態を招いている個人番号制度は、そもそも国民にとって必要がない制度であり、廃止することが必要です。こうした事業に対して本市が支出するということは、この本末転倒の制度を支えることにつながることから、市としてはこの制度から離脱することこそが必要であったものであり、この歳出には問題があったものと言わざるをえません。


 第3に、2款、総務費、1項、総務管理費、14目、諸費に、自衛官募集事務費が含まれ、新規に入隊する隊員の激励会を開いている問題です。

 自衛隊は、1950年に警察予備隊として発足以来、保安隊、自衛隊と名称を変えながら現在に至りますが、2015年の安保法制によって、その性格が大きくゆがめられました。

 自衛隊はもともと、自民党をはじめとした歴代政権のもとで、専守防衛、すなわち日本の国土及び国民の命と財産を脅かす急迫不正の事態に対処する、すなわち何らかの武装勢力に攻め込まれることがあれば、これを排除する自衛のための武力として整備されてきました。

 ところが、2015年9月に、法案採決に反対する多数の人々が国会を包囲する中で採決が強行された安保法制によって、その性格は大きくゆがめられました。

 安保法制は、現在の憲法が個別的自衛権のみ認めているとした歴代内閣の憲法解釈を投げ捨て、集団的自衛権行使も可能とする独自の憲法解釈を閣議決定しを提案されたものでした。

 この安保法制は、世界のどこでも自衛隊が米軍と一体の軍事行動をとることができるようにし、また、国連平和維持活動時に武装して救出作戦を実施することを前提とした駆け付け警護の任務の付与など、自衛隊が自らの防御のためではない武力行使を可能としたものとしてしまったのです。

 これまで、組織の性格上、他国での戦闘により人命を失うことがなかった自衛隊が、他国の戦場で隊員の命を失いかねない事態を作り出してしまったわけです。

 これから自衛隊に入隊するみなさんは、その配属先によっては、この任務を背負わされ、場合によっては海外の戦場に立つことも考えられます。しかも、前提となっている集団的自衛権行使が可能という閣議決定も、安保法制も、かつて、政権と同じような憲法論に立っていた専門家をはじめ多くの憲法の専門家が憲法違反を指摘する。こうした自衛隊に若者を送り出すことを激励するということは、安保法制を始めとした政府の暴走を容認することになり、ふさわしくないものと考えます。

 去る10月の台風19号、及び10月25日の台風21号に伴う大雨による災害の救援要請に応え、自衛隊のみなさんは、被災地での住民の救出、被災地の後片付けや瓦礫の撤去、そしてお風呂の提供など、被災者を支援する活動を展開し、住民のみなさんを励ましてきました。その活動には大いに感謝を申し上げたいと思います。

 東日本大震災時もそうでしたが、自衛隊のみなさんの身を粉にした活動にふれ、自分も人の役に立ちたいと自衛隊に入隊した若者たちがいるというお話を聞いてきました。聞くところによると、決算特別委員会の審議でも、「自衛隊の活躍に感動した」「人のために活躍したい」などの新規入隊者の声を聞いてきたと答弁されたといいます。今回の災害にあたって、本市で活動する隊員のみなさんも、おそらく同じ思いで任務についているものと思います。こういう若者たちの思いと行動に、大いに感謝も感動もするところですが、それだけに、安保法制がこうした善意を受け止めて自衛隊を推し量ることができなくなった現実を恨むしかない、そんな思いがいたします。

 自衛隊の新規入隊者等は、
2015年が27名、
16年が27名、
17年が25名、
18年が25名
だったと聴きました。
そして過去4年間、募集定員に達していないといいます。原因は、「少子化」と考えられるとされていますが、自衛隊が、海外の戦争や紛争で活動することを前提とするようになった、その影響も無視することはできないと考えます。

 自衛隊のとるべき道をゆがめた安保法制には問題があり、若者たちにその誤った任務を負わせることを激励することになりかねず、また、恒久平和を念願する本市の非核平和都市宣言の立場からも本予算の執行はふさわしくなかったと考えます。

 以上、議案第28号、第42号、第43号には問題がありますので、不認定とすべきです。


 次に、議案第29号、平成30年度いわき市国民健康保険事業特別会計歳入歳出決算の認定について申し上げます。

 この決算には被保険者資格証明書の発行にかかる経費が含まれていました。

 被保険者資格証明書は、国民健康保険に加入していることだけを証明するにすぎず、医療費の全額をいったん負担し、その後市の窓口で保険負担分の7割の払い戻し手続きをとるもので、患者を病院から遠ざけてしまいかねない問題があるなど、私たちはかねてから指摘して参りました。

 これまでも度々引用してきましたが、全日本民医連は2005年から、経済的事由による手遅れ死亡事例調査を実施してきました。

 2018年(調査期間‥18年1月1日~12月31日)の調査では、加盟する636事業所の患者、利用者を対象に、短期保険証や資格証明書など、“無保険状態あるいは保険に制約がある”に該当する38人が亡くなっていることが報告されています。

 調査の結果について講評した全日本民医連は、「調査開始当初は無保険状態の人が多かったが、近年、保険証があっても窓口一部負担の重さから医療にかかれない人が増えている。国保法44条にもとづく窓口負担減免の利用は皆無に近く、もはや国民皆保険は機能していない。この事態を考えないといけない時期だ」と指摘しておりました。

 もともと国保税の滞納は、国保税が高すぎる状態が続いているところにあります。

 国保の加入者構成を見ますと、かつては7割が「農林水産業」と「自営業」従事者でありましたが、今では、43%が年金生活者などの「無職」、34%が「非正規雇用」などで、合わせて8割近くになっており、 協会けんぽや組合健保にくらべ、国保は加入者に大変重い負担を強いる制度となっています。

 全国知事会・同市町村会は国保の構造的な問題を解決し、重い負担である国保税を引き下げるためには、十分な公費を投入することが必要不可欠であると考え、国保の定率国庫負担の増額を政府に要望し続けています。

 さらに、国保加入者の貧困化・高齢化等が進む中で、国保税の負担はますます重くなっており、その重くなる要因の一つに、世帯の人数を算定基礎に据える「均等割」があります。世帯の人数が保険料に影響するのは国保だけで、各世帯に定額でかかる「平等割」と「均等割」を合わせると、全国で徴収されている保険税額は、およそ1兆円とされているため、1兆円の公費投入で「協会けんぽ」並みの保険税とすることが可能である、と要望しています。

 こうした状況の下では、国保税引き下げはもとより、被保険者資格証明書は発行しない措置をとれるよう取り組み、加入者が安心して医療にアクセスできる環境を構築することが必要だったと考えます。

 よって、議案第29号、いわき市国民健康保険事業特別会計歳入歳出決算の認定については不認定といたします。


 次に、議案第31号、平成30年度いわき市介護保険特別会計歳入歳出決算の認定について申し上げます。
 
 介護保険は介護の社会化や家族介護の負担軽減をうたいながら2000年4月から実施されてきました。しかし、全国的には老々介護などの果てに介護を理由とした不幸な事件が発生し続けています。

 本年11月17日に福井県敦賀市では妻が介護の疲れから夫と義理の両親を殺害するという胸の痛む事件が起こりました。周囲の目を気にするあまり介護サービスはほとんど利用しておらず、妻は仕事もしながら3人の介護を続けている状況にあったようです。

 2015年(平成27年)の介護保険改悪で、特別養護老人ホームの入所者は原則として要介護度3以上に限定されたり、施設に入所している低所得者への補助であった補足給付の対象が縮小されたりしました。

 また、要支援1及び2の介護サービスは保険給付から外されて、市の総合事業へと移行されております。一定の所得がある利用者の利用料は、1割負担から2割負担に増額されました。

 また、「全世代型社会保障」に転換するとして、ケアープラン作成費や要介護1及び2の生活援助サービスの保険給付をはずす等が狙われています。

 こうした見直しは、高齢者の尊厳を守り、その人らしい生活を大切にする介護保険制度にするという点から疑問を感じざるを得ません。

 介護保険料の見直しは3年に1度行われ、これまで6回実施された高齢者保険福祉計画の見直しで5回にわたる介護保険料の引き上げが行われ、第1期に年額で3万200円だった保険料は、第7期で7万2,800円と実に2.4倍もの引き上げになっております。

 こうした引き上げには大きな問題があると言わざるを得ないと思います。一方で、市は全国市長会等を通して、全ての国民が安心して介護が受けられるよう、必要な財源を確保した上で、将来にわたって国民が安心して享受できる持続可能な介護保険制度とするため、公費の負担割合の見直し等で、保険料の上昇を抑える対策を講じるなどの制度の見直しを提言していると答弁しておりました。

 ここには、今の介護の仕組みでは、全ての市民が安心して介護を受けられないという市の危機意識があると考えられます。それはとりもなおさず介護における市民生活の危機を反映しているものととらざるを得ません。その危機の中、この年度には介護保険料の引き上げがなされており、問題があると考えます。従って、本決算については不認定とすべきと考えます。。
 
 以上、5議案にわたり討論してまいりましたが、満場のみなさまのご賛同を心からお願いいたしまして討論を終わります。


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