伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む市議会議員。市政や市議会、日常の活動などを紹介していきます。

人災とやっぱり考えていない東電・特別委員会報告

2013年07月06日 | 原発
 7月2日に開かれた東日本大震災復興特別委員会について報告しておきたいと思います。

 委員会は、東京電力福島第一原発の事故原子炉海側に設置された観測用井戸から高濃度のトリチウムとストロンチウムが検出された問題などで、東電側に説明をさせるために開かれたもの。説明には東電常務執行役で福島本部副本部長兼原子力・立地本部副本部長の新妻常正氏らがあたりました。また委員会前に議長、副議長と各派の代表で、6月定例市議会が全会一致で可決した「福島第一原子力発電所事故に関する速やかな情報公開を求める決議」を東電に交付しました。観測用井戸の汚染水検出の公表に2週間もかかっているために決議されたもので、日本共産党市議団が問題提起し採択されたものでした。

 高濃度汚染水が検出された観測用井戸は、港の放射性物質濃度が下がりにくい状態が続いており、専門家から漏水の可能性の指摘も受けて設置をされたもの。東電の説明では、3箇所設置された井戸のうち福島第一原発2号機の海側に設置された№1井戸から2013年5月24日に採取された井戸水からトリチウム(3H:本当は3を小さく書いてHの左肩に付けなければならないのですが、表記できないのでこの表記でお許し下さい)が50万Bq(ベクレル)、ストロンチウム(Sr)が1,000Bq検出されました。法令で定められた告示濃度はそれぞれ6万Bq、30Bqです。

 №1井戸の水のレベルは2012年12月に採取分は3Hは2万9,000Bq、Srは8.6Bqでした。ところが13年5月24日分が前述の通り、13年5月31日分がそれぞれ46万Bq、890Bqとなっていました。説明にはありませんでしたが、東電のホームページのデータでは13年6月25日採取分は3Hが45万Bqです。

 この状況を踏まえて東電は、「原因として、過去の汚染水の漏洩の影響による可能性が考えられる」としながら、その他の原因もあわせて検証をすすめていくと説明しました。汚染源は2011年4月に2号機取水口の部分から汚染水が漏洩した際、一部の水が2号機の電源ケーブルが通っている管路から北側の土中に浸透・拡散して残ったものと考えているというのです。

 そして当面、土壌の汚染範囲の特定と海への漏えい防止の対策をすすめていくとしています。護岸の地盤に水ガラス系の薬液を注入して地盤改良をし、汚染水が海へ漏れにくくすることなどを行うことが一つ。これによって漏えいは100分の1程に減ずることができるといい、「スピード感を持って対応したい」としています。またさらに追加対策を行うとしています。

 東電は「過去の汚染」の可能性と言いますが、新たな汚染はないのかが気にかかるところ。その点をただすと、セシウム値は土壌に吸着され検出限界値未満あるいは測定されてもごく微量になっており、他の物質に吸着されにくい3HとSrが徐々に地下水に入ったものと推定しているとしました。

 ただ当初から「過去の汚染水の漏えいの影響」という仮説をたてて調査することになれば、このこと自身が調査結果に影響を与えかねないのではないか。原発は事故を起こさない、安全だと言って必要な対応策を怠り、その結果原発事故に至ったことを考えれば、「過去の汚染」と事態を当初から軽く見ることに問題意識を持ちます。そのことを指摘しておきました。

 またこれとの関わりで考えた時、原発事故の原因をどう見るのかが気にかかります。
今年3月29日に東電が公表した「福島原子力事故の総括及び原子力安全改革プラン」では、原発事故は「外的事象を起因とする共通原因故障への配慮が足りず、全電源喪失という過酷な状況を招いた」「過酷事故への備えが設備面でも人的な面でも不十分」「事故の原因を天災として片付けてはならず、人智を尽くした事前の備えによって防ぐべき事故を防げなかったという結果を真摯に受け入れることが必要」などとしました。このことをもって東電が事故原因を事実上「人災」と認めたという見方がありました。

 実際、どう考えているのかを問いました。
 すると意外な答え。「人災、天災の区別ではなく、起こっている事象に向かうことが大切なことだと考えている」という趣旨でした。「人災」とは考えていないのです。

 今回の事故を東電が心底から人災と認めることが、事故をおこしたことへの真の謝罪になるとともに、事故の対応に真摯に立ち向かう姿勢を確立するものだと考えます。

 同時に公表遅れに関して東電の福島第一安定化センター所長(汚染水検出の公表遅れ発覚当時)の小森明生常務が、「被害にあわれた県民のみな様一人ひとりに心を寄せることができなかった」という趣旨で反省しています。この立場に立つためにも人災であったことをしっかりと認識して謝罪し、その立場から物を考えることが必要だと思います。残念ながら、東電にはその立場が根付いていないということが分かりました。

 新潟県の柏崎・刈羽原発で、東電が運転の前提となるフィルター付きベントを格納容器に設置工事に着工したことに、新潟県知事は説明のない工事は了承できないとコメント。また、7月3日には東京電力が柏崎・刈羽原発の再稼働の申請を決めたと公表。事前に話がなかった新潟県知事が「これ以上の地元軽視はない」と怒りのコメントをしていました。こうしたところにも、「人災」と認めない東電の姿勢が反映しているといえるのではないでしょうか。

 こういうことを見ていると、原発事故に関わる情報の公表の問題にも期待は持てないかも知れません。

 東電は5月24日に採取した地下水から高濃度のトリチウムが出たとの分析結果が5月31日に出たにもかかわらず、地下水ではなく他からの汚染が疑われると考え再分析したことなどによりずるずると6月19日まで公表を遅らせることになった経過を説明しました。慎重に構えた背景には、汚染されていない地下水の分析を誤り2度にわたって訂正したことも影響したといいます。

 この公表遅れから東電は、「非定例的な分析結果の緊急時対策本部への情報共有方法が不明確であった」と考え、通報・公表の要否の基準やルールづくりを速やかに決定するとしています。

 しかし、情報の公表についてはネズミによる停電事故発生後には検討を始めていたはずです。4月に東電に仮設設備の本設化と速やかな情報公開を求めた際、また復興本社での特別委員会視察の際にも、東電側は改善の余地があるとか、組織を作って公開をきちっとするなどとしていたはずなのですが、肝心の社内では情報がスムーズに共有されない状況だったわけです。

 ネズミ停電事故から2ヶ月間、情報の公表の改善に取り組んできたはずなのにできていなかった。今回のような非定例的、つまり臨時の分析時の情報共有のルールがないから、このことも含め詳細な分野に渡るルール作りをすすめているという東電。そのルールは早く作るというものの、各部署との調整も必要だとかで、いつ出来るのかはっきりしていません。

 「県民一人ひとりに心を寄せる」というのは「県民の立場で考える」ということ。であるならば、こういう対応に東電が時間をかけることに県民が納得できないということも分かるはずです。

 だいたいルールがどうのこうのというレベルの話でもないでしょう。原発事故で放射性物質に県民が敏感になっている現状から考えれば、あらゆる情報を原則公表するという姿勢こそ必要であり、こうした姿勢を社内で共有できないあるいはそもそも欠如していることにこそ問題があります。そこに人災を認めない東電の反省不足が露呈しているともいえるでしょう。

 委員会では、事故原因が「人災」だという考え方をしっかりと確立することや、早期の基準作りを重ねて求めました。東電の真摯な対応を期待したい。




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