<ウォールストリートジャーナルより記事転載>
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「日本の失われた20年から学ぶべきこと」
たとえ日本に直接投資をしていなくても、日本の過去20年の経験はわれわれの思考に大きな影を落とす。
残念ながら、その影を理解しようとすることは、その存在を認めることとは大きく異なる。
年末休みにかけて、日本に対する自らの考えを整理しようと試みた結果、一連の疑問について自問自答するのが最も妥当だとの結論に至った。そこで、この場でそれをしてみようと思う。
われわれにとって日本は果たして重要か。
重要だ。理由は2つある。日本は大規模な資産バブルの崩壊や銀行セクターの機能不全、長年のデフレを経験している。同様の不運を繰り返しているかにみえる米国にとっては、日本を参考にすることで、そうした事態がどういう経緯をたどるかを推し量ることができる。
また、たとえ日本の例が米国の参考にならないとしても、日本経済のたどる道は世界の金融システムにとって重要な意味を持つ可能性がある。何だかんだ言っても、日本は依然世界第2位の経済大国であり、一人当たり所得が最も高い先進国の1つであり、巨大な金融セクターを有しているのだから。
米国は日本が味わった苦境を逃れられるか。
米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長がそう考えているのは間違いない。そして、そのために今、最大限の努力を尽くしている。量的緩和策を2度にわたって実施しているのも、日本式デフレを繰り返さないようにするためにほかならない。
FRBは、バーナンキ議長が昨年夏に初めて量的緩和第2弾の実施を示唆して以来、さぞかし市場の反応に勇気付けられたことだろう。景気は回復の兆しをみせており、インフレ期待値もいくらか上向いている。オバマ政権も、減税措置を中心としたものではあるが、一部景気刺激策の延長を決定した。
残念ながら、金融政策が十分な効果をもたらすかどうかは不明だ。コアインフレ(食料品とエネルギーを除く物価上昇率)はかろうじてプラスを維持し、政策金利は実質ゼロ%の現状においては、財政刺激策が打ち切られた後が問題だ。
日本にもその長きにわたる低迷期に何度か「回復」は訪れている。だが、金融や財政刺激策が手控えられるたびに、再びデフレに陥っている。
日本はようやく「正常な」回復を遂げつつあるのか。
日本が20年間にわたって慣例的、あるいは極端な金融・財政刺激策を行ってきた理由は、1990年代の株式市場と不動産バブルの崩壊を原因とする総需要の落ち込みにある。そのケインズ理論の中心には、銀行セクターの債務が一掃され、過剰能力が縮小されれば、景気は自律的な成長軌道に戻るだろうとの考えが常にあった。
だが、日本は15年間ほぼゼロ金利政策が続いている上、支出超過に陥っている。1992年時点では国内総生産(GDP)の12%にすぎなかった公的純債務は今年、130%に達する見込みだ。
2000年代初頭の1.9~2.7%という成長率は一見妥当に見える。だが、1980年代のそれと比較すると微々たるものだ。当時日本は世界の頂点に立ち、GDPは年平均約4.5%のペースで拡大していた。しかも、その過去10年に訪れたわずかな成長さえも依然公的刺激策に大きく依存したものであった。
日本のトレンド成長率の低下の原因は総需要の落ち込みではなく、人口構造の変化にあるとする向きもある。だが、だとすれば、なぜインフレは上向かないのか。
日本の公的刺激策は限界に達しつつあるのか。
10年物日本国債の利回りはわずか1.2%程度であるにもかかわらず、日本は巨額の公的債務を抱えているため、利息の支払いだけで政府収入の4分の1以上が消えてしまう。
国際通貨基金(IMF)は、日本の年間赤字は今後10年ほぼGDPの7.5%程度で推移すると予想している。そうなれば、いずれ投資家は日本の返済能力に懸念を抱き始めるだろう。
それは日本がデフォルト(債務不履行)に陥る公算が高まるからではない。日本の債務はほぼ国内の投資家が円で保有しているため、いざとなれば日銀が紙幣を増刷すれば済むからだ。それよりも、政府には赤字を統制・削減する能力がなく、紙幣増刷は債務の貨幣化に直結するとの懸念が払しょくできなくなる可能性があるためだ。
日本の行く末はどうなるのか。
巨額の債務負担を抱え、赤字を削減できず、債務の貨弊化に走るとなれば、日本のたどるべき道は1つしかない。インフレだ。しかも、ちょっとしたインフレではなく、ハイパーインフレだ。こう予想するのは、フランスの金融大手ソシエテジェネラルのストラテジスト、ディラン・グライス氏。同氏の主張には残念ながら説得力がある。
こうした日本の大きな「巻き戻し」は、遅かれ早かれいずれ訪れる可能性がある。それは皮肉にも、世界的な景気回復期待を背景とする債券利回りの上昇によってもたらされる可能性がある。そうなれば日本経済は、たとえわずかな利回り上昇であっても、金利負担の増加によって赤字がさらに拡大し、その結果さらに金利が上昇するという悪循環に陥る可能性がある。
これまで日本の国内投資家は政府債務の穴埋めに甘んじてきた。だが、高齢化に伴って国内貯蓄率は減少している。近い将来貯蓄率はマイナスになり、政府は海外投資家に資金を頼らざるを得なくなるだろう。だが、海外投資家は、損失の見通しが高い投資に対して1%の利回りでは満足しない。
そうなった場合、他国にどのような影響が及ぶのか。
日本がハイパーインフレで立ち行かなくなれば、さまざまな事態が発生する可能性がある。
投資家は間違いなく日本の債券市場から去っていくだろう。そうなれば、ほかの「良質な」ソブリン債に投資家が流れるのか。あるいはソブリン債にはすべて、より高いリスクプレミアムが課されるべきだとみなされるようになるのか。その場合、他の投資商品が選好される可能性もある。恐らくは、コモディティーのように政府が発行できないものだろう。
そうなれば、世界中の市場に深刻な影響がもたらされるのは確実だ。
記者: Alen Mattich
<転載終わり>
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3年前から副島隆彦氏や朝倉慶氏が言われ続けてきたことを、ウォールストリートジャーナルも言ってます。今日の船井幸雄.comの朝倉慶氏の記事も、ハイパーインフレを警告する内容となっています。いよいよ動きが出てきたようです。
加えて温暖化が反転して寒冷化=小氷河期に今年から入ったようですから、まだ価格が安いうちにジャンパーなどの防寒用衣類は買っておこうと会社の人とお昼休みに話していたところです。それにしても今年は寒いですね。
●ウォールストリートジャーナル
http://jp.wsj.com/japanrealtime/2011/01/13/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E5%A4%B1%E3%82%8F%E3%82%8C%E3%81%9F20%E5%B9%B4%E3%81%8B%E3%82%89%E5%AD%A6%E3%81%B6%E3%81%B9%E3%81%8D%E3%81%93%E3%81%A8/
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「日本の失われた20年から学ぶべきこと」
たとえ日本に直接投資をしていなくても、日本の過去20年の経験はわれわれの思考に大きな影を落とす。
残念ながら、その影を理解しようとすることは、その存在を認めることとは大きく異なる。
年末休みにかけて、日本に対する自らの考えを整理しようと試みた結果、一連の疑問について自問自答するのが最も妥当だとの結論に至った。そこで、この場でそれをしてみようと思う。
われわれにとって日本は果たして重要か。
重要だ。理由は2つある。日本は大規模な資産バブルの崩壊や銀行セクターの機能不全、長年のデフレを経験している。同様の不運を繰り返しているかにみえる米国にとっては、日本を参考にすることで、そうした事態がどういう経緯をたどるかを推し量ることができる。
また、たとえ日本の例が米国の参考にならないとしても、日本経済のたどる道は世界の金融システムにとって重要な意味を持つ可能性がある。何だかんだ言っても、日本は依然世界第2位の経済大国であり、一人当たり所得が最も高い先進国の1つであり、巨大な金融セクターを有しているのだから。
米国は日本が味わった苦境を逃れられるか。
米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長がそう考えているのは間違いない。そして、そのために今、最大限の努力を尽くしている。量的緩和策を2度にわたって実施しているのも、日本式デフレを繰り返さないようにするためにほかならない。
FRBは、バーナンキ議長が昨年夏に初めて量的緩和第2弾の実施を示唆して以来、さぞかし市場の反応に勇気付けられたことだろう。景気は回復の兆しをみせており、インフレ期待値もいくらか上向いている。オバマ政権も、減税措置を中心としたものではあるが、一部景気刺激策の延長を決定した。
残念ながら、金融政策が十分な効果をもたらすかどうかは不明だ。コアインフレ(食料品とエネルギーを除く物価上昇率)はかろうじてプラスを維持し、政策金利は実質ゼロ%の現状においては、財政刺激策が打ち切られた後が問題だ。
日本にもその長きにわたる低迷期に何度か「回復」は訪れている。だが、金融や財政刺激策が手控えられるたびに、再びデフレに陥っている。
日本はようやく「正常な」回復を遂げつつあるのか。
日本が20年間にわたって慣例的、あるいは極端な金融・財政刺激策を行ってきた理由は、1990年代の株式市場と不動産バブルの崩壊を原因とする総需要の落ち込みにある。そのケインズ理論の中心には、銀行セクターの債務が一掃され、過剰能力が縮小されれば、景気は自律的な成長軌道に戻るだろうとの考えが常にあった。
だが、日本は15年間ほぼゼロ金利政策が続いている上、支出超過に陥っている。1992年時点では国内総生産(GDP)の12%にすぎなかった公的純債務は今年、130%に達する見込みだ。
2000年代初頭の1.9~2.7%という成長率は一見妥当に見える。だが、1980年代のそれと比較すると微々たるものだ。当時日本は世界の頂点に立ち、GDPは年平均約4.5%のペースで拡大していた。しかも、その過去10年に訪れたわずかな成長さえも依然公的刺激策に大きく依存したものであった。
日本のトレンド成長率の低下の原因は総需要の落ち込みではなく、人口構造の変化にあるとする向きもある。だが、だとすれば、なぜインフレは上向かないのか。
日本の公的刺激策は限界に達しつつあるのか。
10年物日本国債の利回りはわずか1.2%程度であるにもかかわらず、日本は巨額の公的債務を抱えているため、利息の支払いだけで政府収入の4分の1以上が消えてしまう。
国際通貨基金(IMF)は、日本の年間赤字は今後10年ほぼGDPの7.5%程度で推移すると予想している。そうなれば、いずれ投資家は日本の返済能力に懸念を抱き始めるだろう。
それは日本がデフォルト(債務不履行)に陥る公算が高まるからではない。日本の債務はほぼ国内の投資家が円で保有しているため、いざとなれば日銀が紙幣を増刷すれば済むからだ。それよりも、政府には赤字を統制・削減する能力がなく、紙幣増刷は債務の貨幣化に直結するとの懸念が払しょくできなくなる可能性があるためだ。
日本の行く末はどうなるのか。
巨額の債務負担を抱え、赤字を削減できず、債務の貨弊化に走るとなれば、日本のたどるべき道は1つしかない。インフレだ。しかも、ちょっとしたインフレではなく、ハイパーインフレだ。こう予想するのは、フランスの金融大手ソシエテジェネラルのストラテジスト、ディラン・グライス氏。同氏の主張には残念ながら説得力がある。
こうした日本の大きな「巻き戻し」は、遅かれ早かれいずれ訪れる可能性がある。それは皮肉にも、世界的な景気回復期待を背景とする債券利回りの上昇によってもたらされる可能性がある。そうなれば日本経済は、たとえわずかな利回り上昇であっても、金利負担の増加によって赤字がさらに拡大し、その結果さらに金利が上昇するという悪循環に陥る可能性がある。
これまで日本の国内投資家は政府債務の穴埋めに甘んじてきた。だが、高齢化に伴って国内貯蓄率は減少している。近い将来貯蓄率はマイナスになり、政府は海外投資家に資金を頼らざるを得なくなるだろう。だが、海外投資家は、損失の見通しが高い投資に対して1%の利回りでは満足しない。
そうなった場合、他国にどのような影響が及ぶのか。
日本がハイパーインフレで立ち行かなくなれば、さまざまな事態が発生する可能性がある。
投資家は間違いなく日本の債券市場から去っていくだろう。そうなれば、ほかの「良質な」ソブリン債に投資家が流れるのか。あるいはソブリン債にはすべて、より高いリスクプレミアムが課されるべきだとみなされるようになるのか。その場合、他の投資商品が選好される可能性もある。恐らくは、コモディティーのように政府が発行できないものだろう。
そうなれば、世界中の市場に深刻な影響がもたらされるのは確実だ。
記者: Alen Mattich
<転載終わり>
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3年前から副島隆彦氏や朝倉慶氏が言われ続けてきたことを、ウォールストリートジャーナルも言ってます。今日の船井幸雄.comの朝倉慶氏の記事も、ハイパーインフレを警告する内容となっています。いよいよ動きが出てきたようです。
加えて温暖化が反転して寒冷化=小氷河期に今年から入ったようですから、まだ価格が安いうちにジャンパーなどの防寒用衣類は買っておこうと会社の人とお昼休みに話していたところです。それにしても今年は寒いですね。
●ウォールストリートジャーナル
http://jp.wsj.com/japanrealtime/2011/01/13/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E5%A4%B1%E3%82%8F%E3%82%8C%E3%81%9F20%E5%B9%B4%E3%81%8B%E3%82%89%E5%AD%A6%E3%81%B6%E3%81%B9%E3%81%8D%E3%81%93%E3%81%A8/