「スワロウテイル」(SWALLOWTAIL BUTTERFLY) (1996、149分)
監督・脚本: 岩井俊二、撮影: 篠田昇、音楽: 小林武史、助監督: 行定勲
三上博史、CHARA、伊藤歩、江口洋介、アンディ・ホイ、渡部篤郎、桃井かおり、山口智子、大塚寧々、ミッキー・カーチス
日本円が強かったある時期、円を稼ぐために外国人(多くは不法入国)が集まったある地区はイエン・タウンと呼ばれ、その人達もイエン・タウンと呼ばれた。という想定で、そこでクラブを持ち一旗あげようとするフェイホン(三上)、男相手の商売から歌手になったグリコ(CHARA)、偽札つくり、麻薬、やくざ、、、そういう要素を全部詰め込み、昔のどこかアジアの租界のようなところで話が展開する。
いまさらと最初はちょっとなじめなかったが、クラブを作ることになるあたりから、これは岩井俊二が面白いと思うことをやりたい映画だということはわかってくる。
この変化の最初でCHARAが歌う「マイ・ウェイ」はすごい、特に繰り返しからのデフォルメが。
「マイ・ウェイ」のカセットに、偽札つくりに必要なデータが隠されているというとんでもない設定があるのは笑える。
全体に長いのだが、話と映像のテンポ、ここでも篠田のカメラで、だれた感じはない。
そして、グリコが拾った日本生まれという少女アゲハ(伊藤歩)が全体を引き締め、「聖なるもの」ともいうべき存在を示す。また彼女の視点は映画を見るものの視点でもある。伊藤歩の周囲を圧する静けさがいい。
最後の場面は、演出がちょっと甘いかなとは思うのだが。
岩井俊二という人は、「リリイ・シュシュのすべて」でもそうだが、どこか女性、特に少女の視点、その扱いで、やりきれないストーリーにアクセントをつける、救いを求めるところがある。リリイでは蒼井優、それに加えて空を飛ぶ凧であろうか。
篠田昇はもうここで、汚い街をバックにしても、映画の娯楽性という点からは問題ない映像を作り上げるという手法をつかんだのであろう。
アワロウテイルは映画の中でも語られているように、その形状から(キ)アゲハのこと。