「遙かなる未踏峰」(Path of Glory)(2009) ジェフリー・アーチャー作、戸田裕之訳(新潮文庫 上下)
「そこに山があるからだ」で知られるジョージ・マロリー(1886-1924)がエヴェレストで行方不明になるまでの物語である。
1999年、エヴェレスト山頂近くでマロリーの遺体が発見された。その中に、彼が愛し遠征中も毎日手紙を書いていた妻の写真はなかった。ではそれはどこにあるのか。
この謎を解くというのではなく、それに触発されて書いた、なかなか感動的な物語である。
英国のケンブリッジ、階級、植民地、さまざま要素がわかりやすく配置され、読み物として効果を出している。一流のストーリー・テラーではずれが少ないアーチャーの中でも、出来がいいものの一つだろう。
ところで訳者名が見慣れないな、と思ったが、そういえば前作「誇りと復讐」の後、それまでずっとアーチャーをはじめいくつもの名訳をものしてきた永井淳は亡くなったのだった。
最新記事
プロフィール
- 自己紹介
- 興味を持っているものが意外なものにつながっていくことが好きで、そういう意味の個人メドレーです。音楽一般、オペラ、映画、本、水泳などが中心でしょうか。これまでの仕事はデジタルアーカイブでした。