メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

ノマドランド

2021-11-08 17:22:01 | 映画
ノマドランド ( Nomadland、2021米、108分)
監督:クロエ・ジャオ
フランシス・マクドーマンド
 
定職につかず、定住もせず、車で寝泊まりしながら移動していく人々の話で、ドキュメンタリータッチのところもある。
2,010年ごろ、リーマンショックの影響が大きいネヴァダからアリゾナが舞台、中高年の女性ファーンは勤めていた石膏工場が閉鎖され、仕事を求めてくるまで移動する生活を始める。以前は臨時教員をしていたこともあり、結婚していたのだが夫は病死、それが心の中に重く残っている。
 
同じような境遇の人たちが駐車し集まっているエリアがあり、そこで情報交換したり、悩みを話し合ったり、必要なものを物々交換したりしていて、なんとか凌いではいけているようだ。あまりひどい争い、暴力沙汰はない。
 
あえてドラマを作らず、映画は淡々とあまり緑のないしかし夕暮れなどきれいな景色の中で、観るものに少しずつ語りかけていき、しばらくするとなかなかうまいなと感じられてくる。
 
ファーンを演じるマクドーマンドは製作にもかかわっていて、全体のテーストは彼女のアイデアでもあるのだろう。彼女の夫はジョエル・コーエンだそうだ。
 
しばしの勤め先の中に、アマゾンの倉庫配送センター、国立公園の施設清掃などがあり、現代米国の象徴のような感があるが、アマゾンもよく協力したなと思う。ここに最先端のアマゾンが姿を見せるというのは意味があるわけで。
 
終盤の30分位でファーンの家族と彼女が一人になった経緯が明かされるが、比較的さらりとしていた。
 
ノマドワーカーという言葉で、おそらくもう少しハイクラスの人も含め、今こういう形態が目立ってきているということは、きいたことがある。
  
ノマドは遊牧民の意だが、たしかもともと仏領北アフリカあたりが起源で、私が知ったのはアルチュール・ランボーとかアラビアのロレンスという文脈でだったと思う。
 
厳しい現実を淡々と描いていて、救われるというか評価できるのは、生きることに対する肯定感だろうか。それがアカデミー賞の主要部門の独占につながったのかもしれない。


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