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メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

レッズ

2018-05-05 17:12:06 | 映画
レッズ(REDS、1981米、196分)
監督:ウォーレン・ベイティ、脚本:ウォーレン・ベイティ、トレヴァー・グリフィス、撮影:ヴィットリオ・ストラーロ、音楽:スティーヴン・ソンドハイム、デイヴ・グル―シン
ウォーレン・ベイティ(ジョン・リード)、ダイアン・キートン(ルイーズ・ブライアント)、ジャック・ニコルソン(ユージン・オニール)、モーリン・ステイプルトン(エマ・ゴールドマン)
 
「世界を揺るがした十日間」を著したジョン・リード(1887-1920)(ジャック)はジャーナリストとしての活動の中で、次第にアメリカの労働運動、共産党運動、第一次世界大戦への反戦運動に、熱中していく。当初、差別への抵抗活動をしていたルイーズの方が書くことより活動することを上位に置いていたが、二人が一緒になり、離反を繰り返して行くうちに、ジャックの方が熱くなり、彼は革命の真っただ中のロシアに密航し、アメリカ国内の分裂した共産党運動で彼が属する一派の認定をコミンテルンに働きかけるが、これは失敗し、最後はなんとかたどり着いてルイーズと会ったものの、病と負傷(?)で息絶える。
40代で製作、脚本、監督そしてもちろん主演という驚くべき活躍をしたベイティ、この必ずしも共感ばかりできない主人公の表情、エネルギー、いい加減さを、長時間よく演じた。
パートナー役のダイアン・キートン、前半はユージン・オニールとも一緒になったり、跳ね上がりであるが、後半次第にイデオロギーのつきものが落ちてきて、それでも現実にはジャックを救いに勇敢な行動を続けていく。これもこの映画の一つの軸。
 
当時のアメリカの労働運動についてはよく知らないが、この映画で見る限り、インテリ主導の色彩がかなり強く、後半ユージン・オニールが皮肉っぽく言っているように、労働者のため、反戦のためと言いながら、生活感覚としてはまったくの中流意識から抜け出せないというのが本当のところなのだろうか。そのあたり、映画として関係者たちの矛盾は矛盾として置いたまま描いている。
 
何度も出てきてコメントする何人もの老人男女たち、最初は役者かと思ったが、そうではなくて主人公二人と同時代を生き、存命している人たちのようで、この映画をドキュメンタリーの要素が加えられたものにしている。
 
反戦は当初はウイルソン大統領の政策として支持されたが、ドイツに対抗するものとしての参戦の方が、単に英仏に投資している財閥を守るためとばかりは言えなくなって、国民の多くから支持されるものになっていった。
 
この映画を作ったベイティについては、国内でいわゆるリベラルというイメージがあったけれども、今回ずいびん久しぶりに見て、そう単純なものではなく、こういう大きな物語と個人の生活(意識)の物語の相克、矛盾を描き出すことを怠ってはいない。ベイティの映画デビュー(草原の輝き)で監督したエリア・カザンの赤狩り協力批判に対する見方にも、それは今考えてみれば現れている。
 
本作のカメラはアカデミー撮影賞をとっているが、全編にわたって鮮明なフォーカスと画面の明るさ(人間の眼の明るさに見合った)、アングルで、この長編を疲れないで見ることに貢献している。素晴らしい。
 
それから、何度も歌われるあの「インターナショナル」、言語、環境でいくぶん違うようだが、こんな風に歌われていたのかと、はじめて知った。

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