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メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

ラモー「イポリットとアリシー」

2019-07-19 15:50:43 | 音楽一般
ラモー:歌劇「イポリットとアリシー」
指揮:サイモン・ラトル、演出・振付:アレッタ・コリンズ、照明・映像:オラフール・エリアソン
アンナ・プロハスカ(アリシー)、マグダレーナ・コジェナー(フェードル)、レノー・ヴァン・メヒェレン(イポリット)、ギュラ・オレント(テゼ)
フランクフルト・バロック・オーケストラ、ベルリン国立歌劇場合唱団
2018年12月6、8日 ベルリン国立歌劇場 2019年5月 NHK BS
 
ジャン・フィリップ・ラモー(1683-1764)についてはフランスの作曲家ということと、バロックの鍵盤音楽(クラブサンなど)を聴く機会に何か曲が入っていたかな、という印象しかなかった。しかしこうして優れた映像記録でオペラを見ることが出来て、本当によかった。
 
話はおそらくラシーヌの「フェードル」からきたもので、王テゼに滅ぼされた一族の娘アリシーとテゼの息子イポリットが恋仲なのだが、テゼの後妻、イポリットの継母フェードルがイポリットを好きになってしまう。テゼは死んだと思われたが、冥界で神々とのやりとりから生還してきて、事実を知って怒る。イポリットとアリシーの駆け落ち、そして女神ディアーヌなどのはからいなどで、最後に二人は結ばれ、祝福される。
現代から見るとなんだかめんどくさい話なのだが、この作品そしてこの上演は見事に観客を最後まで惹きつけ、飽かせない。
簡潔にいえば、演出の勝利だろうか。衣装と照明もあって、各役はシンプルに色分けられ、全身タイツ姿のダンサーと背景の合唱によるコロスは、場面間のかなり長い管弦楽の時間、こちらの注意をうまく喚起してくれる。終わってみると祝典劇の一面も感じられる。
 
この長い場面間の管弦楽、思い出したのはヘンデルのオペラで、同じように強い推進力でくどいくらいに続く。これは当時の劇場公演で何か強い位置づけがあったのだろうが、現代の上演となると今回のようにやってくれるのがいいかなと思う。
 
各人の歌唱は無理のないきれいな声で、ヴェルディはともかくより以前の19世紀初期イタリア・オペラやモーツァルトに比べても、歌で競うという感じではない。
 
1734年初演の全5幕、傑作と言ってよい。確認してみたらラモーはバッハ、ヘンデルとほぼ同時代人。私は音楽の専門的なところに詳しくないが、和声でいくとラモーはこの時代、きわめてすぐれた人だったのではないか。特にきれいで心地よいという点で。
 
ラトルのこういう分野での仕事は初めて知ったが、このオーケストラとともに快調で、破綻はなかった。そういえばフェードルのコジェナーはラトル夫人。
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