久しぶりにおとやに顔を出し、プリンタのご機嫌を伺っていた。客の切れ目、暖簾を下ろそうかという頃である。
まあ、座らんせ
とカウンタに誘われ、熱いお茶をいただきながら大将と牡蠣談義である。すかさず牡蠣のニギリを出してくれた。生ではない。軽く酒蒸しにした牡蠣に味噌が乗せてある。一口頬張った途端、じわーっと口中に滋味が広がる。未知の味覚である。牡蠣はたいした奴である。生でよし、焼いても、揚げても、蒸しても…美味い。それぞれの味わいがあり、それぞれに味の彩りがある。前言撤回だ。
うちの娘なんか帰って来るたんび、勝手に貝から剥いて啜っとるよ
思わず空飛ぶやんちゃ姫がひたすら貪り啜る姿が浮かぶ。ブログを読んでいて思うが、ほんとうに美味いもの食いである。レディだから美食家と言い直そう。この環境では当然であろう。次に出た、真珠貝の貝柱のニギリも絶品で、これは他所では食えない味だ。やわらかく、それでいてこりっとした食感が舌にさわやかで、後を引く。やんちゃ姫たちはこんな美味を味わって育って来たのだから、うらやましい話である。
ところで、ぼくの異名はアゲ○○である。店仕舞いしようかという頃になって、NT氏のお成りである。先日の忘年会では乾杯の発声をお願いした。それも事前の打ち合わせなしに、突然の指名である。その詫びとお礼を言う。
来年が皆様にとってよいお年となりますよう
動ぜず、適切に言い尽くしてくれた氏の存在はありがたい。万事適当に、というぼくのウェイに怯むことなく支えていただいている。さあ、それからが店の常連諸氏のお成りである。今夜は金曜とあって、忘年会の流れらしい。中坊の頃からお世話になっているM先輩に久しぶりにお会いして…、久闊(きゅうかつ)を叙すどころか、昔話に花が咲いた。NT氏、M氏からあれやこれやご馳走になって、「タダメシ食い」健在である。遠慮なく鵜方弁が乱れ飛ぶ店の雰囲気が快い。たまには外に出るものである。
教室ではエンヤが流れている。日の終わり、静かに一日を振り返る。未達の案件が三つ。ため息が出そうだ。