おなじみ、山の隠れ家的喫茶店、「コンドルは飛んで行く」。午後3時を過ぎると、人間以外の珍客もある。
この店は南面ギリギリ崖の上に建っていて、崖下は、手前、小川が通る小広い原っぱ、奥に向うと雑木林から深い森へと続いている。水清く、透き通ったせせらぎから亀がひょっこり顔を出し、暮れ近くになると番(つがい)の狸らしき動物がひょっこり顔を出す。野鳥も多彩で、雀、カラスは言うに及ばず、鶯から鷲まで現われる。だから「(いろ)とりどり(取り取り)」と呼ぶのかどうかは知らないが、ちょっとした野生の王国である。
お互い顔馴染みとなった客の間でもっぱら話題なのが、
狸か狢か…つまり、タヌキなのかムジナなのか
である。
- タヌキにしては、キツネっぽいでぇ(? なんなんだぁ!)。
- タヌキならもっと丸っこくひょうきんなはずや。
- 文岡中学校のグランド辺りに見られるムジナに近いなぁ
かまびすしいって喧しいやったっけ、平和なやりとりだ。
店主は、
「生態系を乱すから、餌はやらない、やらせない」
と、毅然としていた。
ところが、誰かが発した一言、
「餌がないもんで(求めて)国道まで出て行くもんやから自動車に轢かれるんさなぁ(、可哀想に…)」
から様子が変わった。
「ご注文は?」
「マフィンサンドね!」
「あの…、売り切れましたぁ」
店で評判の、また、ぼくの好物でもあるマフィンサンドがめっきり食べられなくなった。タヌキかムジナか知らないが、彼らの餌に回ったように思えてならない。店内の人間の方の環境(生態系)が変化したのは確かだ。
今日のBGMは、スタジオジブリの「平成狸合戦ぽんぽこ」から「いつでも誰かが」。ギターで聴いている。だんだん狢のような気がしてきた。