寝苦しい夜が続いている。安眠を妨げる熱帯夜って…、まだ始まったばかりか。梅雨明けからこっち、つらく長い夜が続いている。八月がなかなか来ない。
昨日もびっしりとコマが詰まって、絶え間なく生徒さんが続いた。ようやく最後の授業が終わったのが10時。メールのチェックをしている時だった。
教室の片隅に小さな流し台がある。そのシンクから物音がする。でも、蛇口が緩んだ
ポタン、ポタン
ではない。
ぼこっ!
確かに当初は蛇口が緩んでポタリポタリと垂れる水音かと思った。今ひとつ様子が違う。明らかに振動が伴う。喩えて言えば、
グーっ、グーッ
ってか。
でも、そんなに切実感もなくて、メールの返事を書いていた。間隔が縮まるまでは…。
いつしか無視できない騒音とともに振動があって流し全体が揺れた。
グワッ、グワッ
と、見ると受け皿(家庭における残飯や野菜くずなどが流れていかないように設置されているゴミを受けるためのかご)が上下にピストンしている。物音も、その上下運動も激しくなった。
このときばかりは鈍重なぼくでも異様さを覚えた。勢いよく駆け寄り、カップなどを片づけ訳だが、この時、脳裏に悪い予感めいたものが浮かんだ。
この異常な現象は、もしかして
このビルに生息するヌシ
ではないか知らん。
アナコンダのような不気味な、蛇のような生命体が排水管を縦横無尽に徘徊しているのではという恐怖。とにかく姿が見えないだけに恐怖心は離れない。ただでさえインディ・ジョーンズと同じく長いものが苦手だ。
おっかなびっくりウオッチしようと、腰が引けたまま、覗き込んだ途端だ。急に受け皿が噴き出す勢いで天井まで跳ね上がった。不覚にも、なりふり構わず
うわーっ!
と悲鳴を上げた訳だが、その瞬間だ、ぼくは目が覚めた。どうやらうたた寝をしてたらしい。