滋賀県 建築家 / 建築設計事務所イデアルの小さな独り言

建築家・清水精二のブログ、何でもあり独り言集・・・。

数寄屋造り

2009年07月11日 | 建築
今日は数寄屋造りのお話です・・。昨年からお寺の庫裏の建替え工事を手掛けている事もあって、和風建築の書籍を調べたり、和風建築の遺構を見学に行く機会が多くなっています。それで・・ここ数日は今までにも何度も見ている数寄屋造りの本(数冊)に再び目を通しています。(工事中のお寺の庫裏について確認しておきたい事があるのと、迷っている事のヒントを探すためです・・。)

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ところで、「数奇屋建築」とか「数寄屋造り」という言葉は、日本人なら誰もが聞いた事がある言葉だと思うのですが、実際に「数寄屋造り」がどのような建築様式の建物なのかを知っている人は意外に少ないように思います。
と言うのもその筈で、この数寄屋造りという和風建築は形があって形がない(定型化していない)ようなものなので、理解するにはある意味で日本建築の最難関と言えるかも知れません・・。
ですから、ここで数寄屋造りについて全てをお話するのは難しいので(上手く説明できないかも知れないので・・)、私の思うところを要点をまとめて簡単にお話します。

もともと数寄屋は別棟に造られた茶室の事で、室町時代に村田珠光が初めて造り出したと言われています。16世紀末期になると茶室建築の手法を採り入れた建物(主に住宅)が現れ、身分差を越えて流行し大名や貴族の別荘のほかに、料理茶屋などにも用いられます・・。
初期には弁柄(べんがら)と練墨で煤色(すすいろ)に色付けした事もあったようですが、通常は白木のままで塗装はしません。それまでの書院造が重んじた格式ばった意匠や豪華な装飾様式を極力排しているのが特徴となっています。

つまり、数寄屋造りを一言でいってしまうと数寄屋(茶室)建築を採り入れた建物(住宅)の様式という事になります・・。語源の「数寄」とは和歌、茶の湯、生け花など風流を好む事ですから、「数奇屋」は、好みに任せて建てる趣味的な空間(家)と言ったところでしょうか・・。
もっと平たく言うと、数寄屋造りの建物は自由な感性と表現で造られているという事です。使用する木材の種類や障子の組子のデザインなどにもルールはありません。逆に自由だからこそ、建主の知性やセンスが問われるという事になります・・。

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ただ私が思うには、数寄屋造りは自由な感性と表現(ルールはない)で造られている筈なのに、数寄屋造りに形式ばった意匠性があるように思えるのは、優れたセンスのものだけが残っていて(受け継がれていて)、その優れた意匠どおりにすれば風流がある趣味的な空間ができるだろうというちょっとした錯覚に陥っているからではないでしょうか・・。
(実際に数寄屋造りを建てるとなると、そのセンスのいい優れた意匠性を採り入れたくなるので、やはり数寄屋造りという形式の定義が存在するのも事実なのでしょうけど・・。)

という事で、上手く説明できなかったかも知れませんが、最初にお話したとおり数寄屋造りという建築は形があって形がないようなものという意味が何となくお分かり頂けたでしょうか・・・。
ちなみに、画像は2年前に設計させて頂いた「(財)膳所焼美術館 新世庵」です。耐震性を重視して鉄骨造になっていますが、お茶席なので内部造作は、長押を省いて面皮柱にするなどいわゆる数寄屋造りとなっています・・。











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