57. 私が株で学んだこと (五十嵐玲二談 2014年)
1. 私はなぜ株を始めたか
世界の歴史において、資本主義経済か、共産主義経済かのどちらかしかない。そこで私たちは資本主義経済を選んだ。しからば資本主義経済は何をその基盤としているかというと、多様で自由な企業活動がその基盤であり、その株を上場することによって資金調達とその透明性、社会的信頼性を高めている。
この資本主義経済の核である株をしてみようと考えた。株を買って、株に関する本も読み始めた(現在も読んでいる)。株に関する本の中で、”株で儲けましょう””私は株で1億円貯めました”という本にろくな本はない。
もちろん私も、自分は株の才能があって、うまくいけば儲かるのではないかと考えた。しかし、そううまくはいかなかった。でも30年以上もの間細々とはいえ株を続けてきました。最近、読んだ本に株も数百万から千万円の下位程度の規模の時が、一番面白かったと書いてました。数千万を超えるとそれらはお金ではなく、単なる数字のなるそうです。
2. 株のおもしろさ
(1) 価格とは、常に変動するものである。
日本に住んでいれば、円は常に一定であり、通貨レート、金、銀、銅、原油、小麦、トウモロコシ、大豆の価格が変動しているように考えるが、円の相場がポンドに対して、戦後どのように変化したかをみてみましょう。
1949年 1ポンド=1008円
1967年 1ポンド= 864円
1980年 1ポンド= 526円
1990年 1ポンド= 257円
2000年 1ポンド= 165円
2011年 1ポンド= 116円
2014年 1ポンド= 173円
ここでポンドと円の60年の変化を書いたのは、常にすべての価格(価値)は、大海原に浮かぶ小舟のように変化する、或は通貨危機によって、転覆するかもしれない。なお、1947年に新円切り替え、1971年まで、固定相場制です。
紛争によって原油価格が上昇したり、大規模干ばつによって小麦の価格が上昇したり、それによって関連する企業の株価が変動し、サブプライムローンのような大規模のインチキ(初めから、返済の見込みがなく、住宅そのものの価値も怪しいものを、イカサマ牛肉のようにミンチにして、インチキな格付けをした)によっても、世界経済は揺すぶられ、意外と害だけは庶民にもしっかりくる。
したがって、自分の生活を守るためにも、対応できる手段を常に考え用意しておく必要があります。
(2) 企業の価値をどう捉えるか
まずは、貸借対照表と損益計算書によって捉える。貸借対照表を過去5年くらいをまず串刺しにしてみる。優良企業の財務諸表を見る、単に見るのではなく、各企業独自の項目、なぜ、日航のインチキ決算が見抜けなかったか、甘い決算書か、辛い決算書かを自分の頭で考える。基本情報は平等であり、、我々も分析するのに資格がいるわけでもなく、公認会計士も優れたツールをもっているわけではない。
負債合計と資本合計の割合は重要である。銀行、保険会社の財務諸表を読み解くのは、ほぼ不可能に近いが、最後は、その企業の実績と株主資産が年々増加していることは、重要である。できる限り自分で財務諸表を分析し、その企業の価値を設定する。
ここで、自分自身の家庭についても年度ごとに、資産表を12月31日を基準日として、毎年表にして、自分の資産状況は、どうなっていて、株の状態はどうなったか、自分の決めた限度額は、守られているか、この自分を知らずに、自分をコントロールできずに、戦いに勝つことなどできない。
しかしながら、貸借対照表、損益計算書によって、企業のその時点での価値、家庭の経済的価値を把握する以外に方法は、ないのであるからこれらの財務諸表によって、より多くの情報を導き出すことは、全ての経済活動に通ずる。
(3) 自分が株を持つことによって、世界と連帯できる
自分がある企業の株を持つことによって、自分と企業、自分と社会、自分と世界が繫がる。たとえ100株でも、1万株でも、企業の対応は同じです。私のように退職した我儘なものが、世界とつながることは、そう簡単ではない。
自分が希望する企業に就職できるものは、ほんの少数であろう。しかし、どんな企業であっても、株主になることは、歓迎してもらえる。多くの企業は、多くの社会貢献をしている。自分は少額であろうと、株主として、社会貢献をし、社会と連帯していることを感じる。
(4) 人間はギャンブル性を求める動物か!
私の父は、まったく囲碁、将棋、麻雀、競馬、宝くじ、パチンコ等の勝負事、ギャンブルを一切したことはなかった(植物の種、育種一筋であった)ため、私は少しずつかじったが、どれも勝つことは、出来なかった。これからお話する株の危険性、詐欺性を排除して、上質のギャンブル性を楽しみ、実益をあげることが株では可能である。
3. 自分の投資スタイルの模索
(1) 自分が軍師になったと考える
自分の大切な資金を運用する。軍師となることすなわち権限と責任をすべて有する、そのためには孫子に倣って、”敵を知り、己を知り、百戦危うからず”である。株式市場には、様々なウソ、インチキ、ダマシ、ペテンが仕掛けられているので、こんなものに引っかかるようでは、軍師ではなく単なる”でくの坊”である。
現在の円の水準、原油価格の推移、日経平均株価の推移、ニューヨーク市場の株価動向、東南アジアの景気、小麦、トウモロコシ、大豆の作柄、金価格の動向、銅価格の動向をつね頭に入れておく。
軍師は、まず軍師として、自分と家族の命運を左右するという自覚をもつのであるから、石橋をたたいて渡らない勇気をもたなくたはならない。すぐに軍師になれるわけでなく、過去の軍師を研究し、過去の経済危機はどのように発生したか、すべて自分の頭で考え、自分の情報分析法を持たなくてはならない。
現代はインターネットによって膨大な情報を得ることができる、この中からガスネタと情報を選別し、それらを分析し、自分の情報ネットワークに組み込んで、何かの兆候を読み取る。
(2) 株を取り巻く、問題企業
フロント企業、パチンコ関連企業、企業のトップと証券会社が組んで、株価を煽って、売り抜ける、公認会計士と組んで粉飾決算を行う、サブプライムに経営者が騙される、経営者が発生した問題を隠蔽し、株を売り抜ける、決算情報を事前に漏らす、第三者割り当てを勝手に行う。経営陣が2つの勢力に分裂し、会社の業績を低下させる。親会社が株式上場を突然廃止する。役人と組んで薬の効能を偽装する。
これらを回避するには、企業のプロダクトと過去の実績、経営者の人相など、良く注意して、近づかないことである。
(3) 株で失敗する理由、株べからず集
① 他人の口車に乗って、自分の都合のいいようにその株が上がると信じ込む。
② 自分の分際を知らずに、回避可能な危険を回避しない、それは単なる馬鹿である。
③ 本人の頭が正常でない、自分をコントロールすることができない。世間や世界を自分の都合だけで考える。
④ 一日から五日単位の短い波動か、1ヵ月から4ヵ月の中期波動か、半年から4年の長期波動か、の投資スタイルを決めてない。
⑤ ”塩づけ”これは、単に自分の失敗を認めたくない(騙された可能性大)ための言い訳で、キズを深くし、自分のプライドを傷つける。
⑥ 株は、絶対に騰がるなどというように、下がった時の対応を充分に、考えてないのは原子力安全委員会などと同じ穴の狢である。
⑦ 自分の家庭の貸借対照表を付けずに、その会社の5年分の連結貸借対照表を串刺しで、見ることもせずに株など片腹痛い。
⑧ 自分の少額な資本でも、自分で働いたお金であるから、とにかく丁寧に、必ず裏を取って、判断をすること。
(4) 私の失敗事例
① インターフェロンのミドリ十字
夢の制癌剤を開発したとかしないとかの口車に乗って、買ったがほぼ潰れたようなもの。
② メタンハイドレートの三井造船
夢のエネルギーで海底に豊富にあり、20年以上前から今でもほざいている。株価は三分の一以下に下げただけだった。
③ 石油掘削用シームレスパイプの住友金属
これは実際に使われており、世界的な技術であり、”鉄は国家なり”も事実であるが、株価は後進国に押されて半分以下に下がった。
④ インターネット時代の国際電電
これからは、インターネットの時代であるから、国際電信電話を先回りして、買っておけば、必ずや大きく上がる。これが全くの食わせ物で、単に国際電話を独占していた、官僚の天下り先で、インターネット時代とは何の関係もなかった。株価は三分の一以下の価格で吸収合併。
⑤ 超優良企業としての長銀
札幌支店でも銀行として格が違い、さぞ優良企業に長期投資をしていると思っていた。事実定時預金の金利も良く、行員の客への対応もすばらしかった。従って、少額ながら預金もし、株も買い自分も長銀ファミリーになった気持ちでいた。実態はとんでもなく倒産。官庁ぽい企業には注意を。(私は買ってないが、日航も東電も)
⑥ 世界で4番目のディズニーランドとしてのヨーロッパディズニー
カルフォルニア、フロリダ、東京、いづれも大成功のディズニーランドが世界4番目のヨーロッパディズニーを開く株を買いませんか、これを買わないのは馬鹿だと私もこの株を進めた義兄(証券会社の札幌支店の次長)もそう考えた、しかし国内企業でないため、状況もわからず、株価さえどうなってるか判らなかった。結局今でも存在はするが、数年後に株を処分したが、百分の一以下の価格であった。
(5) 株で一番大切なことは、良い企業を選ぶこと。
① 株の投資スタイルを確立するには、自分と相性の合う会社を選ぶことで、どちらが先か判らないくらい不可分な関係にある。
② 良い会社は、1年ほど株を持ってみると、その間気持ちの良い企業である。
③ まず、その企業の事業内容に誇りを持てること、さらには、安定した利益があり、株主にも配当があること。
④ 株式市場の原動力は、利益を上げ、配当をし、税金を支払い、利益剰余金を蓄積し、次の企業活動に貢献することである。
⑤ さらには、企業として様々な社会貢献を行うこと、そしてその企業とともに自分も成長できることが、ベストである。
私は、現在まで、50社くらの企業の株を所有してきたが、その中で一番、私の投資スタイルに合っていると感じた企業は、三菱商事である。
三菱商事は、まず世界を知っている、海外に200ヶ所の拠点を持ち、そのエリアの様々な情報を保有している。
商社は、日本独自の形態であるが、エネルギー、金属、機械、化学品、生活産業、穀物、金融、地球環境などあらゆる分野に及ぶ。プロジェクトによっては、一社だけでは、むずかしいその時、様々な企業が三菱商事とタッグを組んでやることによって、その確実性は向上する。
株で良い企業がなぜ必要かは、株価が下がった時に、買う必要がある訳だけど、みんなが売る時、買うのは余程その企業を信頼していなければ、買えないものである。株価が上がるのは良いことではあるが、たとえ株価が下がっても、配当が下支えになり、買い足すことが可能と考える。さらには、株主への報告書、ホームページが非常に明瞭で、信ぴょう性が高い。(第58回)