チェロ弾きの哲学ノート

徒然に日々想い浮かんだ断片を書きます。

ブックハンター「英語で味わう名言集Ⅱ」

2016-08-28 11:00:07 | 独学

 117. 英語で味わう名言集Ⅱ (ロジャー・パルバース著 2011年3月)

 本書のすでに紹介しましたが、さらに25篇ほど紹介したくて、英語で味わう名言集Ⅱとして紹介します。紹介する名言は、日本語だけを読んでも、英語だけを読んでも、さらには、両方読んで、暗記しても決して損することはないものです。

 先に30篇ほど紹介しましたので、併せて55篇を紹介することになります。さらには、名言の作者に関する著作を読むこともおすすめします。


 『 I  have  no  special  talents.   I  have  only  passionatly  curious.

 私には特別な才能があるわけではありません。 ただ好奇心が激しく強いだけです。 アルベルト・アインシュタイン(物理学者)

 curious (好奇心が強い)に passionately (情熱的に)をつけるのは、少々変わった使い方です。でも生命や宇宙に対するアインシュタインのあくなき好奇心を表現するには、まさにぴったりと言えるでしょう。


 Invention  is  the  same  as  love.   It  does  involve  suffering.  

 But  it  also  can  be  so  much  fun  if  you  let  it  be.   〔PR〕

 発明は恋愛と同じです。苦しいと思えば苦しい。 

 楽しいと思えばこれほど楽しいことはありません。  (本田宗一郎 ホンダの創業者)

 この名言の真髄は、苦しみ(英語では suffering や pain など)と楽しさ(fun, pleasure, enjoymentなど)の対比に表現されます。

 確かに、恋愛もそうでしょうね。 

 〔PR〕: 著者(ジャー・パルバース)の訳の印です。 (本田宗一郎については、本ブログ98.「得手に帆をあげて」で紹介してます。)


 Man  is  but  a  reed,  the  most  feeble  thing   in  nature;  but  he  is  a  thinking  reed.

 人間とは葦にすぎない。自然界で最も弱いものだ。だが、人間は考える葦である。 ブレーズ・パスカル(フランスの数学者・哲学者)

 原文では、「考える葦」は un roseau pensant という美しいフランス語です。これはまちがいなく、パスカルのいちばん有名な言葉でしょう。

 人間は自然界で最も弱い、とパスカルは言い、いとも簡単に折れたり曲がったりする葦にたとえています。しかし、人間には考える力があります。

 パスカルの時代から約400年たった現代、人類が直面している自然破壊から、その考える力は私たちを救ってくれるでしょうか?


 Those  who  say  they  have  no  time  to  learn  could  not  learn  even  if  they  had  the  time. 〔PR〕

 学ぶに暇(いとま)あらずと謂(い)ふ者は、暇ありと雖(いえど)も亦(ま)学ぶ能(あた)ざらん。 劉安(前漢の学者)(淮南子(えなんじ)より)

 「…のために時間をつくる」というフレーズは、英語にもあります。make time for …です。この名言は、If you can't find the time to learn, make time for it.

 (学ぶ時間がないなら、自分で時間を作ろう。)と言いかえることもできるでしょう。いい言葉ですね。時間は本当に作ることができるものです。

 

 It  should  be  an  obligation  of  older,  more  experienced  people  to  make  the  young  realize  what  they   want  out  of  life.     〔PR〕

 「それが私のやりたいことだったんだ」と悟れせる義務が、人生の先輩にはあるはずだ。 (堀場雅夫 堀場製作所創業者)


 セリフの形で書かれた内容を地の文で表現し、「先輩」にあたる語句が英語にはなく、どうしても説明的になりました。

 ここでの「義務」という言葉の使い方が私は気に入っています。こういう義務感こそ、教育を前進させ続ける原動力ではないでしょうか。

 obligation (義務)の形容詞形は obligatory (義務的な)。例えばこんなふうに使います。

 It's obligatory to wear seat belts in both the front and back seats of a car. 

  (車内では、前の座席でも後ろの座席でもシートベルト着用が義務づけられている。) 』


 『 Teaching  is  learning  twice  over.  〔PR〕

 教えることは、2度学ぶことである。  ジョセフ・ジュベール(フランスの思想家)

 これは全く真実ですね。私自身、自分が学生たちに教える以上のことを、学生たちから学んでいる気がします。もともとのフランス語にあった deux fois を、私は twice over という英語で表現しています。

 単に twice (2度、2倍)としただけでは、意味が十分に伝わらず、中途半端で終ってしまう印象になるため、over で強調しているのです。


 My  geatest  challenge  has  been  to  change  the  mindset  of  people.   Mindsets  play  strange  tricks  on  us.

 We  see  things  the  way   our  minds  have  instructed  our  eyes  to  see.

 最も難しいのは、人々の固定概念を変えること。 固定概念は、私たちに錯覚を起こさせる。

 自分の頭が命じたようにしか、物事を見られなくなるのだ。  ムハマド・ユヌス(バングラデシュの経済学者)

 challenge という言葉が、この名言に力強さを与えています。 be up to the challenge は、何かをする能力がある、という意味です。

 動詞 challenge には、「対決する」というニュアンスもあります。 ユヌスは、難題は人々の mindset (固定概念)だと言っています。mindset には、変化を望まない、というネガティブなニュアンスがあります。

 ムハマド・ユヌスは、飢きんに苦しむ農村救済のため、少額無担保融資(マイクロクレジット)事業を立上げ、1983年には事業を組織化してグラミン銀行を創設。貧困層の自立に多大な貢献をしたとして、2006年、ノーベル平和賞受賞。


 One  must  not  forget  that  in  creating  wealth  one  should  feel  motivated  at  all  times  to  replay  a  debt  of  gartitude  to  society  and  to  do  one's  best  for  it  as  a  moral  obligation.  〔PR〕

 富を造るという一面には、常に社会的恩誼(おんぎ)あるを思い、道徳上の義務として社会に尽くすことを忘れてはならぬ。(渋沢栄一)

 まず、repay (報いる)に注目してみましょう。ここでは、お金という具体的な借りに対するお返しではなく、感謝の気持ちという抽象的なものです。

 次に obligation (義務)の例を見てみましょう。

 In Australia, volting is compulsoly.  It's the obligation of all citizens to volte. オーストラリアでは、投票は法律で義務化されています。投票はすべての人の義務なのです。 vote : 投票、compulsoly : 義務的な

 日本の資本主義の父として知られている渋沢栄一が、自分の得た富に関して社会に返礼することが義務だと考えたのは、すばらしいことですね。


 There  is  no  class  so  pitiably  wretched  as  that  which  possesses  money  and  nothing  else.

 金しか持たない階級ほど、情けなく惨めなものはない。 アンドリュー・カーネギー(アメリカの実業家)

 これは真実ですね! お金しか持たない人は、確かにお金持ちではありますが、他者とお金を分かち合うのでないかぎり、喜びのない、空っぽの人生を送るのだということに、いつか気づくでしょう。

 カーネギーは、工場労働者から世界でも指折りの富豪となり、大金を寄付して、病院や学校など、人々のための施設を建設した人でした。 posses は「所有する、持つ」。物質的なものだけでなく、抽象的なものに対して使います。

 pitiably : 哀れに、wretched : 惨めな、class : 階級


 In  politics  if  you  want  anything  said,  ask  a  man.   If  you  want  anything  done,  ask  a  woman.

 政治の世界では、言ってほしいことがあれば男性に、実行してほしいことがあれば女性に頼みなさい。 マーガレット・サッチャー(イギリスの元首相)

 英国史上ただひとりの女性首相による名言です。男性は言葉を操るのが得意で、女性は実践を得意としている、と言っています。最初の文の said と man が、2番目の文では done と woman になっている以外、まったく同じ構成になっているところに、この名言の妙味があります。 』


 『 A woman's  guess  is  much  more  accurate  then  a  man's  certainty.

 女性の推測のほうが、男性の確信よりもはるかに正確である。  ラドヤード・キプリング(イギリスの作家)

 この名言の真髄は、guess と certainty という2語の対比にあります。 guess (推測)とは、「何かが~ではないか」という仮定のうえにつくられるもの。

 一方、 certainty (確信)は、「何かが~だと知っていること」を示します。 woman's  intuition (女の勘)とはよく言いますが、 men's  intuition という言葉はありません。キプリングはこのことを、味な言い方で強調してみせているのです。 


 Half  the  world  knows  not  how  the  other  half  lives.

 世界の半分は、残りの半分がどんな生活をしているのか知らない。  ジョージ・ハーバード(イギリスの詩人)

 この名言によって、 the other half というフレーズは、とても便利な英語の決まり文句になりました。特に、このように動詞の lives とともに使われます。

 直訳すると「反対側(の人々)」ですが、自分とは違う階層や経済状況の人々、という意味です。裕福な人にとっては貧しい人、貧しい人にとっては裕福な人、というわけです。


 A  desk  is  a  dangerous  place  from  which  to  watch  the  world.

 机というのは、そこから世界を見るには危険な場所である。  ジョン・ル・カレ(イギリスの作家) 〔本ブログの79.推理作家の家を参照ください〕

 世界を理解したいなら、書斎の外へ出て世界を見なさい、ということです。文章の技巧にたけたル・カレは、この名言に詩的な雰囲気を与えています。

 desk と dangerous は d という音で、which、watch、world は w という音で、それぞれ頭韻になっています。


 Even  if  cultuers,  religions  and  beliefs  are  different,  what's  important  is  saving  the  lives  of  people  who  are  sufferring.

 Peace  that  exists  solely  in your  contry  is  no  peace,  because  every  nation's  fate  is  bound  up  in  that  of  others.  [RP]

 文化、宗教、信念が異なろうと、大切なのは苦しむ人々の命を救うこと。自分の国だけの平和はありえない。世界はつながっているのだから。 緒方貞子(元国連難民高等弁務官)

 緒方貞子さんは、世界中の人々のために力を尽くし、彼らを助けることに人生をささげてきた女性。そんな彼女が語った美しい言葉です。

 まずは religion (宗教)という語に注目しましょう。日本人が海外へ行けば、よくこんな質問をされます。 What's your religion?  あなたの宗教は何ですか? Are you religious? 信仰心は厚いですか?

 もしそれほど宗教を信じていない場合は、 I'm not particularly religious.  と言えばいいでしょう。また、もとの日本語にある「つながる」は、この場合、私たちはお互いに結びついている、という意味。私はこれを bound up in と表現してみました。


 I  did  not  think;  I  investigated.

 私は考えなかった。ただ事実を研究した。 (ヴィルレルム・レントゲン ドイツの物理学者)

 レントゲン写真を発見したとき、本当にレントゲンは何も考えなかったのでしょうか……。それは怪しいところですが、ここでは、科学における investigation (調査、探求)の重要性を強調するために、そう言っています。 』


 『 Only  two  things  are  infinite,  the  universe  and  human  stupidity,  and  I'm  not  sure  about  the  former.

 無限なものはふたつしかない。宇宙と人間の愚かさだ。そのうち、宇宙については、私はわからない。 (アルベルト・アインシュタイン)

 ウイットにもノーベル賞があればいいのに! そしたら、アインシュタインは文句なく受賞していたでしょうね。アインシュタインはまじめな文章においても、戦争を繰り返す人間の stupidity (愚かさ)について何度も書いています。

 相対性理論を編み出したアインシュタインにとって、この世で絶対的なものは人間の愚かさだけだったようですね。


 I  walk  slowly,  but  I  never  walk  backward.

 私の歩みは遅いが、歩んだ道を引き返すことはない。 (エイブラハム・リンカーン アメリカ16代大統領)

 つまり、政治とはゆっくりと前進していくものだ、ということです。政治にはたくさんの人や組織の利益が絡み合います。誰かを踏みつけたり、置き去りにしたりすることなく、前進し続けることがリンカーンの目標でした。

 backward に含まれる -ward は、「~のほうへ」という時間または空間的な動きを表します。toword (~に向かって)、forward (前方へ)、upward (上へ)、downward (下へ)、afterward (あとで)など、さまざまです。


 You  will  never  find  time  for  anything.  If  you  want  time,  you must  make  it.

 何をするにも、時間は見つけるものではない。必要なら作るものだ。 (チャールズ・バクストン イギリスの政治家)

 find (見つける)と make (作る)の対比が効いています。 find time と make time は、どちらもよく使われるフレーズです。


 Things  that  pass ….   A  sailboat  in  the  wind.   A  person's  time  on  earth.  Spring,  summer,  autumn,  winter. [PR]

 ただ過ぎに過ぐるもの帆かけたる舟。 人の齢。 春、夏、秋、冬。 (清少納言 枕草子より)

 この上なく美しい名言ですね。根底にある仏教的な感覚が強く感じられる言葉です。私は、もとの名言にはないフレーズを少し足しています。

 in the wind (風の中の)は、海を渡る帆船の動きを表すため。また、「齢」は「歳月」、つまり、この世で人が過ごしてきた時間のことでしょう。その「この世で」という感覚を表現するために、on earth (地上で)というフレーズを加えています。


 The  right  road  for  preparing  food is  found  in  the  bringing  out  of  natural  flavors.  [RP]

 料理の本道は天然の味を生かすところにある。 (獅子文六 小説家・劇作家)

 なかなか英訳しにくい名言です。この場合の「料理」は food (食べ物)ではなく、食事を作る過程のことでしょうから、preparing food としました。

 「生かす」は英語ではたくさんの方法で表現できますが、ここでは bring out というフレーズを選んでいます、これは「引き出す、発揮させる」と言う意味で、bring to life と似たニュアンスです。 』


 『 Not  to  display,  but  to  suggest,  is  the  secret  of  infinity.

 あらわに見せるのではなく、ほのめかす、それが、無限なるものの秘訣である。 (岡倉天心 美術評論家)

 芸術においては示唆に富んだ(suggestive)ニュアンスこそが大切だ、というのがこの名言の趣旨です。岡倉天心はアメリカに渡り、かの地に日本文化の奥深いメッセージを伝えた人でした。


 The  main  thing  is  to  be  moved,  to  love,  to  hope,  to  tremble,  to  live, 

  to  be  a  human  being  before  you  are  an  artist. [RP]  

 肝心なのは感動すること、愛すること、希望を持つこと、打ち震えること、生きること。 芸術家である以前に、人間であることだ。

 オーギュスト・ロダン(フランスの彫刻家)

 フランスで最も偉大な彫刻家、ロダンの名言です。これは深淵な言葉ですね。


 Style  is  the  physiognomy  of  the  mind.  It  is  more  accurate  than  the  physiognomy  of  the  body.  [RP]

 文体とは、人の心が外に現れたものである。その人の外見よりも正確にその人を映し出している。 ショーペンハウエル(ドイツの哲学者)

 作家は己の精神を映し出す独自の文体(style)を持つべきだ、ということ。 physiogomy : 人相、外観、accurate : 間違いのない、正確な


 If  you  want  others  to  be  happy,  practice  compassion.  if  you  want  to  be  happy,  practice  compassion.

 もし他者を幸せにしたいのなら、慈悲の心を持ちなさい。もし自分が幸せになりたいのなら、慈悲の心を持ちなさい。 (ダライ・ラマ14世)

 この美しい名言のキーワードは compassion (慈悲、あわれみ、思いやり)です。この単語は2つの要素から成り立っています。com- はラテン語で with (~と共に)の意味。

 passion はラテン語で suffering (苦しみ)を意味する語から来た言葉です。つまり compssion とは、不幸な境遇にいる人々に同情心を持つだけでなく、彼らと「苦しみを共にする」という行為も表しているのです。


 Believe,  when  you  are  most  unhappy,  that  there  is  something  for  you  to  do  in  the  world.

 So  long  as  you  can  sweeten  another's  pain,  life  is  not  in  vain.

 不幸のどん底にいるときこそ、信じてほしい。世の中にはあなたにできることがある、ということを。他人の苦痛を和らげることができるならば、人生は無駄ではないのです。 (ヘレン・ケラー)

 ヘレン・ケラーは、とても深い真実を教えてくれています。自分の人生を意味あるものにしなくてはならない、無駄に生きてはならないのだと。 in vain は「無駄に、かいなく」といった意味で、何かをしても有意義な成果が出せなかった、という場合に使います。 』 (第116回)


ブックハンター「英語のうまくなる人、ならない人」

2016-08-22 15:53:34 | 独学

 116. 英語のうまくなる人、ならない人  (田村明子著 平成20年10月)

 英語の劣等生の私がまた英語に関する本を紹介する、お前に紹介されたくないと思われることでしょう。本書は、「英語のうまくなる人、ならない人」とありますが、ここで言う英語とは、「英語での日常的会話」を意味してます。

 本書は、著者が米国で接した日本人を30年に渡って観察して、得られた結論を、うまくならない人の条件を7つ、うまくなる人の条件を7つにまとめたものです。(もちろん他にも書かれていますが)

 私が、本書をここで取り上げましたのは、「▢▢のうまくなる人、ならない人」の▢▢の部分に、「スポーツ」でも、「スピーチ」でも、「文章」でも、無論他の外国語(ロシア語)でも、すべての勉強にさらには、「人間として向上する人、しない人」でも、通じると感じたからです。

 以前に紹介しました、「理三合格への道」(41.)の中にも、伸びる生徒ほど、「すぐに調べる」 「疑問を翌日に持ち越さない」 「手元を見ずにメモしていく」 などの特徴があると書かれています。

 不明なこと、頭の中に浮かんだ疑問符の卵を見逃すことなく、辞書(電子)をひく、そして、進歩は辞書をひいた回数に比例すると書かれています。

 本書に書かれていることは、あたりまえのことを言っていると感じると思われますが、実際にこれらのことを実践することは、かなり難しく、1~2割の人しかできていないと思われます。

 もちろん私も出来ていない一人ですが、でも、心掛けと訓練と継続によって、だれにでも、うまくなる道は開けると考えます。では本書をいっしょに読んでいきましょう。

 なお、著者は、本ブログでとり上げました「なんで英語やるの?」(24.)の著者(中津燎子)に子供の頃、一年ほど教えを受けたと書かれてました。


 『 英語がうまくなる人、ならない人とは、ちょっと漠然とした言い方かなと思います。一口にうまい英語といても、国連の同時通訳のブースに入るトップクラスのプロフェッショナルレベルから、一人でも海外旅行中の買い物に不自由しない程度まで、「うまい」の基準はさまざまです。

 一体、どこまでいけば「うまい英語」なのか。この本の中で何を指して、英語が「うまくなった」としているのか、まずそのことを少し説明したいと思います。

 英語を自由に使いこなせるようになったら、いいなあと思っている人は大勢います。でもすべての人が、プロの通訳並みの英語力が必要なわけではありません。

 誰もが公式の場で英語を駆使してスピーチをしなくてはならないわけではありませんし、国際会議に出席しなくてはならないわけではありません。人によって、「このくらいのレベルができたらいいな」という目標レベルはさまざまです。

 この本の中で私が語る、「英語がうまくなる人」とは、本人が与えられた環境の中で、少しずつでもレベルアップし続けているかどうかを基準にしています。

 自分に許された機会をうまく利用して、英語力をつねに磨いているかどうか。たとえば手持ちの少ない単語をうまく使い分けてそれなりに用足しをしている観光客は、ほんの片言の英語でも、私から見ると「うまくなる人」です。

 逆に一般の日本人から見ると「ペラペラ」に見える人でも、何年も米国で暮らしているのにブロークンな英語をちょっとも直そうとしない人は、「うまくならない人」です。

 今あなたがいるところよりも、少しでも先に進みたい。ほんの少しでも、今より英語がうまくなりたい。そういう意志のある人こそが、英語のうまくなる人です。

 でも意志があるのに、いくら勉強してもあまり効果がない気がする。どうすれば英語がうまくなるの?——私が米国で暮らすようになってこの30年、これまでに何度そう聞かれたことか覚えていません。

 本書をまとめたのは、そういう人たちに向けて自分にできるアドバイスをあげたいと願ったからでした。残念ながら、努力もせずに英語を覚える魔法はこの世にありません。

 何もしていないのに気がついたら英語が話せるようになっていた、という方法を教えられたらどれほどいいだろうと思います。でも私の知る限り、寝ているあいだに英語を覚えたという人は一人もいません。

 好きなものを好きなだけ食べるだけで痩せるダイエット、寝ている間に余分な脂肪がとれるという健康器具、なんて世の中には心惹かれる広告があちこちに転がっています。

 白状すれば、私もそういううまい話にはかなり弱いほうで、ずいぶんとお金と時間を無駄にしました。でも、本当は目的に向かっていくプロセスにこそ面白さがあるのではないだろうか、と近頃は思うのです。

 英語も実は、到達したところよりも、そこを目指して少しずつ上達していくプロセスに楽しさがあるのではないでしょうか。 』


 『 英語がうまくならない人 7つの特徴


 1) 日本語がきちんとしてない人

  私が米国で知り合った、千人以上の日本人を観察していると、日本語が退化するのが早い人ほど、英語力の上達の頭打ちが早いという法則があるようです。。

 普段の会話で、耳障りなまでにカタカナが混じる人は、言語能力があまり高くない人。あるいは言葉というものに対するこだわりの薄い人です。

 「英語を子供に教えるな」の著者市川力氏によると、人は母国語の能力以上の外国語を身につけることはできないそうです。母国語での表現が貧しい人は、外国語もうまくなりません。

 きれいな英語を身につけたかったら、まずきれいな日本語を話してください。そして脳の中の、言語の引き出しをきれいに整頓しておくのです。


 2) 依存心が極端に強い人

  次の3つの条件がいくつあなたに当てはまるか考えてください。

  ① 海外旅行は、いつも団体旅行。そうでなければ同行する友人に企画を任せる。

  ② 授業や会議でわからないことがあっても、つい質問しそびれる。

  ③ 新しい習い事を始めるなら、誰か友達が一緒じゃないといや。

 3つとも、「はい」と答えた方。残念ですが、今のままではあなたは英語がうまくなりません。「どうやったら英語がうまくなるんですか」と聞きに来る人で、もっとも対処が難しいのが、この「依存心の強いタイプ」です。

「どこが面白いですか?」 「ニューヨークって、なにが流行っているんですか?」 このように、相手にすべてを投げてよこすような質問をする人は、残念ながらあまり有望株ではありません。

 ニューヨークは、つかみどころのない大都市です。探せばたいがいのものは何でもあると言われているほど、懐が深い街。

 その中で自分は何が好きなのか、どのようなものが面白いと思うのか、それがわからなくてはアドバイスのしようもないではありませんか。

 美術鑑賞が好きなのか、アウトドアが好きなのか。オペラを見たいのか、ブロードウェイミュージカルがいいのか。限られた時間の中で、何を優先させたいのか。

 「ブロードウェイミュージカルで今人気の作品は、何ですか」 「メトロポリタンと近代美術館では、どちらがお奨めでしょうか」 「ニューヨークで、これは食べておいたほうが良いというものはありますか?」

 このような聞き方をしてくる人は、有望株です。自分でやってみたいことがはっきりしているという意志が感じられます。英語がうまくなりたければ、まず自分の頭で考える習慣をつけること。目的意識のしっかりとした大人になってください。


 3) 人の話を聞かない人

  人の話を聞かない人は、英語の上達が遅い人。これは自信をもって断言できます。5年も10年もアメリカに住んでいるのに、まともな英語を話せない人の大半は、相手の話を真面目に聞いていないタイプと思って間違いありません。

 真摯に耳を傾けて、相手から学ぼうという姿勢がないのでしょう。相手の話を聞かない人は、自分の話が通じた、ということばかり重視します。

 子供でも、大人の話をよく聞いている子供ほど、語彙が豊富な人間に育ちます。日本語でも相手の話を聞かない人が、英語になったとたんに「真摯に耳を傾ける」人にはなりません。

 あなたも普段から、子供のように初心にかえって相手の言葉に耳を傾ける習慣をつけてください。


 4) 好奇心の薄い人

  どこかで見慣れない単語が目についたら、家に帰って辞書を引いてみる。これは英語で何と言うのかと思ったら、すぐに調べてみる。

 そんな知的好奇心のアンテナを張っておかなくては、語学というものは身につきません。 「この前教えていただいた本、読んでみました」 「お奨めのレストランに行ってきました」 

 こういう報告をてきぱきとしてくれる人は、好奇心旺盛な人です。そしてこういう人は必ず、英語もみるみるうちに上達していきます。


 5) 失敗することを怖がる人

  ニューヨークに遊びに来た日本人を案内すると、店員さんなどに英語で話しかけられても無視してしまう人がとても多いことに驚きます。お店に入ると、店員さんが近寄ってきます。

 Hi, how are you?   How can I help you?

 こう話しかけられても、まるで相手など空気のように無視。日本では店員さんに「いらしゃいませ」と言われても、特に返事を求められることはありません。でもこれは日本特有のことです。

 少なくとも英語圏の国々では、相手が店員さんでもウェイターでも、あいさつされたらあいさつをかえすのが礼儀です。

 わからないから面倒くさい。自信のない英語でうっかり下手なことを口にして、恥をかくのが怖い。そんな人は、残念ながら英語がうまくなりません。

 私が高校から留学を決意したとき、交換留学の体験がある先輩がこういうアドバイスをくれました。「相手の英語がわからなくても、黙っていないで、I'm sorry, but I don't understand. というように、何か答えたほうがいいですよ」

 30年以上も前の話ですが、彼女のアドバイスは忘れません。恥をかきたくないから、無言ですませてしまう。それではいつまでも進歩はありません。

 I'm sorry, but I don't understand. でも、立派な答えです。間違うことを恐れないで、口にしてみましょう。


 6) 言葉に頼ろうとしない人

  誤解をまねくことを承知で、あえて言いましょう。特殊な技術を持ってそれにばっかり頼っている人は、英語の上達がおそくなりがちです。

 美容師さん、板前さんなどの職人さん、スポーツ選手など、世界中で通用する技術を持っている人たち。英語圏の国で活躍している人でも、こういった特殊技術のある人は、腕前がよければよいほど実は英語がほとんどダメという人が少なくないのです。


 7) 完成された文章で話さない人

  英語がうまくなりたいのなら、外国人の恋人を作るのが一番早い。そういう話をあなたも一度は耳にしたことがありませんか?でも英語圏出身の恋人、あるいは配偶者を持った人のすべてが、きちんと英語を話せるわけではありません。

 そう言ったら、びっくりするでしょうか。」外国人の夫がいる女性は、極端な2タイプに分かれます。配偶者のネイティブスピーカーを上手に利用して、骨太の英語力をがっちりと身につけた人。こんなカップルは、私が知っている中で全体の2割くらいです。

 残りの8割は、夫婦の間で英語と日本語が入り混じったちゃんぽん語を話しながら、いつまでたってもブロークンな幼児英語のまま暮らしています。

 逆に、相手の日本語がぐんぐんうまくなっていくというケースもあります。こうなると、日本人配偶者側の英語力はさらに伸びません。

 でも外国人の配偶者を持つという同じ境遇にありながら、英語がうまくなる人と、ならない人ではどこに違いがあるのか、気になるではありませんか。

 「うちの夫は正確な英語にこだわる人で、普段の会話から完成された文で話しをしないと、良く直されました」 ご主人がアメリカ人で、本人は腕のいい通訳である知人はそう言います。

 Are you Japanese?

 1〕 Yeah.

 2〕 Yes, I am.

 こんな単純な質問でも、1で答えるのと、2のように短くても完成された文章で答えるにでは、まったく異なります。Yes のかわりに、何でもかんでも Yeah ですませてしまう人は、ボキャブラリーが増えていかない人。それにあまり知的な印象を与えません。

 意識して、完成された文章を口にすること。これは英語をうまくなっていくための必須条件の1つです。 』


 『 英語がうまくなる人 7つの特徴

 1)  聞き上手は、必ず話し上手

    どんな人が、英語がうまくなるとおもいますか?

  「よくしゃべる人」 「おしゃべりな人」 そう答える人が多いのに、少しびっくりしました。日本式に恥ずかしがっていてはダメ。ちょっと、攻撃的くらいに、がんがんと積極的に話す人こそ英語に向いているのだ。

 そう考える人が多いのも、無理はないかもしれません。でも私が30年米国に暮らしながら、日本人の英語を観察してみた結論はその逆でした。よくしゃべる人よりも、よく聞く人のほうが英語はうまくなります。

 英会話力をみがきたいと思うのなら、まず相手の話を落ち着いてよく聞いてみてください。集中して聞いていれば語彙も増えるし、そのうちどこでどう合いの手をいれるかという勘をつかむこともできます。

 

 2)  観察力のある人

  「四大陸選手権で史上最高点を出したとき、日本では大きく報道されたのですか?」 そう聞かれたフィギュアスケートの高橋選手は私のほうを見ると「思っていたよりは、って何て言えばいいですか?」と聞きました。

 「More then he expected.」 私は質問した記者に、直接そう答えました。すると高橋選手は「More then (I) expected って言うんだ……」と、小声で繰り返していました。

 通訳を人任せにして聞き流してしまわず、彼のように覚えようという意志を持って真似してみる人は、ぐんぐん英語がうまくなっていく人です。


 3)  面倒がらずに辞書をひく人

  「どうしてそんな短期間で、日本語が上手になったのですか?」 「毎日わからなかった単語のリストを作って、寝る前に必ず調べたの」 そう言ってトマシーナは、当時使っていた英和辞書を見せてくれたのです。

 よれよれになった辞書のページは、彼女の細かい鉛筆の書き込みで、びっしり黒くなるほど埋め尽くされていました。この辞書が、彼女が日本での2年をどのように費やしてきたのかを物語っていました。

 短期間に語学がうまくなる人は、必ずまめに辞書をひく習慣を持っています。辞典をひく回数があなたの未来を開きます。なぜなら、辞典をひいて意味をかみ締めるまで、その単語は自分のものにはならないからです。


 4)  自分の考えを整理して言葉にできる人

  「今年読んだ中でもっとも面白かった本は?」 ためしに、こんな質問をアメリカ人にぶつけてみてください。年齢、性別、社会的地位にかかわりなく、どんな人でも明確に自分の意見を堂々と言葉にまとめます。

 英会話能力を磨いていく上で、「自分の考えを整理して、要領よく言葉にする」という能力はとても重要です。日本人が英語を習得するにあたり、実は一番足りないことが、この「考えをまとめてわかりやすい言葉にする」というトレーニングではないか、と私はにらんでいるのです。

 普段意識せずに何気なく話している日本語が、きちんと要領よくまとまっている人は意外に少ないものです。要点のはっきりしていない人の日本語は、英訳するのが難しいのです。

 最初から要点がはっきりした日本語で話す人は、英語が早くうまくなる人です。でも英語を勉強中の人ならば、わかりやすく明瞭な話し方を心がけるのが近道。そのほうが、日本語から英語への変換作業がらくだからです。


 5)  友だちをすぐに作れる人

  リチャード・ワイズマンが書いた「The Luck Factor」 (邦題「運のいい人、悪い人」)という本によると、運とは人の流れが運んでくる。だからすぐに友だちができる人は、いい運にめぐり合う確率も高くなるそうです。

 英語がうまくなる人も、運のいい人と似たところがあるとおもいます。初対面の相手でも人の輪の中にすんなりと溶け込める人ほど、英会話能力の進歩は早いと思って間違いありません。


 6)  英語を使って伝えたいことがある人

  英会話を学んで、誰と、何を話したいのか? あなたがきちんとした英語でコミュニケーションすることを目指しているのなら、私のアドバイスはこうです。

 英語以外の趣味を充実させてください。そのことが、必ず英語の習得の助けになります。留学したてでまださっぱり授業についていけなかったころ、幾何学のテストで一人だけ満点をとり、とたんにクラスメートたちの態度が変わったことは忘れられません。

 学校のピアノを放課後に弾かせてもらっているうちに、いつの間にやら合唱の伴奏役がまわってくることになりました。

 こんなきっかけから生まれた人間関係が、私の英語の上達をどれほど助けてくれたことでしょう。英語で伝えたいこと、語り合いたいことがある。その目的意識こそが、あなたの英語の実力を上げていくのです。


 7)  暗記の得意な人

  英文を読むと、いちいち文法的に分析できないと気がすまない、頭に入らないという人がたまにいます。でも私の事体験から言いますと、理詰めではなく、するりとそのまま暗記してしまう人のほうが早く英会話がうまくなります。

 Have you been to Japan?  たとえばこういう一文を丸暗記して頭のなかに組み込み、言葉を入れ換えて応用してみます。

 Have you met my sister?

 Have you heard this morning's news? 

 こうやって、言葉を入れ換えて使いこなせる文章を増やしていくのです。こんな簡単な文章なら暗記するまでもない、と思っていますか?

 でも私が観察する限り、このレベルの会話でもスラスラとこなせる日本人はあまり多くありません。単語力や文法の習得が必ずしも、実践的な英会話力につながるわけではないのです。

 大切なのは、文章単位で暗記すること。応用のきく基礎的な日常会話の文章を歌を覚えるような気持で、暗記していってください。必ず役立ちます。この私がその生きた見本です。 』 (第115回)


ブックハンター「パラレルキャリア」

2016-08-12 14:17:21 | 独学

 115. パラレルキャリア 〔新しい働き方を考えるヒント100〕   (ナカムラクニオ著 平成28年6月発行)


 『 いまから7年ほど前、突然、会社を辞めてブックカフェをはじめました。インターネットで「荻窪のカフェ店舗を居抜きで借りたい人募集」という話題を見つけたのがきっかけでした。

 その瞬間に、これだ!とひらめき、すぐに電車に乗ってお店に行きました。閉店間際のカフェのカウンターの座ってみると……なんとも言えない独特な雰囲気のお店でした。

 その場で僕は「この店を借りたいんですけど」と、お願いしました。しかし、その時はまだ会社員。辞める予定もなく、仕事も順調。それでも、直感的に天職のような気がして借りることに決めました。

 もちろん問題も山積みでした。資金、礼金、内装などで少なくとも500万ほど必要です。貯金もありません。どうしよう……。

 そんな時に、お金を借りるために金融公庫に提出したプランが、魔法のようなビジネス計画「パラレルキャリアプロジェクト」だったのです。

 小さなスペースにカフェで集客、さらに古本を販売。ギャラリーでもスペースを貸して作品を販売すれば、相乗効果で収入が倍増するという計画書でした。

 すると一週間後、「わかりました。免許さえ取れれば、融資します。資格をとって下さい」。僕は、すぐに免許を取得し、無事にお金を借りることができました。

 パラレルキャリアカフェ 「古本×カフェ×ギャラリー=6次元」が誕生したのです。ひとつの能力や特徴を生かすより、「自分だけができる組み合わせ」を見つけるとなぜか立派なオリジナルになるのです。

 深く考えすぎず、思いつきで自分を変化させるような軽い変革を、ライトなイノベーション(light + innovation)という意味で、「ラノベーション」と僕は呼んでいます。

 パラレルキャリアには、とても重要な考え方のひとつです。 』


 『 ある日、とても重要なことに気がつきました。6次元で連日のように開催していた「働き系イベント」を続けた結果、仕事にはいくつかの種類があるという発見をしたのです。大きく分けて、3つに分類することができます。

 1. ライスワーク (食べるための仕事) 例 : 僕にとっての映像の仕事

 2. ライフワーク (人生をかけた仕事) 例 : ブックカフェの仕事

 3. ライクワーク (趣味を活かした仕事) 例 : 器を修復する仕事

 大事なのは、この3つのバランスです。例えば、明治の女性作家、樋口一葉は21歳の時「うもれ木」で文壇デビュー。

 しかし、生計を立てるために家庭用の雑貨を売る「荒物屋」をライスワークとしてオープンし、慣れない仕事をしながらライフワーク+ライクワークである小説を書き続けました。

 また村上春樹さんは25歳の時、国分寺でジャズ喫茶「ピーターキャット」を開店。その傍ら、毎晩キッチンで小説を書き続けました。その経験もあって「風の歌を聴け」で群像新人賞を受賞しデビュー。

 2作目の「1973年のピンボール」までは、二足のわらじ生活。ライスワークのジャズ喫茶、ライフワークの小説、ライクワークの音楽。この3つがバランスよく混ざりあって成功したのです。

 人生は、ライスワーク(食べるための仕事)、ライフワーク(人生をかけた仕事)、ライクワーク(趣味を活かした仕事)、この3つのワークバランスを整えることが大切なのです。 』


 『 ブックコーディネーターやブックディレクター。このような新しい仕事は、10年前にはなかった言葉。

 しかし、今は普通に使われています。 これは、まさに造語思考。言葉があるから生まれる仕事もある。

 日本語は、そもそも「造語文化」の言語。日本という国の「スクラップカルチャー」の中で発達した文化のひとつです。

 なぜ「コミュニティデザイナー」「ホワイットハッカー」などメディアの造語は、ムーブメントとして広まるのでしょうか。

 「語幹が楽しく話してみたいと思える言葉が噂になる」という話を聞いたことがあります。人は新しい言葉を使ってみたくなる生き物なのです。

 ビジネスは新しい造語を作ったもん勝ち。 ネーミングが、商品を大きなコミュニティに変えるのです。

 これからは大きな「ビジネス」よりも「小商い」の時代です。身の丈にあった小さな商いを自分ではじめる。そんな生き方が注目されています。

 会社員だけど週末には自分の興味や特技を活かして仕事をつくりたい。フリーランスだけど受け身の仕事が中心なので、新しいサービスをつくりたい。

 ボランティア的な活動や文化芸術活動を助成金などに頼らず継続させる方法を考えたい、など初期投資やリスクが少ない形での、新しい「小商い」を考える時代になりました。

 そんな時は、まず言葉をつくって自分を動かす。そして、世間を動かす。小さなヒントから大きなアイデアの種を見つけるといいと思います。 』


 『 言葉は感情の引き金になるから気をつけなければいけません。感情を設計するのも、実はすべて言葉です。そして、文字は言葉という得体の知れない生き物に憑依(ひょうい)した魔物なのです。

 あまり人に話していない、僕の人生で一番不思議な体験があります。7年前、台湾に行った時に占い師に言われたことが、実はすべてそのまま当たって実現化しているのです。

 あなたは「もうひとつの名前を持ちなさい」と。そして、「中村邦夫とは別の名前で活動しなさい」と言われました。そこで考えたのがカタカナの「ナカムラクニオ」。

 すると驚いたことに、急に仕事が増えだしたのです。もうひとつの名前を持ち、キャラクターを設定するのは、とても大事なことだと思います。

 ことばエネルギーというものが確かに存在します。ネーミングで新しい世界をつくる。もうひとつの名前を持って自分の中に冷静な他人を取り込む。これは、パラレルキャリアの大切な裏技です。 』


 『 人間の脳が持っている「一定の刺激に7年で飽きる」という現象が、様々な社会現象やトレンドを生み出しているということを、ご存知でしょうか?

 人は、新しいものを好む「ネオフィリア」(neophilia)という性質を持っています。実は、地球上で人間だけが進化し繁栄したのは、人間が「ネオフィリア」だからなのです。

 人はチャレンジを好む。進んで新しいもの、違うものを求めます。無理をしたり、背伸びをするのが好き。刺激を求め、あえてわが身を危険にさらす生き物なのです。

 「ネオフィリア—新しいもの好きの生態学」の中で著者のライアル・ワトソン博士は 「新しもの好き(ネオフィリア)」 は 「新しいもの嫌い(ネオフォビア)(neophobia)」よりも、変化する環境を生き延びるのに有利だと書いています。

 neo : 新しい、philia : …の病的愛好、phobia : 恐怖症

 たとえばアリクイは、アリを探して食べるのに抜群の才能を発揮します。どの動物よりも、体の構造な行動が「アリを食べる」という行為に向いているのです。

 しかし、もしアリがいなくなったらどうなるでしょうか?アリクイは即、絶滅。つまり、人間は雑食化することで、リスク回避をしている生き物だと言えます。

 ワトソン博士によると、「新しもの好き」という性質によって、人類は変化する環境を生き延びてきた、ということになります。

 結局、人類は「足るを知る」ことができない生き物なのです。どんな仕事にも飽きてしまいます。だからこそパラレルキャリアで新しい刺激を脳に与え、さらなる進化を遂げることが必要なのです。 』


 『 あなたの弱点は何でしょうか? パナソニックの創業者松下幸之助さんは、自分が事業成功した理由を聞かれると「学歴がなくて、体が弱くて、貧乏だったから」と、言っていたそうです。

 ○ 学歴がないから、人の意見に耳を傾けられた。

 ○ 体が弱かったから、人に任せることができた。

 ○ 貧乏だったから、一生懸命がんばれた。  と考えていたのです。実は、弱みこそが才能なのです。

 「最強の弱点」を活かすと仕事がうまくいくのです。例えば、僕の場合、

 ○ 本の片付けが苦手 → 本を売るのではなく、体験を売ることにした。

 ○ 飽きっぽすぎる → いろいろなイベントを日替りで企画した。

 ○ 一カ所に長い間いられない → 地方の町おこし活動を始めた。

 つまり、弱点が逆におもしろがられて、いろいろな活動を続けられる。そして、結果的に、弱みが強みに変化していくのです。

 いまは、「共感」より「共鳴」の時代、「競争」より「共創」の大切さを知るべきです。誰もが「何かの達人」、どんな情報も必ず誰かの役に立ちます。弱点を克服しないで最大限に活かす。これは働く上で、大きな強みになると思います。 』


 『 自分にとって良いものを「ストック(貯蓄)」することを、僕は勝手に「グッドストック(Goodstock)と呼んでいます。

 お金を稼ぐだけでなく、「良いスキル」や「良い人脈」を広げ、「良い世界」が体験できる仕事のチャンスが欲しい。そんな時は、どれだけグッドストックが貯まっているかが重要です。

 1)  働くのに「ちょうど良い心の余裕」がある。

 2)  経済的にも「ちょうど良いお金」がある。

 3)  空間的に「ちょうど良い隙間」がある。

 4)  人間関係に「ちょうど良い人材」がいる。

 5)  すぐに対応できる「ちょうど良いアイデア」がある。   

 こうやって、ちょっとずつ「良い」をストックしていきましょう。よく「チャンスは貯金できない」と言われます。でも、グッドストックはチャンスを勝手に引き寄せてくれます。

 いつチャンスが来ても慌てないように普段から自分の「良い」を貯蓄して、チャンスを活かせる空間を作っておけばいいのです。 』


 『 アイデアやひらめきというものは、いったいどのような状況で生れるものなのでしょうか?中国・北宋時代の武将は「三上」という言葉で表しました。

 1)  馬上(馬に乗っている時)

 2)  枕上(布団に横になっている時)

 3)  厠上(トイレにいる時)

 ヨーロッパでは、3Bと言います。

 1)  Bar(バー)

 2)  Bed(ベッド)

 3)  Bath(お風呂)

 古今東西、みんなほぼ同じなのが面白いところ。

 僕がよく使う裏技は「瞑想→妄想→空想→仮想→予想→構想→理想」この順番で考えて、瞑想をだんだん理想に近づけるのがオススメです。

 「妄想」こそが、ありとあらゆるクリエイティブの源。機械やコンピュターにはできない技術です。人間がよりクリエイティブで生産性も高くいられるようにするには、脳に休息を与えることが必要。

 あえてボーッと考えることで、「妄想力」を鍛えて「創造力」に変えていけばいいのです。知識は有限ですが、妄想はいつだって無限なのです。 』


 『 映像で「見どころを紹介してみせるときカットは3つ」と言われています。この「3」という数字は昔から「Rule of Three(3の法則)」と呼ばれ、魔法の伝わる数字なのです。

 「決める時」「伝える時」「話す時」僕は働くとき何かにつけてこれを意識しています。

 「3 is a magic number」(3は魔法の数字)と昔の歌にあるように、「3」は記憶するにもちょうど良く、4つ以上になると覚えられずに混乱しやすいけど、2つだとものたりない……。つまり、もっとも伝わる数字、それが「3」なのです。

 「3は魔法の数字。  どこか古代の神秘的な神の国で、3という魔法の数字はできた。  過去、現在、未来。  信仰、希望、慈しみ。  ハート、頭、体。  君に3という魔法の数を与える……」

 実に奥が深い事実です。有名なコピーも 「くう ねる あそぶ」 とか 「早い 美味い 安い」 とか、3つの反復で構成されているものが多いです。 』


 『 ある日、イギリスの友人が大事なことを教えてくれました。計画には、ある一定の法則があって、これだけでいいという「魔法のTO DOリスト分類」が存在するというのです。それがこちら。

 1) always (いつもやること)

 2) hourly (毎時やること)

 3) daily (毎日やること)

 4) weekly (毎週やること)

 5) monthly (毎月やること)

 6) yearly (毎年やること)

 7) life (一生かけてやること)

 8) never (決してやらないこと)

 この項目に合わせ、やることを整理すれば、ほとんど人生でやるべきことがはっきりわかるというのです。 』 (第114回)

 


ブックハンター(目次)

2016-08-09 08:26:37 | 独学

 114. ブックハンター (目次)

 (1)  ブックハンターについて

 (2)  「聞き書き」砂金堀り飯場  (武井時紀著 昭和57年発行)

 (3)  滅びゆくことばを追って  (青木晴夫著 昭和58年)

 (4)  苦境からの脱出  (安藤百福著 平成4年)

 (5)  原野の料理番  (坂本嵩著 平成5年)

 (6)  植村直巳と山で一泊  (ビーパル編集部編 平成5年)

 (7)  勝負    (升田幸三著 昭和45年)

 (8)  分類の発想  (中尾佐助著 平成2年)

 (9)  武士の娘  (杉本鉞子著 平成6年)

 (10)  四千万歩の男  (井上ひさし著 平成2年)

 (11)  僕は動物カメラマン  (宮崎学著 昭和58年)

 (12)  アインシュタインの就職願書  (木原武一著 平成6年)

 (13)  アマゾン動物記  (伊沢紘生著 昭和60年)

 (14)  楽しく学ぶ民族学  (藤木高嶺著 昭和58年)

 (15)  ホーキング、宇宙を語る  (Stephen W.Haking著 平成1年)

 (16)  日本歴史を点検する  (海音寺潮五郎、司馬遼太郎 対談 昭和49年)

 (17)  孫子   (孫武著  紀元前480年)

 (18)  不実な美女か貞淑な醜女か  (米原万理著 平成6年)

 (19)  文明が漂う時  (木村尚三郎著 平成4年)

 (20)  人間であること  (田中美知太郎著 昭和59年)

 (21)  ピグミーチンパンジー〔未知の類人猿〕  (黒田末寿著 昭和57年)

 (22)  会話を楽しむ  (加島祥造著 平成3年)

 (23)  森田療法  (岩井寛著 昭和61年)

 (24)  なんで英語やるの?  (中津燎子著 昭和53年)

 (25)  スズメバチはなぜ刺すか  (松浦誠著 昭和63年)

 (26)  読み聞かせ  (ジム・トレリース著  昭和62年)

 (27)  大健康力  (塩谷信男著  平成9年)

 (28)  地球(ガイヤ)のささやき  (龍村仁著 平成7年)

 (29)  郷愁の詩人 与謝蕪村  (荻原朔太郎著 昭和63年発行、昭和11年初出)

 (30)  奪われし未来  (シーア・コルボーン著 平成9年)

 (31)  月は東に —蕪村の夢 漱石の幻—  (森本哲郎著 平成4年)

 (32)  自分の魅力に気づく本  (滝沢悦子著 平成2年)

 (33)  男語おんな語 翻訳指南  (リレーエッセイ 森瑤子 堀池秀人 平成5年)

 (34)  英語散策   (猪飼篤著 平成3年)

 (35)  イワナの夏  (湯川豊著 昭和62年)

 (36)  ラブ・ウォーズ  (多賀幹子著 平成3年)

 (37)  良寛 行に生き行に死す  (立松和平著 平成22年)

 (38)  翻訳に遊ぶ  (木村栄一著 平成24年)

 (39)  柳孝 骨董一代  (青柳恵介著 平成19年)

 (40)  骨董ハンター南方見聞録  (島津法樹著 平成13年)

 (41)  理三合格への道  (小橋哲之著 平成23年)

 (42)  となりの億万長者 (J・スタンリー&D・ダンゴ著 平成9年)

 (43)  注文の多い言語学  (千野栄一著 平成61年)

 (44)  英語表現をみがく  (豊田昌倫著 平成3年) 

 (45)  生物と無生物のあいだ  (福岡伸一著 平成19年)

 (46)  考える技術・書く技術  (板坂元著 昭和48年)

 (47)  知的生活の方法  (渡辺昇一著 昭和51年)

 (48)  アジア文化探検  (中尾佐助著 昭和43年)

 (49)  司馬遷  (林慎之助著 昭和59年)

 (50)  世界を変えた6つの飲み物  (トム・スタンデージ著 平成19年)

 (51)  野菜探検隊世界を歩く  (池部誠著 平成7年)

 (52)  最後の版元  (高木凛著 平成25年)

 (53)  この6つのおかげでヒトは進化した(前)  (チャプ・ウォルター著 平成19年)

 (54)  旅行者の朝食  (米原万理著 平成16年)

 (55)  ユーコン漂流  (野田知佑著 平成10年)

 (56)  使いきる   (有元葉子著  平成25年)

 (57)  私が株で学んだこと  (五十嵐玲二談 平成26年)

 (58)  裏方名人   (足立紀尚著 平成18年)

 (59)  シベリア動物誌  (福田俊司著 平成10年)

 (60)  少子高齢化を生き抜く「方丈記」の叡智  (山折哲雄著 文芸春秋平成26年7月号)

 (61)  命を救った道具たち  (高橋大輔著 平成25年)

 (62)  空と森の王者 イヌワシとクマタカ  (山崎享著 平成20年)

 (63)  一流の人に学ぶ 自分の磨き方  (スチィーブ・シーボルト著 平成24年)

 (64)  千曲川ワインバレー 新しい農業の視点  (玉村豊男著 平成25年)

 (65)  バァイオリン体操  (榊原泰三著 平成13年)

 (66)  パブロ・カザロス  (ジャン=ジャック・ブデュ著 平成26年)

 (67)  ブレークポイント  (ジェフ・スティベル著 平成26年)

 (68)  アフリカ旅日記 ゴンベの森へ  (星野道夫著 平成11年)

 (69)  アラスカ   (水口博也著 平成19年)

 (70)  「感性の扉」をひらく秘密の法則  (尾坂昇治著 平成15年)

 (71)   HAIKU Vol.1 (俳句 第1巻)  (R.H.Blyth著 昭和56年)

 (72)   私の骨董夜話   (浜美枝著 平成17年)

 (73)   ボクは料理長、ときどき鉄人  (坂井宏行著 平成12年)

 (74)   たぬきの冬   (石城謙吉著 昭和56年)

 (75)   選択から投資へ  (五十嵐玲二談 平成27年)

 (76)   英語の種あかし  (井上一馬著 平成18年)

 (77)   商家の家訓   (吉田實男著 平成22年)

 (78)   生命の跳躍   (ニック・レーン著 平成22年)

 (79)   推理作家の家——名作の生れた書斎を訪ねて  (南川三治郎著 平成24年)

 (80)   オデッサファイル  (フデリック・フォーサス著 昭和49年)

 (81)   この6つのおかげでヒトは進化した(後)  (チップ・ウォルター著 平成19年)

 (82)   推理作家の家(Ⅱ)——名作のうまれた書斎を訪ねて  (南川三治郎著 平成24年)

 (83)   インドの衝撃  (NHKスペシャル取材班 平成19年)

 (84)   アトリエの巨匠に会いに行く  (南川三治郎著 平成21年)

 (85)   どんどん上達する驚異の語学術  (佐々木淳子著 文芸春秋平成27年7月号)

 (86)   セレンディピティと近代医学  (モートン・マイヤーズ著 平成22年)

 (87)   ヘレン・ケラー自伝 「言葉を話す、コミニュケーション」 (へレン・ケラー著 平成16年)

 (88)   ヘレン・ケラー自伝 「サリバン先生 とw-a-t-e-r と 言葉の世界へ」  (ヘレン・ケラー著 平成16年)

 (89)   劉邦と項羽(最後に勝つ指導者の条件)  (宮城谷昌光著 文藝春秋 平成27年8月号)

 (90)   ヘレン・ケラー自伝 「一縷の望みを求めて」 (ヘレン・ケラー著 平成16年)

 (91)   悲喜劇のEU (民主主義とは何か)  (塩野七生著 文芸春秋 平成27年8月号)

 (92)   THE  RACE    (Tim  Archbold著 昭和63(年)

 (93)   英語で話すヒント  (小松達也著 平成24年)

 (94)   銀座ミツバチ物語  (田中淳夫著 平成21年)

 (95)   地球を救う森づくり(前)  (宮崎林司著 平成16年)

 (96)   地球を救う森づくり(後)  (宮崎林司著 平成16年)

 (97)   男の生き方四〇選   (城山三郎編 平成7年)

 (98)   得手に帆をあげて   (本田宗一郎著 昭和54年)

 (99)   ナマズ博士放浪記   (松坂實著 平成6年)

 (100)  クリエイティブ資本論  (リチャード・フロリダ著 平成20年)

 (101)  岳飛伝(十四)激撞の章  (北方謙三著 平成27年)

 (102)  下流老人とブラック企業を解決せよ  (藤田孝典、今野靖貴 対談 文藝春秋 平成27年12月号)

 (103)  親子で学ぶ英語図鑑(上)   (キャロル・ヴォーダマン著 平成26年)

 (104)  親子で学ぶ英語図鑑(中)   (キャロル・ヴォーダマン著 平成26年)

 (105)  親子で学ぶ英語図鑑(下)   (キャロル・ヴォーダマン著 平成26年)

 (106)  チェンジング・ブルー〔気候変動の謎に迫る〕(前)   (大河内直彦著 平成20年)

 (107)  チェンジング・ブルー〔気候変動の謎に迫る〕(後)   (大河内直彦著 平成20年)

 (108)  マタギ——矛盾なき労働と食文化   (田中康弘著 平成21年)

 (109)  英語で読む啄木〔自己の幻想〕(前)  (ロジャー・パルバース著 平成27年)

 (110)  英語で読む啄木〔自己の幻想〕(後)  (ロジャー・パルバース著 平成27年)

 (111)  内山晟の五大陸どうぶつ写遊録   (内山晟著 平成21年)

 (112)  英語で味わう名言集   (ロジャー・パルバース著 平成23年)

 (113)  一〇三歳になってわかったこと   (篠田桃紅著 平成27年)

 

 私の本棚

 ◎ 私の名刺 (1~6)

  私は、何について、どう考えようとしているのか。

 ◎ 地球と太陽と水と生物のエントロピー逆走物語 (1~17) (平成24年8月)

  熱力学の第二法則は、真であるが、この地球と生命の世界を観察すると、熱力学第二法則に反しているように見えます。その逆走を支えているエンジンは、何なのだろうか。

 ◎ 多元的全体食のすすめ (1~15) (平成28年5月)

  食べ物とは何か、私たち人類は何をどう食べてきたのか、これから私たちは、何をどのように食べてゆくべきか。

 ◎ 概念アラカルト (1~9) (平成28年6月)

  二五個の言葉について、いっしょに考えていきます。

 

 次回よりブックハンターを再開する予定です。 (第113回) 

 


概念アラカルト(その9)

2016-08-02 14:42:50 | 教育

 概念アラカルト(その9)


 25. 共生関係 (symbiosis)

 異種の生物が行動的・生理的な結びつきをもち、一所に生活している状態。ヤドカリとイソギンチャク、マメ科植物と根粒菌、地衣類を構成する菌類と藻類など。(広辞苑より)


 ここでは、私たちに最も関係の深い共生関係について考察します。

 1) 真核生物と共生したミトコンドリアと葉緑体

 ミトコンドリア「共生説」は、ラン藻類が登場してから酸素濃度が上昇を続け、酸素からエネルギーを生産できる好気性細菌が誕生した。

 一方、酸素のほとんどない大気に適応し、有機物をエサにしてきた嫌気性細菌は、この好気性細菌を取り込み、そのATPを利用して、酸素濃度の上昇に適用しようとした。(20億年前のことです)

 これがミトコンドリアであり、動物界の生命体にエネルギーを供給してます。

 マーギュリス(margulis)説によると、真核生物の中にミトコンドリアを取り込んだものが動物に、葉緑体を取り込んだものが植物になった。

 このミトコンドリアのプロトン駆動が、糖類のエネルギーを酸素によって、ATPをつくることによって、私たち動物界の生命体は、生体のエネルギー通貨として、利用可能なのです。

 植物は、葉緑体によって根から水分を大気中から炭酸ガスを取り込んで、太陽光のエネルギーを利用して、糖分を合成して、空気中に酸素を放出します。

 葉緑体によって合成された糖分をすべての動物と植物は、このエネルギーにより、生体の活動を行っている。ミトコンドリアも、葉緑体も、それぞれのDNAを持っている。


 2) マメ科植物と根粒菌

 多くの樹木は菌糸が根の中に入る内生菌根をもつが、熱帯雨林で優占するフタバガキ科、マメ科ジャケンイバラ亜科などでは、外生根菌をもつ樹木がある。

 外生根菌は、菌糸を根から、外の土壌中にマット状に拡げて、より広い範囲の栄養塩を吸収する。

 植物は、根から菌に光合成産物である糖を与え、菌は植物に窒素とリンを与えている。樹林の種と外生菌根菌の種の間には、ある程度特定の関係があって、ある植物には決まった菌が共生するらしい。


 3) 被子植物の昆虫に受粉

 被子植物の成功の秘密を一言でいえば、花粉の媒介を風などの物理的手段から、昆虫などの動物の送粉に切り換えたことである。

 自ら移動することのできない植物は、花粉の受け渡しを、昆虫や鳥、コウモリなどの飛翔能力のある動物に頼り、鮮やかな色や香りで動物を誘い寄せる。花粉を運ぶ動物、すなわち送粉者は、花粉や花蜜を報酬として得る。

 このような相利共生的な関係は長い進化の過程によって、生じたものであり、美しく精妙な花の機構と花に適合した送粉者の行動は、自然界に於ける適応のみごとな実例である。


 4) キーストーン(頂点捕食者)と生態系のバランス

 ○ ラッコとジャイアントケンプの海中林とウニ

  北太平洋のジャイアントケンプの海中林に於いて、ラッコは何の役にも立ってなさそうに見えるが、ラッコがキーストーンとして、ケンプとウニとラッコ自身のバランスを保っていた。

 ケンプの森のコンブをウニが食べ、そのウニをラッコが食べ、その排出物がケンプの養分となる。このジャイアントケンプの海中林は、多くの魚類や貝類の住処でもあり、ラッコがケンプの海中林の代謝を高め、ジャイアントケンプの海中林を豊かなものにしている。

 ○ コヨーテとチャパラル固有の鳥

  林にいるチャパラル固有の鳥の種の数は、林が狭くなるにつれて減っていった。しかし、コヨーテが生息する林の方が多くの種類のチャパラルの鳥を保っていた。

 コヨーテは渓谷に於ける小型捕食者(ネコを含む)の数調整に役立っており、おそらくチャパラル固有の鳥類相の維持にも貢献している。


 26. マインドフルネス (mindfulness)

  mindful : 心を配って、mindfulness : 名詞

 「あなたの「天才」の見つけ方」 エレン・ランガ—著(加藤諦三訳)によると、mindfulness 〔マインドフルネス〕とは、「いろいろな視点からものごとを捉えることができることであり、新しい情報に心が開かれている状態」である。

 活動の種類を問わず、マインドフルな活動には三つの特徴がある。すなわち、世界を認識し分類する新しいカテゴリーを常に作り出し、新しい情報に対して開かれた心を持ちつづけ、ものの見方はただ一つとは限らないことをそれとなく意識しているのだ。

 これに対して、mindlessness 〔マインドレスネス〕とは、「物事への注意を欠き、さらに柔軟性を欠き、応用力のない心の状態」をさします。


 概念アラカルトは、これを持って終りといたします。私もよく解かってない中お付き合いくださり、ありがとうございました。これらの言葉は、ある意味エンドレスで、分かれば解かるほど、ある意味泥沼にはまるように疑問が湧いてくるような気がします。

 では、最後に26の目次を再掲いたします。

 (1) セレンディピティ― (serendipity)

 (2) エントロピー (entropy)

 (3) サステイナビリティ (sustainability)

 (4) カテゴリー (categoly)

 (5) コンセプト (concept)

 (6) エコロジー (ecology)

 (7) ジレンマ (dilemma)

 (8) ストラクチャー (structure)

 (9) レスポンシビリティ (responsibility)

 (10) 微分 (differrential)

 (11) 積分 (integral)

 (12) 文化 (culuture)

 (13) 文明 (civilization)

 (14) 偽薬 (placebo)

 (15) ポテンシャル (potential)

 (16) 選択 (choice)

 (17) 資本主義 (capitalism)

 (18) 進化論 (the theory of evolution) 進化論を説明する前に

 (19) 進化論 (the theory of evolution) (たぬきの冬より)

 (20) 指数と対数 (exponet and logarithm)

 (21) 指数と対数 (音階と弦の長さと振動数 チェロの場合)

 (22) 遺伝子 (gene)

 (23) エネルギー (energy)

 (24) プレートテクトニクス (plate tectonics)

 (25) 共生関係 (symbiosis)

 (26) マインドフルネス (maindfulness)

 以上です。 (第9回)