152. たいていのことは20時間で習得できる (ジョシュ・カウフマン著 土方奈美訳 2014年9月)
The First 20 Hours By Josh Kaufman Copyright©2013
『 ベストセラー作家、マルコム・グラッドウェルの2008年の著書「天才! 成功する人々の法則」は、一部の人がなぜ突出した成功を収めるか、理由を解き明かそうとする。
この本でたびたび登場するのが「1万時間の法則」だ。フロリダ州立大学のアンダース・エクソン博士の調査によると、何かにおいてプロのレベルに到達するには、平均して1万時間、本気で練習する必要があるという。
要するにエリクソン博士の研究は、新しいスキルをマスターしたければ、とても長い時間苦しみつづけなければならないと言っているのだ。
望みを捨てる前に、ちょっと考えてみてほしい。エリクソン博士の研究には、見落としがちな要素がある。対象が ”プロレベル”の人々であるという事実だ。
次のタイガー・ウッズを目指そうとするなら、少なくとも一万時間以上、ゴルフのすべてを意識的かつ系統的に学ぶ必要があるだろう。
プロゴルファーのほとんどが幼い頃からゴルフを始め、少なくとも7年以上休まずに練習している。だが、恥をかかずにまともなスコアーでラウンドし、ときには地元のゴルフコンペで優勝争いする程度なら?
そうなると、話はまったく違う。「自分の目標にあったそこそこのレベル」に到達するのに必要な努力は、はるかに少ない。
超速スキル獲得法で重要なのは「必要十分」という考え方だ。本書のテーマは、必要十分な能力をどうやって身につけるかであり、世界一流の技を習得する方法ではない。
ぼくらはまず20時間、意識を集中し、知的に、明確な目的をもって努力することから始めよう。自分にとって価値ある結果を、わずかな努力で手に入れるのだ。
最終的にプロレベルの技術を目指そうと決意するかもしれない。その場合でも20時間の超速スキル獲得法から始めるほうが成功の確率は高いだろう。
自分が始めようとしているものの本質を理解し、基礎的な要素を学び、賢く練習し、練習のパターンを確立すれば、着実かつ急速に上達し、記録的な短時間でプロレベルに到達できるだろう。
超速スキル獲得法とは、習得したいスキルをできるだけ小さなパーツに分解し、そのうち特に重要なものを見極め、まずそれを意識的に練習するというプロセスである。そう、たったそれだけである。
超速スキル獲得法は、大きく四つのステップに分かれる。
◎[分解]スキルをできるだけ小さな「サブスキル」に分解する
◎[学習]賢く練習できるように、また練習中に自己修正ができるように、個々のサブスキルについて十分な知識を得る
◎[除去]練習の邪魔になる、物理的、精神的、感情的障害を取り除く
◎[練習]特に重要なサブスキルを少なくとも20時間練習する
これだけだ。何を練習するかを決め、最適な練習方法を考え、練習時間を確保し、目標とするレベルに達するまで練習するだけでいい。
魔法でも何でもない。興味あることに賢明かつ戦略的に取り組むだけだ。少し準備するだけで、新しいスキルをそれほど苦労することなく、すばやく身につけることができる。
だからといって、即座に結果が出るわけではない。すぐに満足感を得たいという欲求こそ、新しいスキルをあまり早く習得できない大きな原因の一つなのだ。
新しい運動技能を身につけようとすると、最初は比較的ぎこちなく、ゆっくりとしか動けない。自分が何をしているか、いちいち考えなければならず、イライラするようなミスも繰り返す。
だが練習を続けるうちに、筋肉が自然と協調運動をするようになり、意識のプロセスとシンクロしてくる。うまくいく方法に集中し、うまくいかないやり方は捨ててしまう。
このプロセスは専門家の間では「スキル獲得の3段階モデル」と呼ばれ、身体的スキル、知的スキルのいずれにも当てはまる。三つの段階とは、
1 認知(初期)段階 自分がしようとしているスキルを理解し、調査し、そのプロセスについて考え、対処できる程度のパーツに分解する。
2 連合(中期)段階 スキルを練習し、環境からのフィードバックを受け取り、それにもとづき方法を修正する。
3 自律(後期)段階 アタマで考えず、また必要以上に注意を払わずに、スキルを効果的かつ効率的に実践する。
ドゥエック博士は、「脳は筋肉に似ている。使えば使うほど成長する」と。練習するほど、スキルは効率的、効果的、無意識的になる。 』
『 スキル獲得が何を意味するかがはっきりしたところで、今度はどうすればそれを「速く」できるか見ていこう。次に、新しいスキルを身につけようと決めたときに役立つ「チェックリスト」についてお話しする。
超速スキル獲得法の10のルールとは、
1 魅力的なプロジェクトを選ぶ 2 一時に一つのスキルにエネルギーを集中する
3 目標とするパフォーマンスレベルを明確にする 4 スキルをサブスキルに分解する
5 重要なツールを手に入れる 6 練習の障害を取り除く
7 練習時間を確保する 8 すぐにフィードバックが返ってくる仕組みをつくる
9 時計のそばで一気に練習する 10 量と速さを重視する
ルールのほとんどが当たり前のことに思えるかもしれない。だが、覚えていてほしい。このルールを知っているだけではダメなのだ。成果を手に入れるには、これを真剣に活用しなければならない。 』
『 カール・ホッパーにはさまざまな名言があるが、ぼくが一番のお気に入りは「人間に起こり得る最高の経験は、問題を見つけ、それに夢中になり、さらに魅力的な問題が現れるまではその解決にすべてをささげることだ」というものだ。
超速スキル獲得法では、まず魅力的な問題あるいはプロジェクトを選ばなければならない。めあてとするスキルに夢中になるほど、習得のスピードは速まる。
習得するスキルは一つだけに絞り、できる限りの集中力とエネルギーをそれに注ぎ、ほかはすべて一時保留する。
「目標とするパフォーマンスレベル」というのは、「これで十分」と想えるレベルを簡潔に表現した文章と思ってほしい。
達成しようとしているもの、そこに到達すると何ができるようになるかを、一文で説明するのだ。目標とするレベルは具体的であるほどいい。
これを明確にすることで、どのようなパフォーマンスを目指すかイメージしやすくなる。スキルによっては安全性を織り込まなければならないものもある。(ケガをしたり命を落としたりしたら本末転倒だ) 』
『 たいていのスキルは、小さなサブスキルが束になったものだ。集中して取り組むスキルを決めたら、次のステップはそれをできるだけ小さなパーツに分解することだ。
たとえばゴルフをプレイするというのも、様々な部品の集まったスキルだ。正しいクラブを選び、ティからボールを打ち、バンカーから出し、パッティングを決める、などなど。
スキルを十分小さく分解すれば、最も重要と思われるサブスキルを特定するのもずっと楽になる。まずカギとなるサブスキルに集中することで、少ない努力でたくさん上達できる。
たいていのスキルには、練習やパフォーマンスのために準備すべきものがある。ラケットがなければテニスはできないし、使えるヘリコプターがなければ操縦法を学ぶのは無理だ。
効率よく練習するために準備すべきツール、要素、環境は何だろう。予算内で入手できる最高のツールは何か。時間をとって重要なツールを確認しておくことは、時間の節約につながる。
練習の妨げとなり、スキルの習得を必要以上に難しくしてしまう要素はいろいろある。たとえば、[練習するまでにひどく手間がかかる]、[リソースをたまにしか使えない]、[感情的な障害、恐れ、恥ずかし]。
新しいスキルを習得するための時間は、時間がある時にやればいいや、と自分に言い聞かせながら、テレビを見たり、ゲームをしたりと。
だが、はっきり言っておこう。「時間があるとき」というのはまやかしだ。コートのポケットにたまたま20ドル札があった!という具合に、たまたま時間が見つかる、ということは絶対にない。
時間があるときにやろうと思っているかぎり、それをすることは絶対にないだろう。時間を確保したいと思えばつくるしかない。 』
『 「すぐにフィードバックが返ってくる」というのは、あなたがどれほどうまくできているかと情報が、なるべく速やかに返ってくるようにすることだ。
正確なフィードバックが返ってくるのに時間がかかるほど、スキルの獲得に時間がかかってしまう。練習プロセスにすぐにフィードバックを返してくれる相手をできるだけ多く組み込むことで、スキル獲得は早くなる。
新しいスキルを練習する初期段階では、それまでに練習した時間を過大評価しやすい。うまくいかないと、時間はなかなか経たない気がして、実際よりも練習しているように思えてくる。
この問題を解決するには、時計のそばで練習するのがいい。カウントダウンのできるタイマーを買って、20分測ってみよう。
ルールは一つだけ。タイマーをスタートしたら、ベルが鳴るまでわき目もふらず練習するのだ。どんなことがあっても、このルールを曲げてはダメだ。
新しいスキルを学ぼうとすると、完璧にやりたくなる。だから完璧を目指そうとせず、「これで十分」というフォームを維持しながら、できるだけ速く、できるだけたくさん練習することに集中しよう。
デイヴィッド・ベイルズとテッド・オーランドは著書「アーティストのためのハンドブック 製作につきまとう不安との付き合い方」で、量の大切さを示すおもしろいエピソードを紹介している。
”陶芸の授業の初日に、教師は生徒を二つのグループに分けると宣言した。スタジオの左半分の生徒には、最終日までに制作した作品の「量」だけ評価する。一方、右半分の生徒は制作物の「質」だけを評価する、というのだ。
そして評価の日。興味深い事実が明らかになった。最も質の高い作品は、いずれも量で評価されるグループのものだった。量重視のグループは、失敗から学んだことによる。” 』
『 これまで見たとおり、学習とスキル獲得は別物だ。だからといって学習が重要でないというわけではない。練習に飛び込む前に少しリサーチすることで、貴重な時間とエネルギーと忍耐力の節約につながる場合もある。
学習は練習の効果を高め、最初に一番重要なサブスキルに多くの練習時間を割くことを可能にする。そうした発想で作成したのが、効果的学習のための10の基本ルールだ。
1 スキルとそれに関連したトピックについて調べる 2 わからなくてもやってみる
3 心的モデルと心的フックを知る 4 望んでいることの「逆」を想像する
5 実際にやっている人の話を聞いて予想を立てる 6 環境から気が散る要素を取り除く
7 覚えるために間隔をあけて反復と強化をする 8 チェックリストとルーティーンを設ける
9 予測を立て、検証する 10 自分の生物学的欲求を大切にする 』
『 20分かけてウェブ、書店、地元の図書館でスキルに関連ある本や資料を探そう。この初期段階のリサーチの目的は、最も重要なサブスキル、重要な構成要素、そしてできるだけ早く練習するのに必要なツールを知ることだ。
スキルについて前もって知っておくほど、賢い準備ができる。目的はスキルについて広範な知識をてっとり早くあつめ、スキル獲得のプロセスがどのようなものになるか、全体像を正確につかむことだ。
完璧なクロワッサンを焼きたければ、パンやペストリーの焼き方に関する良書を何冊か読もう。自分で一からやり方を考えるのではなく、完成された既存の技術を学ぶのだ。
初期のリサーチには、理解できない概念や技術、考え方が含まれているだろう。とても重要そうなのに、さっぱり意味がわからないというものに出くわすことも多い。
わけがわからないまま飛び込むのが嫌いだ、という気持ちこそ、超速スキル獲得を阻む最大の感情的障壁だ。練習すればわかるようになると自ら言い聞かせることで、混乱から理解へと最速で進むことができる。
リサーチをしていると「パターン」、すなわち繰り返し登場する概念や技術に自然と気づくだろう。そういった概念は「心的モデル」と呼ばれ、とても重要だ。
心的モデルは、最も基本的な学習単位だ。世界に存在するモノあるいは関係性を理解し分類する手段である。また、すでに知っていることと同じようなことにも気づくだろう。
これが「心的フック」で、新しい概念を覚えるのに役立つ類似性や比喩である。最初のリサーチで心的モデルや心的フックをたくさん見つけておけば、練習の間に利用しやすくなる。 』
『 直観には反するが、新しいスキルを理解する一つの方法は、完璧ならぬ最悪の事態を想像することだ。あらゆることがうまくいかなかったらどうなるだろう。最悪の結果とは何か。
これは「反転」と呼ばれる問題解決のテクニックで、たいていのことについて本質的要素を理解するのに役立つ。望んでいることの逆を調べることで、一見気づかない重要な要素を特定できるのだ。
あなたが目標とするスキルをすでに身につけている人に話を聞くと、時間とエネルギーを投資する前に幻想や誤解を解消するのに役立つだろう。
上達にともなってどのような変化が期待できるか、あらかじめ知っておくことで、練習中に興味を失わず、プロセスの初期段階で戦意喪失するのを防ぎやすくなる。
超速スキル獲得の最大の敵は、気が散ると、集中して練習できなくなり、集中して練習できなければスキルの習得は遅れる。
練習を始める前に少し時間をとり、気の散りそうな要素をできるだけたくさん予想し、取り除いておくことで、そうした事態を防ぐことができる。
たいていのスキルには、少なくともある程度の記憶力が求められる。何か新しいことを学んでも、一定期間内に復習しなければおそらく忘れてしまうだろう。
復習することでその概念の記憶が強化され、脳がそれを長期記憶に組み込む助けとなる。
このテクニックが有効なのは、たとえば新しい言語を習得するために頻出単語を学習しているなら、間隔をあけた反復と強化はとても大切だ。
価値ある学習ができているか、検証するには予測を立てるといい。すでに学んだことにもとづいて、何かを変えたり試したりした場合、どんな結果がでるか予測するのだ。
観察:今、何を観察しているか 既知の事実:トピックについてすでに知っていることは何か 仮説:パフォーマンスの向上には何が必要か 試行:次に何を試すのか
試行錯誤の結果を記録したり、練習しながら仮説を立てたりするのに、ノートなどのリファレンスツールを使うことをおススメする。自分の予測を記録し、新しい発想を生み出すことで、有益な試行錯誤ができるはずだ。
あなたの脳や身体は生物学的システムであり、食料、水、運動、睡眠といった生物学的欲求がある。
ぼくらはどうしても無理しがちだが、それは非生産的だ。適切なインプットをしないと、心も身体も有益なアウトプットを生みだすことはできない。
最適な学習サイクルは約90分、意識を集中して取り組むことのようだ。それより長くなると、頭も身体も自然と休息を求めるようになる。その機会に運動や休息、あるいは食事や間食、あるいは仮眠を取ったりしよう。
必要なら休息をはさみ、練習時間をもっと細かい単位に区切ってもいい。20分練習して10分休息、また20分練習して10分休む、といった具合に。 』
『 理論はもう十分。そろそろ実践に移ろう。これからぼくが身につけるのは、次の六つのスキルだ。
ヨガ:自宅でのアーサナ練習プログラム
プログラミング:実際に使えるウェブアプリケーションの製作
タイピング:マイナーなキーボード配列を使ったタッチタイピングの学び直し
囲碁:世界最古かつ最も複雑なボードゲーム、囲碁の打ち方
音楽:ウクレレを弾く 』
以上の六つですが、以下囲碁について、少しだけ見てみましょう。
『 囲碁は当初の形をそのままとどめている世界最古のゲームである。囲碁は古代中国で生れ少なくとも三千年、一部の見方によると四千年以上にわたって現在のルールで続いてきた。
中国では、囲碁は「ウェイチ」と呼ばれる。ウェイ(圍)は「囲む」、チ(棋)は「ボードゲーム」を意味する。つまりウェイチとは「包囲するゲーム」という意味だ。
これはゲームの勝利の条件を的確に表現している。相手を包囲するのだ。囲碁は日本を通じてヨーロッパとアメリカに伝わったので、英語の「Go」は日本の「囲碁」という言葉に由来する。
碁盤は縦19本、横19本の線が直角に交わっている。石はマスの中ではなく、交点に置く。つまり碁盤には361ヶ所、石の置場があるわけだ。
碁盤や碁石がなければ囲碁を打つのは難しいので、ぼくは世界中の囲碁製品を集めてアメリカで販売する、イエロー・マウンテン・インポーツ社からすてきなセットを手に入れた。
伝統的なカヤ材でできた超高級な碁盤は、数万ドルもする。同じように碁石も本物の粘板岩と蛤を使った最高級品は目が飛び出るほどの値段だ。
いろいろ調べた結果、ぼくは(シロトウヒ)の床置き盤とユンツィの碁石を買うことにした。ユンツィの碁石の素材は企業秘密とされ、触り心地がよく、硬いので碁盤に置くと良い音がする。
値段も手ごろだ。碁石には伝統的な木の碁笥(ゴケ:碁石を入れる丸い容器)が付いており、対局中は碁盤の脇に置いておく。
碁盤と碁石を買ったほか、入門書も何冊か買った。
Go: A Complete Intoroduction to the Game by Cho Chikun(2010) (趙治勲著 囲碁入門完全ガイド)(未邦訳)
The Second Book of Go: What You Need to Know After You've Learned the Rules by Richard Bozulih(1998) (リチャード・ボズリッチ著 囲碁の本② ルールを覚えたら知っておくべきこと)(未邦訳)
How Not to Play Go by Yuan Zhou(2009) (ユアン・チョウ著 ヘボ碁の打ち方)(未邦訳)
最初に読む本は,「 Go: A Complete Intoroduction to the Game 」は初心者に最もおススメの本とされていたので、悩むこともなかった。
同じように「The Second Book of Go」も戦略の入門書として高く評価されていた。
「How Not to Play Go」は、”反転”の作業そのものなので、この本を見つけたときには我が意を得たりの思いだった。よくある間違いを学べば、物事への理解が大いに深まる。 』
『 囲碁の主要なルールは、たった七つしかない。
1 石は交点に置く 2 黒と白は交互に碁盤に石を置く
残る五つのルールは試合の進行と勝利の条件に関するものだ。
3 石は4方向すべてを相手の石に囲まれると「取られる」
4 打った瞬間に相手に取られてしまう場所には石は打てない(着手禁止点)
5 無限に同じ手の打ち合いを繰り返すこと(コウと呼ばれる)はできない
6 対局者の石がなくなる、一方が投了する、あるいは双方がパスをしたら終局になる
7 終局の時点でより多くの陣地を囲った対局者が勝者となる 』
『 「How Not to Play Go」には、初心者の多くが犯しがちな大きなミスがいくつかあるという
1 やみくもに対戦相手に従う (たとえば攻められると、他の選択肢を吟味せずにそこを守ったり、逃げたり、反撃したりする)
2 基盤全体に注意を払わない (攻め合いをしている場から一番遠いところに打つのが効果的な場合もある。攻め合うのは楽しいので、未熟なプレーヤーは他のエリアにあるチャンスを見逃しやすい)
3 最も効果的な手を打たない (囲碁では損得勘定が重要だ。一手あたり最大限の効果をあげるには、ときには一つか二つの石を犠牲にすることも必要だ)
4 先手の重要性を理解しない (囲碁では「先手」を打つのが非常に大切だ。できるだけ相手の動きを支配するようにしたい。相手の戦略に気を取られるのではなく、相手が陣地を失う恐れから陣地の確保をおろそかにしてしまうように仕向けたい。先手をとり、それを守ったほうがたいてい勝利する)
5 陣地を読めない (局地的な戦いや小さな陣地を確保するのに必死になり、相手に碁盤の大部分を占拠するのを許してしまう)
6 相手の状況を嫉妬する (相手の陣地が大きくなりすぎていることに気を取られ、無駄な手を打ってしまう)
7 甘い考えに陥りやすい (あと二手で取れそうな相手方のグループを見ると、一回に一手しか打てないことを忘れてしまう。相手はあなたの手に必ず反応する。相手が自分の意図に気づかないのではないか、という甘い考えで打つ手は無駄になりやすい。
「How Not to Play Go」を読んで以降、ぼくの碁は格段に上達した。最初に直さなければならなかったのは、相手の石を取ることが勝利への最短ルートだと直感的に判断する癖だ。
チェスやチェッカーではそのとおりだが、囲碁では違う。石を取るのは無駄ではないが、勝利の条件ではない。囲碁の目標は「陣地」の確保であり、相手の石を一つを一つも取らなくてもそれは可能だ。 』
『 碁を勉強をしていると、格言が良く出てくる。中国の唐時代の名棋士、王積薪のものとされる「囲碁十訣」だ。
一 不得貧勝 (欲を出すと成功を逃す)
二 入界宣緩 (敵の陣地に慌てて入るな)
三 攻彼顧我 (攻めるときも自分を顧みよ)
四 棄子争先 (石を捨てて先手を取れ)
五 捨小就大 (小を捨て大を取れ)
六 逢危須棄 (危険になったら犠牲を払え)
七 慎勿軽速 (厚い形をつくり、拙速な手を打つな)
八 動須相応 (敵の動きに応じよ)
九 彼強自保 (敵が強ければ安全策を取れ)
十 勢孤取和 (孤立あるいは劣勢のときは戦いを避けよ) 』
ヘボ碁しか打てない私が言うのもなんですが、囲碁というゲームの真骨頂は、格言にもあるように、囲碁というゲームで得られてことを、実生活のさまざまな場面の選択に於いて生かすことです。
欲を出すと成功を逃す、敵の陣地に慌てて入るな(十分に準備をして、落ち着いて事にあたれ)、攻めるときも自分を顧みよ、小を捨て大を取れ、などなどすべて実生活にも生きる格言です。
さらには、ウインドサーフィンなどは面白いのですが、ウインドサーフィンをする湖と気象条件があわないとできませんが、おもしろそうでした。
ただどれも入念なリサーチと何冊かのすぐれた入門書、いい道具やコーチに付いて、効率の良い練習を集中して行っていると感じました。
ここでの目標とする到達点を明確にし、スキルをサブスキルに分解するなどというアプローチ方法は、スポーツや趣味だけではなく、学問の習得、仕事のスキルの習得にも、応用可能だと考えられます。
(第151回)