概念アラカルト(その1) 概念研究家 五十嵐玲二談
概念アラカルトとしましたのは、私が役に立つと思われる概念、それが物事の本質を捉えていると考えられる言葉を、ランダムに書いていきます。
本当は、概念辞書としたかったのですが、思いつくままに書くためアラカルトとしました。ア・ラ・カルト〔a la carte〕フランス語で”献立表から自由に選んで注文する料理”のことだそうです。
学問とは、名著によって、優れた概念を習得することでもあると考えてます。とにかく思いつくままに書き始めます。
(1) セエレンディピティー(serendipity)
思いがけない発見。
現在この言葉は大衆メヂィアによって、幸運、偶然、あるいは出来事の幸運な展開といったゆるい意味で使われている。しばしば知性というファクターが抜け落ちていることがある。
セレンディピティは、準備された心によって、予期せぬ観察が、求めていなかった何かに到達すること、あるいは何かを発見し、価値あるものになることを意味する。
幸運な偶然(チャンス)というだけでは発見には結びつかない。判断力を伴った偶然でなくてはならない。
ルイ・パスツールの有名な言葉「観察において、チャンスはよく準備された心にのみ微笑む」の限りにおいては、セレンディピティはチャンスと同義に扱われている。 (セレンディピティと近代医学 モートン・マイヤーズ著より)
(2) エントロピー (entropy)
1) 変化した熱量を絶対温度で割ったもの
2) 統計力学的には、乱雑さの度合いを表し、確率の大きい方に向かう
乱雑さ、無秩序、混沌、使用不可能なエネルギー量であり、ある系に於いて、自発変化(Spontaneous change)外部から何ら仕事を加えなくても起こる変化。
たとえば、ビーカーに入った水に水溶性のインクを1滴たらすと、インクは全体に広がり薄まる。しかし、その反対に薄まったインクが集まって1滴のインクになることはない。
又別の例として、白い米1Lと赤い米1Lを仕切りのある箱に、それぞれを左右に入れて、仕切りをゆっくりと引き上げると左に白い米1Lと右に赤い米1Lとして存在する。
これをゆっくりと揺するとしだいに、ピンクの米2Lとなり、白い米粒と赤い米粒は混ざり合う。いくらゆすっても元の白い米と赤い米が左右に分かれることはない。
S=KbInW 微視的状態の数(確率)Wの自然対数に比例する
Kbは、ボルッマン定数 1.381*10‐23JK
ΔS=KbIn(P2(状態2の確率)/P1(状態1の確率))
すなわち、稀な確率P1から、より大きな確率P2へすなわちエントロピーΔSは不可逆的に増大する。
一方熱力学的なエントロピーの定義は
ΔS=dQ/Trev >= dQ/T 系に出入りした熱QをTrev(可逆) 融解や蒸発の絶対温度で割る
エントロピーは、本来は乱雑な、無秩序な方向に向かい、太陽からの光エネルギーを受けても、単に温度があがるだけで、秩序ある方向へは向かわないというのが、エントロピー増大の法則である。
しかしながら、地球は、水と生物と太陽によって、熱力学の第二法則が存在しているにもかかわらず、エントロピーに逆走しているように見える。 (地球と太陽と水と生物のエントロピー逆走物語) より
私は、エントロピーについて書いていますが、私もイメージとしては理解しているつもりですが、それ以上のことは、現在も勉強中です。
(3) サステイナビリティ (sustainability)
sustainable 〔形〕 ”持続可能な” から、sustainability 〔名〕となり、”環境を破壊することなく資源利用を持続することができること” とあります。
私が以前に書いた「里山文化での地球村サステイナビリティの模索」から、サステイナビリティについて考えてみます。
要旨
近代文明は、20世紀まで石油資源、金属資源、森林資源、水資源を利用して、科学技術力によって、今日の繁栄を見た。
21世紀に入って、人口圧、塩害圧、過放牧圧、温暖化圧が増大してきたために、地球生態系の負荷を減らす方向に科学技術及び近代文明の舵をきる必要が生じた。
地球生態系の負荷を減らすためには、人間社会を生態系と切り離すのではなく、人間社会を生態系の一部分と考え、生態系の恩恵を受けると共に、人間の社会が生態系に貢献しながら、より高い文化を育む道を選択すべきであろう。
日本の里山文化は、千数百年に渉って、地球生態系と共存してきた。 しかしながら、日本人にも忘れ去られようとしている里山文化をもう一度科学的に、生態学的に、国際社会的に再構築し、21世紀の地球村に活用する方法を模索する。
ここで、里山文化とは何か、主要な要素について考えてみる。
① 里山そのものすなわち、薪、炭材、下草、落ち葉の供給源であり、奥山を含めて、水源涵養林としての里山。
② 里の田、畑で作られる稲作文化、さらに麹によって加工され、味噌、醤油、米酢、日本酒を含む醗酵文化。
③ 里山の教育を担った寺子屋文化は読み、書き、そろばんを基本として、さらには和算や、種子島に伝来した鉄砲を見て、自力で火縄銃を開発する高い学術のレベルを持っていた。
つぎに、里山文化を地球村で、生かすための試案を試みる。
a. 日本語をあらゆる手段で、国連の公用語として承認させる。これによって、日本語を通して、世界の文化と言語を学ぶ。
b. 日本人及び日本の若者が里山文化を研修し直して、進化させた日本文化を武器に、世界の若者と交流しながら、世界の地球村に新しい里山文化を作る。
c. 寺子屋文化は、数百年間に亘って文盲とは無縁であり、日本語は、漢字、ひらがな、カタカナ、英数字という可溶性、可読性、識意性にすぐれているため地球村の識字率の向上に貢献できる。
(4) カテゴリー(category)
人間が物事を認識する際のもっとも根本的、一般的基本概念。
① 範疇、種類、区分、部門
② 〔哲学〕範疇、カテゴリー
③ 〔生物〕門、科
たとえば、生物は、次のドメインに分類されます、真核生物、細菌、古細菌。
さらに、真核生物ドメインは、次の界に分類されます、動物界、植物界、菌界。
動物界は、次の門に分類されます、脊索動物門、棘皮動物門、節足動物門、輪形動物門、棘胞動物門、海綿動物門、……。
私たちは、脊索動物門から脊椎動物亜門にさらに、哺乳綱に分類されます。私たち人類は、哺乳類であり、脊椎動物なのです。
植物界は、被子植物門、裸子植物門、シダ植物門、マゴケ植物門、……に分類されます。
生物は分類学で造られているわけでなく、分類学は、私たちが考えやすいように切り分けてますので、時代とともに変わりますし、生物は進化論によって、進化したのですが、地球上の種の数が何百万種なのか、年千万種なのかも、実は解かってはいません。
(5) コンセプト(concept) (発音は(kansept)でカンセプトです。)
① 〔哲〕概念 ② 発想、着想
考え、着想 〔idea、conception、concept〕 の順に抽象度が高くなる。
製品の基本理念。たとえば小型ジェットがどのような基本理念(concept)によって、着想され、設計され、製造されたか。
名著に於いても、どのような concept (基本となる考え)によって発想され、どのような構成にするか、それに従って、content (目次)が作られます。
concept = con (一緒に) + ceive (取り入れる) の過去分詞 (ラテン語)
content = con (一緒に) + tent (含まれたもの) (ラテン語)
すなわち、本を書くにも、製品を造るにも、絵画を描くにも、concept (着想)を明確にして、そのコンセプトのどこにオリジナリティが存在し、そのどこがすぐれた点かを明確にしながら、具現化することによって、一つの形あるものになります。 (第1回)