チェロ弾きの哲学ノート

徒然に日々想い浮かんだ断片を書きます。

世界の子供たちが水と食べ物を得るために

2016-06-25 10:41:19 | 選択

 多元的全体食のすすめ(十五)    食べ物研究家  五十嵐玲二 談 

 15. 世界の子供たちが水と食べ物を得るために

 世界の子供たちが安全な水と食べ物を十分に確保することは、現在でも十分ではありませんが、未来はもっと厳しいという予測の信憑性は高いと考えます。世界の子供たちの体と心の健康を保つためには、安全な水と食べ物は不可欠です。


 (1)  世界の人口の伸び率を緩やかなものにする。方法は難しいですが、衛生面の確保と教育で生活を向上させることによって、可能だと考えます。


 (2)  地球の肺である熱帯雨林とサンゴ礁とマングローブの森を守る。生物多様性の宝庫であり、炭酸ガスを酸素に変え、木の葉が水を蒸発させて、自動車のラジエーターの役割も果たして、地球を冷却してます。


 (3)  地球の血管である河(川)を守る。川は単なる排水管ではありません。河は、魚類、両生類、鳥類、爬虫類、哺乳類が生息し、彼らは、河を移動してます。(多くの魚類は、ある時期には、川を遡ります)。

 ダムは、川を分断するため、本来好ましくはありません。川が森と海を繋いで、魚と鳥でミネラル分を森に運びます。豊かな川が、豊かな森と豊かな海をつくっているのです。灌漑農業は塩害に陥る危険が大きい。


 (4)  砂漠化を避ける。砂漠化を避けるには、過放牧を避け、森林を所々につくって、放牧地と森林が混在していることが望ましい。農地も森林と農地が混在していることが望ましい。

 森林は、水源涵養林としての機能も果たします。水源涵養林は、子どもたちの未来のへ水を届ける唯一の方法である。


 (5)  モンサント社の除草剤ラウンドアップとその耐性遺伝子組み換え種子は、二三十年後には枯葉剤なので、何も生えないばかりか、枯葉剤の後遺症に苦しむことになります。少なくとも遺伝子組換え穀物には、その表示は最低限必要です。


 (6)  地下水は有限な資源なので、百年先を考えて計画的に使用する。地下水の汲み上げによって、地下水位が下がり、更には塩害が発生し、紀元前3千年前のメソポタミア文明の轍を踏むことになります。世界の食料の40%は灌漑農業で生産されてます。


 (7)  アグロフォレストリーの推進 (南米トメアスのアグロフォレストリーの父 坂口陞(のぼる))

    トメアスのアグロフォレストリーはコショウの栽培からはじまります。 コショウは病気に弱いので、 10年以内に枯れることを見越して間に野菜や果樹や樹木の苗を植えていきます。(一年目)

 コショウが枯れ、果樹が実をつけます。最も作物の種類が多く生産量が多い時期で、また最も二酸化炭素の吸収量が多いときとされています。(5~10年目)

 高木は葉を生い茂らせ、低木は高木の下で育ち、共存した自然な生態系が完成します。 『森』ができあがると果樹の生産量は落ち、後は材木として価値を得るまで育てられます。(20年以降)


 (8)  深海水を利用して、魚の養殖

   深海水をくみ上げて、ミネラル分の豊富な海水に太陽があたり、プランクトンが大発生する、人造湖をつくる。淡水と海水が混じり合う人造湖で養殖を行う。ただし採算の計算を厳密に行う必要がある。(膨大な初期投資が必要で、様々な試験が必要です)


 (9)  砂漠で太陽光の集光発電を行って、海水の淡水化を行う。これは膨大な初期投資を必要としますが、例えば、サハラ砂漠で、発電を行い、海岸近くで海水の淡水化を行って、農業と植林を行う。(これも、様々な試験が必要です)(サハラでの発電事業は様々なプロジェクトがある)


 (10)  キノコは、菌糸が木材を食べ物に変えるすばらしい技術です。森と食料を同時に手に入れる方法でもあります。シメジやナメコのみそ汁を世界に普及させる。


 (11)  蜂の子、イナゴなどの昆虫食の素材を拡大する。昆虫は栄養バランスに優れ、鳥類の主要な食糧である。その種類も多く多くの可能性は存在する。


 (12)  肉を減らして、穀物(精製の度合いを低くする)を多く食べる。牛肉1kgを得るためには、穀物を11~14kg必要です。豚肉を1kgを得るためには、穀物を7~9kg必要です。鶏肉1kgを得るためには、穀物4~5kg必要です。


 (13)  地球温暖化を抑え、海面上昇を押さる。海面上昇すると、河口のデルタ地域の農地が失われ、海洋大循環も止まる可能性があります。私たちは、使用するエネルギーを少し節約し、地球のラジエーターでもある熱帯雨林を守り、私たちのまわりに一本でも(小さくても)木を植えましょう。


 (14)  発酵食品は、食料を消化しやすく、栄養価を高め、食べ物を美味しくします。この発酵食品をさらに発展させると同時に、世界に普及させることも、重要です。

 発酵食品とは、お酒類、紅茶等、酢、醤油、味噌、納豆、魚醤、塩辛、かつお節、飯寿司、ぬか漬け、キムチ、チーズ、ヨーグルトなどを指します。


 (15)  キチン・ガーデン型農業の進め。

 キッチン(kitchen : 台所)、ガーデン(garden : 庭)のことで、裏庭菜園で、台所で必要なものを裏庭に植えて置くと、何も手を掛けずに毎年、収穫できるかたちです。手間のかからない、小樹木の果樹や多年草の野菜や山菜です。

 南の国では、バナナ、サトウキビ、ヤムイモ、パンノキ、タロイモなど様々に構成され、小さな裏庭でも、流通経路をすべて省いて、直接胃袋ですので、極めて省エネで、子供たちがどのように植物が成長し、どこが食べ物になるか、収穫の歓びと感謝することを学びます。

 さらには、全体食の大切さを学び、健全な体と健やかな心をかたちづくります。


 (16)  農地のサステイナビリティ(sustainability : 持続できること)を考える。

 農地は、意外に持続性のないものです。特に単一作物を毎年収穫すると、様々な問題が発生します。ここで言う持続性とは、少なくても数百年の単位です。東南アジアの水田による稲作農業は、数百年の時を経てもびくともしません。

 ナイル川河口のエジプトのデルタ地帯の農業は、ナイルの豊かな洪水によって、スフインクスの時代から、クレオパトラの時代を経ても数千年の間、豊かな収穫を保持してました。

現代では、アスワン・ハイ・ダムが建設され、1970年代から、灌漑による洪水のない農業になりましたが、現在では、アラブの春どころか、深刻な塩害に悩まされています。この場合の塩害の主成分は、地中に存在した炭酸ナトリウムが、地表に析出する現象です。

 さらには、土壌の使い捨て農業、除草薬、殺虫剤の集積など、現代科学技術がさらに問題を深刻にしてます。


 (17)  農業と料理と医療と運動と仕事と学問を関連させながら、相乗効果を引き出します。これらは家庭に於いても個人に於いても、それぞれが別々に存在しているものでは、ありません。相互に関係しながら、家庭や人を形成してます。


 (18)  桃源郷となるモデルを造る。蜜源植物と蜜蜂と学校と植物園と食品加工場とレストラン、里山、農場、水源涵養林などからなる村をつくる。この桃源郷のプランに必要とする資金を株券として、出資してもらい、出資者は、季節ごとに、一泊二日で招待される。    (第15回)


 もう一度、目次を記載します。

 多元的全体食のすすめ  

 1. 多元的全体食の動機 

 2. 食べ物と栽培作物 

 3. 人類の雑食性の獲得と地理的拡散 

 4. 食べるということ 

 5. 食べることの精神的意味 

 6. 魚と貝と海藻と全体食について 

 7. 日本人としての食事の基本形とは 

 8. 食べること、学ぶこと 

 9. 好き嫌いと味覚の偏向

10. 人はどのように形成されるか 

11. 植物分類による野菜、果物、穀物について 

12. 調理器具と調味料について 

13. 食物の危険性について 

14. 理想の食べ物 

15. 世界の子供たちが水と食べ物を得るために   以上です。


理想の食べ物

2016-06-18 08:07:49 | 選択

 多元的全体食のすすめ(十四)    食べ物研究家  五十嵐玲二 談 

 14. 理想の食べ物

 私が、美味しくて、栄養バランスが良くて、経験的に体によいと思った食べ物です。これらは基本的には、日本の伝統的なものです。夕食の時には、少々のお酒があると、料理とお酒が引き立てあいます。


 (1) メザシ

 イワシ類の小魚を塩漬けした後、目から下あごへワラを通して数匹ずつ束ね、乾燥させたもの。軽く焼いて食べれば、イワシがこれから生きるために必要なすべての栄養分が含まれています。

 行政改革を主導した、土光敏夫元経団連会長は、メザシの土光と言われるほどの好物でした。


 (2) ワカサギの空揚げ

 私は北海道なので、春先水のきれいな時期の、生きのいいきらきらした、ワカサギに小麦粉を軽るくまぶして、揚げたワカサギにレモンを軽くしぼって、岩塩をふれば、ワカサギの精気をすべていただけます。


 (3) 胚芽米(五分搗き)とむかごと銀杏と栗の炊き込みご飯

 これは秋の味覚ですが、むかごの茶色と銀杏の緑、栗の黄色、お米の白で色彩的にも、味もカラフルで、それぞれが、翌春には芽を出す力をたくわえた、食べ物で、里の秋の恵みです。


 (4) カキの酒蒸し

 グリコーゲンのほか、アミノ酸やカルシウム、亜鉛などのミネラルをはじめ、海の栄養がすべて含まれるため、「海のミルク」と呼ばれます。白ワインか日本酒が引き立ちます。

 世界中で食べられてますが、日本人は縄文時代から、食べているそうです。


 (5) ウドとホッキの酢みそ和え

 ホッキとは、正式名称ウバガイのことで、日本海北部と茨城県以北の太平洋、シベリア沿岸まで分布し、冷水域の外洋に面した浅い海の砂底に生息する。 北海道ではホッキガイ(北寄貝)と呼び、アイヌではポクセイの呼び名があります。

 ウドのうす緑とホッキガイのピンクで、野菜としては、コクのあるウドとホッキガイの甘みを酢味噌で包みます。日本酒を少し添えると引き立ちます。


 (6) シジミのみそ汁

 日本の全体食を代表するシジミのみそ汁、昔から健康に良いことは、実証済みです。医食同源そのもので、時代小説でも良く取り上げられています。


 (7) 納豆と焼きのりと胚芽米(五分搗き)

 納豆にネギ、ノリとご飯、これにみそ汁と漬物で、日本の朝食の完成です。大豆を煮て納豆菌で発酵させることによって、消化しやすく大豆全体のタンパク質がとれ、ノリは海のミネラルが得られ、ご飯の胚芽部分を残すことで、お米の本来のパワーが得られます。


 (8) かぶとオクラとニンジンの糠漬け

 糠漬け(ぬかづけ)とは、米糠を乳酸菌発酵させて作った糠床(ぬかどこ)の中に野菜を漬けこんで作る日本を代表する漬物です。旬の野菜であれば、美味しく滋養に富んだものに変える、魔法の糠床です。

 糠漬けが漬物の王者といわれるのは糠床には、 たんぱく質、脂質、繊維質、カルシウム、リン、鉄、ビタミンA(カロチン)、B1、B2な、どを豊富に含むからです。つまりお米の胚芽の部分に貴重な栄養分があるからです。


 (9) ニシン漬け

 北海道の初冬に食べるのが、ニシン漬けです。私の家では、晩秋に大根、キャベツ、身欠き鰊、麹、天然塩をメインに、鷹の爪、ショウガ、人参、コンブで三週間ほど、冷たい所で漬け込みます。そして、初冬から食べ始めます。大根は、皮むきで皮をむいてから、短冊に切ってください。

 

 (10) ホッキカレー

 カレーを肉の代りに北寄貝を入れます。ジャガイモやニンジンは通常通り入ります。北寄貝が比較的安価な時に、貝柱、ひも、水管、身(足)の下の三分の一を、細かく切って、肉の代りに処理していきます。身(足)の三分の二の部分は、大きめに切って、煮すぎて固くならないように、最後に入れます。

 ご飯は、胚芽米に十穀米を加えてます。私はカレースパイを追加した、ちょっぴり辛めがすきです。北寄貝のうま味と炒めたタマネギの甘み、ジャガイモ、ニンジンとカレースパイス、十穀米で、五穀豊穣とはこんな感じなのかもしれません。


(11) ジャガイモとワカメのみそ汁

  ジャガイモのビタミン(白)、ワカメのミネラル(緑)、味噌のアミノ酸と栄養バランスに優れています。私は、ジャガイモと大根、ジャガイモと大根菜の組み合わせも好きです。(具だくさんの方が私の好みです)


 (12) むかごと銀杏のガーリックバター炒め

 むかごと銀杏を最初にガーリックと少しのオリーブオイルで、炒めます、後半に、バターを加えて炒めます。バターの素味でいただきます。むかごは、方丈記に「或は茅花(つばな:チガヤの花芽、食用となる)をぬき、岩梨をとり、零余子(ぬかご:むかごのこと)をもり、芹をつむ」とあります。ビールのつまみにもあいます。


 (13) 鮭の飯鮓

  飯寿司とは、ご飯と魚・野菜・麹を混ぜて、重石をのせて漬け込み、乳酸発酵させて作る主に北国ならではの郷土料理です。魚は、ハタハタ、鮭、にしん、ホッケなどで、キャベツ、大根、ニンジンなどの野菜と一緒に仕込みます。

 鮭は新巻鮭で、8度以下の場所があれば、可能です。鮭をスライスするには、きれる包丁と技術を必要とします。鮭と野菜のうまみが楽しめます。雑菌が入り込まないための配慮が必要です。


 (14) 茶碗蒸し

 ユリ根、干しシイタケ、栗、銀杏、三つ葉の茶碗蒸しです。料理屋さんでは、これに、ウニかカニかエビを入れますが、カツオとコンブの出汁と卵なので、特に必要はないとおもいます。

ユリ根は良寛さまの好物です。私たちもユリ根を食べて、良寛さまにあやかりたいものです。


 (15) 牛すじ肉のポトフ

 牛すじ肉、ジャガイモ、ニンジン、タマネギ、キャベツ、セロリ―、ソーセージ、かぶなどを土鍋で煮込む。牛すじ肉とソーセージは、大ぶりの野菜を美味しく食べるためのものです。


 これらの料理に於いて、家族の健康のためにまもるべきこと

 (い) 甘さは、赤砂糖又は黒砂糖、又は蜂蜜を使う

 (ろ) 塩は、天然塩か、岩塩を使う

 (は) ご飯は、胚芽米か五分搗き米を食べる

 (に) パンは、全粒粉を半分程度使う

 (ほ) 酸化防止剤、防腐剤、抗菌降下剤などは、極力避ける

 (へ) 酸化した油は避ける

 (と) 旬の食材を活用する

 (ち) かつお節は、500g入りの紙袋で削り節を送ってもらう。私も自分で削りましたが、技術が必要で、最後の方ではケガをしかねませんので、専門店で機械で削った、かつお節を買う方が、お得です。(出汁は、日本料理のベースとなるものです)。

 (り) お酒は、料理をより美味しくいただくためと、考えましょう   (第14回)

 


食物の危険性について 

2016-06-13 10:08:09 | 選択

 多元的全体食のすすめ(十三)    食べ物研究家 五十嵐玲二談

13. 食物の危険性について

 美味しい料理の話をしているのに、私もこの話をしたくありませんが、避けては通れません。本当は食物の安全性としたかったのですが……。食物が距離と時間を超越して、私たちの口に届くのは、喜ばしいことですが、そのためには代償をはらわざるを得ないのです。


 その一つ目は、殺虫剤、除草剤などが、ダニならダニにだけ効力があるのではなく、他の生物(人間も含む)に対しても有毒です。この事は、手作業で長期間にわたり殺虫剤を扱った人々が、後遺症に苦しんでいることでわかります。

 さらには、レイチェル・カーソンは、多くの困難を克服して、環境ホルモンの生態系への影響について調査して、 ”沈黙の春” の中で様々に語っています。


 その二つ目は、除草剤を大豆なら大豆に撒いただけなので、安心とはならないのです。それはすべての物質は水とともに、生物を循環し、地球を循環しているからです。沈黙の春の中でも、食物連鎖によって、白頭鷲の卵が孵らないという、お話しが出てきます。

 私のブログの ”地球と太陽と水と生物のエントロピー逆走物語” のメインテーマは、地球上の物質は循環し、私たちの体をも構成していますということです。


 その三つ目は、食物は消化されて、酸素と結合することによって、私たちはエネルギーとして利用できます。食物は、そのままでも、時間の経過によって、少しづつ酸化、腐敗、形の崩れをしていきます。

 さらには、私たちにとっての食物は、他の動物や昆虫や細菌にとっても、食物なのです。そして、このことが食物の本来の姿なのです。


 次に、四つの段階に分けて、どのような有害物質の影響を受けるかを見てみます。


 (1) 農産物の生産段階  除草剤、殺虫剤、殺菌剤、殺ダニ剤、防カビ剤

   農産物の生産段階に於いて、遺伝子組換え作物とモンサント社について考えます。モンサント社世界最大の種子、農薬メーカーです。モンサント社は、ベトナム戦争の枯葉剤の開発メーカーです。

  モンサント社は、除草剤ランドアップを開発し、ランドアップに耐性をもつ様々な遺伝子組換え作物を販売している。ランドアップの主成分であるクリホサートは、非選択性除草剤であり、ランドアップ漬けになってしまった土壌では、何も育たないそうです。


 (2) 畜産の段階      成長ホルモン剤、抗生物質

  家畜への抗生物質の乱用は、多剤耐性菌を生みだす原因になります。成長ホルモン剤の利用は、肉や牛乳に移行し、人のホルモンバランスを崩す恐れがあります。さらに家畜の飼料の中の残留農薬や防腐剤も悪影響を与えます。


 (3) 貯蔵と移送の段階  防カビ剤、防虫剤

  ポストハーベスト(post-harvest  収穫後の農薬処理)は、収穫物である果物や穀物、野菜に防カビ剤、防虫剤を高濃度で使われます。


 (4) 料理の段階      防腐剤、抗菌効果剤、静菌硬化剤、酸化防止剤、保護コロイド剤

  家庭で料理する時は、使いませんが、工場で料理をする場合は、防腐剤、酸化防止剤、保護コロイド剤などを使用して、つくった時の状態を保とうとします。 (第13回)


調理器具と調味料について

2016-06-11 10:03:38 | 選択

 多元的全体食のすすめ(十二)    食べ物研究家 五十嵐玲二談

 12. 調理器具と調味料について

 料理を調理器具と調味料の二つに視点から眺めてみます。料理を何によって捉えるべきなのかはよく分かりません。対象となる料理を大きく四つに分けます。一つ目は、日本料理です。二つ目は、中華料理です。三つ目は、フランス(イタリア)料理です。四つ目は、エスニック料理(タイ、インド)とします。


 日本料理の調理器具は、包丁、まな板、桶、おろし金、すり鉢、土鍋

 中華料理の調理器具は、中華鍋、玉杓子、中華包丁、蒸龍、穴杓子、油入れ

 フランス料理の調理器具は、オーブン、ホッパー、フライパン、石窯

 エスニック料理の調理器具は、石すり鉢、石臼、タイスキ・トムヤム鍋、バティリー(伝統的インド式ナベ)、タンドール窯


 日本料理の調味料は、醤油、味噌、出汁(かつお節、コンブ、煮干し)、日本酒

 中華料理の調味料は、醤油、味噌、豆板醤、酢、紹興酒、スープ(鳥ガラ、帆立貝柱、ショウガ、ネギ)

 フランス料理の調味料は、岩塩、コショウ、バター(オリーブ油)、トマト、赤ワイン、生クリーム

 エスニック料理の調味料は、岩塩、ココナツミルク、ナンプラー、ギー、ペッパー、カレー粉(ターメリック、ウコン、カルダモン、シナモン)


 代表的な日本料理 お寿司、大根の漬物、シジミの味噌汁、鰺の干物、ごはん

 代表的な中華料理 チャーハン、餃子、八宝菜

 代表的なフランス料理 鳥の丸焼き、ポトフ、チーズ、パン、パスタ

 代表的なエスニック料理 グリーンカレー、トムヤムクン、トムカーガイ、豆と野菜のカレー、ナン


 季節の素材を日本料理風に、中華料理風に、フランス料理風に、エスニック料理風にと空想を働かせながら、料理をするとさらにバリエーションとレパートリーがふえて楽しいものになると思います。

 旬の様々な食材を取り入れながら、下ごしらえをして、調理器具を使って、調味料で味を整えて、栄養バランスのとれた、料理を家族そろって、大地の恵みに感謝して、美味しい料理をいただきたいものです。 (第12回)



植物分類による野菜、果物、穀物について

2016-06-02 15:49:00 | 選択

 多元的全体食のすすめ(十一)    食べ物研究家 五十嵐玲二談

 11. 植物分類による野菜、果物、穀物について

 人類の主要な食物である栽培作物についての全体像とそれらについて体系的に理解することは重要なことです。そのために植物分類学の力を借りて科ごとに分類してみようと思います。

 そこで、生物の分類の体系について見てみます。

 ドメイン ―― 界 ―― 門 ―― 綱 ―― 目 ―― 科 という階層構造になっています。しかし、生物分類学は、便宜上の分類であって、生命体は、分類学に沿って進化したわけではありません。

 真核生物ドメインの下に、菌界、植物界、動物界が、位置します。植物界は葉緑体を持ち、動物界はミトコンドリアを持ちます。


 植物界は、裸子植物門と被子植物門に分かれます。裸子植物門には、松、イチョウがあり、食べ物としては、松の実、ギンナンがあります。

 被子植物門は、単子葉植物綱と双子葉植物綱に分かれます。単子葉植物綱は、子葉の数が一枚で、根がひげ根で、葉脈は平行です。一方、双子葉植物綱は、子葉が二枚で、根が主根と側根で、葉脈は網状です。

 ここで、目からは細分化しますが省略し、ここでは、科をもって話をすすめます。単子葉植物綱には、イネ科、ヤシ科、ネギ科、サトイモ科、ユリ科、バショウ科、ショウガ科などがあります。

 以降は双子葉植物も単子葉植物も断りなく科で話をすすめますので、上記以外は双子葉植物です。最初に私の独断でベスト20を表記します。

 本来は、全世界の金額ベースの生産高で、順位を決定したいのですが、そのような信頼のおける統計は存在しません。この順位表はたたき台です。まずは、たたき台をつくることが重要ではないかと考えました。


 (1) イネ科  稲、小麦、大麦、トウモロコシ、サトウキビ、モロコシ(ソルガム)、カラスムギ、アワ

   これらは、主食となる穀物で、稲は水稲と陸稲があり、東南アジアを主体として、現在は全世界で栽培されている。小麦、大麦はヨーロッパ、中東、アフリカを主体として、全世界で栽培され、パンやナンなどに工夫された。

 トウモロコシは、インカ文明の文化遺産でありますが、アメリカが、大規模農業と一代雑種によって、生産性を高め、人の食料としては勿論ですが、家畜の飼料として、肉、卵、牛乳をアメリカの庶民の食卓に登場させました。

 大麦はビールの原料として、重要なものです。サトウキビは、人類には稀であった甘さを、身近なものにしました。


 (2) マメ科  大豆、インゲン豆、エンドウ、ササゲ、レンズマメ、ソラマメ、落花生、小豆、枝豆

  これらの豆の中で、大豆が生産量及び多様な用途に於いて、ダントツ重要です。これらマメ科の豆は穀物との栄養バランスの良さで、第2位にランクされます。穀類の栄養を補うタンパク質が豊富なためです。枝豆は、未熟な大豆です。

 マメ科の植物は、根に根粒菌を共生させているため、空中窒素を固定して、亜硝酸をマメ科の植物に提供する。


 (3) ナス科  ジャガイモ、トマト、なす、トウガラシ、ピーマン、パプリカ

  ジャガイモは、寒冷地に於いては、主食となり、トマトとトウガラシはイタリア料理の主要食材の地位を占めています。ジャガイモもトマトもトウガラシもインカ帝国の文化遺産です。 野生のジャガイモが子供の握りこぶしの大きさになるまで、数百年いや数千年の歳月が流れたと言われています。


 (4) バラ科  リンゴ、ナシ、イチゴ、ウメ、アンズ、サクランボ、桃、びわ、プルーン、アーモンド

  バラ科の果物で、リンゴは保存性、あらゆる加工が可能で、リンゴを食べると医者いらずと言われています。イチゴは生クリームとの相性が良く、温室栽培で収穫期をコントロールすることによって、需要を伸ばしてます。


 (5) 瓜科  かぼちゃ、メロン、スイカ、キュウリ、ゴーヤ、ズッキーニ、冬瓜

  かぼちゃは、人間も食べますが、家畜用の飼料としても重要なものです。メロンは美味しさを追求することで、高級果実としての地位を確立しました。


 (6) アブラナ科  キャベツ、大根、白菜、かぶ、ブロッコリー、菜花、ナタネ

  キャベツ、大根、白菜は、漬物の御三家として、米食の名脇役です。菜花は、ナタネの開花直前で収穫したものです。ナタネの実からナタネ油がとれ生産高は、パーム油、大豆油についで、第3位です。菜の花は満開になると黄色で、ミツバチによって、ナタネの蜂蜜がとれます。


  (7) ヤシ科  ココヤシ、ナツメヤシ、サゴヤシ、アブラヤシ

  この中で、アブラヤシがパーム油の原料として、インスタント食品、スナック菓子など、すべての揚物にもちいられます。アブラヤシを栽培するために、ボルネオの熱帯雨林を切り倒し、ボルネオゾウやオラウータンの森を奪っていることも忘れてはなりません。

 パーム油を輸入して、さまざまな食品加工を行っている日本では、多くの人が肥満や動脈硬化の問題をはらんでいる。私たちも少しパーム油を使った食品群を控えることによって、ボルネオの熱帯雨林に心を馳せてみてはと考えます。


 (8) ツバキ科  チャノキ〈茶)、椿(椿油)

  お茶の葉は、紅茶、ウーロン茶、日本茶として飲まれ、生産高では、中国、インド、ケニア、スリランカ、トルコの順で日本は十位です。コーヒーかお茶かで、迷いましたが、歴史があり、中国とインドでお茶を飲んでいる以上、お茶、コーヒーの順とならざるを得ません。

 現在では日本茶は、世界中で飲まれ、茶道と共に日本国内だけのものではなく、さらに健康にも効果があり、これからも世界に羽ばたく予感が致します。


 (9) アカネ科  コーヒーノキ(コーヒー豆)

  コーヒーとお茶の対比は、パン文化と米の文化に対応するように思います。パンとコーヒーの相性が良く、ごはんとお茶(ウーロン茶)の相性が良いものです。コーヒーの生産高では、ブラジル、ベトナム、インドネシア、コロンビア、インドの順です。


 (10) ぶどう科  ぶどう(ワイン)

  ぶどうは、大きく、生食、乾しブドウ、ワインの用途に分かれます。ぶどうの生産高では、中国、イタリア、アメリカ、スペイン、フランスとなりますが、ワインの生産高では、フランス、イタリア、アメリカ、スペイン、チリとなります。優れたワインを造ることによって、付加価値は跳ね上がります。


 (11) ミカン科  バレンシアオレンジ、ネーブルオレンジ、グレープフルーツ、ゆず、ダイダイ、カボス、レモン、ライム、夏みかん、八朔、伊予柑、清美、ブンタン、マンダリンオレンジ、紀州ミカン、キンカン

  柑橘類は、世界的にどれが重要で、今後どれが有望なのかわかりませんが、生食、ジュース、料理の調味料と可能性を秘めてます。私は個人的にまるごと食べられる、キンカンに可能性があると思います。


 (12) バショウ科  バナナ

  バナナは、栄養価も高く、生産量も大きいのですが、主食としての重要性は低下した。中尾佐助はこのように述べてます。

 「東南アジアの熱帯雨林の中で、バナナ、ヤムイモ、タローイモ、サトウキビの四つの栽培植物を開発したことは、人類の生活史上の革命の一つだ。

 この四種の作物を組み合わせた農業体系は、弾力性に富み、安定した食物生産を可能にするものである。この方法で農業生産にたよった経済がはじめて成立可能となり、人類の長い旧石器時代を通じて行われた採取経済から飛躍することが可能になったのである。

 バナナは本来、種無しではなく、三倍体利用によって、種無し果実を作り上げている、これは近代育種学にとっても驚嘆すべきものである。」

 バナナの生産高は、インド、中国、フィリピン、ブラジル、エクアドルの順である。


 (13) たで科  そば

 ソバは、世界中で食べられており、生産高では、ロシア、中国、ウクライナ、フランス、ポーランドの順である。ニョッキ風、ヌードル風、クレープ、おかゆ、そばがき風などの食べ方がある。そばは、イネ科以外の双子葉の穀物である。


 (14) アオギリ科  カカオ

 カカオ豆はチョコレートやココアの主原料で、カカオの樹の果実の中にある種子のことです。カカオの樹は常緑樹ですが年間を通じて落葉し、半日陰を好みます。枝だけでなく、幹にも実のなるちょっと風変わりな樹です。

 カカオ豆の価格は原則として商品先物市場における国際相場により形成されています。カカオ豆の商品先物市場は、ロンドンとニューヨークに開設されており、毎日取引が行われています。

 ロンドン市場はスターリングポンド(イギリス通貨)建てで、主として西アフリカ産のカカオ豆を取引し、ニューヨーク市場は米国ドル建てで、主として中南米産のカカオ豆を取引しています。(日本チョコレート協会ブロブより)

 生産高は、コートジボワール、ガーナ、インドネシア、エクワドル、ナイジェリアの順ですが、チョコレートの消費国は、先進国です。


 (15) ヒルガオ科  サツマイモ

 サツマイモは繁殖能力が高く窒素固定細菌との共生により窒素固定が行えるため痩せた土地でも育つ。従って、初心者でも比較的育てやすく、江戸時代以降飢饉対策として広く栽培されている。(Wikipediaより)

 生産高は、中国、ナイジェリア、ウガンダ、インドネシア、ベトナムの順です。魚の干物とサツマイモは、栄養のバランスが良い。本来の順位は、もっと上位かもしれません。

 (次の順位は、トウダイグサ科のキャッサバかもしれませんが、日本では見られませんので、省略します。)


 (16) ネギ科  ネギ、タマネギ、ニラ、ニンニク、ラッキョ、アサツキ、ワケギ、ギョウジャニンニク

 ネギ科の野菜は、肉との相性が良く、特にタマネギ、ニンニクは、肉料理になくてはならないものです。


 (17) キク科  ヒマワリ、レタス、ゴボウ、フキ、サラダ菜、春菊、ヤーコン、アーティチョク、ベビーリーフ、カレープラント

 ヒマワリは、種子を搾ってヒマワリ油をとります。植物油の生産高は、パーム油、大豆油、ナタネ油、ヒマワリ油の順です。レタス、サラダ菜、ベビーリーフ、アーティチョク、カレープラントは、生でサラダとして食べます。


 (18) セリ科  ニンジン、セロリ、パセリ、三つ葉、せり、アシタバ、コリアンダー(パクチー)

 ニンジン、セロリは、肉料理になくてはならないものである。セロリは、ゴリラが好んで食べる、植物です。


 (19) サトイモ科  サトイモ、コンニャクイモ

 サトイモは、南太平洋では、タロイモとして、主食である。


 (20) ショウガ科  ショウガ、ミヨウガ、ウコン、カルダモン

 ショウガ、ウコン(ターメリク)、カルダモンは、カレーをはじめとする香辛料にとって重要です。


 (21) ヤマノイモ科  ナガイモ、ヤマノイモ

 ナガイモ、ヤマノイモは、擂って生でも、焼いても、煮ても食べることができます。むかごは、ヤマノイモの葉の付け根にできる珠芽です。むかごは、方丈記にも出てきます。


 (22) その他  ゴマ、オリーブ、栗、コショウ、クルミ、アスパラガス、アボガド、キュウイ、……

 第21位までに、もれたものをその他としましたが、ゴマ、オリーブ、アスパラガスなどは、将来性が期待できる作物です。

 

 野菜、果物、穀物の全体像を捉え、その料理方法を知り、成長段階のどの時点で、食材とするか、魚や肉との相性を知り、どのように料理して、どのように体に役立つかを知って、選択することは重要です。 (第11回)


人はどのように形成されるのか

2016-05-28 14:42:44 | 選択

 多元的全体食のすすめ(十)    食べ物研究家  五十嵐玲二談

 10. 人はどのように形成されるのか

 「その人を知るには、彼の書斎の本棚をみれば、人となりがわかる」

 これは、その人が読んできた本によって、人間が形成されると言ってます。人は名著によって、感動を受け、触発されてわずかではありますが、前進します。しかし長い人生に於いては、目に見える差を生ずるのかもしれません。

 本は、時間と空間を越えて、その著者が描く世界に導かれて、会話をすることを可能にします。私たちは、自分がまったく知らない科学技術の分野についても、書籍を通して分け入ることも可能です。


 「その人の友人をみれば、その人がわかる」

 友人は、少なくて良いのですが、「類は友を呼ぶ」と言いますが、友人の影響は少なからず受けるものです。理想としては、お互いに高め合う関係で、敬意を払い合うなかでありたいものです。でも友人でも、伴侶でもなかなかに難しいもので、それでいてある距離感も必要な気がします。


 「あなたの病気も健康も日々の食事の積み重ねの結果である」(水野南北)

 水野南北は、大阪阿波座に生まれたが、幼くして両親を亡くし鍛冶屋をしていた叔父夫婦に育てられる。子供の頃より盗み酒を覚え、酒代に窮して叔父の稼ぎ集めた虎の子を持ち逃げし、天満で酒と博打と喧嘩に明け暮れ、家業の鍛冶職錠前造りから「鍵屋熊太」と呼ばれる無頼の徒となった。

 刃傷沙汰を繰り返し、十八歳頃、酒代欲しさに悪事をはたらき、天満の牢屋に入れられる。牢内で人相と人の運命に相関関係があることに気づき観想に感心を持つようになる。

 出牢後、人相見から顔に死相が出ていると言われ、運命転換のため、慈雲山端竜寺に出家を願い出たところ、「半年間、麦と大豆だけの食事が続けられたら弟子にする」といわれ、堂島川で川仲仕をしながら言われた通り麦と大豆だけの食事を続けたところ、顔から死相消えたばかりでなく、運勢が改善してしまった。

 こうした体験から観相学に興味を持ち、髪結い床の小僧を三年勤め頭の相を研究し、湯屋の三助を三年間で体の研究をし、火葬場のを三年やり、死者の骨相を研究した。(Wikipediaより)

 さらには、神道、儒教、仏教を研究し、観相学によって人相を占ってきたが、ただ人相のみで判断すると、お金ができ出世し長生きする相の人が、貧乏で若死にしたりで中々当たらぬことが多く残念に思っていた。

 『 処が或る日、ふと食物が大事ではと気付き、人の運・不運寿命は、みな食べ物、飲み物を慎むか、慎まないかによって決まるのではあるまいかと試してみた。

 それから、人を占うのに先ずその人の飲食の様子を聞いて、そして人相を観たところ当たるようになった。人間の一生の吉凶はみな只その人の飲食による。

 命のある間はどんな人にも運がある。朝早くから起きて毎日の仕事に精を出しその上に飲食を慎んで怠らなければ、自然に天理にかなって、運は段々開けてくる。これを開運という。 』  このように水野南北は述べてます。


 人間が、食物によって生きていることは間違いなく、とくに母親の食事は大切です。環境ホルモンに関するもの、PCB、ダイオキシン、有機スズ、枯葉剤などは、妊娠中や母乳から子供の体内にも蓄積します。母親の妊娠中の喫煙、過度のアルコールについても、充分な配慮が必要です。

 食物をよく噛んで、食べることは、食物を消化するために大切なことです。このためには、歯の健康をたもち、あごの筋肉の噛む力を保つことも必要です。

 胃腸の健康のために、発酵食品を十分にとって、腸内細菌を良い状態に保つことも重要です。日本人は、漬物、みそ汁、納豆、飯寿司などによって、酵母菌、乳酸菌、納豆菌、酢酸菌、麹菌をとることで腸内の健康を守ってきました。

 生物は、口と腸と肛門の3つがあれば、成立し、動物はイソギンチャクのようなものから、進化して他の器官は、後から創られたと考えられます。私たちは、胃腸の調子が悪いと気持ちも沈み、胃腸の調子が良いと気持ちも明るくなるものです。

 私たちは、食事に感謝し、よく噛んで食べ、清い水を飲み、自分の仕事や趣味を一生懸命に行っていると、何かが得られるのではないでしょうか。 (第10回)


好き嫌いと味覚の偏向

2016-05-26 13:50:02 | 選択

 多元的全体食のすすめ(九)    食べ物研究家  五十嵐玲二談

 9. 好き嫌いと味覚の偏向

 人間の味の好みに関する発達は、母親の胎内にいる時から始まります。胎児は羊水を通じて、母親が摂取した食物の風味や匂いを感じます。そして生まれたあとも、母乳を通じて風味を感知します。

 つまり果物や野菜が嫌いな子どもにしないためには、妊娠中や授乳期間中に母親が積極的に果物や野菜を食べることが望ましいといえます。さらに、家族全員の健全な食事や食育によって、子どもの好き嫌いをなくすことも大切です。


 縄文時代から、昭和の中頃まで、甘さと、脂肪分とアルコール(お酒)は非常に貴重品であった。このため人類は滅多に口にはいるものではなかった。そのためにこれらを食べ過ぎることは、一部の富裕な人に限られていました。

 本来、味覚は自分の体が必要としている、栄養素を含む食べ物を選択するはずが、現代では、糖分と脂肪分とアルコール(お酒)という嗜好性の強いものに偏向している。

 甘さに於いては、蜂蜜や黒砂糖のように、ビタミンやミネラルを含んで、栄養的にほぼ完結していれば、良いのですが、完全に精製した白砂糖は、味覚とカロリーにのみ偏向しており、肥満や糖尿病を誘発する。

 特にお菓子として、工場で製造するものに、白砂糖で造ることは子どもたちの未来を奪いかねない、赤砂糖(ブラウンシュガー)を使うべきです。家庭でも、白砂糖ではなく赤砂糖を使うべきです。(これは私の主張ですが、世間からは無視されてます)

 キューバでの砂糖の配給は、赤砂糖と白砂糖を半々に配給することによって、健康に配慮しているそうです。


 脂肪分についても、魚に皮と身の間にある脂肪分や、胡麻和えのゴマの脂肪分などは、栄養的にも完結していて良いものですが、揚げ物やバターを取り過ぎること、ビタミンやミネラル分の不足した、味覚の偏向は好ましいものではありません。

 大切な食事の折には、アルコール(お酒)は食事を美味しくして、さらに楽しいものにします。しかし、お酒の飲む量と時間を自分でコントロールしなくてはなりません。

 アルコールは、その量を飲むのではなく、より少ない量で楽しむことを心がけなければなりません。昔はお酒を飲む機会も少なく貴重品でしたから、お客さんに勧めるのが礼儀でした。

 しかし、現在は、アルコールの許容量に大きな差があるため、人にお酒を勧めるのは最小限にすべきです。ましてや一気飲みは、殺人行為になる可能性がありますので注意が必要です。

 お酒は、大きく分けてビール、ワイン、日本酒、蒸留酒がありますが、これらを飲む時間、その飲む量をコントロールしながら、料理にとの相性を考えて、楽しみたいものです。

 脂肪分も、アルコール同様に、美味しさにつられて、量を食べ過ぎるのは、肥満につながります。上手に良質の脂肪分を大切に食べることによって、食生活はより豊かなものになります。

 旬の野菜の甘みや、季節の魚の脂身や、ほのかな野菜の苦みなどの美味しさを楽しみたいものです。(第9回)


食べること、学ぶこと

2016-05-23 15:14:40 | 選択

  多元的全体食のすすめ(八)    食べ物研究家  五十嵐玲二談

 8. 食べること、学ぶこと

 動物は、基本的には食べることが、生きることです。

 鳥類は卵を産んで、ツガイが協力して、卵を温めつづけて、ヒナが誕生してからも、ヒナの安全を確保し、急速に成長するヒナのために、ツガイで、協力し全力でエサをとらえて、ヒナに与えなければなりません。

 そして巣立ちですが、ヒナもこの間に、自分が食べるべきエサについて学び、体力をつけて、飛び方から、エサの捕りかたまで、マスターしなければなりません。まもなく自分でエサを捕り、さらには渡りの季節に備えて、充分な体力と知力を持つ必要があります。

 このため鳥類は、哺乳類とならんで、ある意味過酷な子育てを通して、親も子も高い知能を獲得したと考えられます。

 一方、人類を含めて、哺乳類は、赤ん坊として生まれ、すぐに母親の母乳を飲みます。このとき、赤ん坊は、母親を通して、自分の様々な要求を伝えます。このときに、赤ん坊は、自分は何者で、自分の家族や群れや、自分たちが生きている環境について、学んでいます。

 赤ん坊から、子ども時代を向かえると、母親の食べる物を見て、食べることのできる物、食べることのできない物、食べ方、そしてそれらを獲得する方法を学んでいきます。

 次に、人を含む類人猿の中から、森の賢人をも呼ばれる、オラウータンの子育てについて見てみましょう。オラウータンは、ボルネオの熱帯雨林でうまれ、一生を樹上で生活し、地面に降りることはないと言われています。

 オラウータンの赤ん坊は、母親と一対一で、母乳を飲む時代を経て、独り立ちするまでの6~7年間は、片時も母親のもとを離れることなく、母親から森の果樹、木々の新芽、木の皮、アリなど800~3000種とも言われている、食べ物について学んでいきます。

 熱帯雨林に於いては、数年に一度しか実をつけないものも多く、最大で100キロもの巨体を樹上で維持していくには、母も子も多くの種類の樹木とその季節的変化、その食性について、懸命に学んでいく必要があり、6~7年の学習期間を必要とします。

 オラウータンの賢いところは、ボルネオの森の豊かな生物多様性を保ちながら、有用な樹木を損なうことのないことです。そのためにオラウータンのとった戦略は、より広い食材を求めることによって、森の豊かさを保つことです。

 私の推測ですが、オラウータンの子育てに父親は出てきませんが、母と子のオラウータンを見守る形で、遠まきに生活していると考えられます。本来は、母と子と父の三頭で生活すべきかもしれませんが、そうなると森の一箇所に負担がかかりすぎるためと考えられます。

 人間は、赤ん坊として生まれて、母親の母乳で育ちますが、生まれてすぐに泣き声で、母親に様々な要求を伝えます。その間でも母親の発する言葉について、学習していきます。

 そして離乳食によって、食べ物と味について学んでいきます。その中で家族関係と言葉を学び、料理法を学んでいきます。人類はさらに家族でコミュニケーションを取りながら、乾季や冬の食料の乏しい期間の飢えを予測して、それに備えます。

 食べ物の豊富な季節に、魚を干したり、山菜や野菜を甕や樽に漬けて貯蔵します。さらにどんぐりやトチノミのように青酸を含むものを水に晒して食料にします。

 ニワトリや家畜を飼うことも、食料の備えとして発達したものと考えます。

私たちも、数十年前までは、食べることは家族を中心に行ってきました。作物を育てたり、海や山のものを収穫したり、それらを調理しながら子供たちは両親に協力し、コミュニケーションをとりながら、多くのことを学んできました。

 寒い地方であれば、冬のための漬物や干物をつくることによって、食べ物を保存し、来るべき冬にどう対応するかを学んできました。私が子供のころ数羽のニワトリを飼っていて、卵を食べ、特別な日には、ニワトリをさばいて、解体し、内臓から鳥ガラまで調理して食べました。

 私の時代には、母親が作ったお弁当をもって、学校で食べました。簡素なもでしたが、弁当を通して家族を繫がっていたように思います。昭和30年頃までは、食料品を買うときも、対面販売であったため、会話をしながら、食べ方に関する情報が得られました。

 調理されたものを家族が揃って、会話をしながら、子どもたちは多くのことを学びました。

 現在は、スーパーマーケットで買い物をし、学校給食を食べて、工場で食品加工され、家族が食べ物を通して学ぶ機会が少なくなっていると感じます。

 しからば、現在、私たちは家庭に於いて食べることに、取って代わる多くのことが学べる物があるでしょうか。さらに、それによって家族の絆を築けるものがあるでしょうか。現代においても、私たちは食べることを家庭の中心に置いて、その意味と哲学について再構築する必要があるように思います。 (第8回)


日本人としての食事の基本形とは

2016-05-21 09:41:47 | 選択

  多元的全体食のすすめ(七)    食べ物研究家  五十嵐玲二談

 7. 日本人としての食事の基本形とは

 ごはん、味噌汁、漬物という基本三品の組み合わせは、鎌倉時代から八〇〇年以上も続いています。ごはんは、五分搗き米(又は胚芽精米)で、麦やヒエやアワを混ぜて主食としてきました。

 それを引き立てる発酵食品である味噌汁、漬物という名脇役、これに野菜、種実、海藻、魚介類を副食とすれば、ごはん食の基本形の完成です。(ごはん食の基本レシピ 幕内秀夫著 2002年)より

 それでは、私たちは多くの選択肢の中から、どのようなバランスで食事をすべきなのでしょうか。一つの例として、私も日本人の食事の歴史から考えて、ほぼ妥当と思われる幕内秀夫氏の提案を見てみます。

 穀物            (50%) (米、麦、ヒエ、黍,アワ)

 野菜、芋類、海藻、きのこ (30%)

 豆、種実          (10%)

 魚介類・卵・肉類・乳製品 (10%)  

 まずは、主食のごはんをしっかり食べます。このためには、ごはん、漬物、味噌汁で栄養的に完成されていなくてはなりますん。そのためには、米は芽を出せるに必要な栄養分を持っていなくては、なりません。

 そのためには、五分づき米、または胚芽米である必要があります。白米は確かに美味しいですが、陸軍の軍医総監であった森鴎外の誤った判断によって、日本陸軍の多くの若者の命が失われたことを忘れてはなりません。

 さらに多くの医者が実効性に乏しい極端な意見である玄米を持ち出して、やっぱり食べずらいからといって、白米を食べて江戸時代の富裕層の病である、糖尿病患者の増大を招いています。(これは私の個人的見解ですが、私の60年の近い経験と観察の結果です)

 美味しさを損ねてはいけない、お寿司のお店や、ハレの日の特別な場合、以外はこの原則は守るべきではないでしょうか。(これは私の意見ですが)

 日本人の食卓では、歴史的に、三~五分づき米に、雑穀等の様々な食材を混ぜて、食べてきたと考えられます。なぜなら日本人にとって米は貴重だったからです。

 二番目は、30%を占める、野菜や芋類、ワカメ、コンブ、ヒジキなどの海藻類は、季節を考えながら選びます。春は山菜(現在では、野菜としてほとんど栽培されてますが)、夏は、キュウリ、ナス、トマトなどの水分の多い野菜、秋はキノコや芋類、そして冬は大根やネギが旬です。

 煮物、あえ物、お浸し、2種類くらいの食材を組み合わせ、味噌汁の具にするのもお勧めです。さらに糠漬けにすると、栄養やうま味が加わり、いうことありません。

 現在は、野菜の種類が多くなり、それらを美味しく食べるための料理を工夫して、それらを、家庭で伝えていくことも、大切です。

 三番目は、10%の豆・種実です。豆類には、大豆、小豆、インゲン、エンドウなどの種類があり、また、大豆を加工した大豆製品として、豆腐・納豆・油揚げなどがあります。

 種実の代表は、ゴマやクルミ、ピーナツなどで、あえ物として使います。大豆は味噌、醤油の原料でもあり、タンパク質が豊富で、米との相性と栄養バランスに優れています。

  種実類とは、クリ、クルミ、ゴマ、銀杏、松の実、ひまわりの種、カボチャの種、アーモンド、ピーナツ、トチの実などを指します。これらは硬い殻の中の実で、芽を出して成木になるための栄養分をもったほぼ完全栄養食品です。

 四番目は、10%の魚介類、たまご、肉類、乳製品です。動物性食品は、魚介類、卵でとります。現代では、肉類、乳製品の比率が高まており、動物性食品の比率は、もう少し高くても良い気がしますが。(第7回)

 


魚と貝と海藻と全体食について

2016-05-20 07:47:55 | 選択

 多元的全体食のすすめ(六)     食べ物研究家  五十嵐玲二談

 6. 魚と貝と海藻と全体食について

 生命は海で誕生した。このために、海水に含まれている様々な微量元素を生命体は、その複雑なシステムを構成するうえで使用している。天然塩や岩塩は、鉱物のように思えますが、実は海水から水分だけを除いたものです。

 天然塩や岩塩に含まれている、NaCL(塩化ナトリウム)以外の微量元素のミネラル分が人間の体には重要です。(ミネラルとは、ナトリウム、マグネシウム、リン、イオウ、塩素、カリウム、カルシウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛、セレン、モリブデン、ヨウ素などです)

 海のもので、海水の成分を含んでいる食べ物に、コンブ、ワカメ、ノリなどの海藻があります。海藻の特徴は、コンブの全体が根であり、葉であり、茎なのです。従って海藻には海の様々なミネラルが含まれています。

 日本は海に囲まれているために、私たちは多かれ少なかれ海藻を食べてますから、日本では問題になりませんが、大陸の内部に住んでいて、ほとんど海藻を食べない人は、ヨード分の不足で病気になり、コンブなどを食べると治るそうです。

 カキ、アサリ、シジミ、ホタテ、ホッキ、ハマグリ、ムール貝、つぶ、サザエ、アワビなどの貝は、海水に含まれるプランクトンを食べて、成長しますので、海の恵みそのもので、人間が必要とするタンパク質、ミネラルを豊富に含む、完全栄養食品と呼べるものです。

 気仙沼の牡蠣養殖家の畠山重篤氏によると、カキの出来は、気仙沼に流れ込む大川の豊かさに関係し、その大川の豊かさは、大川の源流地域の室根山の森の豊かさによるそうです。

 したがって、気仙沼のカキは、室根山の森に支えられ、森と海を川がつなぎ、「海は森の恋人」と言っています。カキは一日に10~20Lの海水からエサとなるプランクトンを濾しとって食べます。すなわち、かきは、気仙沼の海そのものです。

 魚は、まず一匹すべてを食べる小魚について、見てみます。しらす、白魚、わかさぎ、煮干し(かたくちいわし)、めざし(いわし)、シシャモ、桜エビ、その他の小魚。これらは、内臓から骨にいたるまですべてを食べます。

 これらの小魚も、海の育んだ栄養素をすべていただくので、完全栄養食です。日本人は昔から魚によって、タンパク質、ミネラル、カルシュウムを得てきた。

 次に3~4kgの鮭の新巻についてみてみます。頭の氷頭は、大根と氷頭なますにし、三枚におろした身の切れ目は、焼いて食べます。

 少し身の付いた骨の部分は、一口大に切って、コンブを巻いて昆布巻きにして、じっくりと煮て昆布巻きにします。これを何日間かで食べると、結果的に鮭をまるごと一匹食べることになります。

 魚は、さしみや煮たり、焼いたり、飯寿司にしたり、干物にしたり、味噌漬けにして、魚の大部分を極力利用してきました。

 日本人の食事の一つの形として、魚の干物、漬物、ご飯となりますが、コメは一般に貴重なので、明治維新の立役者であった旧下級武士は、お米の代りに、サツマイモと魚の干物を食べて、明治維新は成し遂げられたといわています。

 サツマイモと魚の干物は相性が良く、栄養のバランスもとれたものです。日本人の食べてきた海の幸として、鯨について考えてみます。現状に於いて、捕鯨を禁止するか、捕鯨を許すかの議論は、置いておいて。鯨を日本人が食べてきたのは、歴史的事実です。

 日本人は、鯨の皮から、内臓から、鯨のヒゲまで利用してきました。そして、鯨を海の恵みとして、人の世界と海の神をつなぐものとして崇めてきました。(第6回)