菅氏をトップとする新政権の誕生に、宮内庁内部には懸念の声が広がっています」(宮内庁関係者)
【写真】上皇陛下のご意向を無視したことも…
9月16日に召集される臨時国会で首相指名選挙が行われ、菅義偉官房長官(71)が新首相に指名された。 共同通信社が9月8~9日に実施した世論調査では、「次期首相にふさわしい人」は菅氏との回答が50.2%。7年9カ月ぶりの首相交代で、新元号を発表した「令和おじさん」として知名度のある菅氏が新首相になるとあって、国民の期待感も高まっているように見えるのだが――。
「安倍政権で影の総理とも言われていた菅氏の政治手法は強権的・威圧的と評され、実は皇室のあり方についても宮内庁とも対立を繰り返してきたのです」(前出・宮内庁関係者) '16年8月に上皇陛下が退位のお気持ちを表明されたビデオメッセージも、対立の結果だった。 当時の宮内庁長官・風岡典之氏が、上皇陛下に退位の「ご意向」があると官邸に伝えたのは'15年の春だった。その後、陛下のご意向は1年以上もの間、官邸に“黙殺”されたのだ。しかし'16年7月、NHKのスクープ報道によって一気に表面化する。
「宮内庁側が世論を形成するためにリークしたと判断した菅官房長官は、ビデオメッセージ実現に尽力した風岡宮内庁長官を許さなかったのです。風岡氏は、定年のめどとされる70歳の誕生日を迎えた9月になるとすぐに退任させられました。通常より半年早く事実上の更迭で、露骨な報復人事との見方も根強いです」(前出・宮内庁関係者)
また、外国人観光客の呼び込みのために皇居が活用されたこともあった。'14年、宮内庁が上皇陛下の傘寿の記念に1回限りのイベントとして、桜の名所である「皇居・乾通り」を一般に開放した。 すると40万人近くが押し寄せる大盛況。そこに目を付けた菅官房長官は、外国人観光客を呼び込む目玉として毎年開放できないかと、宮内庁に打診した。
「宮内庁は上皇陛下のご意見もお聞きしたうえで『難しい』と伝えたのですが、菅さんは毎年の乾通り開放を強引に実現させました。総裁選出馬会見では外国人観光客を大幅に増やしたことを自らの功績として強調していましたが、あるベテランの宮内庁職員はこの施策について『天皇の住まいである皇居が丸裸状態にされた』と嘆いていました」(皇室担当記者)
■五輪をめぐる「皇室利用」が再び? 政治評論家の有馬晴海さんは、安倍政権で菅氏が果たしてきた役割についてこう語る。
「日本の政治体制が政権に都合のいいような官邸主導型に変わったのは、'14年に内閣人事局を創設してからです。日本の官僚トップの人事を、安倍政権が掌握したということです。
外交と安全保障に強い関心を示してきた安倍さんですが、実は内政には疎く、官房長官の菅さんに丸投げ状態でした。すなわち菅さんこそが、この安倍政権の内政人事を握ってきたわけです」 人事によって官僚を動かすことに長けていた菅官房長官は、自身が主導した内閣人事局の創設により、その権力を揺るぎないものとしたというのだ。 来年には東京五輪も開催される予定になっている。内政には強い菅氏だが、外交に関しての実力は未知数だ。
「政治家としての菅さんは合理主義者で、成果がはっきりと数字に表れる分野に強いといえます。五輪を是が非でも成功させるという明確な目的に向かって、招致活動のときのように強引な手法を取る可能性もあります」(前出・皇室担当記者)
東京五輪の招致活動でも菅官房長官と宮内庁は対立していた。 '13年9月、アルゼンチンのブエノスアイレスでのIOC総会で、高円宮妃久子さまが流暢な英語とフランス語でスピーチされ、国内外で大きな話題になった。
「しかし、他国との招致合戦に皇族が出席するべきでないと、上皇ご夫妻は久子さまの出席にはっきりと反対されていたといいます。その意を受けて風岡長官が記者会見で『天皇皇后両陛下もご案じになっているのではないか』と出席を要請した官邸を批判すると、菅官房長官も会見で『両陛下の思いを推測して言及したことは非常に違和感を感じる』と反論。真正面から激しくやり合いました。“皇室の政治利用”が懸念されるなか、菅氏の豪腕によって、あのスピーチは実現したのです。今後、新総理から皇室に対して強権的な要請があるのではないかと、天皇陛下や雅子さまも危惧されているようです」(前出・皇室担当記者) 新総理誕生により、令和の皇室はどこに向かうのか――。
歯科大学生の大半が、国家試験(国試)にストレートで合格して歯科医になれるという時代は、今は昔。
私立大学の歯学部では6年で歯科医になれる割合が2割を切る学校もある。入学生の半数以上が、留年もしくは国試不合格で浪人という現状を、医療ジャーナリストが報告する。
【図表】出願のみで受験しない学生数は合格率に入っていない
■見せかけの合格率を底上げしたい
2020年3月16日に発表された2020年度の歯科医の国試合格率は、65.6%(3211人受験して2107人合格)で、前年(63.7%、2059人合格)よりは上向いたが、同時に発表された医師の92.1%に比べて著しく低い。2000年頃までは歯科の国試合格率も9割を超えていたが、近年は受験者の3人に2人前後で推移。背後のからくりを知ると、より過酷な実態が見えてくる。
まず、歴史的経緯を遡ってみたい。1961年に国民皆保険制度が導入されると、歯科にも患者が殺到。甘い食品の広まりから“虫歯大国”へと突入、続々と歯学部が誕生した。現在29ある歯学部のうち、22校が61年以降に大学・学部を新設している。69年、人口10万人当たり30人程度だった歯科医師を50人にまで増やすという目標が閣議決定された。今も歯科医は増加し、人口10万人当たり80人を上回り、最多の東京都では120人に迫る。
片や歯磨き習慣など予防の普及により虫歯患者は急速に減少し、過当競争を招いている。歯科医師過剰時代の到来は、80年代には認識されていた。歯科医師の新規参入の削減策が検討され、87年に歯学部入学定員の「20%削減」が掲げられ、98年にさらに「10%削減」が求められた。しかし、国の指導力も私学にまでは及ばない。追加の10%削減は完遂できなかった。“入り口”を狭めることができなければ“出口”で調整するよりない。文部科学省が各大学に定員削減を要請するとともに、厚生労働省が国家試験の合格基準引き上げなどの抑制策を取った結果、合格率が7割を切る時代に突入した。
【図表】出願のみで受験しない学生数は合格率に入っていない
■見せかけの合格率を底上げしたい
2020年3月16日に発表された2020年度の歯科医の国試合格率は、65.6%(3211人受験して2107人合格)で、前年(63.7%、2059人合格)よりは上向いたが、同時に発表された医師の92.1%に比べて著しく低い。2000年頃までは歯科の国試合格率も9割を超えていたが、近年は受験者の3人に2人前後で推移。背後のからくりを知ると、より過酷な実態が見えてくる。
まず、歴史的経緯を遡ってみたい。1961年に国民皆保険制度が導入されると、歯科にも患者が殺到。甘い食品の広まりから“虫歯大国”へと突入、続々と歯学部が誕生した。現在29ある歯学部のうち、22校が61年以降に大学・学部を新設している。69年、人口10万人当たり30人程度だった歯科医師を50人にまで増やすという目標が閣議決定された。今も歯科医は増加し、人口10万人当たり80人を上回り、最多の東京都では120人に迫る。
片や歯磨き習慣など予防の普及により虫歯患者は急速に減少し、過当競争を招いている。歯科医師過剰時代の到来は、80年代には認識されていた。歯科医師の新規参入の削減策が検討され、87年に歯学部入学定員の「20%削減」が掲げられ、98年にさらに「10%削減」が求められた。しかし、国の指導力も私学にまでは及ばない。追加の10%削減は完遂できなかった。“入り口”を狭めることができなければ“出口”で調整するよりない。文部科学省が各大学に定員削減を要請するとともに、厚生労働省が国家試験の合格基準引き上げなどの抑制策を取った結果、合格率が7割を切る時代に突入した。
6年間で3000万円前後の学費を払いながら歯科医師になれないような私学は、学生集めに苦渋する。せめて“見せかけの合格率”を底上げしたいと、あの手この手の努力が行われる。
国試で注目すべきは、出願者数と受験者数の差である。6年生になれた学生に対して、卒業試験でふるいにかけて受験者を絞ることは、「合格率(合格者÷受験者)」を高く見せようとする私学の常套手段で、受験者は出願者の半数という大学もある。国家試験の日に卒業試験を行い、卒業はさせるが受験させないという荒業もある。それどころか、国試出願の直前に留年を確定させ出願者と受験者の数を揃えようとする大学も。
こうして、卒業しながら何年も国試に合格できない人、10代で入学しながら留年や休学の末に三十路になっても卒業できない人さえいる。留年などで“滞留”する学生が多ければ、入学定員を多少削減しても在籍学生数は増加する。進級時に3割以上が留年する大学もあり“留年商法”と揶揄される実態だ。
■定員割れを止めるなら起死回生の秘策
国試の結果に戻ると、近年健闘している大学の1つに、岩手医科大学がある。20年の新卒合格率は97.1%(35人受験して34人合格)。21人の未受験者はいるものの、ここ数年、合格率、6年ストレート合格率とも上昇傾向にある。同大は11年から米国ハーバード大学と提携して歯学部の教育改革に乗り出している。
さらに一学年の学生数が50人台と、29大学中突出して少なく、関係者は「全体に目配りができていることが奏功しているのではないか」と見る。同大歯学部の定員が少ないのは、1つには定員割れを防ぐ目的もあるが、別の事情もある。医師不足に鑑み、歯学部を減員する代わりに医学部を増員する「歯学部振替枠」を利用しているため、大学の台所事情には大きな影響はないと見られている。
定員割れを“インバウンド”という秘策で盛り返した大学もある。2019年には、神奈川歯科大学は、721人の在学生のうち留学生が143人。松本歯科大学も544人のうち188人で、台湾や韓国からの学生が多い。留学生は優秀な学生が多く、国試合格率に寄与する。しかも合格後、母国に戻る人も多く、日本の歯科医が増える心配もない。
■個々の歯科医を出身大学だけで評価してはいけない
元私立大学教員のS氏は歯学部の実態を分析し、ブログ「(続)とある最底辺歯科医の戯れ言集」で解説する。6年間の学費総額を6年合格率で割った独自の「お得度指数」によると、20年度入試では、私大は昭和大学、朝日大学、明海大学の順に「お得」と評価する。渾身のブログを書き続ける理由を「入り口で誤った選択をする人を、できるだけ少なくしたい。あらかじめ実態を知れば不幸になる人も減らせる」と語る。少子化時代にありながら、若者が路頭に迷いかねない私大歯学部問題に10年以上も根本的な解決策が見いだせないのは、とてももどかしい。
とはいえ、成績上位者に特待生制度を導入している大学は多く、全額免除となれば、国公立大学より少ない負担で卒業できる。偏差値が低い大学にも、6年で卒業し国試に合格する“上澄み”の層が確実にいる。私大歯学部の状況は危機的でも、出身者は別。国試を突破した個々の歯科医を出身大学だけで評価してはいけないだろう。
■個々の歯科医を出身大学だけで評価してはいけない
元私立大学教員のS氏は歯学部の実態を分析し、ブログ「(続)とある最底辺歯科医の戯れ言集」で解説する。6年間の学費総額を6年合格率で割った独自の「お得度指数」によると、20年度入試では、私大は昭和大学、朝日大学、明海大学の順に「お得」と評価する。渾身のブログを書き続ける理由を「入り口で誤った選択をする人を、できるだけ少なくしたい。あらかじめ実態を知れば不幸になる人も減らせる」と語る。少子化時代にありながら、若者が路頭に迷いかねない私大歯学部問題に10年以上も根本的な解決策が見いだせないのは、とてももどかしい。
とはいえ、成績上位者に特待生制度を導入している大学は多く、全額免除となれば、国公立大学より少ない負担で卒業できる。偏差値が低い大学にも、6年で卒業し国試に合格する“上澄み”の層が確実にいる。私大歯学部の状況は危機的でも、出身者は別。国試を突破した個々の歯科医を出身大学だけで評価してはいけないだろう。
周囲も『大丈夫か』と心配
写真:現代ビジネス
「最近、夕方になると、菅義偉総理が居眠りをすることが多くなりました。官僚がレクをしている最中などに、こっくりこっくりと船を漕ぐことが頻繁にある。秘書官も無理に起こすわけにもいかず、対応に困っています」(官邸スタッフ) 【写真】安倍総理が恐れ、小池百合子は泣きついた「永田町最後のフィクサー」
菅総理が就任してから、1ヵ月半。週末も休みをとらず、精力的に動いているように見えるが、実際にはかなりお疲れのようだ。
「毎日のように自分でアポを取った来客との予定を入れていますが、そのせいで、疲労が溜まっているようです。
大体夜11時すぎには寝て、朝5時には起きるという朝型タイプとはいえ、夕方になるとすぐにウトウトしてしまう。周囲も『大丈夫か』と心配しています」(自民党中堅議員) 外遊先のベトナムで「ASEAN」を「アルゼンチン」と言い間違えたのも、疲労が原因ではないかと言われている。影響は、すでに国会運営にも出ているという。
「国会の開会は元々、10月23日の予定でした。これが26日に延期になったのは、官房副長官である坂井学氏の国対への伝達ミスと言われています。
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しかし、実際には菅総理の体調を考慮したという面もあったのです。菅総理の初めての国会ですし、今回は10本ほど法案を成立させないといけないハードな日程。
総理の疲弊ぶりを心配した側近が『少しでも日程を空けたほうがいい』と、国対に進言したようです」(同前) 第二次政権発足時、安倍晋三前総理は58歳だった。一方の菅総理は12月で72歳を迎える。
「安倍前総理は持病があったとはいえ、若かったですし、一次政権時の経験もありました。今後、国会で連日にわたって学術会議問題などの追及が続くと、菅総理の体力が持つのかと不安視されています」(同前) 2代続けて、体調問題が政権に影を落とさないといいのだが。
『週刊現代』2020年11月7日号より