梼原町の新庁舎は、負ける建築で有名な、隈さん設計のモダンな建物です。隈さんと梼原町は、案外古くから付き合いがあり、梼原座と言う芝居小屋を見て、ありふれた粗末な素材で、大空間を作っているのをヒントに、雲の上のホテルを設計。今の隈さんの原点になっているそうです。夢の丸太小屋に暮らす等の取材で、泊まった方の感想は、「なんでこんな四国の山奥に来て、東京や大阪にあるような所に泊まらなくちゃいけないんだ。しかも夕食に、鰹が出て来たよ。しかも、大空間なので寒い。」とさんざんでしたが、今回の庁舎も、マスコミの受けは良いのですが、高知の気候風土の事は、考えていないようです。庇の無い建物は、いったい何年持つのだろうと、心配します。隈さんの建築は大好きで良く見ますが、共通するのは素材の持つ危うさ、弱さを逆にアピールし、とんでもない使い方を提案して来る事です。この庁舎も、全て梼原産の木で作られています。雨に弱い木は、外装に使わない常識を、ひっくり返して使ったのでしょうか。ただ高知県で、庇を設けずに作られた建築で長く持った建築を、私は知りません。梼原座のように、この庁舎が建っている事は無いと思います。しかし、私のこの常識を覆してもらえれば、木は新しい建築の素材となり、広く一般に使われ、山に手が入り、豊かな森、里、海の循環が始まるきっかけになります。負ける建築が勝てば、隈さんの建築では無いような気がしますが、長く建ち続けて欲しいと思います。負けてもその間のデーターは残せるのが、梼原町の狙いだとしたら、凄い町です。