中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

社員99人以下の会社の人材育成に役立つ情報を発信しています。

第1,137話 グループ討議で得られるもの

2022年10月12日 | 研修

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「自分にはない視点や発想を知ることができた」、「意見が異なった際の、軌道修正をすることの重要性がわかった」

これは、弊社が担当させていただいた研修の終了後に行ったアンケートでの、グループ討議に関する感想の一部です。弊社では、研修やセミナーを担当させていただく際には、オンラインであっても、対面であっても必ず4~6名くらいのグループに分かれて、様々な演習に取り組んでいただくようにしています。それは、グループワークのように複数の人数で1つのテーマについて話しあい、最終的にグループとしての答えを出していくことに、たくさんのメリットがあると考えているからです。

具体的には、個々人の考え方や知識を互いに引き出し合うことができるため、たくさんの気づきを得ることができます。また、時間の制約がある中で、コミュニケーションを取りながら様々なテーマに取り組むことによって、実践的なスキルを得ることもできる考えています。

このように様々なメリットがあるグループ演習であるため、そのメンバー構成は受講者の研修への満足感や研修全体の成否に大きな影響があります。そのため、多くの場合研修のご担当者はメンバー編成の際は時間をかけていらっしゃいます。例として、所属部署、性別、年齢等の属性を考慮し、さらに組織の規模にもよりますが、個々の性格やタイプも踏まえ編成してされているのです。

その結果、メンバーの組み合わせが良いと、仕事のときより積極的にコミュニケーションをとる人がいたり、普段はどちらかというと目立たないと思われている人が思いがけずリーダーシップを発揮したり、発言しない人に気配りをしたりするなど、新たな面を発見できることもあります。また、普段とは異なる力を発揮できることは、何より本人の自信につながり、その後の仕事の上でも様々なプラスの効果を得ることができます。そのように考えると、研修におけるグループ演習のメンバー編成はとても大切なことだと言えるのではないでしょうか。

一方で、様々なメンバーが集まるグループ演習の場だからこそ、失敗を含め様々な経験をしてほしいという思いから、名簿順やくじ引きでメンバー編成を決める組織もあります。メンバーの組み合わせの結果、積極的に発言する人があまりいないグループでは演習がなかなか進まないケースもありますが、そういう経験からも得られるメリットはたくさんあるとの考えから、あえてそのようにされるわけです。

しかしながら、私がこれまでたくさんのグループ演習を見てきた中で改めて思うのは、研修で日常の仕事の中ではなかなか関わることのないメンバーが意見を出し合い、一つの目標に向かって進んでいくという機会は限られたものであり、その中でグループ全体の満足感を高めるためにも、やはりメンバーの編成はとても大切だということです。

以上のことから研修担当者からグループのメンバー編成について相談を受けた際には、今後もそのように伝えるつもりです。

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第1,135話 挨拶の先にあるもの

2022年09月28日 | 研修

「上司に挨拶をしても返事がないのです。それでも挨拶はし続けなければなりませんか?」

弊社では、毎年秋になると4月に入社した新入社員のフォロー研修を担当させていただく機会が増えます。研修では、新入社員が仕事を進めていく中で困っていることや、ビジネスパーソンとしてのマナーやルールなど、半年間の経験の中で感じた疑問点を解消させることも目的の一つです。

その際、受講者から挙げられることの一つに、「上司に挨拶をしても、返事が返ってこない」があります。

新入社員研修や若手を対象にした研修では、「挨拶をしっかりとすることは、ビジネスにおいて大変重要な意味を持っています」と伝えています。なぜならば、挨拶はコミュニケーションの入り口だからです。「挨」「拶」という漢字には、心を開いて相手にせまるという意味や、「私はあなたを受け入れます」という意味もあります。当然のことながら職場は挨拶で始まり、挨拶で終わるのですから、挨拶をしなかったり無視したりすることはマナー違反でもあるわけです。

しかし、先述の通り職場の中には挨拶をしない人がいるのも事実です。コミュニケーションの入り口である挨拶をしても相手から返答がないと、人はどういう気持ちになるのでしょうか?それがたまに会う人であるならば、いたし方がないと割り切ることもできるかもしれません。しかし、毎日会う上司にそれをされたら、当然のごとく上司への信頼感は失墜し、部下はやる気を失います。管理監督職は、組織の目標を達成するために部下に最大限の成果を出してもらう必要があるわけですが、このような上司は自ら部下のやる気を削ぐようなことをしているわけです。

研修中にこのような話をしてくるときの若手社員の表情はとても辛そうであり、その心情はいかばかりかと思います。しかし、上司からの返事がないからといって、そこで挨拶を止めてしまえば同じことの繰り返しになってしまうことから、辛い気持ちは受け止めつつ、「そういうあなたの姿を見ている人が必ずいるから、シンパを増やしてほしい」ということをお伝えしています。また、外部の人間である私ができることには限りがありますが、研修のご担当者にその旨を話し、上司にそれとなく伝えていただければとお願いをすることもありますが、実際のところそれが精一杯です。

こうした状況が続けば、いずれこの若手社員は上司に愛想をつかして組織を去るか、あるいは同様の行為をまねて、次に新人が入ってきたら挨拶をされても返事をしない先輩になってしまいかねません。

古今東西、組織におけるコミュニケーションの難しさが語られ続けていますが、たとえコミュニケーションを活性化させるためのデジタルツールを導入したとしても、入り口である挨拶ができなければ、そもそもコミュニケーションが始まることすらないわけです。

「組織を活性化させたい、業績を向上させたい」と本気で考えるのであれば、まずは全員がしっかり挨拶をできるようにすることから始めるべきであり、経営者の皆さんにはまずはそこから真剣に取り組んでいただきたいと思います。

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第1,134話 人の育成に一番大切なポイントとは

2022年09月21日 | 研修

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「やる気がない部下にどのように指導したらよいのか?」、「反抗的な部下への指導法を教えてほしい」

これは弊社が管理職を対象にした研修を担当させていただく際に、必ずと言ってくらい受講者から尋ねられる質問です。

組織を取り巻く環境は以前にも増して急速に変化していることから、部下の育成もそれに応じた新しいやり方に対応していかなければならないという話もよく聞きます。たとえば、今時の若者への育成ポイントという部分もあるかと思いますが、一方で人を育てることの重要性や押さえるべき事柄は、いつの時代であっても大きな違いはないのではないかとも思うのです。

エリザベス女王のご逝去にともない先日放送されていた「英国王のスピーチ」という映画をあらためて観ました。吃音症に苦しむ英国王ジョージ6世と、その治療に尽力したオーストラリア出身で平民の言語療法士 ライオネル・ローグの2人の実話に基づく映画です。

吃音症に苦しむジョージ6世(当時はヨーク公)は様々な医師の治療を受けるのですが、そのどれもうまくいかず、結果ライオネル・ローグの一風変わった治療を受けることとなるのです。

当初はローグに対して懐疑的であったため、時に反抗的ともいえる態度を示していたジョージ6世でしたが、ローグはジョージ6世に対して信頼と対等な関係を求め、時に厳しく接しながらも、「必ずできる」、「できるとも」と繰り返し励まし続けたのです。

クライマックスのジョージ6世の戦争スピーチのシーンで、ローグは「頭を空にして私に言うんだ」、「私だけに向かって話して」などと落ち着かせるように、手を上げ下げさせて非言語もフル活用して全身で言葉がけを行ったのでした。

さらに、ジョージ6世が語る幼少期の辛い体験に対し、ローグは「辛かっただろう」と心から共感することなどを通じて、お互いの信頼関係も築かれていきます。

全身全霊で行うローグの指導でしたが、中でも最も大切であり、人の育成においての肝だと私が感じたのが、「相手を信じ『必ずできる』という言葉を繰り返しかけたこと」だと考えています。

これは教育心理学でいうところの「ピグマリオン効果」に通じる話だと思います。ピグマリオン効果とは、相手から期待されていると感じるとやる気が上がり、スキルや知識が身に付き、人は育つというものです。

まさに、ローグがジョージ6世に行った「相手を信じること」は、ピグマリオン効果が働いていたということだと思います。

私たちは、部下をはじめ人を育成する際、相手がこちらの思うような状態にならないと、つい「この人はだめだ」とマイナスのレッテルを張ってしまいがちになります。しかし、そうするとそれが相手にマイナスの感情として伝わってしまい、相手はますます育たないということになってしまうのです。

人はこちらが期待すれば期待した分だけ育ち、逆もまたしかりということです。人を育成する際には、ぜひ相手は「いつか必ずできるようになる」と信じて行っていただきたいと思います。

そして、できなかったことができるようになった際には、ぜひそれをはっきり伝えていただきたいと考えています。この映画でも、ジョージ6世が吃音を発せず行えた戦争スピーチ終了後に、ローグは「とてもよかった」と心からの賛辞をジョージ6世に送り、その後は遠くから姿を見守っていました。

指導の際には、相手に対して必ずできるようになると期待すること、そしてできるようになったときにはそれを承認すること。この映画を通して、育成の際のポイントを改めて確認したように感じました。(冒頭の写真はWikipediaより)

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第1,133話 ライブ感を大切にする

2022年09月14日 | 研修

「A講師とぴったり同じタイミングで同じ冗談を話していますが、当人がやるのとは異なり、お弟子さんである別の講師がやると少々わざとらしく感じてしまいます」

これは以前、ある企業の研修担当者から聞いた言葉です。A講師は研修業界では著名なカリスマとも言われている人です。そのお弟子さんと言われている複数の別の講師がA講師と同様に講義を進め、寸分違わぬタイミングで同じ冗談を言っても、受講者にはさほど伝わらないようで、あまり受けないという話でした。

この話を聞いたときに私が感じたのは、冗談やユーモアはその時々の聞き手の反応や雰囲気に応じて伝えるからこそ相手に伝わるのであって、とってつけたように別の人が言っても聞き手には伝わらないということです。

先日、久しぶりに寄席に行く機会がありました。チケットの発売と同時に即完売してしまう人気の噺家の寄席でしたが、久しぶりに生で落語に触れてあらためて感じたのは、演目の面白さだけでなく噺家と客とのライブでの一体感にあると思いました。

寄席では、まず「まくら」があります。まくらとは演目に入る前の小噺です。このときは、当日の午前中は何をしていたか、会場までの移動はどこで乗り換えをしてきたというような観客にとって身近な話題から入り、さらに時節や時事ネタも上手に取り入れており、我々観客は一気に話に引き込まれました。

このまくらは観客が本編に入りやすい状態にほぐす役割も兼ねているようで、その日の演目に関係する話が提供されることが多いようです。たとえば、食べ物に関する演目であれば、まくらでも食べ物に関する話をしたりすることが多いように感じています。噺家はこのまくらを「話す」のではなく、「振る」と表現するそうですが、まさに観客を噺家の方に振り向かせているのだと思います。

演目に入ってからは、噺家の一挙手一投足にさらに引き寄せられましたが、噺家自身も会場の雰囲気とともに、どんどん乗ってきていることが伝わってきて、会場全体と噺家が一体になっているような臨場感が感じられました。まさにライブ感満載であり、そこにいる全員の気持ちが一つにまとまっていくような空気が感じました。

この噺家が当日取り上げた古典落語を過去に何回話したことがあるのかはわかりませんが、おそらくは会場の雰囲気に合わせて適宜一部を変えたりしているのではないかと思います。同じ噺家の同じ演目を聞いても、その時々で全く雰囲気が違った話に聞こえることがあるのは、まさにライブなのだと思います。

そのように考えると、先述のカリスマ講師とそっくり同じように研修を提供したとしても、それはその場の雰囲気やライブ感を一切反映していない、似て非なるものということだと思うのです。

研修講師が話す事例や冗談などのユーモアは、それぞれの体験や個性にもとづき生み出されるものです。さらには受講者の反応を見ながら提供されるものであり、他の講師の冗談を同じタイミングでそのままなぞるだけでは、聞き手に伝わるものではないのではないと考えています。

弊社でも同じ会社の同じ階層を対象にした研修を同じ年に複数回担当することがありますが、その時々の受講者の反応などによって提供する内容を少しずつ変えることがあります。

噺家であれ研修講師であれ、相手こそ異なるものの目の前にいる聞き手に伝えることを使命としているという意味で、まさに同じくライブの勝負をしているということだと思います。

師匠と全くと同じように演目を行ったとしても、それだけでは相手には伝わらない。相手の反応をふまえた、ライブ感を大切にすることこそが大切なのではないかと改めて感じました。

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第1,132話 人的資源の拡大の現況

2022年09月07日 | 研修

「人的投資を拡大して、育成等を通じて企業価値を高める動きが高まっていることは承知していますが、実際のところ、これ以上は無理です」

これは、先日来年度に向けて研修等の打ち合わせをしていたB組織の育成の担当者からお聞きした言葉です

先日本ブログでも取り上げましたが、人材への投資に向けた取組への関心が近年急速に高まってきています。

しかし、様々な企業で今後の取り組みについて改めてお聞きしてみると、マスコミ等で報道されているほどには人材への投資は進んでいないのではないかと感じることが少なくないのです。

B組織では既に若手から管理職に至るまで研修はある程度行ってきているため、これ以上育成予算を増やすことはできない。研修で足りないところは、現場のOJTで補強するとのことでした。

厚生労働省が毎年行っている能力開発基本調査において、OFF-JT(研修)や自己啓発支援に費用を支出した企業は、直近(令和3⦅2021⦆年度)の調査結果では45.9%となっていますが、3年移動平均でみると、前年の調査と同様に数字は低下してきているようです。

このことからも、報道と実態との間には大きな乖離があり、人材投資への必要性は認識されつつあるものの、現実はまだまだ投資は進んではいないのが実態のようです。

また、B組織では「OJTで補強する」とのことでしたが、同調査ではOJTに関しても調査しています。その結果、正社員に対して計画的なOJTを実施した事業所は59.1%と、前回と比べて2.2ポイント増加(3年移動平均の推移では低下)しているとのことです。このことからも、人材育成の中心的な手段はOJTであることは変わらないようです。

さらに、同調査では能力開発や人材育成に関しての問題についても質問していますが、何らかの問題があるとした事業所は76.4%と、4分の3以上の事業所が能力開発や人材育成に関する問題があるとしています。具体的な問題点の内訳は、「指導する人材が不足している」(60.5%)が最も高く、「人材育成を行う時間がない」(48.2%)、「人材を育成しても辞めてしまう」(44.0%)と続いています。

今後、人材育成への投資に対する注目はますます高まっていくとは思いますが、様々な問題を抱えつつ、当面はその手段はこれまでと大きく変わらずOJTが中心となると考えられます。であればこそ、「指導する人材を育てる」こと、まずはそこから力を入れていく必要があるのではないでしょうか。

実際、人的資源への投資と労働生産性は密接に関連しており、内閣府の経済財政報告(経済財政白書)2018年度版によれば、社員教育や社会人の「学び直し」などによる人的資本投資が1%増加すると労働生産性は0.6%上昇すると試算するなど、人材育成の重要性が指摘されています。

そのように考えると、すぐに人材投資へ大きく舵をきることは難しいとしても、長期的なスパンでは人的資源への投資を増やすなどの取組みを進めていく必要性は続いていくと考えられます。ぜひ、少しずつでも人材育成への投資を増やす方向で進めえていただきたいと考えます。そのためには、まず、どういう人材が必要なのかを言語化し、どのように育成するのかをしっかりと考えることから始めていただきたいと思います。

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第1,126話 人間の忘れる速度を遅らせるためには

2022年07月27日 | 研修

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「授業で習ったことを覚えるためにはどうすればよいのか。覚えるためには、できるだけ人に話すことが有効だ。自分は5クラス担当しているから、同じ内容を5回伝えることになる。それだけ繰り返し授業で伝えると、5クラス目のころにはすっかり覚えられているんだ」

これは、今から40年以上も前の私が中学生のときに、理科の授業の中で先生から聞いた言葉です。前後の文脈はあまり覚えていないのですが、しっかり記憶に残すためには覚えることに重きを置くのではなく、人に話すことが有効だということは今でも鮮明に覚えています。

さて、弊社が2日以上の研修を担当するときには、前日に行った内容を翌日の研修開始時に全員で復習することが多いです。私が受講者に質問し、それに返答していただきながら復習を進めていますが、前日に前向きな姿勢で熱心に受講していた人であっても、一晩経って内容を忘れてしまっている人も少なからずいます。わずか半日ほど前に行っていたことなのに、忘れてしまうのはどうしてなのでしょうか?

時間の経過とともにものごとを忘れてしまう、こればかりは人間の性(さが)だからと言うしかないのではとさえ思えます。

人間の記憶に関する研究者に、忘却曲線を発見したことで知られるヘルマン・エビングハウス(Hermann Ebbinghaus)というドイツの心理学者がいます。エビングハウスは記憶に関する実験的研究の先駆者で、忘却曲線を発見したことで知られています。彼の調査によると、最も急激な記憶減少は最初の20分で起こり、はじめの1時間で一気に(56%)減衰してしまい、その後忘却曲線は約1日後にはなだらかになるとしています。

これからすると、私たち人間はせっかくものごとを覚えても、やがては相当の部分を忘れてしまうことなるわけです。忙しい中せっかく研修を受講しても、研修で行った内容を実務で活かすどころか、研修を受講する意義さえ薄れてしまうのではないかと思う人がいることも否めません。

忘れてしまうことは人間の性(さが)ということを踏まえ、では私たちはどうすればよいのでしょうか。そこでお勧めなのが、冒頭で紹介した例のように研修で行った内容を職場に戻って上司に報告したり、周囲の人へ伝えたりすることです。人に伝えるためには、私たちはまず自身の頭の中で内容を整理し、その上でそれを声として発することになります。伝える前段で内容を整理する中で当然内容を思いだします。それにより改めて理解が深まることがあるなど、声に出して人に伝えることは、知識を記憶に定着させるため非常に有効な手段だと考えています。そして冒頭の事例のように繰り返し人に伝える場面を設けられれば、さらに効果が高くなると考えられるのです。

世の中には、人から1回聞いた話をすぐに理解・吸収し、完全な形で記憶に残せるという人もいるようです。しかし、実際のところ初めて聞いた話はなかなか覚えられない、記憶にしっかり残せないという悩みを抱えている人も決して少ないないのではないでしょうか。

こうした課題の解決の一歩として、今後研修を受講する機会がありましたら、研修で得た知識をしっかり自分のものとするために、まずは人に話をしてみるということから始めてみてはいかがでしょうか?

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第1,125話 抽象的か、具体的か

2022年07月20日 | 研修

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弊社が行う短時間の研修やセミナーの終了後に、受講者から「もっと具体的な話を聞きたかった」という感想をいただくことがあります。

研修やセミナーの中で説明をする際には、どういうテーマであっても、まずは抽象的な話からはじめて、続いて具体的な話をすることが多くなります。1日以上の研修であれば、どちらの話もじっくりすることができるのですが、短時間の研修やセミナーの場合はどうしても時間に制約があるため、具体的な事例を挙げたり、それに沿って演習をしていただいたりすることにはおのずと限りがあるのです。そうすると、終了後のアンケート等で冒頭のような感想をいただくことになるのです。

この「抽象的」と「具体的」については、どのくらいのバランスで話をするとよいのか、その割合がとても難しいと感じています。具体的な話は、たしかにわかりやすいと感じる人が多いのでしょうが、一方で前提となる抽象的な話を先にして、はじめて次のステップとして「具体的にお話しすると・・・」と続けることができるのです。

先日、弊社が営業セミナーを担当させていただいた際にも、短時間のセミナーだったということもあり、具体的な話がやや少ないと感じた受講者がいらっしゃったようでした。その結果、セミナー終了後に「考え方はとても理解できたけれど、具体的に明日から何をどうすればよいのかをもっと知りたい」という声をいただきました。

ここで改めて、抽象的と具体的という言葉の意味を広辞苑で調べてみると、「抽象的とは、抽象して事物の一般性をとらえるさま。現実から離れて具体性を欠いているさま」とあります。一方の具体的は、「形をそなえ、存在が感知できる様。一般的という意味での抽象的に対し、実態的・個別的なさま」とあります。

このように、本来の意味合いを確認してみると「抽象的」と「具体的」はそれぞれに必要なとらえ方であり、どちらか一方が優位というようなものではないわけです。しかし、現在は具体的なわかりやすい話のほうが優位といった傾向があるように思えますし、私の経験から言っても抽象的な話しから具体的な話に変わった途端に、俄然興味を示すような表情になる人が多いのも事実です。

しかし、抽象的なものだけ、具体的なものだけというように、どちらか一方だけを根拠にしてものごとを理解し判断するようなことになると、結果として少々偏った考え方になってしまいかねないことが懸念されます。そのように考えると、また抽象的と具体的はお互いに補完しあう関係とも考えられることから、物事をそれぞれの視点から意識的にとらえて考えること、そしてそのバランスが大切なのだと思います。

自身は物事を抽象的にとらえる傾向が強いのか、あるいは具体的にとらえる傾向が強いのか、まずはその点を改めて確認したうえで、バランスを考えながら双方の視点で物事をとらえることを意識してみることから始めてみてはいかがでしょうか?

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第1,124話 心理的な安全の重要性が叫ばれている

2022年07月13日 | 研修

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

最近、組織における「心理的安全性(psychological safety)」という言葉が注目されています。

組織行動学を研究するハーバード・ビジネススクールのエイミー・C・エドモンドソン教授(Amy Claire Edmondson)が1999年に提唱した心理学用語です。エドモンドソン教授は心理的安全性を自身の考えや気持ちを安心して発言できる状態、つまり「チームのメンバーが自分の発言を拒絶したり、罰したりしないと確信できる状態」と定義しています。

それは、チームの中で自分の意見(それが仮に的外れだったり、間違っていたりする意見であったとしても)を臆することなく発信できる状態であり、心理的安全性が高くなれば、組織にとっても様々なプラスの要因が働きます。具体的には、コミュニケーションが活発になり、仕事の生産性が上がったり、エンゲージメントが高くなったりするなどが望めます。

しかし、この心理的安全性を構築することは、簡単なことではありません。そのような組織の風土や文化を作ることは、決して一朝一夕ではないからです。私は日々様々な組織の研修を担当させていただいていますが、外部の人間だからこそ感じることができる「組織の風土」というものがあります。発言が活発に行われている組織がある一方で、遠慮がちな組織もあります。また、入社年次が若い時には活発にコミュニケーションをとっていたのに、しばらくするとあまり積極的にコミュニケーションをとらないようになってしまうような組織もあります。

弊社が担当させていただく研修は、通常1~4日間と短い期間なのですが、私はそういった中でも受講者に主体的に臨んでいただくためには、心理的安全性がとても重要だと考えています。それは、自身の考えや気持ちを安心して発言できる状態が担保されていないと、大勢の中で自分の考えを発言することが難しいからです。

そこで私は研修の冒頭には必ず、主体的に発言していただくことを推奨するとともに、「こちらが行う質問に対して唯一絶対の答えがあるわけではありませんから、どういう発言であってもダメ出しをするようなことは決してしません」とお伝えしています。そのようにお伝えすると、率先して挙手をして発言してくれる受講者が出てくれ、そうすると徐々に他のメンバーにもプラスの影響が働いて大いに盛り上がり、結果、受講者にも満足いただける研修になるのです。

一方、繰り返し発言を促してもそれがなかなか伝わらず、自ら発言する人が最後までいないこともあります。これは、受講者だけの問題でなく、そもそもその組織では心理的安全性が十分に構築されていないことの現れなのではないかと思うことがあります。

このように、「考えや気持ちを安心して発言できる」状態であるか否かは、私たちが思っている以上に大きな影響を及ぼしているのではないかと強く感じているのです。

これまでこのブログでも何度も書いてきたとおり、組織の風土や文化を変えるのは決して簡単なことではありませんが、心理的安全性を構築しそれを維持できるかどうかということが、今後組織が発展を続けられるかどうかの重要なキーポイントになるのではないでしょうか?

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第1,120話 なぜパワハラが繰り返されてしまう組織があるのか?

2022年06月15日 | 研修

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「胸ぐらをつかんだり、蹴りを入れたりするのはパワハラになりますか?また、給料泥棒と言うのはどうでしょうか?」

これは、弊社が来月パワーハラスメント(以下パワハラ)防止を目的とした研修を担当させていただく予定のA企業の研修担当者から質問された内容です。A企業はこれまでに2回パワハラ研修を実施されていたのですが、改善されないため再度研修を行いたいとのことでした。

本年4月より労働施策総合推進法に基づく「パワーハラスメント防止措置」が中小企業の事業主にも義務化されましたので、例年よりもパワハラに関する研修のご依頼をいただくことが多くなったと感じています。しかし、その多くは現時点ではパワハラを把握していないけれど、万が一確認できていないところで起きていたりすると大変なので、パワハラ防止のメッセージを送る意味合いでの研修の実施を考えられているようです。

一方、冒頭のA企業の状況は少々異なり、質問のような行為によるパワハラが顕在化しているとのことです。胸ぐらをつかんだり蹴りをいれたりする行為は、もちろんパワハラです。厚生労働省が示している職場のパワハラの6類型の中の身体的な攻撃にあたるだけでなく、さらに言えば状況によっては犯罪に該当してしまう可能性さえある行為です。また、給料泥棒というような言動も精神的な攻撃に該当します。ハラスメントには、ハラスメントかどうかの判断に迷うような「グレーゾーン」といわれるものがありますが、冒頭のこれらの行為は明確に「ブラック」な行為です。

そういう行為なのにもかかわらず、また過去に2回パワハラ防止の研修を行ったにもかかわらず、研修担当者がこのような質問をするのは、なぜなのでしょうか?

過去に2回行った研修の内容をお聞きしてみると、パワハラ防止に関する一般的な内容は網羅されていたようでしたが、結果として研修の効果は全く出ていないようで、その後も変わらず冒頭のような行為が繰り返されているそうです。そしてその結果、新人や若手が退職してしまうケースが多くなっているとのことです。厚労省が令和3(2021)年10月22日に発表した新規就職者の3年以内の離職状況は、新規高卒就職者36.9%、新規大卒就職者31.2%ですが、A企業では新入社員および若手社員の退職率はそれを上回っているのです。

それでは、パワハラ防止の研修を何度も行っているのにもかかわらず、なぜパワハラが繰り返されてしまうのでしょうか?私は、A企業にはパワハラを許してしまう企業の文化や風土があるからではないかと考えています。文化や風土といったものは、長年かけて少しずつ醸成され形成されるものですから、研修を数回行ったからと言って簡単に変わるものではないのかもしれません。

しかし、パワハラは決して許される行為ではありません。もしパワハラを許してしまうと、被害者(おおむね部下)が委縮し、職場の雰囲気が悪化し、仕事の生産性が下がり、退職者が続いてしまう、大変大きな弊害を生じてしまいかねないのです。

パワハラを許容してしまうような文化や風土は改めなくてはなりませんが、本気でパワハラを撲滅させたいと考えるのであれば、研修だけを行っていればそれでよしとするのでなく、企業全体で真剣に取り組む必要があります。その際にもっとも大切なのは、トップが腹をくくり、先頭に立って撲滅に取り組むという姿勢を示し、組織をあげて粘り強く取り組み続けることだと考えています。あなたの組織の状況はいかがですか。

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第1,118話 ホワイトボードはディスカッションの強力な味方である

2022年06月01日 | 研修

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「可能であれば、グループに1台ずつホワイトボードの準備をお願いします」

これは、弊社が対面での研修を担当させていただく際に、事前に研修のご担当者にご連絡することの一つです。研修では、テーマに関係なく様々なグループ演習に取り組んでいただいていますが、その際可能なかぎり準備していただきたい用具等の一つにホワイドボードがあります。ホワイトボードがあれば、短時間であっても話し合いが円滑に進んだり、ディスカッションの精度が高くなったりと、生産性の高い演習にすることができるからです。

それでは、なぜホワイトボードがあると、演習の生産性を高くすることができるのでしょうか?

その理由としては、まず話し合いのテーマをホワイトボードに記入することで主題が明確になり、ディスカッションの途中で横道に逸れてしまうようなことを防げるからです。 また、記入の際は箇条書きにするために、論点を瞬時に理解できるということもあります。加えて、私がホワイトボードの一番のメリットと考えているのが、ディスカッションが活発になり盛り上がるということです。具体的には、ディスカッションの開始時には書記を担当した人のみが起立してホワイトボードに板書をしているのですが、多くの場合はその後徐々に全員が立ちあがってワイガヤ(ワイワイガヤガヤ)の活発なディスカッションになるのです。

もう一つ、ホワイトボードと同じような役割のものに模造紙があります。模造紙も話し合いをする際にはとても有効なツールの一つではありますが、私はホワイトボードの方に軍配があがると考えています。理由は数点ありますが、まず模造紙よりも記入が簡単だということです。模造紙は、書き慣れていないと記入する際に「間違えて書いてしまったらどうしよう」という少々の緊張感があります。しかし、ホワイトボードであればすぐに消して書き直すことができるので、記入の際の敷居がより低く感じられます。

次に、ホワイトボードの大きさにもよりますが、時間が足りない場合には複数名が同時に記入することもできるのです。さらに、模造紙を記入する際は多くの場合は机の上に広げるため、目線が下がり姿勢が悪くなってしまうことが活発な進行に多少影響があるように感じます。

このように考えると、話し合いをする際に、ホワイトボードを使うことで「ゴール(目的)に向けて皆が迷わずに、効率的にディスカッションを進めることができる」ことから、もはや「話し合いの際の地図」と言ってもいいのではないでしょうか。

以上のことから、私は可能な限りグループごとにホワイトボードを準備していただきたいと考えていますが、そうは言ってもスペースの関係や受講者人数が多い研修だとグループ数も多くなり、一方で用意できるホワイトボードの数には限りがあるというのも、また現実です。実際、先日弊社が担当させていただいた研修では受講者人数が100名以上いたため、17グループにもなったことから、全てにホワイトボードを準備いただくことはかないませんでした。

現在もまだコロナ禍が続いている中、ホワイトボードの前に集まってディスカッションをしたら、感染のリスクがあるのではないかとの危惧もあるかもしれません。しかし研修の成果を最大限あげるためにも、感染防止をしっかり行ったうえでディスカッション時にホワイトボードを使うと、生産性の高い話し合いができるという効果を改めて認識しているところです。

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