中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

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第1,249話 面識のない人への呼称はどうすると良いのか

2025年01月22日 | コミュニケーション

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「おじいさん、大丈夫ですか?」

先日(2025年1月18日)の日本経済新聞夕刊に、落語家の林家正蔵さんが百貨店のエレベーターにはさまれて転んだ際に、若い店員からかけられたという言葉が紹介されていました。

この記事を読んで、私は同年代である林家正蔵さんが「おじいさん」と声をかけられたことに対して少しショックでしたし、さらに百貨店の店員が顧客に対して「おじいさん」と声をかけたことにも正直驚きを感じました。

私がこのことに少々過敏ぎみに反応したのには実は理由があるのですが、それは私自身がこの1週間の間に2度、面識のない人から「お母さん」と呼ばれたからなのです。

以前からテレビなどでレポーターが面識のない人に対して「お父さん」「お母さん」と呼んでいる場面を見聞きするたびに、私は違和感がありました。しかし、これまで私自身が見ず知らずの人から「お母さん」と呼ばれた経験がなかったせいか、今回の経験はある意味で新鮮であり、同時に面識のない人への呼び方は難しいと改めて感じたのです。

もちろん、「お母さん」というような呼び方にさほど違和感を持たない人もいるでしょうし、違和感なく受け入れられる場面もあると思います。たとえば、子ども連れの家族が来店した際に、スタッフが「お父さん、お母さん、こちらへどうぞ」と呼んだり、子どもの学校の先生や友人などが、親を「〇〇ちゃんのお母さん」などと呼んだりするような場面です。これらは、関係性が分かっている中で親しみを込めた表現として使われていますので、言われた方も違和感なく受け入れられるのではないかと考えます。

では反対に、どういう場面で「お父さん、お母さん」が使われると、違和感を持つ人が多いのでしょうか。もちろん、これは人によって様々だとは思いますが、たとえば全く面識がない初対面の人こうから言われると、馴れ馴れしく感じられて受け入れにくいと思う人が多いのではないでしょうか。

そもそも、なぜこうした場面でも「お父さん、お母さん」が使われるのかと考えると、相手の名前がわからない場合(名前がわかるなら名前で呼べばいいわけですから)に、他にうまい呼び方がなかなか見当たらないということがあるように思います。

では、面識のない人から「お父さん」「お母さん」の代わりにどのような呼び方をされると、受け入れられやすいのでしょうか。私自身いろいろ考えてみましたが、すべての場面でぴったりあてはまるような呼び方を見つけるのはやはり難しいように思います。したがって、場面に応じて呼び方を変えること、たとえば顧客に対しては「お客様」、そうでない場合には「こちらの方」や「そちらのお連れ様」など、状況に応じた柔軟な表現が必要ではないかと考えます。

「お父さん」「お母さん」という呼称は、親しみやすさを込めた表現として使われることもありますが、それは必ずしも相手にとって適切なものとは限りません。初対面の相手に対しては、敬意を込めつつ節度を持った呼び方が良いのではないでしょうか。

呼び方は面識の有無に関わらず、職場や仕事をしていく上で、さらには新しく人間関係を形づくっていく上でも、とても大切なものです。「たかが呼び方、されど呼び方」です。相手の立場や背景に配慮し、状況に応じた呼び方を心がけることが重要だと、私自身の経験を通して考えた出来事でした。

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第1,248話 抽象的な質問をすると抽象的に、具体的な質問をすると具体的になる

2025年01月15日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「面談では部下があまり話をしてくれないので、いつもあっという間に終わってしまいます。」

これは、弊社が管理職研修を担当させていただく際に聞くことが多い話です。言わば管理職の典型的な悩みの一つのように考えています。

先日話をしてくれたある中小企業の管理職A氏によると、評価面談で評価を部下に伝えた後に何か質問があるかと尋ねても特に部下からの質問はなく、10分くらいであっという間に面談が終わってしまうとのことでした。そのために「一体どうしたらよいのでしょうか。私はもっと部下に話をしてもらいたいのです」と研修終了後に相談に来られたのです。

A氏から詳しく話を聴いたところによると、まずA氏と部下とのやり取りは「双方向のコミュニケーション」ではなく、「一方的なインフォメーション」になってしまっているのではないかと考えられます。また、部下への質問が限定的な答えを求める「閉じた質問」が中心のため、部下は「はい」や「いいえ」など簡単に返答ができてしまうなど、質問に工夫がないことにも原因があるのではないかと感じました。

これは上司と部下とのやりとりに限ったことではありません。コミュニケーションをとる際に相手から深く、またたくさんの情報を得たいのであれば、断片的に浅い質問を繰り返すのではなく、一つの話題について様々な角度から質問するというように、質問を工夫することが大切です。そして、答えを限定しない、答え手が自由に答えられるような「開いた質問」を使えば相手も答えやすくなり、得られる情報量も俄然増えることは誰にでもあるかと思います。

そして、同様のことはここ数年で一気に拡がった生成AIの利用においても言えます。私自身も経験がありますが、生成AIから情報を得るために検索をかけたけれども期待した回答をなかなか得ることができず、「AIは役に立たない」と失望した経験がある人も少なからずいるでしょう。しかし、AIを利用する場合も人と人とのコミュニケーションと同様です。期待した答えが得られない原因は質問の仕方にあり、質問方法や表現を変えたら欲していた情報が俄然得られるようになったという経験をしたことがある人も多いかと思います。このようにコミュニケーションは大切であると同時に、一方では難しさも併せ持っています。

私は定期的に昇格試験の面談を担当させていただく機会があるのですが、その際に抽象的な質問をすれば受験者からは抽象的な返答しか得られず、具体的な質問をすれば具体的に答えてもらえると感じています。また、こちらが期待している詳細な返答が得られないときには、具体的な質問に変更して再度投げかけることによって相手から得られる情報の量が増えるだけでなく、質も高くなって評価の精度が上がることを肌で感じています。

面談のみならず、コミュニケーションにおいて「質問」は相手を知るうえでとても大切であり、欠かすことができないものです。なかなか必要な情報が相手から得られないと思っている人は、ぜひ一度自分の質問の中身や仕方に意識を向けて、工夫していただくとよいのではないかと考えています。

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第1,247話 自主性を促すためには

2025年01月08日 | コンサルティング

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。
本年も当ブログをどうぞよろしくお願いいたします。

「評価者に感情が入ってしまうようで、正しい評価ができません。評価が適正にできるように研修をしてもらえませんか?」

弊社では、中小企業の社長からこうしたご相談を定期的とも言えるほどにいただきます。毎年の賞与の際の社員の評価にあたって、管理職が部下の評価を適切に行うことができずに部下のモチベーションが下がってしまうとのことで、どうしたらいいものかとのご相談をいただくのです。

このような話をいただいた場合、私は現状を伺うために必ず訪問し社長からじっくりお話をお聞きすることにしています。すると評価がうまくいっていない理由は案外シンプルで、実はいずれの企業でも「目標を立てていない」という共通の問題点があることが多いのです。目標を立てていない理由には様々なことがあるようですが、多くの社長は目標を立てること自体が難しいと感じているようです。

話は変わりますが、今年も新春の風物詩となっている箱根駅伝が行われ、ご存じのとおり青山学院大学が大会新記録で8度目の総合優勝を果たしました。私は毎年1区と10区で沿道から選手を応援しているのですが、選手の後ろには各校の監督が乗る車が付いていて、原監督の表情をすぐ近くで見ることができました。今年の1区では選手の走りが予定とは異なる状況だったからか、通過した際の原監督は少々憮然としているようにも見える固い表情でした。一方、翌日の最終10区では2位を大きく離してトップを走る選手に対して、余裕の表情で明るく檄を飛ばしているのを目にしました。

青山学院大学がこれまで何度も総合優勝している理由には様々なものがあるのだと思いますが、その一つに原監督が指導の一環として目標管理制度を導入していることが有名です。
原監督は毎年、まずチーム全体の目標を決めて、その後個人の目標を1カ月ごとに具体的に記入させ、次にその目標に到達するために実行する行動目標を細かく記入させるとのことです。そして、各々が記入したものを一斉に壁に貼り全体で共有することにより、一人ひとりの意欲を徐々に高めていくのだそうです。そうすることで各選手の自主性を促し、監督が逐一細かく指導しなくても「自ら考え行動する」選手になっていくとのことです。
これらからもわかるように、物事を勝利に導くためには、あるいはきちんと進めていくためには、やはり目標をしっかり立てることが必要だということです。

そして、このことはビジネスシーンでも同様です。冒頭の評価の例で言えば、目標を設定しないまま評価だけをしようとしても、何を根拠にすればよいのかわからないということになってしまいます。同時にそもそも評価される側もどこに向かってどのように頑張れば良いのかわからない状態で仕事をすることになってしまいます。そうなると、評価する方もされる方も曖昧模糊とした状態となってしまい、評価のタイミングでたまたま実績を挙げた人を高く評価し、その反対も然りということにもなってしまいかねません。

さらに言えば、新年のはじめに「今年はこのようにしたい」と考えることは、各々が具体的に目標を立て、それに向けて具体的な行動をとることにより、自身がイメージする形に近づけることができるわけですから、目標管理制度の有無に関わらず重要なことです。

「一年の計は元旦にあり」との言葉は戦国時代の武将、毛利元就のものとの説があるそうですが、この言葉のとおり物事は初めが最も大切で、最初に計画をしっかり立てることが大切だということを、年頭にあたり改めて肝に銘じたいと考えています。

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