半世紀後の帰郷

　火曜日から福岡へ出張で行っていた。

午前に福岡、夕方に東京、深夜に名古屋の強行軍でちょっと疲れた。

折角博多まで来たのだから、と無理やり仕事中に空白時間を捻出し、出かけてきた。

自分が生まれた場所へ、だ。

昭和30年代の話だから、今とは町並みは全く変わってしまっているわけだが

実家の母親に住所は訊いていたので、訪ねてみることにした。

実は、生まれてこの方訪れたことは無く、半世紀ぶりに戻ってきたことになる。

福岡市の早良区、藤崎町１丁目だ。

昔は市電が走っていたようだが、今は地下鉄だ。

目当ての住所へ行ってみたが、そこはマンションが建っていた。

が、その横に自分の父が勤めていた会社の寮があるのを見つけ、確かにここだったのだ、と知ることが出来た。

ただの普通の住宅街だったので何の感動もしなかったが

良く聞かされていた「家の中にカニがいた」の理由が良く判った。

海の河口近くの川がすぐ横を流れている。

ちなみに、その時隣に住んでいたご家庭が飼っていた犬の名前が、今の我が家の犬の名前と同じだ。

具体的な記憶は全く残っていないが、潜在的に今の自分の頭の仲に多くの情報が埋め込まれているらしい。

ちょっと甘酸っぱい不思議な感じがした。