JSP_Blog

IMジェイエスピー社員が綴る日替わりブログ

加速器

2010-11-23 21:42:01 | 日記
 加速器という機械をご存知だろうか。素粒子を加速して素粒子同士ぶつけて何が起きるか調べたり、癌細胞にぶつけて癌を撃退したり、そんなことに使われている装置である。
 加速器の中で、今最も大きなものは、スイスとフランスの国境あたりの地下100メートルに全周27キロメートルというとんでもない大きさのループ状の施設「LHC」が作られている。ほとんど光速のような速さまで陽子を加速しドーンとぶつけて何が起きるか見てみようという実験をする装置だ。この装置でブラックホールが作れるかもしれない、という報道があったために、「ブラックホールなんて作られちゃった日には地球が壊滅してしまうかもしれないから、実験を差し止めて」などと真面目に訴訟を起こしたアメリカ人もいる。本当にブラックホールが出来たとしても、かなりミニサイズのブラックホールで一瞬で蒸発してしまうらしい。観測さえできるかどうかわからない。

 「ダ・ヴィンチ・コード」の続編として製作された「天使と悪魔」という映画にこの「LHC」が登場した。あまり映画の内容を覚えていないが、研究用の反物質をテロが奪って爆発させちゃうぞ、とバチカンを脅す話だった。かなり科学が発達した時代にならないと大量の反物質をコンパクトな容器に入れて持ち運ぶほど長時間保存することはできないので映画のようなことはあと何百年か起きそうにない。少量でも反物質を発生させられれば大したものだが、それほどの高エネルギーを生み出せるのは今のところこの「LHC」のような高エネルギー加速器だけだ。

 反物質と言うのは電荷が逆の物質のことだが、宇宙創成のはるか昔、物質も反物質も共に宇宙を満たしていたがCP対称性の破れが起きて物質だけが残り反物質の多くは蒸発してしまったと説明されている。「LHC」で期待されているのは電荷が逆の反物質の生成というより、現在見つかっている素粒子の電荷が同じ双子の兄弟で存在することが予言されている「超対称性粒子」の発見だ。
 また、素粒子に質量を与えているという「ヒッグス粒子」などは、発見されれば大騒ぎになる粒子だが、まだ発見されてもいないヒッグス粒子の双子のヒグシーノなどが発見を待っている。
 
 何もない宇宙空間だと思っていたところは、実はある素粒子の満ちた空間だったと考えたらどうだろう、というのがヒッグスさんのアイデアだ。宇宙が熱かった時には何も無いただの真空の空間のように見えた空間に、冷めてきたら空気中の水分が見えない状態から姿を現すように宇宙空間すべてにジワッと湧き出して来た素粒子があって、まるで水の中でボールを投げるように、いろいろな素粒子がそのジワッと湧き出た素粒子にぶつかって抵抗を受け質量を持ったように見えるのだ、とヒッグスさんは言う。で、なるほどそれはいい説明だと認めた皆さんが、その素粒子をヒッグス粒子と名付けたわけだが、まだヒッグス粒子は見つかっていない。
 水が気体から液体に変化するような様子を相転移と言うが、ヒッグスさんは宇宙の真空が相転移した、と言っているわけだ。ヒッグス粒子が見つかれば、真空の、何もなかったはずのところが相転移した、という証拠にもなる。ヒッグスさんのアイデアはすごいが、ヒッグスさんにそのアイデアの元、自然は安定してバランスのとれた発生をしながら、ある時ふっと変化をして自らバランスを崩すという基本的な考え方、「自発的対称性の破れ」を説いた南部陽一郎さんの考えを基にしている。先に書いたCP対称性の破れも同じことだ。現代物理学の最先端を行く素粒子論だが、その基になるところには南部陽一郎さんのアイデアがちりばめられている。2008年にノーベル賞を贈られている。素粒子は実は振動する弦でできているんじゃないの、と言うアイデアを最初に提唱したのも南部さんだ。すごい日本人がいたものだ。

 ヨーロッパにある「LHC」だが、部品の多くは実は日本製だ。小さな小さな素粒子の観測を行う精度を要求される機器は日本製に限る、と世界の科学者は心から信じてくれているようだ。最高の研究のためには最高の実験機器を集めたい、集められたのが日本メーカーだった。古川電工、IHI、JFEスチール、浜松ホトニクス、フジクラなどが力を発揮した。
 宇宙は今、膨張速度を加速しているという。何がそうさせているのか、さっぱりわかっていない。さっぱりわかっていないが、仮説は山ほど生まれている。「LHC」の実験が、答えを見つける糸口になるかもしれない。名前は恐ろしいが、まったくわからないものの一つが、「暗黒物質」と呼ばれているものだ。先に書いた「超対称性素粒子」が暗黒物質かもしれない、と言う人もいるらしい。
 我々人類はここまで科学を発達させてきたが、宇宙を構成する物質のうち約4%程度の物質についてしか理解していないという。全体の23%は「暗黒物質」なのだそうだ。全くなんだかわからない残り73%が宇宙を膨張させている原因なのでは無いかと考えられているそうだ。この全くなんだかわからない物は「暗黒エネルギー」とネーミングされている。日本の技術が、なんだかわからない暗黒に光をあてることになれば、こんな素晴らしいことはない。


monipet
  動物病院の犬猫の見守りをサポート
  病院を離れる夜間でも安心

ASSE/CORPA
  センサー、IoT、ビッグデータを活用して新たな価値を創造
  「できたらいいな」を「できる」に

OSGi対応 ECHONET Lite ミドルウェア
  短納期HEMS開発をサポート!

GuruPlug
  カードサイズ スマートサーバ

株式会社ジェイエスピー
  横浜に拠点を置くソフトウェア開発・システム開発・
  製品開発(monipet)、それに農業も手がけるIT企業
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする