馬車道奮闘記

ここ最近行ってなかったが、昨日久しぶりに新規の求人を出しにハローワークへ向かった。

せっかく外に出るのだから、ついでに美味しいランチでも食べに行きたいものである。
しかし私はどうも鼻が利かず、ふらっと歩いて良さそうな店を探すのが苦手だ。これまで行った店はことごとく外れ、一勝はしたものの、しっかり調べてからのお店だったのであまり勝ったとは思っていない。

そう、私にとってハローワークのある馬車道は戦いの場なのだ。

美味い店あったよ？と、先月私の代わりにハローワークへ行ってきた鼻の利く上司に言われ、悔しいので今度こそと気合を入れて馬車道へ向かった。


ターゲットエリアは以前一勝したお店の付近。このお店に行った際、周りにも良さげなお店が並んでいるのを記憶していた。
目に留まったのはカレー屋。カウンター7席しかない狭いカレー屋だ。店構えもお店の名前もラーメン屋のようでちょっと入りにくい印象を受けた。
そして第二候補はその隣のカフェ。こちらの方がテーブル席もあってお店の名前も小洒落ている。メニューのひとつには「大人気！」の文字。こっちかな。
しかしここで、何となくモヤモヤしている自分に気付いた。
そしてこれは、負ける前にいつも感じているような気がした。
ほんの少しだが、もう一人の自分が「気付いてくれ、それじゃない」と叫んでいるような、そんな気がした。
いつもはその声に気付かなかったのだが、その日は敏感だった。
そして気付いた。
ラーメン屋のような店名の前に小さく「Bistro」の文字。
ビストロ！これは美味しそうだ！
しかもよく見ると、カウンターの向こうには白いコックコートを着たいかにもなシェフ。
一方のカフェは、よくよく見ると昭和臭漂う喫茶店のよう。
ビストロのカウンターには一席ずつきっちりとフォークとスプーンが並んでいる。こっちだ。


座って目の前に立てかけてあるメニューを見ると、どうやらディナータイムはフレンチを提供するお店らしい。
これは間違いないだろうと、9割の期待と、それでも1割不安を抱きながらビーフカレーが来るのを待った。

テーブルにカレーが置かれ、ドキドキしながら一口。
じっくりと煮込んで牛肉の甘みが溶けだした中にピリリとくるスパイス。深いコク。
あぁ、当たりだ…

デザートのシャーベットも上品で大満足だった。
これでサラダもついて880円は安い。


二勝三敗。
何となく掴めた気がする。

(い)

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