子供の頃、この季節は非常に楽しみだった。みなさんはあまり馴染みはないかもしれないが、私の田舎では、10月の亥の日「亥の子」という行事が行われていた。
地域の子供達が集まり、一軒一軒を巡って、祝い歌を歌いながら、平たく丸い石に、藁で編んだ縄を繋いだ亥の子石を、皆でタイミングを合わせながら縄をひっぱり石を上下させて、庭に穴を空けていく。それぞれの年で当番の家が決まっていて、当番の家から地域の家を全件周り、最後当番の家に戻りご馳走が振舞われる。廻った各家からいくばくかのお礼を頂き、子供達でそのお金を分け合っていた。
当時田舎の夜は本当に真っ暗で、夜出歩けることなどめったに無い。子供達だけで夜家々を廻り、ゴールにはごちそうが待っていて、しかもお小遣いをもらうことが出来る。本当にわくわくとして楽しかった。亥の子で空けた穴は縁起もののため、踏んだりするとバチが当たると言われていた。また穴は深ければ深いほど多くの福が舞い込むため、皆気合をいれて大穴を空けようと頑張っていた。
亥の子石をつくときの歌は地域によって異なっている。調べてみると亥の子は西日本に多く見られる行事だが、歌われている歌も思った以上に地域それぞれに特色があるようだ。きちんとした歌詞表のようなものがあるわけでもなく、上級生達が歌っていたのを聞きながら覚えていったので少しずつ変化していったのかもしれない。
記憶の限りだと、自分の地区で歌われていたのは下記の通り。
お大国のお庭
一が俵をふんまいて
二でにっこりわろて
三で酒を造って
四つ世の中良いように
五ついつものごとくに
六つ無病息災に
七つ何事無いように
八つ屋敷を広げたて
九つ子倉を建て替えて
十で取って納めた
鶯が鶯が
初めて都に上るとき
都の町は広けれど
一夜の宿を取りかねて
梅を枕に葉をゴザに
春咲く花の夢見た
わーいわい
オゴロが持たんように
福の神が舞い込むように
わーいわい。
亥の子も農家中心の集落だったからこそ続いてきた風習なのかもしれない。年々子供の数も減り、土の庭も無くなり、多くの子供達をもてなすようなスペースのある家も少なくなってきた。米を作る人も少なくなり藁が手に入らず、藁から縄を結える人もどんどんいなくなっている。そうした流れの中でやはり段々と継続していくことが難しくなっているのが実情のようだ。
時代が進むにつれて古い風習は廃れていき、新しい風習が生まれていく。ノスタルジーに浸るだけではしょうがないのかもしれないが、子供の頃に慣れ親しんだものが、心の中にだけ残っている風景になって行くのは、やはり心寂しい。(池)
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横浜に拠点を置くソフトウェア開発・システム開発・
製品開発(monipet)、それに農業も手がけるIT企業
地域の子供達が集まり、一軒一軒を巡って、祝い歌を歌いながら、平たく丸い石に、藁で編んだ縄を繋いだ亥の子石を、皆でタイミングを合わせながら縄をひっぱり石を上下させて、庭に穴を空けていく。それぞれの年で当番の家が決まっていて、当番の家から地域の家を全件周り、最後当番の家に戻りご馳走が振舞われる。廻った各家からいくばくかのお礼を頂き、子供達でそのお金を分け合っていた。
当時田舎の夜は本当に真っ暗で、夜出歩けることなどめったに無い。子供達だけで夜家々を廻り、ゴールにはごちそうが待っていて、しかもお小遣いをもらうことが出来る。本当にわくわくとして楽しかった。亥の子で空けた穴は縁起もののため、踏んだりするとバチが当たると言われていた。また穴は深ければ深いほど多くの福が舞い込むため、皆気合をいれて大穴を空けようと頑張っていた。
亥の子石をつくときの歌は地域によって異なっている。調べてみると亥の子は西日本に多く見られる行事だが、歌われている歌も思った以上に地域それぞれに特色があるようだ。きちんとした歌詞表のようなものがあるわけでもなく、上級生達が歌っていたのを聞きながら覚えていったので少しずつ変化していったのかもしれない。
記憶の限りだと、自分の地区で歌われていたのは下記の通り。
お大国のお庭
一が俵をふんまいて
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三で酒を造って
四つ世の中良いように
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七つ何事無いように
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わーいわい
オゴロが持たんように
福の神が舞い込むように
わーいわい。
亥の子も農家中心の集落だったからこそ続いてきた風習なのかもしれない。年々子供の数も減り、土の庭も無くなり、多くの子供達をもてなすようなスペースのある家も少なくなってきた。米を作る人も少なくなり藁が手に入らず、藁から縄を結える人もどんどんいなくなっている。そうした流れの中でやはり段々と継続していくことが難しくなっているのが実情のようだ。
時代が進むにつれて古い風習は廃れていき、新しい風習が生まれていく。ノスタルジーに浸るだけではしょうがないのかもしれないが、子供の頃に慣れ親しんだものが、心の中にだけ残っている風景になって行くのは、やはり心寂しい。(池)
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