「明日の午後半休もらいます」。帰社前にちょっと休憩しようと3人で入ったカフェでCちゃんはそう言った。クリスマスソングがかなり大きなボリュームで響いていたが彼女の声はどこでもよく通る。Sくんはちょっと驚いたような顔をしながら「クリスマスだしね」とぼさっと言った。私はそう言う言葉にすぐ乗っかってしまう方なので「ほう。いいねぇ」などと言ってしまう。
「違いますよ。変な誤解しないで下さい」と小刻みに手を振りながら「母が出て来るんです。東京のクリスマスが味わいたいとか言っちゃって。父と喧嘩でもしたんだと思います」。
それから、子供の頃もらったプレゼントで一番嬉しかったものは何だったかについて、みんなで少し話した。Sくんは「自転車かな」とつぶやいた。「兄貴と兼用じゃなく、自分のがずっと欲しかったんだけど、置く場所が無いってことで買ってくれなかったから」。心からサンタに感謝したそうだ。
「どれも嬉しかったから何が一番だか決められないけど、毎年母の手作りの手袋やマフラーやセーターなんか貰ってました。どれも可愛くて大好きでした。プレゼントくれるのサンタじゃないことは、だから早くから知ってて、そこはちょっと残念だったかな」とCちゃん。
「いいねぇみんな。しっかり思い出せて。クリスマスパーティーみたいな感じでケーキ食べたりした記憶はあるし、朝目が覚めたら何があるのか、わくわくしながら寝た記憶はちゃんとあるんだけど、何がそこにあったのか全然思い出せなくてね。覚えているのがうらやましいよ。何もらったんだろ」それが私だった。ずっと思い出そうと頑張って来たのだが思い出せなかったので、ヒントになるかもと、みんなが貰ったプレゼントの話しを聞いてみたのだった。だが「思い出せない」と言った途端、心の中に何かひらめくものがあった。そうだ何で忘れていたんだろう。
「どうしたんですか。黙っちゃって」Cちゃんが声をかけてくれた時、私は遠い昔に戻っていた。
「顕微鏡、だった。ふいに思い出した。黒い箱に入ってた。声も出ないぐらい驚いて喜んだ。うれしくてうれしくて。かなり使ったよ」そう、かなり長い間私は何でもセットになっていたガラスの板に乗せて顕微鏡で覗いてみる子供だった。焦点を調整して丸い視野の中に飛び込んでくる様々な物体の画像が今も目の前に浮かんで来る。小学校の低学年の頃だったろうか。あの顕微鏡は今どこにあるのだろう。なぜ使わなくなってしまったのか。ひとつ蘇った記憶は様々な疑問に繋がって行く。
顕微鏡はガラス板の向こうにある、とてつもなく広い世界への入口だったのだろうと思う。母の発案だったのか父の発案だったのか。目の前にあるものよりその向こうにあるものを見たい欲求にかられる人間に育ってしまった作戦は狙い通りだったのか大失敗だったのか。当時としてはかなり高い買い物だったはずのプレゼントが私を作る上で大きな意味を持っていたことは確かだ。
プレゼントひとつで、それからの人生が変わる人もいるだろう。サンタクロースの仕事は、いやサンタだけでなく人に夢を届ける仕事というのは、なんと偉大なことだろう。そんなことを話してみたくなったが、みんなよく知っている話のような気がしてやめにした。その代わり「お母さんには何かプレゼントするの」とCちゃんに聞いてみた。
「手袋を贈ろうかなって考えてます」
「いいね。大喜びだね。きっと」。そうか、もらう方だけじゃないのかな。顕微鏡を私に贈ってくれた両親が幸福だったろうかと考えていた。(三)
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株式会社ジェイエスピー
横浜に拠点を置くソフトウェア開発・システム開発・
製品開発(monipet)、それに農業も手がけるIT企業
「違いますよ。変な誤解しないで下さい」と小刻みに手を振りながら「母が出て来るんです。東京のクリスマスが味わいたいとか言っちゃって。父と喧嘩でもしたんだと思います」。
それから、子供の頃もらったプレゼントで一番嬉しかったものは何だったかについて、みんなで少し話した。Sくんは「自転車かな」とつぶやいた。「兄貴と兼用じゃなく、自分のがずっと欲しかったんだけど、置く場所が無いってことで買ってくれなかったから」。心からサンタに感謝したそうだ。
「どれも嬉しかったから何が一番だか決められないけど、毎年母の手作りの手袋やマフラーやセーターなんか貰ってました。どれも可愛くて大好きでした。プレゼントくれるのサンタじゃないことは、だから早くから知ってて、そこはちょっと残念だったかな」とCちゃん。
「いいねぇみんな。しっかり思い出せて。クリスマスパーティーみたいな感じでケーキ食べたりした記憶はあるし、朝目が覚めたら何があるのか、わくわくしながら寝た記憶はちゃんとあるんだけど、何がそこにあったのか全然思い出せなくてね。覚えているのがうらやましいよ。何もらったんだろ」それが私だった。ずっと思い出そうと頑張って来たのだが思い出せなかったので、ヒントになるかもと、みんなが貰ったプレゼントの話しを聞いてみたのだった。だが「思い出せない」と言った途端、心の中に何かひらめくものがあった。そうだ何で忘れていたんだろう。
「どうしたんですか。黙っちゃって」Cちゃんが声をかけてくれた時、私は遠い昔に戻っていた。
「顕微鏡、だった。ふいに思い出した。黒い箱に入ってた。声も出ないぐらい驚いて喜んだ。うれしくてうれしくて。かなり使ったよ」そう、かなり長い間私は何でもセットになっていたガラスの板に乗せて顕微鏡で覗いてみる子供だった。焦点を調整して丸い視野の中に飛び込んでくる様々な物体の画像が今も目の前に浮かんで来る。小学校の低学年の頃だったろうか。あの顕微鏡は今どこにあるのだろう。なぜ使わなくなってしまったのか。ひとつ蘇った記憶は様々な疑問に繋がって行く。
顕微鏡はガラス板の向こうにある、とてつもなく広い世界への入口だったのだろうと思う。母の発案だったのか父の発案だったのか。目の前にあるものよりその向こうにあるものを見たい欲求にかられる人間に育ってしまった作戦は狙い通りだったのか大失敗だったのか。当時としてはかなり高い買い物だったはずのプレゼントが私を作る上で大きな意味を持っていたことは確かだ。
プレゼントひとつで、それからの人生が変わる人もいるだろう。サンタクロースの仕事は、いやサンタだけでなく人に夢を届ける仕事というのは、なんと偉大なことだろう。そんなことを話してみたくなったが、みんなよく知っている話のような気がしてやめにした。その代わり「お母さんには何かプレゼントするの」とCちゃんに聞いてみた。
「手袋を贈ろうかなって考えてます」
「いいね。大喜びだね。きっと」。そうか、もらう方だけじゃないのかな。顕微鏡を私に贈ってくれた両親が幸福だったろうかと考えていた。(三)
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