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藤原竜也(2)

 10月に入り、妻は落ち着いた暮らしをしている。9月のSMAP三昧の日々が過ぎたあとは嘘のようにおとなしい、と思ったら、7日に東京まで『天保12年のシェークスピア』を観に行っていた。日帰りだったから、ついつい忘れるところだった。シェークスピアの37の戯曲が織り込まれた井上ひさしの原作を、蜷川幸雄が演出した舞台だ。出演者が、唐沢寿明、藤原竜也、篠原涼子、高橋恵子、夏木マリなど豪華なメンバーが揃っていて、4時間の舞台だがとにかく面白いらしい。妻に感想を聞いてみたが、「藤原くんがよかった」と思ったとおりの答えしか返ってこなかったので、馬鹿らしくなってそれ以上聞くのを止めた。ただ、しばらくしてから「時代が時代だから仕方ないんだろうけど、人を簡単に殺すのが観ていてちょっと・・・」と感想めいたことをぽつりと漏らしたが、原作も舞台も知らない私には何もコメントできなかった。「勿論そんなことは、藤原くんがよかったからどうでもいいんだけど」と他の出演者が聞いたら怒るようなことも言っていた。そのときの souvenir としては、「藤原竜也06年カレンダー」をうれしそうに買ってきたくらいだから、本当に藤原だけを観に行ったようなものだ。
 この公演も、11月6日に大阪で終演を迎える。妻は、5・6両日のチケットを苦労して確保したようで、京都の娘の部屋を宿泊所にして、千秋楽の前日と当日の公演を堪能する予定でいる。京都に拠点があることで、関西方面は気楽にほいほい出かけていくが、東には何もないので、息子をそちらに送り出して新たな拠点としようと画策している節がある。まあ、それは勘ぐり過ぎだろうが、本当に東部基地ができたら糸の切れたタコのように制御不能状態になってしまうかもしれない。
 何やら話が上手くつながりすぎて、わざとらしい気もするのだが、藤原竜也の写真集「no control」が発売された。言うまでもなく、発売日その日から我が家にはある。この写真集の発売に関しては、妻には心の葛藤が色々あったようで、後から話を聞くと笑えた。写真集発売を記念して、予約をしたファンに藤原竜也が直接写真集を手渡す握手会が、ある書店で企画されたそうだ。しかし、それは東京と大阪で催されるだけで、名古屋ではあいにく予定がない。『天保12年・・』の舞台もそうだが、何故名古屋を素通りするのか、名古屋はそれ程商業価値がないのか、と妻は何度も嘆いていた。が、とにかく名古屋では行われない。なら大阪に行こうかと思ったらしいのだが、藤原と握手するには電話などでは予約ができず、直接書店に赴き、写真集の予約とひきかえに整理券をもらわなければいけないと決められていた。さすがの妻も、予約をするだけのために大阪まで出向き、また握手をしてもらうためだけに別の日に大阪まで行くのはちょっと・・・と、断腸の思いで諦めたらしい。「そんなもん、行ってくればよかったのに」と私がからかってやったら、「でも、すぐに公演があるし・・今回は我慢した」と潔いことを言っていた。しかし、木曜日発売の週刊文春に、そのときの模様がグラビアに載っていたのを見つけて、「こんな太ったおばちゃんにまで笑顔で挨拶している。あーん、行けばよかったあ」と無茶苦茶なことを言う。でも、「藤原くんのファンは結構年齢層が高く、握手会に並んだ人も中年のおば様たちが多かったらしいの。誰にでもにこやかにしていた藤原くんでも、握手の相手が時々若い女性になると、さすがに笑顔が一段と華やかになったらしいわよ」などとウラ情報を教えてくれたから、気持ちはもう既に来週の公演に向いているのだろう。
 私は、「写真集を見せてくれ」と頼んでみたが、「なんであなたに見せなきゃいけないの」とけんもほろろに拒否された。別に見たくないさ、藤原の裸なんて、くそ!!


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