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PNF

 22日に、松井が骨折し手術した左手首の抜糸をし、その後報道陣の取材を受けた様子が大きく報じられた。穏やかな表情で、経過が良好なことをうかがわせたが、昨日発売された「週刊文春」にも、そのインタビューに関する記事が載せられていた。ジャーナリスト・鷲田康氏のレポートであるが、その中で私の興味を引いた個所を引用してみる。

 『自分でコントロールできることと、できないことがある。コントロールできないことを一生懸命コントロールしようとするのは、かえってストレスの原因になるだけ。そういうことは受け入れるか、あるいは受け流すことも必要だし、無理にどうしようとは考えないことが必要だと思う。それより自分でコントロールできることにどれだけ集中できるか。僕はいつもそのことを考えている』
 松井のこんな言葉を思い出した。プレッシャーのかかる場面、ピンチに陥ったときにどういうことを考えるのか?そんな質問に対する答えだった。今の松井の心の中は、まさにこの言葉通りの心境と言うことができるだろう。
 ケガをしたことと、その回復具合―それは「自分ではコントロールできない」ことなのだ。それよりいかにこのケガを受け入れて、復帰に向けてできることをやっていくか。口では「何もしていない」というが、実際にはすでに松井は八月復帰の青写真を描いて、密かに動き出している。

 おいおい、本当かよ、大丈夫かよ、そんなこと言って。思わずそう言いたくなるような内容だが、続けて、

 激しい動きは一切できないが、その一方で日本でプレーしていた頃からずっと続けているPNFはOK。すでに日本からPNFの先生を呼んで、密かに自宅で施術を受けている。
 PNFはもともとは脳性まひなどによる障害者に対して、インストラクターがある刺激と操作を加えることで、正常な生体反応を引き起こすように仕向ける治療法のことをいう。これを運動選手に応用して筋バランスや柔軟性、俊敏性などの運動機能の飛躍的な向上に役立てられるようにしたものだ。もともとが障害を持つ人々を対象にしたものだけに、施術では特に激しく体を動かす必要もなく、それでいてインストラクターのやり方次第で、かなり激しい負荷をかけ筋肉を刺激することもできる。今の松井にとってはうってつけのリハビリ方法となるわけだ。
 骨が完全にくっつくまでには約六週間かかるといわれている。ケガをしたのが五月十一日(日本時間十二日)なので、おそらく六月二十日前後が”完治”のXデーとなるはずだ。まず最初の問題はその六週間で、患部以外の筋力をどこまで維持できるか。普段どおりのトレーニングはできないのだから、ある程度のダウンは覚悟している。それでも、その落ち幅をどこまで食い止められるか。そこが松井自身にコントロールできる最初のことで、その方法として選択したのがPNFだった。

素晴らしい!骨がくっついたらすぐに練習が始められるだけの体力を可能なだけ維持しておく方法と考えればいいのだろう。しかし、練習を再開した後、骨折した手首がどれだけ早く回復できるのかは分からない。同じように守備で左手首を骨折したケン・グリフィーJr. が2ヵ月半で復帰した例も挙げられているが、果たしてどうだろう。決して焦って欲しくはないが、ヤンキースの主力としてそうとばかり言っていられない事情もあるだろう。私としては、ただ、このレポートの最後に述べられているように、松井を信じて待つしかない。

 人生最初にして最大のピンチ。その危機に直面しても、松井は冷静に、ユーモアを忘れずにその危機と真正面から向き合うことができている。自分で自分をコントロールさえできれば、必ずこのピンチを乗り越えられるはずだ。

頑張れ、松井!!
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